【 なんでもメモ帳3】


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1 December 2014

あっ〜〜という間に,もう12月,師走(しわす)である.

11月は,札幌で,講義準備,大学院指導,学部指導,を中心に,レフリーとエディターの仕事,共著論文執筆, 原稿執筆,12月の数理研での研究集会の講演準備などをしながら地道に生まれ変わっていた.

通勤中や,論文書きに疲れたときは, トーマス・デ・パドヴァ「ケプラーとガリレイ」白水社,(2014),や 山本義隆「重力と力学的世界,古典としての古典力学」現代数学社(1981), ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質,上」 ちくま学芸文庫,2007,などを読んでいた.それとは別に, 森博嗣「すべてがFになる」講談社ノベルズ(1996)も読んでいた.

いまは,高橋康「古典場から量子場への道」講談社サイエンティフィック (1979) などを眺めながら, 量子場と重力場のあるべき姿を考えている.

現在の座右の書:
第一部.
V.I. Arnold, Singularities of Caustics and Wave Fronts (Mathematics and its Applications), Springer, 1990.
R.W. Sharpe, Differential Geometry, Cartan's Generalization of Klein's Erlangen Program, Springer, 1997.
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
Boris Khesin, Robert Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer-Verlag (2009).
R.J. Baston, M.G. Eastwood, The Penrose Transform. Its Interaction with Representation Theory, Oxford Math. Monographs. Oxford Science Publ. The Clarendon Press, Oxford Univ. Press, New York, (1989).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
Udo Hertrich-Jeromin, Introduction to M\"{o}bius Differential Geometry, London Mathematical Society Lecture Note Series 300, Cambridge Univ. Press. (2003).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Differential Geometry of Varieties with Degenerate Gauss Maps (CMS Books in Mathematics), 2003.
第二部.
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
山本 義隆「磁力と重力の発見,1,2,3」みすず書房 (2003).
Bruno Cordani, The Kepler Problem, Group Theoretical Aspects, Regularization and Quantization, with Application to the Study of Perturbations, Progress in Mathematical Physics 29 (2003).
高橋康「古典場から量子場への道」講談社サイエンティフィック (1979)
朝永振一郎「量子力学,I」みすず書房
P.A.M. Dirac, Principles of Quantum Mechanics, Maruzen
ランダウ・リフシッツ「力学」東京図書.
戸田盛和,渡辺慎介「非線形力学」共立出版.
ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質,上,下」ちくま学芸文庫.
イーヴァル・エクランド「数学は最善世界の夢を見るか?」,南條郁子訳,みすず書房 (2009).
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
Ivar Ekeland, Le Calcul, l'Impr\'{e}vu, Les figures du temps de Kepler \`{a} Thom, Editions du Seuil, (1984).
Ren\'{e} Thom, Mod\`{e}les Math\'{e}matiques de la Morphog\'{e}n\`{e}se, Collection dirig\'{e}e par Christian Bourgois, 887, (1974).
アダマール「偏微分方程式」(現代数学の系譜14)共立出版 (1997).

6 November 2014

ノ〜ッという間に,もう11月である.

10月の後半は,神戸大学での集中講義に行ってお世話になって,かなり生まれ変わり, その後,入試説明会で名古屋,大阪をまわって,すっかり生まれ変わって帰ってきた. 共著論文の執筆・修正をしたり,講義資料を作ったり,テスト問題を作ったり,院生や学部生指導したりして, 楽しい日々を送っている.

出張移動中や通勤中は, ガリレオ・ガリレイ「偽金鑑識官」山田慶兒,谷 泰 訳,中公クラシックス W57,中央公論新社,(2009). ガリレオ・ガリレイ「新科学対話,上,下」今野武雄,日田節次 訳,岩波文庫,(1937), トーマス・デ・パドヴァ「ケプラーとガリレイ」白水社,(2014),などを読んでいた.さらに, ヨハネス・ケプラー「ケプラーの夢」渡辺正雄,榎本恵美子 訳,講談社学術文庫,(1985),を読み始めたところだ. それとは別に,森博嗣「封印再度」講談社ノベルズ(1997)も読んでいる.
「偽金(にせがね)鑑識官」は,ガリレイの"論争の書"である.彼の 59歳のときの作である. 論争相手を,偽金に例えている.その中に,有名な言葉, 「哲学は,眼のまえにたえず開かれているこの巨大な書(すなわち,宇宙)のなかに,書かれているのです. しかし,まずその言語を理解し,そこに書かれている文字を解読することを学ばないかぎり,理解できません. その書は数学の言葉で書かれており,その文字は三角形,円その他の幾何学図形であって, これらの手段がなければ,人間の力では,そのことばを理解できないのです.」が出てくる (p.57). 「新科学対話」は,ガリレイの74歳のときの作である.合理的に考える,ということはどういうことか,が書いてある. 「ケプラーとガリレイ」は、ふたりの間で交わされた書簡を通して,ケプラーとガリレイという天才が何を考え,何を目指していたか,が描かれている.2人の性格の違いもおもしろい.「ケプラーとガリレイ」を読んでいて,ケプラーが月旅行のSFを書いているということを知った.「ケプラーの夢」(原題は「夢」)である.その感想は後日. 「封印再度」は,以前,1999年に読んで以来の再読である.

座右の書は変化があまりないので省略する.
14 October 2014

オ〜ッという間に,もう10月も中旬である.

10月は,広島大での研究会に出席して,幾何学と月食と 西条名物を十分堪能して,すっかり生まれ変わってきた. いまは,講義準備,院生,学部生指導,集中講義と入試説明会の準備をしながら,充実した日々を送っている.

出張移動中と週末に,シェンキェーヴィチ「クオ・ワディス 中,下」木村彰一訳,岩波文庫 32-770-2, 32-770-3, を一気に読み終えた.基本的にウィニキウスとリギアのキリスト教純愛物語であり,ローマ皇帝ネロととりまきのキリスト教の迫害の物語であり,作者がポーランドがロシア・ドイツ・オーストリアに分割されて迫害された歴史になぞらえて描いている,とのことだ.ここでは詳しい内容には触れないが,主要な登場人物のうち,私は,なぜか,"趣味の審判者"ペトロニウスに共感を覚えた.ペトロニウスは,甥のウィニキウスに宛てた手紙の中で書いている.「おまえは...『登ってこい,いままで見たことのないようなながめがひらけるから』と,おれに呼びかけてくれる.それはそうかもしれぬ.しかしおれとしてはおまえに,『友よ,わたしの足ではとてもそこまで行けない!』と答えるしかない....」

現在の座右の書:
第一部.
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
大森英樹「無限次元リー群論」紀伊國屋書店 (1978).
Boris Khesin, Robert Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer-Verlag (2009).
R.J. Baston, M.G. Eastwood, The Penrose Transform. Its Interaction with Representation Theory, Oxford Math. Monographs. Oxford Science Publ. The Clarendon Press, Oxford Univ. Press, New York, (1989).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
Peter Abramenko, Kenneth S. Brown, Buildings: Theory and Applications (Graduate Texts in Mathematics), Springer (2008)
佐竹一郎「リー環の話」(新版)日本評論社(2002).
ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質,上,下」ちくま学芸文庫.
イーヴァル・エクランド「数学は最善世界の夢を見るか?」,南條郁子訳,みすず書房 (2009).
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
Ivar Ekeland, Le Calcul, l'Impr\'{e}vu, Les figures du temps de Kepler \`{a} Thom, Editions du Seuil, (1984).
Ren\'{e} Thom, Mod\`{e}les Math\'{e}matiques de la Morphog\'{e}n\`{e}se, Collection dirig\'{e}e par Christian Bourgois, 887, (1974).
第二部.
D. ルエール「数学者のアタマの中」冨永 星 訳,岩波書店 (2009).
L. Rees, World War Two, BEHIND CLOSED DOORS, Stalin, The Nazis and The West (2008).
C. リード「ヒルベルト」岩波書店 (1972).
マンジット・クマール「量子革命,アインシュタインとボーア,偉大なる頭脳の激突」青木薫訳, 新潮社,(2013).
有田潤「初級ラテン語入門」白水社 (1964).
田中克彦「言語から見た民族と国家」同時代ライブラリー.岩波書店 (1991).
プラトン「国家,上,下」岩波文庫.
三木 聡 他「時効警察」角川文庫 14617 (2007).
三木 聡 他「帰ってきた時効警察」角川文庫 15663 (2009).
29 September 2014

エ〜ッという間に,もう9月も終わりである.

8月14日から9月19日までポーランドのワルシャワに滞在し, 完璧に生まれ変わって帰国した. ワルシャワでは,講演をしたり,共同研究をしたり,充実した研究生活をしていた. また,書きかけの原稿を進めたり,国際共同研究や科研費の申請書を書いていた. その後,9月24日から9月28日まで 広島大での日本数学会秋季総合分科会に出席し,またまた生まれ変わってきたところだ. 投稿中の論文の改訂もしていた.

ワルシャワ滞在中は,プルタルコス「饒舌について」柳沼重剛訳,岩波文庫 33-664-1, と,シェンキェーヴィチ「クオ・ワディス 上」木村彰一訳,岩波文庫 32-770-1, を持参して読んでいた.帰国して,学会移動中は,引き続き, シェンキェーヴィチ「クオ・ワディス 中」木村彰一訳,岩波文庫 32-770-2, を読み始めている.
プルタルコスは,ローマのネロ帝からドミティアヌス帝の時代の著述家である. 「饒舌について」の内容は,「いかに敵から利益を得るか」「饒舌について」「知りたがりについて」「弱気について」「人から憎まれずに自分をほめること」「借金してはならぬこと」という実用的なものである.為になるといえば為になる.とくに 「人から憎まれずに自分をほめること」などは特に.
シェンキェーヴィチは,ポーランド生まれのノーベル賞を受賞した作家であり, 「クオ・ワディス」は彼の代表作であり,昔から読みたいと思っていて読んでいなかった 作品である.今回,ワルシャワに滞在するという良い機会に恵まれたので読み始めた. 「クオ・ワディス」は,ローマのネロ帝の時代の「ヘレニズム」と「ヘブライニズム」の拮抗を背景にした壮大な物語だそうである.おもしろい.
4 August 2014

お〜ッガストと言っている間に,もう8月である.札幌も暑い.

7月も,札幌で相変わらず, 線形代数の期末テスト採点,成績評価, 学部卒業研究指導,院生指導,レフリーレポート用の勉強,出張の準備,共著論文を書き,書きかけの原稿もちょっとずつ進めている.
最近全然生まれ変わっていない,という指摘を受けた. この夏こそすっかり生まれ変わって,零から出発したいなあ,と考えている今日このごろである.

ところで,捩率(torsion)が零の曲線は平面曲線であるが,「捩率が零」という条件は,一般の linear connection 付きの空間における曲線に対して定義される.このとき,捩率が零という曲線は,どのように特徴付けられるだろう? 定曲率空間なら話は簡単であるが,一般の空間で「平面曲線」の類似はなんだろう,ということを最近考えている.

通勤途中は,ジュール・ベルヌ「地底旅行」光文社古典新訳文庫はすでに読み終えて, 新田次郎「芙蓉の人」文春文庫,も読み終えた.今は,司馬遼太郎「司馬遼太郎全講演1」朝日文庫,を再読したり, 夏目漱石「夢十夜」岩波文庫,を眺めたりしている.
「地底旅行」は,途中から面白くなってきて,一気に読んでしまった.荒唐無稽でおもしろい.
「芙蓉の人」は,いま放映しているNHKドラマの原作である.さすが新田次郎の小説は読みやすい.読むと止まらなくなる. 昔,3部作(?)「孤高の人」「栄光の岩壁」「銀嶺の人」を読んだが一気に読んでしまった記憶がある. ただし「芙蓉の人」の(少なくとも原作の)主人公は,(時代背景が違うとは言え)どうしても無謀のように思えてしまう. まあいいけど.

今月の座右の書:
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
R.J. Baston, M.G. Eastwood, The Penrose Transform. Its Interaction with Representation Theory, Oxford Math. Monographs. Oxford Science Publ. The Clarendon Press, Oxford Univ. Press, New York, (1989).
青本和彦「直交多項式入門」数学書房 (2013).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
R.V. Gamkrelidze, Principles of Optimal Control Theory, Plenum Press, 1978.
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
H. Weyl, The Classical Groups, Princeton Univ. Press (1939).
J. Milnor, D. Husemoller, Symmetric Bilinear Forms, Springer-Verlag, 1973.
久保田富雄「整数論入門」朝倉書店
「整数論入門」は高校3年生のとき,最初に買った数学の専門書である.「ミンコウスキーの格子点定理」は面白く感じた記憶がある.それから38年を経た今でもだいたい眺めるだけで, まだ読み切れていないのだが,なつかしいので座右に積み重ねているところである.
2 July 2014

ジュラ〜イと言っている間に,もう7月である.今年も半分経った.早いものだ.

6月は,札幌で相変わらず, 院生指導,学部卒業研究指導,6月末締め切りの論文執筆,レフリーレポート用の勉強,出張準備,など, 地道に過ごしていた.とはいえ,また新たに,共著論文2編を書き始め,さらに,ずいぶん放っておいた原稿を この夏に仕上げようと決意したところである.

通勤中は,内村 鑑三 著「代表的日本人」鈴木 範久 訳,岩波文庫,や,ジュール・ベルヌ「地底旅行」光文社古典新訳文庫,また, 三好 行雄 編「漱石書簡集」岩波文庫,や,森 鴎外 著「渋江抽斎」岩波文庫,などを読んでいる.岩波文庫が多いね.
「代表的日本人」は,内村鑑三が欧米に日本を知ってもらいたいという熱意(パッション)あふれる本である. 西郷隆盛,上杉鷹山,二宮尊徳,中江藤樹,日蓮上人,の5人を紹介している.おもしろい. J.F.ケネディがこの本を読み,尊敬する日本人として上杉鷹山(ようざん)を挙げたことは有名である. ちなみに,米沢に鷹山神社がある.訪れたことがある.
ヴェルヌの「地底旅行」は,継続して少しずつ読んでいる.ところで,椎名誠の愛読書だそうである.アイスランドが舞台だ.
「漱石書簡集」は,何度かの再読である.漱石の手紙は歯切れが良くて,ユーモアがあっておもしろい.
「渋江抽斎」は,鴎外の書いた「歴史そのまま」の文学である.渋江抽斎という人物と,彼に関わる人々の生涯を丹念に記している. 何年(何十年)も前から,ちょっとずつ読んでいるが,読んでいるうちに前の方を忘れる.でも,特に筋があるわけでもないので, 忘れても構わないのが良いところである.ともかく,そのうち読み終えたいとは思っている.

今月の座右の書:
I.M. Gelfand, M.M. Kapranov, A.V. Zelevinsky, "Discriminants, Resultants, Multidimensional Determinants", Birkhauser (1994).
R.J. Baston, M.G. Eastwood, The Penrose Transform. Its Interaction with Representation Theory, Oxford Math. Monographs. Oxford Science Publ. The Clarendon Press, Oxford Univ. Press, New York, (1989).
G. Fischer, Complex Analytic Geometry, Lecture Notes in Mathematics, 538, Springer (1976).
複素解析幾何学のわかりやすい教科書である.
H. Matsumura, Commutative Algebra, 2nd ed., Benjamin (1980).
V.A.Vassiliev, Applied Picard-Lefschetz Theory, Amer. Math. Soc.. (2002).
F. Pham, Singularities of Integrals, Universitex, Springer (2011).
青本和彦「直交多項式入門」数学書房 (2013).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」数学選書,岩波書店.
ポントリャーギン「最適制御理論における最大値原理」坂本實訳,ポントリャーギン数学入門双書6 (2009).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
鈴木道夫「群論,上」現代数学 18,岩波書店 (1977).
J.-P. セール「有限群の線型表現」岩堀長慶,横沼健雄訳,岩波書店 (1974).
Igor Frenkel, James Lepowsky, Arne Meurman, Vertex Operator Algebras and the Monster, Pure and Applied Mathematics, 134, Academic Press (1989).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).

11 June 2014

ジュ〜ンとしている間にもう6月ジューンも中旬である.月日の経つのは早いものである.

5月から今まで,札幌で花粉症に悩まされ,6月はじめに九州宮崎は都城の研究会に出席して,体調もすっかり回復して 帰ってきた今日このごろである.院生指導,6月末締め切りの論文執筆,レフリーレポート用の勉強,原稿書き,出張準備,など, 地道に過ごしている.
例年お墓参りにいっている余市に,今年は5月末日(土)に行って来た.「かきざき商店」で ウニ丼を堪能して,かなり生まれ変わった.今回は赤ウニ(バフンウニ)だった. (2013の 1 July のメモ,2012 の 2 July のメモなどを参照のこと.)
都城では,宮崎地鶏やら,宮崎牛やら,霧島ビール,霧島焼酎,宮崎マンゴーなどを ちょっとだけ(数学以外では)堪能して,生まれ変わった.

