数学の分野の紹介と特徴について

数学は,数の研究だけでも計算だけでもありません。また単なる公式へのあてはめだけでもありません。それは「正確な論理的な思考による創造の場」といえるのではないでしょうか。数学には長い歴史があり,そして現在もめざましく発展しています。現に新しい研究成果が,国内外で催される研究会で発表されたり,世界各国で発行されている数学の学術誌に論文として掲載されたりしています。

数学はとても幅の広い分野です。別表は数学分野の分類で,アメリカ数学会が定めたものです。(「Mathematical Reviews」という数学専門誌にあるものの和訳です。) こんなに多くの分野がある事に,驚かれた方も多いのではないでしょうか。 たとえば「幾何学」や「代数学」という分野名は,高校でも聞かれた事があると思いますが,右の分類では,それらがさらにいくつにも分かれています。また,「代数幾何学」のように2つの分野が複合しているものもあります。このように数学は大変奥が深く,それに伴い未解決問題がたくさんあります。世界中の研究者がそのような問題に取り組んだり,新たな分野をつくりあげたりして,数学は深められてきました。

さて,表の中には流体力学・量子論・情報と通信・生物学など,「これが数学?」と疑問に思われる分野もあると思います。それらは,注目している対象を,数学的に表現し,解明していこうというものです。このように他の学問との関わりの中で進歩してきた分野も,数学のなかにはたくさんあります。一方で数学は,数多くの他の学問の発展に役立ってきました。数学はさまざまな科学の基礎を支える学問であるといわれる所以です。

数学の大きな特徴のひとつに汎用性があります。 例えば,ある一つの方程式が,物理学の現象を表すと同時に,経済学の理論にも登場するということがあります。そして同じ方程式なので統一的に扱えるということになります。 また,数学の理論を主張するためには,数学研究を始めたばかりの学生でも,どんなに有名な大学教授でも,きちんと数学的に証明しなければなりません。 そしてひとたび証明された数学的事実は,何年先になってもくつがえされることはないのです。このように数学には,時代を超えた普遍性があることも,大きな特徴といえます。

2003年7月

クラーク像