蝶やトンボは,翅をうまくはばたかせることで上手に飛ぶ事ができます。そのときの空気の流れは渦を巻いており,飛行機の翼の周りの流れとは ずいぶん違っています。この渦をどう使いこなすのかが,昆虫の飛翔を理解するポイントになり ます。数学的には,強い非線形を持つナヴィエ=ストークス方程式を移動境界条件の元で解く必要があり,コンピュータを用いた解析が必要となります。
ここではすこし視点を変えてみましょう。動画で見えているのは,上下対称にはばたく蝶が無重力下でどのように飛ぶのかの計算例です。はばたき運動が上下対称なので,胴体は上下に動くだけのように思えますが,しばらく経つと一つの方向に進み始めます。このような現象は「分岐」という概念で理解する事ができます。
こういう考え方は散逸系の解析など様々な分野で用いられ,現象の理解に役立つ新しい視点を与えてくれます。例えば,このモデルは初期に大きく加速しますが,しばらくたつとその機構は必要なくなります。しかしこの機構は,大きな重力がかかった場合には自重を持ちこたえるために使われることを示す事ができます。まるで自動車の変速器のようですが,渦の効果を考えるだけでこのような巧妙な仕掛けができるのです。