通勤中や出張の移動中は, 「ペンローズの量子脳理論」(竹内薫,茂木健一郎,ちくま学芸文庫),夏目漱石「吾輩は猫である」角川文庫, ロマン・ロラン「ミケランジェロの生涯」高田博厚訳,岩波文庫, 池田清彦「やがて消えゆく我が身なら」角川ソフィア文庫,などと,「赤毛のアン」を引き続き読んでいた.
「ペンローズの量子脳理論」は再読である.丁度,Penrose の twistor 理論を勉強中なので,思い出して読んでいるところである. Penrose のオリジナリティーは見習いたい.ついでに,同じ Penrose の「心の影」や「The Road to Reality」の本も,いつも途中で読むのを中断しているので,再挑戦したいところである.
「吾輩は猫である」も,何度目かの再読である.やっぱりおもしろい.
「ミケランジェロの生涯」も,再読である.(なんでもメモ帳2の,5 November 2004 のメモを参照のこと). 天才はつらいよ,ということだ.
「やがて消えゆく我が身なら」もおもしろかった.とにかく,自由が一番,ということだ.
「赤毛のアン」は,まだ読み終わっていない.アンが成長するにしたがって,だんだん失敗しなくなっていき, その結果,だんだんつまらなくなっていく感じがする.まあ,そんなものなのだろう.

今月の座右の書:
R.J. Baston, M.G. Eastwood, The Penrose Transform. Its Interaction with Representation Theory, Oxford Math. Monographs. Oxford Science Publ. The Clarendon Press, Oxford Univ. Press, New York, (1989).
G. Fischer, Complex Analytic Geometry, Lecture Notes in Mathematics, 538, Springer (1976).
複素解析幾何学のわかりやすい教科書である.
H. Matsumura, Commutative Algebra, 2nd ed., Benjamin (1980).
V.A.Vassiliev, Applied Picard-Lefschetz Theory, Amer. Math. Soc.. (2002).
F. Pham, Singularities of Integrals, Universitex, Springer (2011).
青本和彦「直交多項式入門」数学書房 (2013).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」数学選書,岩波書店.
ポントリャーギン「最適制御理論における最大値原理」坂本實訳,ポントリャーギン数学入門双書6 (2009).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
鈴木道夫「群論,上」現代数学 18,岩波書店 (1977).
J.-P. セール「有限群の線型表現」岩堀長慶,横沼健雄訳,岩波書店 (1974).
Igor Frenkel, James Lepowsky, Arne Meurman, Vertex Operator Algebras and the Monster, Pure and Applied Mathematics, 134, Academic Press (1989).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).

7 May 2014

メ〜ッという間にもう5月メイ,ゴールデンウィークも終わって,もう完璧に生まれ変わったところである.

4月は,新学期の講義準備や,院生指導,論文執筆,レフリーレポート書き,いろいろな推薦書書き, いろいろな原稿書きをして過ごしていた.
数学的には,制御理論でいくつかの重要な発見をしたり, 複素解析幾何でのシュタイン分解から特異点論の新しい理論を生み出したり, 「三対性」の観点から,有限群の表現とか,頂点作用素代数やムーンシャイン加群とか無限次元リー環とかを勉強したりして 生まれ変わっていた.
5月の札幌は桜もきれいで良い季節なのだが,埃っぽくて白樺の花粉も舞って,私には,なかなかつらい時期でもある. こういうときは,数学の研究にさらに集中するに限る.

通勤中や休暇中は,モンゴメリ「赤毛のアン」村岡花子訳,新潮文庫, 中野孝次「すらすら読める方丈記」講談社文庫, マツコ・デラックス,池田清彦「マツ☆キヨ」新潮文庫,などを読んでいた. 「赤毛のアン」といえば,芦別にあった「カナディアン・ワールド」という赤毛のアンの テーマパークにかなり昔に遊びに行ったことを思い出す. 一度破綻したが,いまは入場無料の公園になっているらしい. それはともかく,いまNHKで放送している朝の連続ドラマ「花子とアン」との関係で読み始めてみた. ところで,村岡花子さんといえば,ディケンズの「クリスマス・キャロル」の新潮文庫の訳も村岡花子さんで, これは昔からの愛読書だが,「赤毛のアン」は今回初めて読んだ.おもしろい.
「すらすら読める方丈記」は,「清貧の思想」で有名な中野孝次さんの晩年の作品で, 確かにすらすら読める.同じ中野孝次さんの「すらすら読める徒然草」もすらすら読める. 古典は読みづらいがおもしろい. 同じような感じで,たとえば,源信の「往生要集」をわかりやすく訳して 「すらすら読める往生要集,さし絵付き」みたいな本を誰か書いてほしい.
池田清彦さんは尊敬する生物学者である.池田さんの「分類という思想」はおもしろかった. 「マツ☆キヨ」もおもしろい.

今月の座右の書:
G. Fischer, Complex Analytic Geometry, Lecture Notes in Mathematics, 538, Springer (1976).
複素解析幾何学のわかりやすい教科書である.
H. Matsumura, Commutative Algebra, 2nd ed., Benjamin (1980).
V.A.Vassiliev, Applied Picard-Lefschetz Theory, Amer. Math. Soc.. (2002).
F. Pham, Singularities of Integrals, Universitex, Springer (2011).
青本和彦「直交多項式入門」数学書房 (2013).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」数学選書,岩波書店.
ポントリャーギン「最適制御理論における最大値原理」坂本實訳,ポントリャーギン数学入門双書6 (2009).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
鈴木道夫「群論,上」現代数学 18,岩波書店 (1977).
J.-P. セール「有限群の線型表現」岩堀長慶,横沼健雄訳,岩波書店 (1974).
Igor Frenkel, James Lepowsky, Arne Meurman, Vertex Operator Algebras and the Monster, Pure and Applied Mathematics, 134, Academic Press (1989).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).

1 April 2014

エ〜ッと言う間にもう4月エイプリル,新学期である.

3月は,休暇で福島の実家に帰省し,いろいろあって生まれ変わり, その後,沼津での研究会に参加・講演し,研究会後にセミナーを していろいろ勉強してさらに生まれ変わり,札幌に帰ってきて,レフリーレポートを書いたり,会議とか,いろいろあって生まれ変わり,その直後に東京の学習院大での数学会に出席して議長の仕事をしたりして,ますます生まれ変わり,札幌に帰ってきて,もうだいたい「充電率10パーセント」ぐらい,といった状態だったが,3月末締め切りの共著論文の投稿をしたり,別のレフリー論文を読んだり,数学会関係の仕事もして,もう引きこもり状態でなんとか生まれ変わり,その後,また休暇をとって,100%に充電して,完璧に生まれ変わって札幌に帰ってきて,昨日の3月31日に,別の3月末締め切りの原稿を書き上げて,いま少しホッとしているところである.すべて世は事もなし,という心境である.

休暇中や出張の移動中は,結城浩「数学文章作法,基礎編」ちくま学芸文庫,筑摩書房 (2013),V.I.アーノルド「数理解析のパイオニアたち」蟹江幸博訳(1999,2013 再出版),などを読んでいた. 「数学文章作法,基礎編」は,原稿書きや論文書きをする上で改めて勉強になった. 「数理解析のパイオニアたち」は再読であるが,わが敬愛するアーノルド先生の数学観に改めて感銘を受けた. 蟹江先生の丁寧な訳や注釈も理解の助けになる. アーノルド先生の著作を読むと,元気になって数学をやる気が湧いてくるのは不思議だ.

今月の座右の書:
青本和彦「直交多項式入門」数学書房 (2013).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」数学選書,岩波書店.
ポントリャーギン「最適制御理論における最大値原理」坂本實訳,ポントリャーギン数学入門双書6 (2009).
鈴木道夫「群論,上」現代数学 18,岩波書店 (1977).
浅野啓三,永尾汎「群論」岩波全書261 (1965).
J.-P. セール「有限群の線型表現」岩堀長慶,横沼健雄訳,岩波書店 (1974).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).

4 March 2014

マ〜ッと言う間にもう3月マーチである.

2月は,福岡に行ってすっかり生まれ変わって,さらに, 共著論文執筆,その他の原稿執筆,数学会関係の仕事,レフリーやエディターの仕事などをして,完璧に生まれ変わっているところである. 相変わらずの生活である.
でも,3月末締め切りの論文や原稿が3つ程重なってしまって,それらに2月中に何とかメドをつけておこう! と少しだけがんばってしまったところである.

出張の移動中や通勤中は,ヴェルヌの「地底旅行」の他に,昔読もうと思って挫折していた,ダグラス・R・ホフスタッター「ゲーデル,エッシャー,バッハ」を再読していた.「ゲーデル,エッシャー,バッハ」は1985年の本だから,もう30年近く前の本である.今更ながらおもしろい. さらに,藤木明編「倉西数学への誘い」岩波書店(2013),も読み始めた.為になる. 結城 浩「数学文章作法 基礎編」ちくま学芸文庫,も読んでいる.為になる.

今月の座右の書:
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」数学選書,岩波書店(1974).
松島与三「リー環論」共立出版(昭和31年).
佐竹一郎「リー環の話」(新版)日本評論社(2002).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).

4 February 2014

ふぇ〜っという間に,もう2月ファブルアリーである.

1月は,高知に行って生まれ変わり,さらに,修論指導や,期末テストの採点,成績評価,共著論文執筆,その他の原稿執筆,数学会関係の仕事,レフリーやエディターの仕事などをして,完璧に生まれ変わっているところである.

出張の移動中や通勤中は,小林秀雄ほか「直感を磨くもの -- 小林秀雄対話集 --」新潮文庫 (2014) , ジュール・ベルヌ「地底旅行」高橋 優 訳,光文社古典新訳文庫 (2013)や,林晋,八杉満利子訳・解説「ゲーデル 不完全性定理」岩波文庫 (2006), などを読んでいた.
「直感を磨くもの」は,小林秀雄と三木清や湯川秀樹など12人との対談を集めた本である.おもしろい.中でも印象に残っているのは, p.27 の「永遠の観念というものがなければ,芸術もなければ道徳もないと思っているのだ.そういう考えは青年時代に懐いてたけれども,僕はいろいろなことで 自信がつかなかった.段々自信がついて来た.そういうものが一番本当だということが...」という(三木清との対談での)小林秀雄の言葉や p.86の「科学だって一種の芸術ですし,芸術家はまた一種の職人ですからね.自分の人生観なり,形而上学的観念から演繹する事が仕事ではない. 具体的な仕事から逆に常の教えられているのでしょう.その具体的な仕事には職人はいつだって忠実ならざるを得ないから,そういうことになる.」 という(湯川秀樹との対談での)の小林秀雄の言葉である.なるほど.
「地底旅行」は,以前読んだ同じベルヌの「八十日間世界一周」(27 August 2012 参照)の流れで読んでいる. 時代がかった SF もおもしろいものである.ディズニー・シーなども連想しながら読んでいる.
「ゲーデル 不完全性定理」は,書いている原稿のための勉強として読んでいる.非常におもしろい.ゲーデル先生の有名な原論文の訳であるが, 論文もさることながら,その解説部の(わが尊敬する)ヒルベルト先生の「ヒルベルト計画」に関する歴史的再評価の部分が非常におもしろく,ためになる. 数学を研究するということはどういうことか,ということを考えるよいきっかけになるだろう.

今月の座右の書は,先月と同じなので省略.


7 January 2014

あっ〜という間に,新年2014年になりました.どうぞ今年もよろしくお願いします.

先月(去年の12月)は,奈良女子大の岡シンポジウムに行って生まれ変わり,その後,年末の北大の「クリスマス・セミナー」(D4理論のセミナー)で完璧に生まれ変わった.
講義準備,院生指導,レフリーの仕事,共著論文の勉強,年末は年賀状作りなどをして,(重力理論の勉強のために3D映画 Gravity(邦題はゼロ・グラビティ)も見に行ったりした, 4D(?)ならもっと良かったが),年末年始はのんびりしながらも3月締め切りの原稿書きにだいたい専念していた.

元旦に北海道神宮へ初詣に行って来た.例年通り,梅酒を買って,おみくじを引いた.今年は「末吉」だった.
「心のおごりを,身のほこりを祓いましょう」とのことである.はい,反省して出直します.
「波のあと嵐のあともしずまりて日かげのどけき大海の原」ふむふむ.「心平かに授けられた自己の職務を熱心につくしなさい」とのことである.了解です.地道に努力します.
学問の項目は「時期はいま全力を尽せ」はい,今でしょ.恋愛の項目は「ためらわず告白せよ」はい,はい.
今年の目標は,(毎年書いているが,今年こそ)フランス語と中国語を勉強することである.理由は言わない.

通勤中は,やなせたかし「アンパンマンの遺書」岩波現代文庫(2013),を読み,マーカス・デュ・ソートイ「素数の音楽」冨永 星訳,新潮文庫 (2013),ジョージ・G・スピーロ「ケプラー予想」青木 薫訳,新潮文庫(2014),マーク・ロナン「シンメトリーとモンスター」宮本雅彦,宮本恭子訳,岩波書店(2008),A.ストゥーブハウグ「数学者ソーフス・リー,リー群とリー環の誕生」熊原啓作訳,丸善出版(2013),などを眺めていた.
「アンパンマンの遺書」は,昨年亡くなられた,やなせたかし先生が20年前に書かれた自伝である.おもしろいし,読んでいると,人生における教訓が得られて安心できる.「のんびり長生きした方がいい」という教訓である.(本ホームページ内の 数学特区 の「アンパンマンのマーチ」も参照のこと.)
「素数の音楽」は昨年後半から引き続き読んでいる本である.「ケプラー予想」は,とりあえず,今,ケプラーと名前のつく本を読みあさっているので 眺めている.ケプラー予想とは,古くからある空間充填に関する問題であり,その解決法を巡って,「数学の証明と計算機の関係」がテーマとなる.現代数学では避けて通れない重いテーマである. 以前読んだ,「天空のパイ」(4 Dec. 2006の項参照)も関連するテーマを扱っていた.難しい話だが,おもしろそうだ.
「シンメトリーとモンスター」は,Tits の初期の仕事を勉強した流れで, Tits の後期の仕事と関係する有限単純群の分類に興味が出て来たので読んでいる. 昔読んだ(読もうと思って挫折していた),鈴木通夫「群論」上,下, やポントリャーギン「連続群論」上,下,なども引っ張りだしてきて眺めている.「シンメトリーとモンスター」には,この本の主題とは直接は関係ないが, 数学者のリー(Lie) とキリング(Killing)とエンゲル(Engel)とカルタン(Cartan)とクライン(Klein)などの人間的な関係も書いてあって,その意味でもおもしろい. リーとキリングの関係,クラインの仲介,クラインの弟子でありリーとの共著者であるエンゲルとキリングの関係,キリングの仕事を修正して完成させたカルタン... ところで,名前の雰囲気だけから,たとえば,キリングが悪い人で,エンゲルが良い人,みたいに思っていたが(そうは思わないか), 特にそんなこともなくて(当たり前だ),2人とも人格的にも立派な人だったようだ.
「数学者ソーフス・リー,リー群とリー環の誕生」はリーの伝記である.M先生からの情報で入手した.偶然,上に書いた「シンメトリーとモンスター」の内容と 一部関係している.もちろん伝記の方が詳しいエピソードが書いてあるだろう.おもしろそうだ.

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
立花俊一「リーマン幾何学」朝倉書店.
立花俊一「リーマン幾何学演習」朝倉書店.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
Ivar Ekeland, Le Calcul, l'Impr¥'{e}vu, Les figures du temps de Kepler ¥`{a} Thom, Editions du Seuil, (1984).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
Bruno Cordani, The Kepler Problem, Group Theoretical Aspects, Regularization and Quantization, with Application to the Study of Perturbations, Progress in Mathematical Physics 29 (2003).

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3 December 2013

ディ〜という間に,もう12月,暦の上ではディッセンバー,師走(しわす)である.

ここで一句:
仕事して仕事をしては師走かな
もう一句:
数学もすこしだけする師走かな

11月は,東京での北大入試説明会に参加し生まれ変わり, 院生指導,講義準備,講演準備,論文書き,原稿書き,エディターの仕事,レフリーの仕事,数学会関係の仕事などをしながらかなり生まれ変わり,月末に,京大数理研での研究会に参加し講演して,だいぶ生まれ変わり,さらに,小樽の高校へ北大理学部の説明に行って,すっかり生まれ変わってきたところである.

数理研では,「D_n geometry and singularities」という講演を行った.D_n 型の等質空間からできる ファイブレーションの図式から幾何構造を構成し,そこに自然に現れる "tangent surface" の特異性の分類をプレゼンした.
講演スライドから一言引用してみよう:
Where there is a will, there is a way.
Where there is a notion of "tangent lines", there is a tangent surface.
なるほど.

通勤中や出張の移動中は,ドストエフスキー「白痴 1」望月 哲男 訳,河出文庫 (2010), マーカス・デュ・ソートイ「素数の音楽」冨永 星 訳,新潮文庫 (2013), 新渡戸稲造「修養」タチバナ教養文庫 (2003), などを読んでいた.
ドストエフスキーの「白痴 」は,先月に読んでいた,小林秀雄,岡潔「人間の建設」新潮文庫,で話題になっていた関係で読み始めた.インターネット検索で,北大の望月先生による新訳が河出文庫から出版されていると知り,それを読んでいる.読みやすい.主人公は,キリストがモデルだそうである.
「素数の音楽」は,リーマン予想にまつまる啓蒙書であるが,よく書かれていると思う.おもしろいし勉強になる.
「修養」は,以前読み始めて,途中で中断していたところから,再開したところである.やはり新渡戸先生は偉い.

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
立花俊一「リーマン幾何学」朝倉書店.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
Ivar Ekeland, Le Calcul, l'Impr¥'{e}vu, Les figures du temps de Kepler ¥`{a} Thom, Editions du Seuil, (1984).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).

1 November 2013

の〜っという間に,もう11月,暦の上ではノベンバーである.

10月は,札幌で, 科研費の書類書き,講義準備,院生指導,原稿書き,そして論文書きを細々と行いながら地道に生まれ変わっていた. さらに,名古屋,大阪に,北大の入試説明会で出張して,ちょっぴり生まれ変わってきた.

最近は, 通勤中や出張移動中は,村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」第1部,第2部,第3部,新潮文庫,を読んでいた. それから,小林秀雄,岡潔「人間の建設」新潮文庫,さらに,並行して,ジョン・スチュアート・ミル「大学教育について」竹内一誠訳,岩波文庫, を読み始めたところだ.
「ねじまき鳥クロニクル」は,大学院生のK君から教わった.村上春樹の長編はだいたい読んでいたつもりだったが, この作品はなぜか読んでいなかった.たぶん,「ダンス・ダンス・ダンス」を読んでから,一旦,村上春樹の新作を読まなくなった時期があったからだろう.その後の作品の「海辺のカフカ」「1Q84」は読んでいるのだが.「ねじまき鳥クロニクル」は,もちろんおもしろい小説だが,ある意味,小説として破綻している,あるいは伏線が伏線のまま終了しているような気もする. ところで,「ねじまき鳥クロニクル」の中で印象に残っているのは,(村上先生の本意とは,まったくはずれると思うが)第2部の pp.370--371 あたりに書いてある,主人公の叔父の言葉が印象に残った:「何か大事なことを決めようと思うときはね,まず最初はどうでもよいようなところから始めた方がいい.誰が見てもわかる,誰が考えてもわかる本当に馬鹿みたいなことから始めるんだ.そして馬鹿みたいなところにたっぷりと時間をかけるんだ.」 これは,数学の研究にもあてはまるコツのようだ.
「人間の建設」は,数学者のKさんから薦められて読み始めている.岡潔先生が小林秀雄先生を相手に大活躍している,でも,小林秀雄先生に"いいように持って行かれている",おもしろい対談である.この機会に,途中で挫折し続けている「本居宣長」を,また読み始めようかな,と考えている今日この頃である.
ジョン・スチュアート・ミルについては,少し前に,功利主義の関係から「自由論」を読み始めて途中挫折していたところだが, 同じ著者の「大学教育について」は,読みやすい講演録であり,大学教育の意義について,現代でも十分通用することが述べられている. ミルは講演の中で,大学における「一般教養教育」の重要性を強調している. 現代の大学教育が,専門教育偏重であって,教養教育を通した人格形成の役割を半ば放棄していることは残念である. 教養のない人間に専門教育だけを施しても無意味であり有害だろう.ここでいう教養とは,単なる趣味的な知識のことではなく, 物事を理解し判断し実行し説明する基礎的な能力のことである. 数学を教える場合でも,単に数学の知識・技術だけを教えるのではなく,それらを通して, 物事を理解し判断し実行し説明する基礎的な能力を高めるように数学を教えるようにしなければいけないわけだ.

今月の座右の書は,先月から大幅な入れ替えがあった:
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
共形幾何の勉強である.
佐々木重夫「共形接續幾何學」河出書房 (1948).
同じく共形幾何の勉強である.
立花俊一「リーマン幾何学」朝倉書店.
疑似接続(アフィン接続,あるいは,線形接続)の勉強である.
S. Benenti, Hamiltonian Structures and Generating Families, Springer (2011).
母関数の勉強である.
Igor V. Dolgachev, Classical Algebraic Geometry, Cambridge Univ. Press, (2012).
polarization を調べている.
H. Weyl, The Classical Groups, Princeton Univ. Press (1939).
同じく polarization を調べている.
Serge Alinhac, Hyperbolic Partial Differential Equations, Universitext, Springer (2009)
双曲型偏微分方程式の勉強である.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
Schubert variety の勉強である.
R. Bryant, P. Griffiths, D. Grossman, Exterior Differential Systems and Euler-Lagrange Partial Differential Equations, The University of Chicago Press, (2003).
モンジュ・アンペール方程式の勉強である.
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
ケプラーの勉強である.
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
ケプラーの勉強である.
J.-L. Brylinski, Loop spaces, characterisitc classes and geometric quantization, Progress in Math. 107, Birh¥"auser,
量子化の勉強である.
J.F. Nye, Natural Focusing and Fine Structure of Light, Caustics and Wave Dislocations, IOP Publishing Ltd (1999).
コースティックの勉強である.
まあ,それなりによく勉強している.その割に研究が進まないのが難点だが.まあいいか.
1 October 2013

おっ〜という間に,もう10月オクトバーである.

9月は,エジンバラの後,愛媛大の学会に参加・講演して,完璧に生まれ変わってきた. 現在,科研費の書類書き,新学期の講義準備,院生指導,原稿書き,そして論文書きを細々と行っている.

最近,特異点の母関数とは何か,ということについて考えている.ルジャンドル特異点の母関数は, それを「微分」するとルジャンドル多様体という「積分」多様体を生み出す. すなわち,積分が微分で求まるのだ.母関数とはそういう驚くべき存在なのである.そこで一句:
「積分を微分ですます母関数」

通勤中や出張移動中は,夏目漱石「坊ちゃん」新潮文庫,を読み,司馬遼太郎「坂の上の雲」新潮文庫,の一部を再読し, スティーヴン・ジェイ・グールド「ダーウィン以来」早川文庫 NF,を持参して読んでいた.

今月の座右の書:
Ian R. Porteous, Clifford Algebras and the Classical Groups, Cambridge Univ. Press (1995).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
B. Keshin, R. Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer 2009.
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが相変わらず座右に積んである.
先頭 に戻る.
10 September 2013

せっぷ〜と言う間に,もう暦の上ではセプテンバー,9月も10日である.

8月は,8月前半に,全学教育の授業の期末テスト採点,その成績評価,大学院指導,海外での3回の講演のスライドの準備,などをした後, 8月24日から9月8日まで2週間,ワルシャワのバナッハ研究所とスコットランドのエジンバラ大学の研究会に出席・講演して,完璧に生まれ変わって帰って来た.研究と国際交流で非常に成果があった.
今は,締め切り近づいている原稿の執筆をしているが遅々として進まない.まあいいか.

最近,特異点の母関数とは何か,ということについて考えている.特異点を生み出す関数(関数の族)である. 扱っている幾何構造から必ず自然に特異点の母関数が導かれるような気がする...

通勤中や出張の移動中は, 児玉 聡「功利主義入門 --- はじめての倫理学」ちくま新書 967,と スティーヴン・ジェイ・グールド「ダーウィン以来」早川文庫 NF,を持参して読んでいた.
「功利主義入門」は,本屋の本棚でたまたま見つけた本である.功利主義について知らなかったので,本の題名を見て, 何で "功利主義"に入門しなくちゃいけないんだ, と思いながらページをめくったら,意外に興味深いことがわかりやすく書いてあった. 功利主義とは,一言で言えば,「最大多数の最大幸福」ということだそうだが, 公共政策や医療問題など,現代の現実の問題と深くかかわるようだ. 倫理というと退屈な説教話のように思っていたが,なかなか刺激的な内容だった.
「ダーウィン以来」は引き続き再読している.おもしろい.ところで,進化論で有名なダーウィンは, エジンバラ大学の医学生として過ごしたことがある. 「ダーウィン以来」の p.120 に, 巨大な角を持つ「アイルランド・ヘラジカ」の最初に発見された全身骨格がエジンバラ大学の博物館に立っている,と書いてあるが,エジンバラ大学での研究会の会場の隣がたまたまその博物館だったので,実物を見学することができた.
ヘラジカと私

今月の座右の書:
Ian R. Porteous, Clifford Algebras and the Classical Groups, Cambridge Univ. Press (1995).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
B. Keshin, R. Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer 2009.
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが相変わらず座右に積んである.
1 August 2013

お〜っと言う間に,もう8月オーガストである.

7月は,札幌でのパシフィック・リム研究会に参加した. ちなみに「パシフィック・リム」という怪獣映画があるようだが,その研究会ではなく,数学の有名な国際会議である. その後,講義の準備,大学院指導,共著論文書き,原稿書き,その他大事な仕事などをして,札幌で地道に生まれ変わっていた.

最近,G_2 の話や (2,3,5) 分布の話の流れから,double fibration の geometric singularity theory に興味が湧いてきた. differential system の分類理論を新しい観点から見ることができる気がする.

通勤中は,中島敦「李陵・山月記・弟子・名人伝」角川文庫, スティーヴン・ジェイ・グールド「ダーウィン以来」早川文庫 NF,それから, 先月に引き続き, マンジット・クマール「量子革命,アインシュタインとボーア,偉大なる頭脳の激突」青木薫訳, 新潮社,2013, などを読んでいた.

中島敦「李陵・山月記・弟子・名人伝」角川文庫,は30年も前に買って読んだものの再読である.一度読んだと思うのだが,全然記憶に残っていなかった. 関連して(「李陵」に登場する司馬遷の関連で)「史記列伝」岩波文庫,なども眺めていた.
「ダーウィン以来」も何度目かの再読である. ダーウィンの言う「自然淘汰」の意味がようやくわかった気がする. 「進化」は evolution ではなく,「descent with modification」と言うべき,だということもわかった. ダーウィンが意味する「進化」とは「方向性のないランダムな変異性から局所的な環境に関して適した者が結果として生き残っていく」ということらしい.ここで,「方向性」がないことと,「局所的な環境に関して」というところがキーポイントである.「大域的な環境」(そんなものがあるとしての話だが)が理論に組み込まれていないことが重要である. そもそも,何であれ,良い理論は局所的なものである.「大域的な理論」は使いづらくて仕方がない.(大域的でよいのは「理論」ではなく「結果」である.) 理論は局所的なものに限る...それはともかく, このダーウィンが使った用語「descent with modification」を訳者は「変化を伴う由来」と訳しているが, 「由来」というと,過去の経緯だけを指すようにも思えるので,「変化を伴う推移」とでも表現すると良いような気がする.
「量子革命」もおもしろい.

今月の座右の書:
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
B. Keshin, R. Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer 2009.
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが相変わらず座右に積んである.
1 July 2013

じゅら〜いと言う間に,もう7月である.最高に爽快なシーズンだ.

6月は,講義(線形代数・多様体)の準備,中間テスト(線形代数)の作成・採点,大学院の指導(singular controls, d-manifolds, port-Hamiltonian systems, gravitation lensing, homotopy theory, (discrete) differential geometry and integrable systems)の他,共著論文書き,原稿書き, ITPの事後報告書書きや,その他大事な仕事などをして,地道に生まれ変わっていた.

例年通り,余市に行ってきた.毎年訪れている「かきざき商店」で旬のウニ丼を堪能して,かなり生まれ変わった. (今回は赤ウニ(バフンウニ)がなくて白ウニだった.2012 の 2 July のメモを参照.)

通勤中は,マンジット・クマール「量子革命,アインシュタインとボーア,偉大なる頭脳の激突」青木薫訳, 新潮社,2013,それに関連して,高林武彦「量子論の発展史」ちくま学芸文庫, 2002, それから, 五木寛之「親鸞,激動篇」上,下,講談社文庫,などを読んでいる.
「量子革命」は物理的な内容ではなく,量子力学が生まれる時期の, アインシュタインとボーアを中心に,彼らと関係する人々のエピソードがおもしろく書かれている. 物理的な内容については「量子論の発展史」と比べながら,昔読んだ,朝永振一郎「量子力学,I」も思い出しながら読んでいる.
「親鸞,激動篇」は,以前「親鸞」を読んだ続きで読んでいるが, (新聞の連載小説だから?)相変わらず読みやすく書かれている.

今月の座右の書:
J. Jost, Riemannian Geometry and Geometric Analysis, Sixth Edition, Springer 2011.
J.W. Milnor, J.D. Stasheff, Characteristic Classes, Princeton Univ. Press, 1974.
スチーンロッド「ファイバー束のトポロジー」大口邦雄訳,数学叢書26,吉岡書店,1976.
B. Keshin, R. Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer 2009.
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
R.W. Sharpe, Differential Geometry, Cartan's Generalization of Klein's Erlangen Program, Springer, 1997.
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが相変わらず座右に積んである.
4 June 2013

じゅ〜んという間に,もう6月である.

5月は,全学教育の授業準備,院生指導,論文の執筆,エディターの仕事,原稿書き,などをして,月末には, 弘前大学に出張に行って,すっかり生まれ変わってきたところだ.

通勤中は,太宰治「人間失格」「斜陽」,共に新潮文庫,を読み, 新渡戸稲造「修養」タチバナ教養文庫,を以前から継続して読み, さらに,出張移動中は,フランク・ウィルチェック「物質はすべて光」吉田三知世訳,ハヤカワ文庫 NF 384 (2012), を再読していた.
太宰治の「人間失格」は,昔読んだ記憶があったが,内容もすっかり忘れていたので,再読した.おもしろい. 「斜陽」も引き続き読んだ.ともかく,著者の才能とサービス精神(?)には感服する.ところで, 出張先の弘前大学のキャンパスの近くに,太宰治が学生時代に住んだ家があったので,研究会の昼休みに見学した. 太宰の名言に「生まれてすみません」というのがあるそうだが,適当に現在の私(石川)に置き換えると, 「数学やっててすみません」ということになる.まあ,あまり意味はないけど.
「修養」も「物質はすべて光」もおもしろい.為になる.
ところで,この「ブログ」に書き忘れていたが,今年の4月には,フランク・ボーム「オズの魔法使い」幾島幸子訳,岩波少年文庫 112, も読んでいた.以前から読みたいと思っていたが,やっと読めたというところである.
「オズの魔法使い」に登場する「かかし」と「ブリキ人間」と「ライオン」(水戸黄門でいうと,助さん,角さん,八兵衛に該当)が, 皆,それぞれのコンプレックス(脳みそがほしい,とか,心がほしい,とか,勇気がほしい,とか)を持っているが, 実は,そうでもない,劣っているわけではない,というか,コンプレックスを持っているから逆に優れている,というような話である. おもしろい.岩波少年文庫は,字も大きいし,読みやすい.挿絵もよい. 他にも,名前は知っているが読んだことがない不朽の名作がたくさんある.

今月の座右の書:
J. Jost, Riemannian Geometry and Geometric Analysis, Sixth Edition, Springer 2011.
B. Keshin, R. Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer 2009.
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
横田一郎「例外型単純リー群」現代数学社 (1992).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが座右に積んである.
7 May 2013

メ〜ッと言う間に,もう5月メイ,黄金週間も終わり, また気持ちを入れ替えて研究・教育に励もうかな,と思っている今日この頃である.

4月は,新学期の授業準備,院生の指導を行い,さらに論文の執筆,エディターとレフェリーの仕事, いろいろな原稿書き,その他の大事な仕事などをして,充実した生活を送り, さらにゴールデンウィークの谷間には休暇も取ることができて,野球を観たり, 遊園地で遊んだり,数学にどっぷり浸かったり,と,英気を養うことができて,すっかり生まれ変わった.

Cartan 型の微分式系((2, 3, 5) 型の分布)の abnormal paths (singular curve) について, 幾何学的制御理論の側面から引き続き調べている. Agrachev が導入した "Jacobi curve" の構成との関係に,最近,気づいた. Jacobi curve の理論は,Lagrange Grassmann 内の曲線の不変量から,微分式系の不変量を作る理論である. 詳細は後日.

通勤中や休暇中は,村上春樹「色彩を持たない多崎つくると,彼の巡礼の年」文藝春秋社, 新渡戸稲造「修養」タチバナ教養文庫,バートランド・ラッセル「哲学入門」高村夏樹訳,ちくま学芸文庫, 大泉洋「大泉エッセイ」メディアファクトリー,などを読んでいた.
話題の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は,おもしろかった. 短編のつもりで書き始めて,それが結果的に長編になった小説だそうだが, 昔の,たとえば「1973年のピンボール」などの村上作品なども連想しながら,一気に読んでしまった.
「修養」は青年に向けた口述筆記による人生マニュアルである.同じ新渡戸先生の「武士道」より少し読みやすい.(「武士道」は,もともと英文だし). ところで,その"青年"の定義であるが,「青年は大なる希望抱負を有する者を称するので,年齢の多少を問わぬ.ゆえに希望なき者は,いかに若年であっても,片足を棺桶に踏み込んでおると同じようなもので,希望さえあれば,三十になっても六十になっても,すなわち青年と言うべきである」(新渡戸稲造「修養」, p.40).なるほどね. Boys be ambitious, の Boys だ.現在の言葉で言うと,Boys and Girls だ.クラーク先生も新渡戸先生も北大にゆかりのある人だ.キャンパス内に両者の銅像がある.
「哲学入門」は,大学1年の時に,或る先輩から薦められて読んで以来の再読である. 昔は,現代教養文庫の中村秀吉訳を読んだ(それもいまでも本棚にある)のだが,ちくま学芸文庫の新しい訳も良さそうだったので,改めて読み始めたところである.改めて勉強になる.
「大泉エッセイ」もおもしろい(文も絵も).

今月の座右の書:
ミルナー「モース理論---多様体上の解析学とトポロジーとの関連---」志賀浩二訳,吉岡書店(1968).
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
横田一郎「群と表現」裳華房 (1973).
横田一郎「例外型単純リー群」現代数学社 (1992).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが座右に積んである.
3 April 2013

エ〜ッと言う間に,もう4月エイプリル,新学期である.今学期もよろしくお願いします.

3月後半は,比較的のんびり過ごしたが,その中で,日本数学会年会に行って生まれ変わってきた.それから,大学院指導,共同研究,レフェリーレポート書き, 部門の委員の仕事,新年度の講義準備,原稿書き,などをしてぼちぼち暮らしていた.

現在,Cartan 型の微分式系の "abnormal paths" について調べている. ところで,幾何学的制御理論には,"singular extremal" という概念がある.これは,終点写像と呼ばれる, (制御全体の作る)無限次元多様体から 有限次元多様体(状態空間)への写像の特異点と見なされる.その中で,さらに "totally singular extremal" という概念がある(座右の書のA.A. Agrachev, Y.L. Sachkov参照). この totally singular extremal が abnormal path の研究において重要な役割を果たすことに最近気づいた.

通勤中は,和田純夫「プリンキピアを読む,ニュートンはいかにして「万有引力」を証明したのか?」講談社ブルーバックス B-1638,を眺め,さらに, 再読だが,R.P.ファインマン「物理法則はいかにして発見されたか」江沢洋訳,岩波現代文庫, スティーヴン・ジェイ・グールド「フルハウス--- 生命の全容 --- 四割打者の絶滅と進化の逆説 ---」渡辺政隆訳,ハヤカワ文庫NF,を読んでいる.
「プリンキピアを読む」は,「プリンキピア」の分かりやすい解説である. 中公バックス世界の名著 31「ニュートン」にある「自然哲学の数学的諸原理」(プリンキピア) を昔から眺めていて難解な部分が,少しは分かるようになるかもしれない.
「物理法則はいかにして発見されたか」もおもしろい.ファインマンの本は読むと元気になってくる. ところで,ファインマン の「QED」も愛読書である(5 May 2005 のメモ参照).
グールドもおもしろい. 「フルハウス」に関する感想は以前にメモした(なんでもメモ帳第2巻の 16 June 2004 のメモ参照). もう10年前のことだ.では,今回はどんな感想を持てるかな?

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
Sigurdur Helgason, Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces, Academic Press (1978).
横田一郎「群と表現」裳華房 (1973).
横田一郎「例外型単純リー群」現代数学社 (1992).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
Peter Abramenko, Kenneth S. Brown, Buildings: Theory and Applications (Graduate Texts in Mathematics), Springer (2008)
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
Boris Khesin, Robert Wendt, The Geometry of Infinite-Dimensional Groups, Springer-Verlag (2009).
H. Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations Springer (2010).
などが座右に積んである.
先頭 に戻る.
13 March 2013

2月から3月前半にかけて,いろいろ出張があったり,お客さんが来訪したり, 院生指導,授業の成績評価,論文執筆・修正,エディターとレフェリーの仕事, 原稿書き,やその他の大事な仕事をして,すっかり生まれ変わって充実した日々だった.

双対性に関係する特異点論を「A型特異点論」とよぶことにすると, 最近,その他に,たとえば「D型特異点論」が存在することに気がついた. 従来のA型特異点論の中には,いわゆる Lagrange-Legendre 特異点論があり, その理論の枠組みの中に(境界特異点を含めて)「ABCDEFG型特異点」が存在するわけだが, D型特異点論には,どのような特異点が現れるか,非常に興味深い.

通勤中や出張の移動中は, フランク・ウィルチェック「物質はすべて光」吉田三知世訳,ハヤカワ文庫 NF 384 (2012), を読み,さらに,高林武彦「量子論の発展史」ちくま学芸文庫, 橋爪大三郎,大澤真幸,宮台真司「おどろきの中国」講談社現代新書 2182, などを読んでいる.
「物質はすべて光」の原題は,"The lightness of being", 素直に訳すと「存在の軽さ」となるが,軽いの light と光の light をかけている, とのことである.QCD (量子色力学)について,わかりやすくウィットに富んだ解説をしていて楽しく読める.
「量子論の発展史」は有名な古典的名著である.活字が小さくて読みづらいが,勉強になる.
「おどろきの中国」もおもしろい.

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
J.F. Adams, Lectures on Exceptional Lie Groups, The University of Chicago Press (1996).
横田一郎「群と表現」裳華房 (1973).
J.E. Humphreys, Linear Algebraic Group, Graduate Texts in Math., 9, Springer (1975).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
Peter Abramenko, Kenneth S. Brown, Buildings: Theory and Applications (Graduate Texts in Mathematics), Springer (2008)
Victor G. Kac, Infinite Dimensional Lie Algebras, Cambridge Univ. Press (1990).
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが座右に積んである.
1 March 2013

ま〜ちっという間に,もう3月になったが,このメモ帳を更新する時間がとれなかったので, 後日更新予定.乞うご期待.


4 February 2013

ふぇ〜という間に,もう2月フェブルアリである.
1月は,東京に行って生まれ変わり, さらに秋田に行ってだいぶ生まれ変わったきた. 卒業研究指導,院生指導,講義の成績判定,来年度の講義準備や,投稿論文の修正,新しい論文などの原稿書き, レフリーレポート書き,などなどをやって過ごしていた. とはいえ,まだ正月気分が抜けきらない感もあるが,ぼちぼち本気を出そうかなと思う今日この頃である.
通勤中は,先月から引き続き,パース「連続性の哲学」岩波文庫 (2001),さらに, フランク・ウィルチェック「物質はすべて光」吉田三知世訳,ハヤカワ文庫 NF 384 (2012), 夏目漱石「門」新潮文庫, 坂木司「和菓子のアン」光文社文庫 (2012), スティーヴ・ハミルトン「解錠師」越前敏弥訳,ハヤカワ・ミステリー文庫 (2012), などを読んでいた(いる).

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
V.I. Arnold, Singularity Theory, London Math. Soc. Lecture Note Series 53, Cambridge Univ. Press (1981).
J.F. Adams, Lectures on Exceptional Lie Groups, The University of Chicago Press (1996).
松澤淳一「特異点とルート系」朝倉書店 (2002).
横田一郎「群と表現」裳華房 (1973).
J.E. Humphreys, Linear Algebraic Group, Graduate Texts in Math., 9, Springer (1975).
J.E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Graduate Texts in Math., 21, Springer (1972).
以上,現在進行の論文書きのための資料である.
その他,
朝永振一郎「スピンはめぐる」自然選書,中央公論社 (1974),
脇本実「無限次元リー環」岩波講座,現代数学の展開3,岩波書店 (1999).
などが座右に積んである.
4 January 2013

あ〜っという間に,新年である.今年もよろしくお願いします.
去年の12月は,東京の日本大学・文理学部の研究会に出席・講演し,生まれ変わってきた. 伝統芸能などからもいろいろ学んできた. その後,沼津高専での「クリスマス・セミナー」で研究連絡し,完璧に生まれ変わって帰ってきた. 札幌に帰ってきて,12月23日(天皇誕生日)には札幌キタラの「クリスマス・コンサート」の音楽を聞いて楽しみ, 数学のアイディア(A_3 特異点と「D_3 特異点」に関して)を得たりしていた.
講義準備,小テスト・レポートの採点・添削,ITP事業の仕事,HMJ のエディターの仕事,レフリーの仕事,投稿論文の修正や,原稿執筆,その他の大事な仕事,年賀状作り,などをぼちぼちやりながら,楽しく年を越した.

今年も元旦は北海道神宮へ初詣に行ってきた. 例年通り,おみくじを引いたら,今年は大吉だった.
「謙虚な気持ちで自然と向き合えば,生かされていることへの感謝の念が自ずと芽生え,そして神様は豊かな稔りを約束してくださる」とのことである.そうですか.謙虚にしているのでよろしくお願いします. 学問については「安心して勉学せよ」と書いてあった.でも, 「若い人が安心して好きな研究できるように,年寄りは安心しないで 好きな研究をせよ」と常々意識している流れで,「安心して勉学せよ」ということは「安心しないで好きな研究をせよ」という意味だと解釈しようかな,と思って家に帰ってきたが,正月のテレビのCMで,奥田民生さんが,「大人は何をやってもよい,ということにしないと子供が大人にあこがれない」というようなことを言っていたので,なるほど,と気持ちを改めて,「勝手に好きな研究をせよ」という意味だ解釈することにしました. (まあ,いままでも勝手に好きな研究をしてきたけどね.)恋愛については「あわてず心をつかめ」とあった. はい,あわてませんよ.
正月はモチを食べてモチベーションを高めて,のんびりとテレビを観ながら論文を書いて過ごした. (これも日常と変わらないが.) 今年はヘビ年なので,なるべく長いモノに巻かれずに,自分から積極的にいろいろ巻いていこうか,と考えているところだ.
それから,今年の目標は,フランス語と中国語を勉強することである.理由は書かないが,今年こそがんばろう.

通勤中や年末・年始の休暇中は,11月に引き続き, イーヴァル・エクランド「偶然とは何か」南條郁子訳,創元社,を読んだ他, 新美南吉「新美南吉童話集」岩波文庫 31-150-1, パース「連続性の哲学」伊藤邦武訳,岩波文庫 33-688-1,久住昌之「孤独のグルメ」谷口ジロー 画,扶桑社文庫 0270, 平野啓一郎「空白を満たしなさい」講談社(2012),などを読み始めたところだ.
「偶然とは何か」の第5章「リスク」の中で,「エルスバーグの心理実験」が紹介されている (p.219): 100個ずつ玉が入った壷 A, B がある.壷 A の中には,赤玉と黒玉が50個ずつ入っていることが分かっている. 壷 B の中にも赤玉と黒玉が合わせて 100個入っているが,その比率は不明であるとする. ひとつの壷からとり出す玉の色を予想し,予想が当たれば 100ドルもらえるが,はずれれば何ももらえないという賭けを行う. 壷A で実験すると,ほとんどの被験者は玉の色に頓着せずに賭けた.心理的な確率は,赤玉も黒玉も 0.5(50パーセント)だった. 壷B で実験しても,(被験者は壷の中身の比率の情報を持っていないが) ほとんどの被験者は玉の色に頓着せずに賭けた.やはり心理的な確率は,赤玉も黒玉も 0.5 だった. 壷A の実験は「確率論的な状況」であり,壷B の実験は「無知の状況」であるが,結果は同じ様になる. ところが,今度は,赤玉が出たら 100ドルもらえるが,黒玉が出たら何ももらえないという条件で,玉をとり出す壷を選ばせることにすると, (主観的な確率に差はなかったはずなのに)ほとんど被験者は,壷Bではなく比率のわかっている壷Aを選ぶ. 情報が足りないこと,無知であること,が主観確率だけでは計りきれないリスク要因になるようだ. (以上,イーヴァル・エクランド「偶然とは何か」の内容紹介). なるほどね.
「新美南吉童話集」は,TVドラマ「ゴーイング・マイホーム」を観ていて,その中のエピソード(小学校の授業)で 童話の「ごん狐」「手袋を買いに」が触れられていた関係で読んでみた.なかなかよい. 同じ童話集に収録されている「牛をつないだ椿の木」は,以前,私(石川)の習った中学校(?)の国語の教科書にも載っていたと記憶している. 数十年ぶりに改めて読んでみると,人が「仕事」をする意味など,たぶん昔は感じなかったことが感じられた. (逆に,昔は感じられたことが今は感じられなくなったこともあるだろうけれど). 「...ついに海蔵さんは,帰って来ませんでした.勇ましく日露戦争の花と散ったのです.しかし,海蔵さんのしのこした仕事は, いまでも生きています...」という部分では,日露戦争からの連想で「坂の上の雲」(4 January 2012 のメモ参照)を思い出しながら読んだ. ところで「ゴーイング・マイホーム」は良い作品だった.それぞれの出演者がきわめて自然なやりとりをしていてうまかった. 分野に依らずレベルの高い優れた作品に触れると嬉しくなるものだが, このドラマも観ていて嬉しくなった.
「連続性の哲学」は,その題目にひかれて読んでみているが,なかなか良いことが書いてある. たとえば,p.27 には「有用性の観点はつねに狭い観点である」 と書いてある.なるほど.「哲学および科学一般における輝かしい行進のためには,高級低級を問わず実践上の有用性をすべて関心の外に置くことがいかに不可欠であるばかりか,この上なく望ましい...」その通り. 「すべての科学はゆっくりと,しかし確実に,数学という中心へと収束している」(p.43).なるほどね.
「孤独のグルメ」「空白を満たしなさい」については,また後日,感想を(書けたら)書く.

今月の座右の書:
V.I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, Second Edition, Springer (1978, 1989).
愛読書である.第一部がニュートン力学,第二部がラグランジュ力学,第三部がハミルトン力学,という構成になっている. 昔,この本の First Edition の内容に触発されて「Newton が Lagrange から Hamilton」という名句が生まれた. Second Edition では,ラグランジュ・ルジャンドル特異点論やシンプレクティック位相幾何の内容・文献が追加されている. それらを取り上げて載せることが妥当なことかどうかは,もうしばらく時期を待つ(歴史に聞く)必要があるかもしれないが.
Ivar Ekeland, Mathematics and the Unexpected, The University of Chicago Press (1988).
エクランドの「偶然とは何か」以前の著作である.ケプラーの法則の話から始めて,3体問題,カタストロフ理論,カオス理論などが紹介されている.この本を読んではじめて,ケプラーの偉大さを知った.ガリレオやニュートンも偉いがケプラーも偉い.
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
この本もケプラーの偉大さを語っている.
June Barrow-Green, Poincar¥'{e} and the Three Body Problem, Amer. Math. Soc., London Math. Soc., (1997).
ポアンカレも偉い.
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).
V.I. Arnold, Singularity Theory, London Math. Soc. Lecture Note Series 53, Cambridge Univ. Press (1981).
アーノルドにああなるほど.
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
ブルバキ(たぶん Chevalley)も偉い.
James E. Humphreys, Reflection Groups and Coxeter Groups, Cambridge studies in advanced mathematics 29, Cambridge Univ. Press. (1990).
Udo Hertrich-Jeromin, Introduction to M¥"{o}bius Differential Geometry, London Mathematical Society Lecture Note Series 300, Cambridge Univ. Press. (2003).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
H. Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations Springer (2010).

4 December 2012

でぃ〜という間に,もう12月ディセンバー,今年もあと1ヶ月となった. 月日の経つのははなはだ速いものである.

11月は,東京(秋葉原で開催された北大入試説明会)に行ってちょっと生まれ変わり,また東京(数学会理事懇談会)に行って少し生まれ変わり,それから京都(京大数理研研究集会)に行ってだいぶ生まれ変わり, 小樽(北海道小樽潮陵高校の学部説明会)に行って,すっかり生まれ変わってきた.
現在は,講義(線形代数,ろんりと集合,de Rham理論)の準備,中間試験(線形代数)の採点,12月の講演準備(日大,文理学部), 投稿論文の修正,その他の大事な仕事などをして,それなりに充実した生活を送っている.

通勤中は,イーヴァル・エクランド「数学は最善世界の夢を見るか?」,南條郁子訳,みすず書房,続いて, 同じ著者・訳者の「偶然とは何か」創元社,を読んでいる.その他,ジョン・アーヴィング「ホテル・ニューハンプシャー,上」中野圭二訳,新潮文庫,なども読み始めている.
「数学は最善世界の夢を見るか?」は,ガリレオの振り子の話から始まり,モーペルテュイの最小作用の原理,オイラー,ラグランジュ,ヤコビ,ハミルトンによる解析力学,ポアンカレとカオス理論,ビリヤード,グロモフによる「古典力学における不確定性原理」などが紹介され,さらに,生物学,経済学,ゲーム理論などに話が及ぶ,とても刺激的な随筆である.著者のエクランドは,凸解析,シンプレクティック幾何などで著名な数学者であるが,話の運び方がうまい.訳も非常によい.
「偶然とは何か」もおもしろい.「偶然」「運命」「予想」「カオス」「リスク」「統計」について,北欧(ノルウェーなど)の神話になぞらえて,哲学的に 語り,質の高い,現代数学への入門書となっている.読んで行くと, 「決定論的世界観」と「確率論的世界観」のせめぎ合いの中でわれわれが生きている(数学している)ことが実感できる.

今月の座右の書:
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
James E. Humphreys, Reflection Groups and Coxeter Groups, Cambridge studies in advanced mathematics 29, Cambridge Univ. Press. (1990).
A. Borel, Linear Algebraic Groups, Second Enlarged Edition, Springer (1991).
以上はリー環の勉強のためである.
Victor W. Guillemin, Shlomo Sternberg, Variations on a Theme by Kepler (Colloquium Publications), Amer Mathematical Society (1990).
Udo Hertrich-Jeromin, Introduction to M¥"{o}bius Differential Geometry, London Mathematical Society Lecture Note Series 300, Cambridge Univ. Press. (2003).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
T.A. Ivey, J.M. Landsberg, Cartan for Biginners: Differential Geometry via Moving Frames and Exterior Differential Systems, Amer. Math. Soc. (2003).
以上は共形幾何の勉強のためである.
H. Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations Springer (2010).
はソボレフ空間の勉強で眺めている.

2 November 2012

のべ〜っとしている間に,もう11月ノーベンバーである.
10月は,東京・神戸・名古屋・大阪にいろいろな用事で行って,ちょっぴり生まれ変わってきた.その勢いで, 12月の日大での研究会で話す内容を進展させている.共著論文はようやく完成し,投稿した.
その他,講義の準備(線形代数,「ろんりと集合」, de Rham 理論)や院生指導,ITPの仕事,HMJの仕事,日本数学会の仕事などをしている.

ところで,日大での講演準備をしていたら,次のことを発見した:
standard な symplectic affine space R^4 内の曲面 S について,その tangent bundle TS が TR^4 内の(T^*R^4 の canonical な symplectic structure から R^4 の symplectic structure によって誘導される TR^4 の symplectic structure に関して)Lagrange submanifold になるための必要十分条件は, 曲面 S が Lagrange 曲面であることである.(一般次元でも成立).

通勤時間には,チェーホフ「かもめ」集英社文庫, J・クレイグ・ベンダー「ヒトゲノムを解読した男,クレイグ・ベンダー自伝」化学同人, や,その他に伊坂幸太郎の小説「重力ピエロ」「ゴールデンスランバー」などを読んでいた. 「かもめ」は,演劇用の脚本であるが,おもしろさはあまり理解できない. 「ヒトゲノムを解読した男」は,以前読み始めて(1 May 2012),途中で止まっていたところからの再読である. 「科学の天国,官僚組織の地獄」「ビッグバイオロジー」といった章を読んでいる.共感できる点はそれほどないが,大変興味深い内容ではある. 伊坂幸太郎の小説については感想は書かない.

今月の座右の書:
Igor V. Dolgachev, Classical Algebraic Geometry, Cambridge Univ. Press, (2012).
J.M. Landsberg, Tensors: Geometry and Applications, Graduate Studies in Math., 128, Amer. Math. Soc. (2012).
以上は tangential variety の特異性に関するもの.
R. Bryant, P. Griffiths, D. Grossman, Exterior Differential Systems and Euler-Lagrange Partial Differential Equations, The University of Chicago Press, (2003).
これは Monge-Ampere system に関するもの.
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
James E. Humphreys, Reflection Groups and Coxeter Groups, Cambridge studies in advanced mathematics 29, Cambridge Univ. Press. (1990).
この2冊は,Dynkin-Coxeter 図形と特異点に関するもの.
Udo Hertrich-Jeromin, Introduction to M¥"{o}bius Differential Geometry, London Mathematical Society Lecture Note Series 300, Cambridge Univ. Press. (2003).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
この2冊は共変幾何について.
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
この2冊は特殊幾何,トロピカルそして特殊ラグランジアンに関して.
そして,部分多様体の特異幾何トポロジーに関する 自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
2 October 2012

オ〜ッと言う間に,もはや10月オクトバーである.今年も残るところ3ヶ月となった.
9月は,ルーマニアから帰ってきて,九大での学会に参加してすっかり生まれ変わってきた. その他に休暇で東京や福島に行ってまたまた生まれ変わってきた.
それから共著論文の仕上げをしたり, 入試説明会のための勉強をしたり,講義(線形代数,ろんりと集合,多様体続論)の準備をしたり,院生指導の準備をしたり, ITP関係の仕事をしたり,トポロジー評議員の仕事をしたり,数学会の理事の仕事をしたり, その他のいろいろな仕事をこなして,なんとか楽しく暮らしている.

通勤中は,河合 雅雄「学問の冒険」岩波現代文庫,を引き続き読んでいた. 「サル学」の立場から,「悪」とは何か,「家族」とは何か,という考察が書いてある.サルを見ていればよくわかるようだ.
他に,ニコライ・バシーリェヴィッチ・ゴーゴリ「外套・鼻」平井 肇 訳,岩波文庫,も読んでいる.
それから, 関連して,ゴーゴリの「死せる魂」を読もうとしたが,今は絶版のようなので,昔,買って,福島の実家に置いてあった 河出書房新社の世界文学全集,第1集 10の,ゴーゴリ「死せる魂/鼻/外套」中村 融,他訳,を札幌に持って帰って来た. ゴーゴリは,ドストエフスキーにも影響を与えた作家だが,現在はあまり読まれていないのかも知れない.

今月の座右の書:
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
James E. Humphreys, Reflection Groups and Coxeter Groups, Cambridge studies in advanced mathematics 29, Cambridge Univ. Press. (1990).
松澤淳一「特異点とルート系」朝倉書店 (2002).
Peter Abramenko, Kenneth S. Brown, Buildings: Theory and Applications (Graduate Texts in Mathematics), Springer (2008)
以上の4冊は,ルート系と特異点の関係を調べるため.
Udo Hertrich-Jeromin, Introduction to M¥"{o}bius Differential Geometry, London Mathematical Society Lecture Note Series 300, Cambridge Univ. Press. (2003).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
以上の2冊は,メビウス(共形)幾何での特異点論のため.Udo の本は,北大の I先生に教えてもらった.
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
これは,トロピカル幾何と特殊幾何における特異点論のため.
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
内容:
W.F. Pohl, Differential geometry of higher order, Topology {¥bf 1} (1962), 169--211.
E.F. Feldman, The geometry of immersions I, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 120} (1965), 185--224.
E.F. Feldman, The geometry of immersions II, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 125} (1966), 181--315.
J.A. Little, On singularities of submanifolds of higher dimensional Euclidean spaces, Ann. Mat. Pura Appl. {¥bf 83--1} (1969), 261--335.
これは,部分多様体の特異幾何とトポロジーのため.


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11 September 2012

ぷっ〜ちゅ〜という間に,もう9月セプテンバーの中旬である.

ルーマニアの黒海沿岸の「マンガリア」というところで研究会があったので参加・講演して生まれ変わってきた. 「バルカン幾何学会」というものがあり,その関係者の数学をいろいろ聞いて,大変勉強させてもらった. ありがたい. また,研究会の昼休みの合間をぬって,黒海で泳ぐこともできた.ありがたい.
「黒海の水はしょぱかった,まるで人生のように...」
ブカレスト空港の発着だったので,ブカレストにも宿泊した. ブカレストはワルシャワと似た,いかにも東欧という感じのよい街だった.

ルーマニアから帰ってからは,後期の授業の準備や共著論文の仕上げ,北大の入試相談会の準備などをしている.

ルーマニアへの移動中などには,河合 雅雄「学問の冒険」岩波現代文庫,を読んでいた.
「サル学」で有名な河合雅雄先生の自伝プラス哲学がおもしろく語られている. 特に,人間の立場からサルを調べる,というのではなく,「サル学」を通して人間を観る,という視点, あるいは,時間をかけてサルと仲良くなって,共感を築いてサル社会のしくみ・ルールを調べる方法「共感法」は興味深い. サルも最初は警戒して近づかないが,一緒に暮らして仲良くなっていけば,だんだんといろいろなことを人間に教えてくれるわけだ. この方法は,日本(あるいは東洋)固有の方法であって, 西洋では,人間とその他の動物を峻別するので,「共感法」は当初,批判されたそうだ.なるほど. とはいえ,現在では,その方法の有効性が世界的に認められているとのことである.
関係ないが,数学の研究でも「共感法」は大切である. 数や図形についても,調べ始めた当初は,何ともよそよそしい感じがするのだが,日夜,ああでもない,こうでもないと, つたない頭で努力して考えていくと,相手も警戒を解いて歩み寄ってくれるからか, 不思議なことに,そのうち手の内を見せてくれるものだ. こんなことを繰り返して,時間をかけて数や図形と仲良くなって,共感を築いていけば,次第に 「数や図形の社会」のしくみ・ルールが見えてくるのだろう.

座右の書としては,従来のものに加えて,
Peter Abramenko, Kenneth S. Brown, Buildings: Theory and Applications (Graduate Texts in Mathematics), Springer (2008)
を眺めている.Tits の「ビルディング理論」は昔から気になっていたが,ディンキン図形と写像の特異点の関係を深く調べるには やはり知っておいた方がいいかな,と思って眺めて勉強しているところである.
27 August 2012

(せっ)ぷ〜という間に,もうじき,セプテンバー9月である. 8月は,東京と佐賀に行って生まれ変わってきた.さらに, M先生から数学者 Monge のことを教わったり,その後,別のM先生,T先生と一緒に, 「札幌夏のセミナー」で充実した共同研究をして 完璧に生まれ変わったりしていた.明日からは,ルーマニアに行って,またまた生まれ変わってくる予定である.

佐賀大で開催された日本数学会トポロジー分科会主催,佐賀大共催のトポロジーシンポジウムの世話人を(担当評議員として)やってきた. 佐賀大のI先生をはじめ,いろいろな人にお世話になった.改めて感謝したい.
ところで,恒例のシンポジウムの懇親会を開いたのだが,そこで用意した料理が (佐賀の魚や肉,野菜など十分に用意したつもりだったのだが), 懇親会開始約30分ですっかり無くなってしまったのには驚いた. 楽しみにしていた「佐賀牛」も,出てきたと思ったら,あっという間に消えてなくなった. (たとえると, 「懇親会会場の入口に牛一頭が現れ,その牛が出口に行く間にあっという間に骨だけにされた...」 という動画をイメージするとよい.かなり大げさではあるが...) ともかく,皆さん元気があって非常に頼もしい限りである. まさに「トポロジーおそるべし」,トポロジー分科会の将来は明るい,と実感した.

その後の,沼津のM先生,室蘭のT先生との共同研究 (MIT) も楽しかった. いろいろ集中して勉強させてもらった.後半は議論に疲れてきたからか, たとえば,「だよ〜ん」というギャグなどを連発して,ますます興がのって,研究が進展した感じであった. (「だよ〜ん」は,私(石川)が尊敬する赤塚不二夫先生のマンガ「おそ松くん」のキャラクター「ダヨ〜ンのおじさん」のセリフ) ところで,なぜわれわれの共同研究が「だよ〜ん」なのか,は,ここでは書かないでおくのだよ〜ん.これでいいのだよ〜ん. (「これでいいのだ」は,同じく赤塚不二夫先生の「天才バカボン」のパパのセリフ).

通勤中や出張の移動中は,ジュール・ベルヌ「八十日間世界一周」上,下,高野優訳,光文社古典新訳文庫,を読んでいた. 子供の頃,「八十日間世界一周」は絵本で読んだ記憶がある. ジュール・ベルヌには以前から注目していたのだが,ちゃんと読んだことはいままでなかったので読んでいる. ロンドン,スエズ運河,インド,香港,上海,横浜,ロサンゼルス,...と旅が続く. 当時の風物も出てきておもしろい.

今月の座右の書:
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Projective Differential Geometry of Submanifolds, North-Holland, (1993).
松田道彦「外微分形式の理論」数学選書,岩波書店,(1976).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.

1 August 2012

おっ〜という間にオーガスト,8月である.
先月の7月は,名古屋の説明会に行って生まれ変わり,その後,ブラジルに2週間行って来て完全に生まれ変わってきたところだ.
名古屋ではアドミッション関係の慣れない仕事に四苦八苦したが,高校生やその親御さんと話をしてみて,おもしろい経験ができた.
ブラジル出張では,ブラジル入国時に危うく強制送還されそうになったり,帰国時にニューアークから成田への便が6時間程遅れて 出張が一日延びたり,大変だった.
でも,研究,国際交流に励んだのはもちろんだが,その他に飲んで・食べて・踊って,ブラジルを大いに満喫した. 昼食でシュラスコを皆で食べに行った時,「親指が伸びる芸」(くだらないやつなのだが)を披露したら予想外に受けた.さすがラテンの国だ.

現在は,1年生の線形代数の期末テストの問題作成・採点,院生の研究指導,ITPの仕事,8月のトポロジーシンポジウムの準備, 同じく8月のルーマニアでの研究会の講演準備,論文書き,原稿書き,などを細々と行っている.また,10月からの講義準備も始めたいところだ.

ところで,少し前になるが,上野修「スピノザの世界」講談社現代新書,を眺めていたら,
『...そういえば,個物の「個」に当たるラテン語には「パルティクラーリス」(particularis)と「シングラーリス」(singularis)があるが,「エチカ」は「シングラーリス」の方を好んで用いる.それには理由がある.「パルティクラーリス」だとパート,つまり同類全体の中の 個別事例という意味になってしまうが,「シングラーリス」ならシングル,すなわち他のどれとも似ていない特異な,単独の,一つっきりの, という意味になる...』
と書いてあった.「エチカ」はスピノザの主著(14 February 2012の項参照)で,ラテン語で書いてある. 特異点論(singularity theory)の学徒としては,見過ごせない事実である. singularity theory が particularity theory あるいは particular theory になってはいけない. 急遽,ラテン語を勉強してみようと思い立ち, 有田潤「初級ラテン語入門」白水社,小林標(こばやし・こずえ)「ラテン語の世界」中公新書1833,などを通勤中,出張の移動中に 読んでいた.まあ,「ラテンのリズムでラテン語入門」というノリである.
そういえば,行って来たばかりのブラジルのポルトガル語をはじめ,スペイン語,イタリア語や, あるいは今度出張する予定のルーマニアのルーマニア語の原型もラテン語である.少しは役に立つかもしれない. とはいえ,なんといっても,ラテン語を勉強する上での最大の魅力は「死語」なところである. (あるいは,皆を"煙にまける"ところ).

今月の座右の書:(先月と同じだ,ということは,あまり研究が進んでいない,ということか...)
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
共形幾何学の勉強をしている.
佐々木重夫「共形接續幾何學」河出書房 (1948).
共形幾何学の勉強をしている.
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
幾何学的制御理論の勉強をしている.
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
ミラー対称性とトロピカル幾何の勉強をしている.
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
いろいろ勉強している.
A. Borel, Linear Algebraic Groups, Second Enlarged Edition, Springer (1991).
代数群を勉強している.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
シューベルト算法を勉強している.
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
部分多様体の特異幾何トポロジーを勉強している.
2 July 2012

じゅら〜ぃという間に,もう7月である.札幌もだんだんと蒸し暑くなってきた気がする.
先月6月は,まず長野に出張で行って講演をして生まれ変わり,休暇で余市に行って生まれ変わり, 出張でイギリスのリバプールに行って講演をして完全に生まれ変わってきた.
長野では,研究会終了後,善光寺にお参りして久しぶりに「胎内めぐり」をして生まれ変わった. 善光寺のそばのそば屋のそばも堪能した.
余市では,1年ぶりに「かきざき商店」で,旬の赤カップ・ウニ丼と甘エビ丼を堪能して生まれ変わった.
リバプールでは,宿舎の夕飯の後,宿舎近くのペニーレーンにあるパブ「The Dovey」に 通って,そのパブの常連の「もしもしおじさん・おばさん」と仲良くなって生まれ変わった. その近くの「リバプール音楽学校」にはクイーンのフレディ・マーキュリーが通っていたとか.
それから,念願のリバプール名物「ランバナナ」も入手できた.
現在は,1年生の線形代数の講義の準備や中間テストの採点,院生の研究指導,ITPの仕事, 7月のブラジルでの研究会の講演準備,8月のトポロジーシンポジウムの準備,論文書き,原稿書き, 全学の委員(相談員)として参加する名古屋での説明会の下勉強,その他,いろいろな,やや気が重い仕事も含めて,次々にこなして, ヨレヨレの毎日である.

通勤中,出張の移動中は,大栗博司「重力とは何か」幻冬舎新書,ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」上, などを読んでいる.
「重力とは何か」は,とてもわかりやすく重力について説明してあってよい.いま話題の「ホログラフィー原理」についても 言及されている.
「銃・病原菌・鉄」は,上・下巻を買って,途中で投げ出して,しばらく読まずにいたら,文庫本が出た.この機会に,単行本の続きを また読み始めた.今は第7章「毒のないアーモンドの作り方」を読み終えたところだ.おもしろい.

今月の座右の書:
M.A. Akivis, V.V. Goldberg, Conformal Differential Geometry and its Generalizations, John Wiley ¥& Sons. Inc., (1996).
共形幾何学の勉強をしている.
佐々木重夫「共形接續幾何學」河出書房 (1948).
共形幾何学の勉強をしている.
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
幾何学的制御理論の勉強をしている.
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
ミラー対称性とトロピカル幾何の勉強をしている.
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
いろいろ勉強している.
A. Borel, Linear Algebraic Groups, Second Enlarged Edition, Springer (1991).
代数群を勉強している.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
シューベルト算法を勉強している.
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
部分多様体の特異幾何トポロジーを勉強している.
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1 June 2012

じゅ〜んという間に,もう6月である. 5月中は,博多に行って生まれ変わり,室蘭に行って生まれ変わり,京都に行って完璧に生まれ変わってきた. 講義準備や論文書き,今年8月11日から14日まで佐賀大学で開催される第59回全日本トポロジーシンポジウム
http://www.ms.saga-u.ac.jp/~iwakiri/topologysymposium.html
の準備,数学会の仕事,大学全体の仕事,院生指導など,ぼちぼち行っていた.
さらに,6月はじめの長野での研究会の講演準備を始めている.その関係で,リー群,代数群,表現論,シューベルト・ヴァライティー, 8元数,などなどを(何度勉強しても身に付かない,とはいえ)鋭意勉強中である.

通勤中は,ガルシア・マルケス「百年の孤独」新潮社を読み,ショーペンハウアー「幸福について--人生論--」橋本文夫訳,新潮文庫, を時々眺めていた.
南米コロンビアの有名な作家ガブリエル・ガルシア・マルケスの代表作「百年の孤独」は, 30年程前に買った本で, 何度か途中で挫折して読み通せなかったが,今回は,3分の2ぐらいまで進んでいる.よい調子だ. ブエンディーア一家の百年の歴史の物語である.重層的幻想的な猥雑さがおもしろい. 関係ないが,登場人物のジプシーの名前がメルキアデスであり,「アルキメデス」を連想しておもしろい.
「幸福について--人生論--」は,共感する部分もあり,それを言ったらオシマイだよ,という部分もあり,おもしろい.

今月の座右の書:
M. Gross, Tropical Geometry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
V.I. Arnold, Dynamics, Statistics and Projective Geometry of Galois Fields, Cambridge Univ. Press (2011).
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
竹内 勝 述「実リー代数の実既約表現」大阪大学数学講究録 3, 大阪大学理学研究科数学教室 (1996).
A. Borel, Linear Algebraic Groups, Second Enlarged Edition, Springer (1991).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).

1 May 2012

め〜いっという間に,もう5月,ゴールデンウィークである. 現在は,今年8月の第59回全日本トポロジーシンポジウムの準備,大学院指導の準備,いくつかの論文書き,本の原稿書き,講演準備,さらに新しい数学の勉強をしながら楽しく暮らしている. 4月は,新学期の準備や論文書きなどをして過ごし,月末に東京にいってちょっとだけ生まれ変わってきた.

通勤中は,ショーペンハウアー「幸福について--人生論--」橋本文夫訳,新潮文庫, 山竹伸二「「認められたい」の正体」講談社現代新書, J・クレイグ・ベンダー「ヒトゲノムを解読した男,クレイグ・ベンダー自伝」, 三浦しをん「舟を編む」光文社などを読んでいる.
ショーペンハウエルの「幸福について」は,かなりクセのある実用的な人生論である.冒頭で,この幸福論は, 「人間生来の迷妄」に基づいて書いている,と宣言している (つまり,幸福などというのは妄想である,ということは置いておいて,どうしたら幸福になれるか,を書いている). それはともかく,たとえば,他人の評価など気にするな,と書いてある. p.89 には「名誉欲という動機を理性的に見て妥当と肯(うなず)かれる程度にまで抑制し引き下げること」 とある.本当にその通りであるが,そのコントロールが難しいわけである.
「「認められたい」の正体」もおもしろい.「認められる」ということを「親和的承認」(家族・友達などに認められる),「集団的承認」(職場,同業者などに認められる),「一般的承認」(社会とか世間などを認められる)の3つに分類して (フッサールの現象論を使って)論じている.(参考文献:筒井康隆「文学部唯野教授」岩波書店).
「ヒトゲノムを解読した男」は,ゲノム解読についてどう研究したかが具体的に書いてあり,知的に興味がある.
「舟を編む」はベストセラーということで読んでみた.一気に読み終えた.辞書を作る話であるが,数学にもつながる かもしれない.

今月の座右の書:
M. Gross, Tropical Goemetry and Mirror Symmetry, Regional Conf. Ser. in Math., 114, Amer. Math. Soc. (2011).
V.I. Arnold, Dynamics, Statistics and Projective Geometry of Galois Fields, Cambridge Univ. Press (2011).
C. Sabbah, Isomonodromic Deformations and Frobeninus Manifolds, Springer (2007).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
西川青季「幾何学的変分問題」岩波書店.
J.M. Landsberg, Tensors: Geometry and Applications, Graduate Studies in Math., 128, Amer. Math. Soc. (2012).
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
竹内 勝 述「実リー代数の実既約表現」大阪大学数学講究録 3, 大阪大学理学研究科数学教室 (1996).
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1 April 2012

えっ〜という間に,もう4月,新学期が始まる.

3月は,ハワイの後,いろいろ仕事をして,さらに,学会で東京に行ってすっかり生まれ変わってきた. 今は,講義準備(線形代数),大学院指導の準備,原稿(数理研講究録)書き,原稿(数学の論説)の翻訳,共著論文の原稿書き,ITP事業の計画書・報告書書き,科研費の報告書・申請書書き,数学会関係の仕事いろいろ,遅れている本の原稿執筆,などなどを,ぼちぼち進めている.

通勤中は,相変わらず, マシュー・スチュアート「宮廷人と異端者---ライプニッツとスピノザ,そして近代における神」桜井・朝倉訳,書肆心水(2011) を読んでいる(読み終えた).それから,(関連して?)橋爪 大三郎「はじめての構造主義」 講談社現代新書,も読んでいる.
スピノザは「神=自然」という事実を「証明」し,ライプニッツは,スピノザの証明を必死に否定する生涯を送った.当時(今も?)人々が信じる,最善の存在としての超越的な神をライプニッツは救おうとしたようだ.
構造主義は数学とも関係が深い.おもしろい. 昔,30年程前,(構造主義を創始した)人類学者レヴィ・ストロースの「悲しき熱帯,上」中央公論社,を買って,まだ読んでいなかったが,そろそろ読んでみようかな,という気になる.そして,スピノザから構造主義にどうつながるか,考えたい...
ところで,レヴィ・ストロースといえば,その学位論文「親族の基本構造」の付録を,数学者アンドレ・ヴェイユが書いている. ヴェイユ「数学の創造」杉浦光夫訳,日本評論社の88ページに,ヴェイユの論文「ある種の婚姻規則についての代数的研究」の解説が あって気になっていたが,これが,それである.

今月の座右の書:
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
西川青季「幾何学的変分問題」岩波書店.
L.C. Evans, R.F. Gariepy, Measure Theory and Fine Properties of Functions, CRC Press (1992).
F.R. Harvey, Spinors and Calibrations, Academic Press (1990).
J. Martinet, Singularities of Smooth Functions and Maps, London Mathematical Society Lecture Note Series 58, C.P. Simon 訳, Cambridge University Press (1982).
スピヴァック「多変数解析学」斎藤正彦訳、東京図書.
ヒルツェブルフ「代数幾何における位相的方法」吉岡書店.
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.

11 March 2012

あっという間に、昨年の大震災から1年が経った。まだ油断できない状況が続いている。 地球のこの薄っぺらな地殻の上に不安定ながらわれわれが暮らしていることを 忘れずに日々生きていきたい。
それはともかく、この1ヶ月は、福岡・札幌幾何学セミナーで福岡に行って生まれ変わり、その後、札幌に居ながらにして働きながら生まれ変わり、さらにハワイのアメリカ数学会分科会に参加してきて生まれ変わった。いまは、新学期の講義準備や科研費関係の仕事,数学会の仕事,その他の仕事を続けながら、いくつかの原稿も継続して書いている毎日である。

さらに、今後の大学院教育のための私的な「教程」(course) を現在構想しているところである。その教程の目的は
「数学とくに幾何学とその応用に関する専門的知識の習得を通して、普遍的な論理力・構想力を持ち、有能で高い見識を備え、様々な分野で活躍できる社会人を着実に養成する教程である。未熟でも意欲のある学生ならば、この教程を修了する結果として、最低限の基礎的知識とそれを駆使する論理力・構想力を持つことが保証される。」
というものである。これがなかなか難しい...

通勤中は、引き続き、マシュー・スチュアート「宮廷人と異端者---ライプニッツとスピノザ、そして近代における神」桜井・朝倉訳、書肆心水(2011) を読んでいる。

14 February 2012

あっという間に、2月も、もう中旬である。
いま、共著論文の原稿をタイプしている。でも、一日、3ページぐらいタイプするとそれだけでヘトヘト・ボロボロになるので、 (しかも、だいたい使い物にならない内容になることが多いので)作業は遅々として進まない、が、まあ仕方ないかな。 それはともかく、この時期は(授業準備もなく、セミナーもほどんどなくて)気分一新、新しい研究ができるので、楽しい時期でもある。

最近、次の事を発見した:任意の $n$ に対して、十分大きな自然数 $m = m(n)$ が存在して、任意の $n$ 次元多様体 $N$ からの generic な写像 $f : N ¥to R^m$ の tangent variety $Tan(f) : TN ¥to R^m$ の local diffeomorphism type は一意的である。

通勤中は、最近は、マシュー・スチュアート「宮廷人と異端者---ライプニッツとスピノザ、そして近代における神」桜井・朝倉訳、書肆心水(2011) を読んでいる。 宮廷人ライブニッツと異端者スピノザの生き方の違いがおもしろい。ライプニッツは、ニュートンと共に(独立に)微積分を作った人物として有名である。高校や大学で習う、微分や積分の記号は、ライプニッツが考えたものだ。ライプニッツは他のことにも、いろいろ手を出していたようだ。 (以前読んだ V.I. Arnol'd, Huygens and Barrow, Newton and Hooke、Birkhauser(1990) によれば、同時期の Leibniz はあまり評価されていないが。) 一方のスピノザは、ユークリッド幾何の形式で哲学書「エチカ」を書いている。 彼らの生きた時代は、近代社会のための哲学が必要とされていた時代であった。スピノザは、その哲学の源流を作ったのだろう。 ところで、現在の学者も、(その人の考え方や業績というよりは、単純に生き方として) ライプニッツ的とスピノザ的の大きく2つに分けられる。だいたいの場合は中途半端にではあるが。私(石川)は、どちらかと言われれば、 スピノザ的生き方に肩入れしたい。ライプニッツ的生き方に流されがちであるが。
1 February 2012

あっという間に,もう2月である.
指導していた修論も無事完成して,一安心. 1年生の授業の試験もして,成績をつける季節である.その他に, 数学会関係の仕事やITPの仕事やその他の仕事もいろいろあるが,あまり貢献していない気もするが,まあともかく一応順調といったところかな. 共著論文の原稿もそろそろ書ける状態になってきているので, さぼらずに早々に書き始めたい.

1月の通勤中は,司馬遼太郎「坂の上の雲」第三,四,五,六巻,文春文庫,を読んだ.それから, 橋元淳一郎「時間はどこで生まれるのか」集英社新書,や, マリオ・リヴィオ「黄金比はすべてを美しくするか?—最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語」 斉藤隆央訳,ハヤカワ文庫NF,などを読み始めている.
「坂の上の雲」は,年末に七巻,八巻を読んだ流れで,ついつい三巻から六巻まで読んでしまった.自覚はないのだが,実は戦争物が好きなのかもしれない. ちなみに関連してM先生が薦めてくれた本「雲の先の修羅」は, すでに入手しているが,残念ながら,まだ読んでいない.
「時間はどこで生まれるのか」は再読である.(26 Dec. 2006 の項参照.)わかりやすい.時間はマクロだ,(マグロではない).
ところで,黄金比がなぜキレイに見えるか,については昔から疑問に思っていた. 「黄金比はすべてを美しくするか?」が,その疑問を完全に解決してくれるとは期待していないが,以前読んだ「天空のパイ」(4 Dec. 2006の項参照)もそうだが,どのように啓蒙書を書けばおもしろく書けるか,のお手本にはなるかな.

今月の座右の書:
F.R. Harvey, Spinors and Calibrations, Academic Press (1990).
Cayley の8元数の勉強に最適である.
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
Generic な制御系の特異軌道の勉強.多様体上の測度論の他に,半代数集合や横断性定理も融合されて,まさに応用特異点論の宝庫である.
P.A. Griffiths, Exterior Differential Systems and the Calculus of Variations, Progress in Math., 25, Birkh¥"{a}user (1983).
Griffiths 先生による,古典的な変分法を外微分式系で書けば,理論の面から自然であるのみならず,計算も楽になる,という講義録.
スチーンロッド「ファイバー束のトポロジー」大口邦雄訳,数学叢書26,吉岡書店
トポロジーの勉強をしている.
J. Martinet, Singularities of Smooth Functions and Maps, London Mathematical Society Lecture Note Series 58, C.P. Simon 訳, Cambridge University Press (1982).
特異点論の勉強をしている.
H. Weyl, The Classical Groups, Princeton Univ. Press (1939).
表現論の勉強.Weyl 先生の蘊蓄もおもしろい.
S. Billey and V. Lakshmibai, Singular Loci of Schubert Varieties (Progress in Mathematics 182) Birkhauser (2000)
Schubert ヴァライティーの特異点を,微分式系と関係付けて調べるとおもしろそうだ.
自家製論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
W.F. Pohl, Differential geometry of higher order, Topology {¥bf 1} (1962), 169--211.
E.F. Feldman, The geometry of immersions I, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 120} (1965), 185--224.
E.F. Feldman, The geometry of immersions II, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 125} (1966), 181--315.
J.A. Little, On singularities of submanifolds of higher dimensional Euclidean spaces, Ann. Mat. Pura Appl. {¥bf 83--1} (1969), 261--335.
まとめて読むと勉強になる,が,まだ Pohl 先生の論文あたりでうろうろしていて, 「Differential geometry of higher order」はどうあるべきか,などといって眺めているだけだ.

4 January 2012

あっという間に,新年である.今年もよろしくお願いします.
昨年の12月は,京都・奈良から帰ってきて,大学院指導や講義準備をして忙しく過ごした.年末から正月にかけては, ずっ〜と論文書きをしていた.年を越して1月3日に一応,なんとか論文を書き上げた. ちょっとした達成感を味わうことはできた.こんなに勉強した年末・年始は久しぶりだ.
論文書きの合間に,例年通り,元旦には北海道神宮へ初詣に行ってきた.おみくじを引いたら「末吉」だった.まあ,そんなものか. 「人の力には限度がある.偉いと思っても,賢いと思っても,いつか人の力で救われぬ難儀苦労が起ってくる」 なるほど.その通りだ. 「用心して時の来るのを待て」と書いてある.待ちましょう.学問の項目は「自己に自信をもつこと」 とある.はい,持ちましょう.恋愛の項目は「浮気心は捨てよ」とある.はい,捨てましょう.
今年の目標は,フランス語と中国語を勉強することである.理由は書かないが,今年こそはがんばろう.

12月の通勤中は,司馬遼太郎「坂の上の雲」第七巻,文春文庫, サマセット・モーム「月と六ペンス」行方昭夫訳,岩波文庫,志賀直哉「暗夜行路」新潮文庫,などを眺めていた.
「坂の上の雲」は再読である.なぜか第一巻からではなく,日露戦争の途中のところの第七巻から読んでいる. 「月と六ペンス」も再読である.ほぼ三十年ぶりの再読である.画家ゴーギャンの生き方をモデルとした小説である. おもしろい.自由とは何かを考える.「暗夜行路」は,何度も読もうとして,必ず途中で挫折している. 今回もそうなりそうである.

今月の座右の書:
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
B. Malgrange, Ideals of Differentiable Functions, Oxford Univ. Press (1966).
論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.

6 December 2011

ディ〜という間に,12月ディセンバー師走である.
11月は,東京に2度行って生まれ変わり,神戸に行ってまた生まれ変わり, さらに京都・奈良に行ってまたまた生まれ変わってきた.(どうなっちゃう?そうなっちゃう!,というギャグも仕入れて来た.)
それはともかく,すっかり別人になって,今年の仕事納めをする予定である. 特に,大晦日が締め切りの論文があるので,今年中にそれは仕上げたい.

通勤中は,五木寛之「親鸞」上,下,講談社文庫を読み, 今は,セルバンテス「ドン・キホーテ」前篇(一),牛島信明訳,岩波文庫,を読み始めている.
「親鸞」は,今年が法然800年忌,親鸞750年忌ということで京都訪問の前に読んでみた.五木寛之の作品は初めて読んだが,非常に読みやすく書かれている. 「ドン・キホーテ」は,ボルヘス「伝奇集」の中に,「『ドン・キホーテ』の著者,ピエール・メナール」という短編があり,その関係で読み始めた. 題名は非常に有名だが,作品の内容については初めて知った.おもしろい.

今月の座右の書:
松島与三「リー環論」共立出版(昭和31年)
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
B. Bonnard, M. Chyba, Singular Trajectories and their Role in Control Theory, Springer (2003).
L.C. Evans, R.F. Gariepy, Measure Theory and Fine Properties of Functions, CRC Press (1992).
R.C.Gunning, Lectures on Complex Analytic Varieties : Finite Analytic Mappings, Princeton Univ. Press (1974).
S. Alinhac, P. Gerard, Pseudo-differential Operators and the Nash-Moser Theorem, Graduate Studies in Mathematics 82, S.S. Wilson 訳,Amer Mathematical Society (2007).
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.

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2 November 2011

のべ〜っという間に,もう11月ノベンバーである.
10月は,大学院の指導や全学教育(微積分)の授業の準備をした.専門の特異点論の講義ノートも書いている. 神戸と数理研での講演の原稿作りもぼちぼち始めたところだ.

通勤中は, メルヴィル「白鯨」下,岩波文庫,を引き続き読み,ちょうど読み終わった. おもしろかった.内容はここには書かないが,小説に登場する捕鯨船「ピークオッド号」は帆船であって, クジラを穫るのは,食肉のためではなく,主に鯨油をとるためだったようである. (ちなみに,「白鯨」の出版が1851年.1853年のペリーの黒船は,蒸気船(兼帆船)だったと思う.) 自然と,人類の文明の永い歴史に思いが至る:人力から馬力,水力,風力,火力( 鯨油,石炭,石油)と来て,原子力まで人類は手にして,その文明の大きな流れに人々は翻弄される,ということだろうか.
ところで,「白鯨」は,「リア王」と「嵐が丘」と並んで,3代悲劇と呼ばれることがあるそうだ.その関係で, いまは,シェイクスピア「リア王」安西徹雄訳,光文社古典新訳文庫,を読み始めている. 「嵐が丘」は,映画で何度も観たから,まあいいか.
森鴎外「渋江抽斎」は,読むのを中断(挫折)している.今月は,鶴見和子「南方熊楠——地球志向の比較学」講談社学術文庫,を読もうかなと思っている.

今月の座右の書:
松島与三「リー環論」共立出版(昭和31年)
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002).
J. Martinet, Singularities of Smooth Functions and Maps, London Mathematical Society Lecture Note Series 58, C.P. Simon 訳, Cambridge University Press (1982).
S. Alinhac, P. Gerard, Pseudo-differential Operators and the Nash-Moser Theorem, Graduate Studies in Mathematics 82, S.S. Wilson 訳,Amer Mathematical Society (2007).
論文集:
Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
D.D. Joyce, Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry, Oxford Univ. Press (2007).
5 October 2011

お〜っという間にオクトバー10月である.
9月は,福岡に行って生まれ変わり,東京に行って生まれ変わり,松本に行って生まれ変わってきた. その間,11月の神戸での講演準備や,12月締め切りの論文書き,共著の論文書き(の下調べ)などをして,久しぶりに 少しだけ研究ができた.後期の授業の準備(微積分と特異点論)も少しできた.

通勤中は, メルヴィル「白鯨」中,岩波文庫,を引き続き読み,それから,並行して, 森鴎外「渋江抽斎」岩波文庫,を読んでいる.まあおもしろい.詳細については次回.

今月の座右の書:
松澤淳一「特異点とルート系」朝倉書店 (2002).
H. Weyl, The Classical Groups, Princeton Univ. Press (1939).
岩堀長慶「対称群と一般線形群の表現論」岩波講座 基礎数学,岩波書店 (1978).
N. Bourbaki, Groupes et Algebres de Lie, Chapitre 4 a 6, Hermann (1968), Springer (2007).
F.R. Harvey, Spinors and Calibrations, Academic Press (1990).
T.A. Ivey, J.M. Landsberg, Cartan for Biginners: Differential Geometry via Moving Frames and Exterior Differential Systems, Amer. Math. Soc. (2003).
R.L. Bryant, S.S. Chern, R.B. Gardner, H.L. Goldschmidt, P.A. Griffiths, Exterior Differntial Systems, Springer-Verlag (1991).
論文集: Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
5 September 2011

バッ〜という間に,もう9月である.
8月は,筑波大でのトポロジーシンポジウムに行ったり,山口大での幾何学シンポジウムに行ったりして, パーフェクトに生まれ変わった.山口から帰って,M先生,M先生,T先生とセミナーを行って,さらに数学に目覚めて, その直後,9月3日には,台風をかいくぐって東京に日帰り出張をして,またまた生まれ変わってきて現在に至る,という感じである.
8月は成績評価や大学院指導もした.共同研究もした.数学会の仕事もした.その他の仕事もいろいろした.いろいろあった. 自分で自分を誉めてあげよう.それはそうと,そろそろ後期の授業の準備を始めないといけない.

通勤中は,
橋爪大三郎,大澤真幸「ふしぎなキリスト教」講談社現代新書,
メルヴィル「白鯨」中,岩波文庫,
安野光雅「口語訳 即興詩人」(原作 アンデルセン,文語訳 森鴎外)山川出版社 (2010).
などを読んでいる.「ふしぎなキリスト教」はわかりやすい.「白鯨」も型破りでおもしろい. 安野光雅さんの本は以前から「空想の絵本」など数学的でおもしろく親しんでいた.「口語訳 即興詩人」は,安野さんの魂を感じる. 文語体の森鴎外訳「即興詩人」もいずれ読んでみたい.いつも途中で読むのを挫折する森鴎外の「舞姫」なども再挑戦したい. ところで関連して,松本清張の「或る『小倉日記』伝」は,この機会に再読した.

今月の座右の書:
H. Weyl, The Classical Groups, Princeton Univ. Press (1939).
J.-P. セール「有限群の線形表現」岩堀長慶,横沼健雄 訳 (1974).
岩堀長慶「対称群と一般線形群の表現論」岩波講座 基礎数学,岩波書店 (1978).
ランダウ・リフシッツ「統計物理学」上,岩波書店 (1977).
アダマール「偏微分方程式」(現代数学の系譜14)共立出版 (1997).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004).
論文集: Fundamental papers on singularity geometry and topology of submanifolds.
1 August 2011

ガ〜ッという間に,もう8月である. 7月は,札幌に居ながら,締め切りに大幅に遅れている原稿をやっと書き上げて一安心,さらに授業の準備,期末テスト作成,大学院指導, 日本数学会の仕事(評議員の仕事と議長代行の仕事と理事の仕事),HMJ の仕事,ITPの仕事,などなどをして有意義に過ごしていた.

通勤中は,村上春樹「羊をめぐる冒険」講談社,その流れで,メルヴィル「白鯨」上,岩波文庫,コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの冒険」新潮文庫,などを読んでいる.「羊をめぐる冒険」は,7,8回目の再読である.「白鯨」は初めて読む. 「シャーロック・ホームズの冒険」は,過去に読んだかどうだか,本文を読んでみても思い出せない.たぶん初めて.

今月の座右の書:
ランダウ・リフシッツ「統計物理学」上・下,岩波書店.
「この数学者に出会えてよかった」数学書房
Serge Alinhac, Hyperbolic Partial Differential Equations, Universitext, Springer (2009)
アダマール「偏微分方程式」(現代数学の系譜14)共立出版 (1997).
A.A. Agrachev, Y.L. Sachkov, Control Theory from the Geometric Viewpoint, Springer (2004)
J.Barrow-Green, Poincar¥'{e} and the Three Body Problem, Amer. Math. Soc., London Math. Soc., (1997)
と,自分で勝手に製本して作った論文集
(勝手に命名:Fundamental papers on singularity topology and geometry of submanifolds.)
W.F. Pohl, Differential geometry of higher order, Topology {¥bf 1} (1962), 169--211.
E.F. Feldman, The geometry of immersions I, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 120} (1965), 185--224.
E.F. Feldman, The geometry of immersions II, Trans. Amer. Math. Soc., {¥bf 125} (1966), 181--315.
J.A. Little, On singularities of submanifolds of higher dimensional Euclidean spaces, Ann. Mat. Pura Appl. {¥bf 83--1} (1969), 261--335.
まとめて読むと勉強になる.
4 July 2011

ジュラ〜という間に,もう7月である.6月は,大分から帰ってきてから, 東京に3回出張,うち2回は日帰りで,まるで猛烈ビジネスマンのような生活をして,すっかり生まれ変わった.
授業の準備,中間テストの採点,大学院指導,締め切りに大幅に遅れている原稿書き, 学会の仕事,その他の重要な仕事,などをしていた.まあ,充実した研究生活していると言えるかなあ.
その一方,11日(土)は旭川の旭山動物園と上野ファームにバス旅行に行って,19日(日)は小樽の向こうにある余市(よいち)にドライブ兼墓参り,余市で有名な「かきざき海鮮工房」の行列に並んで,ウニ丼と甘エビ丼,マグロ刺身などを堪能した.それはともかく,

数学の話:
写像芽 $f : (R^n, 0) ¥to (R^m, 0)$ に対して,関数 $h = h(x_1, ¥dots, x_n) ¥in E_n$ で 外微分 $dh$ が $df_1, ¥dots, df_m$ の関数係数1次結合となるもの全体を $R_f$ で表す. $R_f$ は $f^*E_m$-代数になる. $h_1, ¥dots, h_r ¥in R_f$ について,$F : (R^n, 0) ¥to (R^{m+r}, 0)$ を $F = (f_1, ¥dots, f_m, h_1, ¥dots, h_r)$ で定めると,$R_F = R_f$ であり, $¥pi_m¥circ F = f$ をみたす.このとき,$F$ を $f$ の「オープニング」(開化)と呼ぶ. 特異性を保ったまま自己交差を解消する操作である.オープニングが普遍オープニングであるとは, $1, h_1, ¥dots, h_r$ が $R_f$ の $f^*E_m$-加群としての生成系になるときに言う. たとえば, ツバメの尾は,Whitney のカスプのオープニングである.開いたツバメの尾は Whitney のカスプの 普遍オープニングである.

通勤中は,「この数学者に出会えてよかった」数学書房, ボルヘス「伝奇集」福武書店,岩波文庫,や,森嶋通夫「なぜ日本は没落するのか」岩波現代文庫, などを読んでいる. 「この数学者に出会えてよかった」は,M先生からのお勧めで読んでいる.出会いの大切さを痛感する. 「伝奇集」は,昔,福武書店から出たものを眺めていたことがある.その再読である.難解であるがおもしろい. 福武書店版の後から出版された岩波文庫のものは, 内容的は同じだが,太文字などを使っていて,読みやすいように工夫されている. むかし,「伝奇集」を通勤時に読んでいて,電車を乗り過ごしたことがある(「霊園前」(現,南平岸)で降りるべきところを「澄川」まで).少し危険な本である. 森嶋道夫さんの本では,だいぶ昔にイギリスに居た時,「イギリスと日本」を持参して読んだことがある.おもしろかった. 「なぜ日本は没落するのか」は,3月11日の震災前に出版されていた本である.さて今後,日本はどうなるのだろう.心配である.

今月の座右の書:
ランダウ・リフシッツ「統計物理学」上・下,岩波書店.
岩堀長慶「対称群と一般線形群の表現論」岩波講座 基礎数学,岩波書店.
7 June 2011

ジュ〜んと言う間にもう6月である. 5月は,ポーランド(ワルシャワとベドレボ,5/11--5/22)に行って生まれ変わり, その後,大分(5/31--6/4)に行って,完璧に生まれ変わって再生を果たした.
他には,授業の準備,テストの採点,大学院の指導,数学会関係のいろいろな仕事,その他の大事な仕事もしながら, レフリーレポート書きや,締め切りに大幅に遅れている原稿書き,などをそれなりにこなした. 自分で自分を誉めてあげよう.

ポーランドでは研究連絡と国際交流教育に打ち込んだ.その他, 「カシャンカ」という血のソーセージや,餃子のような「ピエロギ」, 「ズレック」や「フラキ」という名のスープなど,独特なポーランド料理を堪能した.
大分では研究連絡や講演,プロブレム・セッションなどに打ち込んだ.その他に, 「関アジ」「関サバ」「とり天」などの大分名物も楽しんだ. 大分名物「ザビエル」は,私(石川)の田舎,福島の「ママドール」というお菓子を連想させた. A先生が一人で食べていた「やせうま」という太いウドンをきなこでまぶしたデザート(?)もありおもしろかった. 「かぼすワイン」は残念ながら飲み損なった.

(共同研究を含めて)論文書きは,なかなか進まない,というか,なかなか手をつけられない,のが常である. 始めは慎重になって,最終的に杜撰な研究になる,ということを避けて,逆に, 「気楽に始めて,締めを慎重に」という精神で行きたい,と思っている今日この頃である.

科研費の研究課題として,論文
Y. Chitour, F. Jean, E. Tr¥'{e}lat, "Singular trajectories of control-affine systems", SIAM J. Cotrol Optim., 47--2 (2008), 1078--1095.
を読んでいる.制御系における「モーション・プランニング問題」や「安定化問題」への 応用を目指した,特異曲線(singular curve)に関する解説である. 幾何学に乗りづらい側面もあるが,特異点論を介して,明確に幾何学化してみたい.

通勤中は,アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」, 杉山茂丸「百魔」上・下,講談社学術文庫,などを読んでいる.
「幼年期の終り」は,有名な SF の名作である. かなり昔に買って読んでいなかったものを今回読み通した.本筋の部分の感想は控えておくが, 登場する小物(ラジオ,テレタイプ等)に,どうしても時代の変化を感じるのは仕方ないことだろうか.
「百魔」は,「ドグラ・マグラ」で有名な作家,夢野久作の父親で政界の黒幕である,其日庵(そのひあん)杉山茂丸の交友録である.23年前(1988年)に購入したものの読み返しである.おもしろい.
その他にいろいろ読んでいるが,ここには記さない.

今月の座右の書:
大森英樹「無限次元リー群論」紀伊國屋書店 (1978).
とその英語版
H. Omori, "Infinite-Dimensional Lie Groups," Trans. Math. Monographs 158, Amer. Math. Soc., (1997).
N. Bourbaki, "Groupes et Alg¥`{e}bres de Lie, Chapitres 4, 5, 6", ¥'{E}l¥'{e}ments de Mathematique, (1968).
P.J. Olver, "Classical Invariant Theory", London Math. Soc. Student Texts 44, (1999).
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. (1993).
9 May 2011

先日のメモで「里見八犬伝」のことを書いたが, 「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」が正解のようである. 順番も数も両方とも違っていた.
「義」は上下関係,「信」は平等な信頼関係,として, 「忠」は主君への忠心,「孝」は親孝行,「悌」は若年者の尊重,とすると, 「忠・孝」は義に属し,「悌」はどちらかというと「礼」に属するかな.そうすると, やはり「仁・義・礼・智・信」の順番になる.まあ,いいけど.
2 May 2011

め〜っと言う間に,もう5月 May である. 4月は,新学期が始まり,新入生のための授業や院生セミナーが始まったので,その準備をしていた. それから,今後の国内外での講演準備をしたり,遅れている原稿を書いたり, たまっている論文のレフリーをしたり,引き受けた日本数学会関係の仕事をしたりしていた. 会議のために休日をつぶして東京にも行って,すっかり生まれ変わってきた.

東京での宿舎が湯島聖堂のそばだったので寄ってみた.湯島聖堂は孔子を祀っている. (孔子が神様だ.) 知らなかったが,その日は,たまたま一年の一度の「孔子祭」の日だった. その催し物の一つとして,「論語」の中の一節「述而不作(述べて作らず)」に関する講話があった. お茶の水大学の名誉教授の先生が話をされていた. 「述べて作らず」とは,古典を敬愛し,古いことに基づいて説明するだけで創作はしない,という孔子先生が 心がけていたことだそうである.(口頭発表だけして論文は書かない,ということではない.) 「子曰,述而不作,信而好古(子曰く,述べて作らず,信じて,いにしえを好む)」である. 私(石川)も見習って,古典をちゃんと勉強して軽薄な創作は(なるべく)しないように心がけたい.
それから,地下鉄で移動して東京国立近代美術館で開催されていた「岡本太郎展」を観た. 芸術が爆発していた.岡本太郎先生は,(岡本敏子さんの協力のもと)いろいろ良い言葉を残している. たとえば,「伝統とは創造である」「芸術?そんなものはケトバシてやれ」「いつだって危険な方に賭ける」とか, それらの言葉を1つずつ「三角くじ」にしてあるコーナーがあった. 引いてみると,「やろうとしないから,やれないんだ」だった.確かにそうだ.でも,他の言葉のほうがよかった.

通勤中は,武澤秀一「法隆寺の謎を解く」ちくま新書, 梅原猛「海人(あま)と天皇 -- 日本とは何か」新潮文庫,折口信夫「死者の書・口ぶえ」岩波文庫. などを読んでいる.
「法隆寺の謎を解く」は,以前途中まで読んで挫折していたものの読み返しである. 読み切ってみると,なかなかおもしろいことが書いてある. 法隆寺の「中門」の中央に柱が立っている謎を建築家の立場から明快に説明していて, 以前,梅原猛先生は「隠された十字架」新潮文庫の中で,聖徳太子の怨霊を閉じ込めるため,という説を唱えたが, それを否定している形だ. 法隆寺では,五重塔と金堂が左右に並んでいて,その間に空白ができていた. その空白を中門の真ん中の柱が引き締めていた. また,インドでは,仏塔などの聖域を右回り(時計回り)に回って祈るそうである.インドでは左は不浄だと考えられているから,お参りする人が,自分の右側を聖域に向けて,右回りに回ることになる.中門は回廊の出入り口の役目もしていて,したがって中門の中央に柱を作ることは不合理ではない,ということである.(インド料理店でカレーを,万一,手で食べるときは,必ず右手を使うように心がけたい.)
その後,やはり途中で読むのを挫折していた「海人(あま)と天皇 -- 日本とは何か」も読みはじめている. おもしろい. たとえば,聖徳太子(厩戸皇子,うまやとのおおじ)の「憲法十七条」の話が出てくる.「和をもって尊しとなす」である. 儒教では「仁・義・礼・智・信」の順番で重要と考えている.昔,NHK で「里見八犬伝」という人形劇をやっていたのを 思い出すが,その中で,確かにそう言っていた.それはともかく,憲法十七条も儒教の影響を受けているが, 聖徳太子は,憲法十七条で,儒教の価値観を(すでにあった)日本における道徳に合わせて修正して, 「仁・礼・信・義・智」の順序に入れ替えているそうだ.たとえば,「義」は上下関係,「信」は平等な信頼関係, 「義」のためにはまず「信」がなければならない,と聖徳太子は考えた.なるほど. 関連して,これもまだ読んでいなかった本,三波春夫先生の本「聖徳太子憲法は生きている」小学館文庫,も引っ張りだしてきて眺めている.尊敬する国民的スターだった,あの「俵星玄蕃」で有名な三波春夫先生のおもしろい本である.
「死者の書」は,読みたいと思っていて,でもいままで敬遠していた小説(?)である. 難解であるが,とにかく,民俗学者であり歌人でもある折口信夫の言語感覚はすごい.

今月の座右の書:
V.I. Arnold, V.V. Goryunov, O.V. Lyashko, V.A. Vasil'ev, "Singularity Theory II, Application", Encyclopaedia of Math. Sci., vol. 39, Dynamical Systems VIII, ed. by V.I. Arnol'd, 1989, English transl. by J.S. Joel. 1993.
特異点論の応用に関する(「応用特異点論」と並ぶ)名著である.その他に,
青本和彦、喜多通武「超幾何関数論」シュプリンガー・フェアラーク東京.
も座っている右側に置いてある.
1 April 2011

前回更新した直後3月11日に大震災があった。悪夢のような状況であり、いまだ危機的である。しかし過剰な反応はやめよう。被災されている方々の役に立つように、自分にできることを冷静にやっていこう、と考えている今日この頃である。
それはともかく、えっーという間に、もう4月エイプリルである。 3月は、ITPの計画書と報告書を書いたり,論文のレフリーをいくつかしたり、5月のポーランドでの講演準備をしたり、共著論文を書いたりしながら、生まれ変わっていた。頭のフタも春とともに徐々に開いてきた。新しい概念もいくつか生み出した。それについてはおいおい説明していく。

ここでは、古い概念、射影幾何の話をする。 空間(多様体)上に「射影直線族」 とよばれる (non-parametrized) 曲線の集合が与えられているとしよう。その集合の要素を「射影直線」とよぶ。 いくつかの条件を課すが、特に、異なる2つの射影直線の共通部分は空集合か1点になるという条件が満たされているとする。 このとき、空間の変換が「射影変換」とは、任意の射影直線をある射影直線に写すときに言う。 空間の部分空間が「射影部分空間」であるとは、任意の射影直線との共通部分が空集合か1点かまたは射影直線となっているものをいう。射影直線は射影部分空間である。

通勤中は、梅原猛「学ぶよろこび -- 創造と発見 --」朝日出版社、岡本太郎「今日の芸術」光文社知恵の森文庫、 伊吹有喜「風待ちのひと」ポプラ社、などを読んでいる。
「学ぶよろこび」は、私(石川)の尊敬する梅原先生のエッセイ集である。活字が大きくて紙が厚いので文字数が少ないが、 中身は濃い。梅原先生によれば、学者の人生には「ラクダの時代」「ライオンの時代」「小児の時代」があるそうだ。 「ラクダの時代」は修行の時代である。(修行は決して楽ではないが。)修行の時代が終わると次は「ライオンの時代」、 学問の権威との闘争の時代である。そして、その後に「小児の時代」修行と闘争を乗り越えた調和の時代が来る。 私(石川)はまだまだラクダの時代、というか一生ラクダで終わる気がする。
「今日の芸術」は、太陽の塔で有名な岡本太郎の芸術論である。 いま放映している NHKドラマの影響で読んでいる。昔、青山の岡本太郎記念館も尋ねたことがある。 大阪の国立民族博物館も好きで数回訪ねたことがあるが、その側に太陽の塔がそびえていて壮観である。 やっぱり芸術はいい、芸術のない人生はつまらない。
「風待ちのひと」もテレビの影響で読んでいる。NHKドラマ「四十九日のレシピ」の原作者、伊吹有喜の最初の小説である。 読んでいると、こころが暖かくなる。

座右の書ではないが、
Serge Alinhac, Hyperbolic Partial Differential Equations, Universitext, Springer (2009)
を眺めている。わかりやすい。
11 March 2011

まーちってる間に、もう3月マーチも中旬である。2月は、成績を付けたり、札幌・長春特異点セミナーに参加したり、札幌・福岡幾何学セミナーの世話人をしたり、大事な仕事をしたり、原稿書きをしたり、共著論文を準備したり、論文のレフリーをしたり、ITPの面接をしたり、計画書を書いたりしていた。3月に入って、さらに、沼津研究会に行って、講演をし、いろいろな講演を聴き、M先生の還暦を祝って、すっかり生まれ変わってきた。

射影幾何学というものがある。空間があり、"射影変換群"が与えられているとき、それを"射影空間"と呼ぶ。射影空間に関して、射影変換で不変な性質を調べるのが射影幾何学である。射影空間には、射影部分空間というものが定義されると仮定する。そして、射影変換は、射影部分空間を射影部分空間に写すと仮定する。 射影空間から別の射影空間への写像について、底空間の任意の射影変換が、上部空間の或る射影変換に持ち上げられるとき、そして、底空間の射影部分空間の逆像が上部空間の射影部分空間となり、上部空間の射影部分空間の像が底空間の射影部分空間となるとき、その写像を"射影"と呼ぶ。 いま、1つの射影空間から2つの射影空間への射影の組「射影2重ファイブレーション」を考える。 この幾何学を展開することはできるだろうか?

通勤中は、トルストイ「人生論」角川文庫、梅棹忠夫「わたしの生きがい論」講談社文庫、 それに、せきしろ、又吉直樹「カキフライが無いから来なかった」「まさかジープで来るとは」幻冬社、などを読んでいる。 「人生論」は、ツタヤで「言いたい放題」という感じで薦めていたので気になっていて、結局、ジュンク堂で購入して読んでいる。トルストイの「死」と「愛」の独特の情熱系の人生観がおもしろい。なぜか、以前読んだ、梅棹先生の「わたしの生きがい論」を思い出して、それも再読している。 こちらは、「生きがい」を否定して、「無為」や「遊び」の脱力系である。 読み比べるとおもしろい。 「カキフライが無いから来なかった」「まさかジープで来るとは」は、 新進の作家とお笑いコンビ「ピース」の一人による、 自由律俳句の句集である。朝日新聞の書評で知った。眺めていると息抜きになり、だんだん頭のフタが開いてくる気がする。おもしろいので、マネをして、自分でもいくつか作ってみた:
どちらかというときれいな人のうしろに並ぶ
早いもの勝ちのお菓子をうばい合う
蚊が多くて困る
この締め切りだけは守る
そろそろビールから焼酎にしたい
今日はこれぐらいにしておく

先日、オスカー受賞で注目されている映画「英国王のスピーチ」を観た。エリザベス女王の父の話である。おもしろかった。映画作りが丁寧で静かなユーモアも良かった。その当時(第2次大戦前夜)の外的状況に対する見方がやや固定的だと感じたが、それは現英国王室が関係してくるから仕方ないか。

今月の座右の書:
ポントリャーギン「最適制御理論における最大値原理」ポントリャーギン数学入門双書6、 坂本 實 訳、森北出版 (2009).
熊ノ郷 準「擬微分作用素」岩波書店.
青本和彦、喜多通武「超幾何関数論」シュプリンガー・フェアラーク東京.
9 Feb. 2011

ふぇ〜という間に,もう2月フェブルアリーである.
1月は,出張で,仙台に行ったり,京都に行ったり,広島に行ったりして,完璧に生まれ変わった.
出張でいろいろ情報が得られたし,卒業研究の指導やセミナー指導,依頼原稿の執筆などは順調にしていたが, これからの研究の内容については,残念ながら,いま一つ進展がなかった.
というわけで,現在は,すっかり調子を崩し,低空飛行で生きている.頭のフタもしっかり閉じてしまって,びくともしない. 何一つアイディアが出てこない感じである.でも,まあいいか.こんな時もあるさ.

通勤中は、岡 敦「強く生きるために読む古典」集英社文庫, マルクス・アウレーリウス「自省録」岩波文庫,三好行雄編「漱石書簡集」岩波文庫, アダマール「数学における発明の心理」みすず書房,などを読んでいる. 「強く生きるために読む古典」はおもしろい."できそこない"のためのブックガイドということで,私(石川)にぴったりである.この本で主に扱っている古典は,「失われた時を求めて」「野生の思考」「悪霊」「園遊会」「小論理学」「異邦人」「選択本願念仏集」「城」「自省録」である.その関連で,本棚から「自省録」を引っ張りだしてきた. ついでに,そばにあった「漱石書簡集」も取り出して,再度眺めている.漱石を読むと癒される. 「数学における発明の心理」は,天才 Hadamard のエッセイである.

今月の座右の書:
熊ノ郷 準「擬微分作用素」岩波書店
昔学生時代に読んでいてよくわからなった.でも,振動積分,波面集合などは,現在の研究と密接に関係しているはずである.
青本和彦、喜多通武「超幾何関数論」シュプリンガー・フェアラーク東京
この本はすごく気になっていたが,まだ読んでいない本の一つである.M先生からの示唆でいま読んでいる.

5 Jan. 2011

がしょ〜んと言う間に新年である.今年もよろしくお願いします.
年末年始は,講義準備や原稿書きをしながら生まれ変わっていた.
元旦は例年通り,北海道神宮に初詣に行った.おみくじを引いたら,今年は「大吉」だった.学問の項は「安心して勉学せよ」恋愛の項は「この人となら幸福あり」争い事の項が「勝つが控えて吉」.なるほどね.あまり面白くないけどね.神の教えのところには.「七ころび八起きという.倒れても起き上り,ころんでも立ち上がり,力をおとさず,希望をすてず」と書いてあった.はい,希望はまだ捨ててませんよ.
それはともかく,今年こそ,フランス語と中国語を勉強したい.なぜ勉強したいか理由は書かない.

続きは後日.
27 Dec. 2010

本当にアッという間に,年末,年の暮れ,今年も終わりである. 札幌・福岡幾何セミナーのプログラム素案も書いたし,ITP事業も年を越せそうである. その他に,いろいろ問題が山積しているが,まあ全部,年明けということである.

年末年始は,(おせちや餅を食べて,お世辞を言いながらモチベーションを高めて)原稿書きと講義準備,京都での講演準備をする予定である.

現在は通勤中に,池田清彦「分類という思想」新潮選書,鶴見俊輔「限界芸術」 講談社学術文庫, 村上春樹「ノルウェイの森」講談社文庫,などを読んでいる. どれも昔読んだものの再読である.
「分類という思想」は,三中信宏「分類思考の世界」を読んだ流れで読んでいる. 最近はテレビ番組でも活躍している著者の本である.面白い.関連して,これも昔買って,でも全然読んでいない, ミッシェル・フーコー「言葉と物」新潮社も,引っ張り出して眺めている.これもなかなか面白い.
「限界芸術論」は,私(石川)が大学1年の頃に読んだ本だが,いま読んでみると,より面白さが分かるようになってきた気がする.芸術を「純粋芸術」と「大衆芸術」と「限界芸術」とに分類している.そこで,鶴見先生の真似をして,数学についても同じように「純粋数学」と「大衆数学」と「限界数学」に分類したくなる.すると,この場合, 「純粋数学」は,いわゆる"純粋数学"とは異なる意味になり,要するに,プロが作るプロのための数学,ということになる.「大衆数学」は,プロが作る素人のための数学であり,「限界数学」は,素人が作る素人のための数学である.もちろん,「プロ」と「素人」の区分けは,時と場合に依存するので,プロの数学者が作る数学でも,「純粋数学」になったり「限界数学」になったりする.
「ノルウェイの森」は,2年前にも読んだが(9 Sept. 2008 の項目参照),映画が公開される,ということで再読している.

では,よいお年を!
9 Dec. 2010

でぃ〜っという間に,もう12月師走ディセンバーである.

11月後半には,画像の研究会が北大であり,さらに,11月末から12月はじめの数理研の研究会,さらに, 奈良女子大で岡シンポジウムがあり,講演して,すっかり生まれ変わってきた.
今は,1月の京都での講演準備と,いくつかの原稿執筆、共著論文の執筆,札幌・福岡・幾何セミナーの準備,de Rham コホモロジーの講義の準備,ITP事業の書類書き,などを並行して行っている.

数理研では,tropical geometry の basic な idea をまとめて紹介した.とくに,Viro が最近やっている hyperfield (超体)の話を 紹介した.

岡シンポジウムでは,「写像の特異点の分類・双対性・応用」という題目で,私(石川)がいままでやってきた分類の仕事に関係することを まとめて話した.まだまだ整理できていないが,勉強する良い機会を持つことができた.ありがたい.

通勤中は,岡潔「日本のこころ」講談社文庫,三中信宏「分類思考の世界」講談社現代新書,高木貞治「数学の自由性」ちくま学芸文庫,黒沢明「蝦蟇の油」同時代ライブラリー,岩波書店,マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』鬼澤忍訳,早川書房,などを乱読している.
「日本のこころ」を読むのは何度目かである.岡シンポジウムに関係して,もう一度読みたくなった. 「分類思考の世界」も,特異点の分類との関係で読んでいる.おもしろい.そもそも「分類」とは何か, たとえば,特異点の分類する場合,分類した特異点の標準形のリストをどのように提示すべきか, 自明ではない問題がたくさんありそうだ. 「数学の自由性」は,最近,数学の自由性を十分に満喫できていないなあ,と反省しながら読んでいる.「蝦蟇の油」は,有名な映画監督である黒沢明の自伝である.昔一読しておもしろかったが,その後,(あまり広くもない家の中で)行方不明になっていたのが,最近,見つかったので,もう一度読んでいる.『これからの「正義」の話をしよう』は,途中で挫折していたのが復活した感じである.ときどきNHKのテレビでも放映しているが,なかなか難しい倫理の話をしていて,悩ましいが,おもしろい.

今月の座右の書:
アダマール「偏微分方程式」(現代数学の系譜14)共立出版 (1997).
岡シンポジウムの折に,A先生が言及されていたので,早速,眺めている.ピカール「偏微分方程式論」現代数学社,はときどき眺めていたが,このアダマールの本は眺める機会がいままでなかったので,開いた頭に水をそそぐように読みふけっている.
P.J. Olver, Classical Invariant Theory, London Math. Soc. Student Texts 44, Cambridge Univ. Press (1999).
E.J. Wilczynski, Projective Differential Geometry of Curves and Ruled Surfaces, Leipzig: B.G. Teubner (1906).
E. Cartan, Lecon sur la Theorie des Espaces a Connexion Projective, Paris, Gauthier-Villars (1937).
上の3冊は,「射影微分幾何の特異点論」という(将来の)プロジェクトのための勉強である.
16 Nov. 2010

のべ〜っという間に,もう11月ノベンバーも中旬である.

10月後半は,ポーランドに出張に行って,もう完璧に生まれ変わってきた.先週から昨日にかけて,中国の長春に行って来て, さらに生まれ変わってきた.北海道大学と長春の大学,吉林大学および東北師範大学との大学間交流事業である.
今回の出張でも,国際交流,数学研究はもちろんだが,ポーランド料理・中国料理も楽しんだ.とくに ポーランドのスープ(ポーランド語で zupa,ズッパ,と言う)は,すっぱいスープ(zurek ズレック)を始め,いろいろな種類があって楽しめる.中国料理(長春料理)は,白酒(はくしゅ,パイジュー)によく合って,いわずもがな美味であった.
長春から帰国するとき,大雪のため,長春空港が閉鎖になり,帰国便が欠航となって,北大関係者ともども, 長春にさらに一泊しなければいけなかった.(航空会社が手配したホテルで,長春でお世話になり,心配して駆けつけて来てくれた S先生,P先生,C先生や,Y先生,I先生とも,もう一度会うことができたのは 嬉しかったが.)さらに, その便は,関西空港経由で,関空での乗り継ぎ便が当日満席だったので手配できず,大阪で一泊せざるをえず, 札幌に帰ったのは,またその翌日になってしまった.大変だった.欠航はもう結構. とはいえ,いろいろな人にお世話になり,また深く交流を楽しんだとも言える.よい経験をした.

いまは, 12月の京大,奈良女大での講演(トロピカル幾何と特異点の分類問題)の準備をしている. 共著論文の執筆も進んでいる.また,新たな共同研究も開始した.北大でのド・ラーム・コホモロジーの講義の準備もしている.依頼されているサーベイ原稿もがんばって書き始めている.
頭のフタは,依然,開きっぱなしである.

M先生から教えてもらった講義録
土屋昭博 述,青本和彦 記「2階偏微分方程式の幾何学的理論,Darboux-Goursat 理論の現代的入門」,名古屋大学レクチャーノート No. 6, Nagoya Univ., (1980).
をポーランド出張中に一気に通読した.あふれる洞察力に感服しながら,今も繰り返して眺めて楽しんでいる.

通勤中は,遠藤周作「フランスの大学生」新潮文庫,橋爪大三郎「世界がわかる宗教社会学入門」ちくま文庫,ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」草思社,高木貞治「数学の自由性」ちくま学芸文庫,中村元「龍樹」講談社学術文庫, などを乱読している.
「フランスの大学生」は,昔,「ぐうたらシリーズ」を愛読した遠藤周作のエッセイである.この本も 学生時代に買ったまま本棚にあり,幾多の引っ越しにも耐えて同行してきた本(昭和52年の初版本)であるが,なぜか初読である.内容は暗い話のようだ.「世界がわかる宗教社会学入門」は,読むと本当に世界がわかる.「銃・病原菌・鉄」は,著者の名前がダイヤモンドなのに,と言いたいところであるが,少しずつ読み進めている.読みながら,数学における銃とは何か,数学における鉄とは何か,病原菌(germ)とは何か,などと考えている.「数学の自由性」は,高木先生の随筆を集めたものである. ところで,高木先生の名著「解析概論」をフレッシュマン・セミナーのテキストにしたら,今の学生は食いついてきてくれるだろうか,などと考えながら,楽しみながら読んでいる.碩学,中村元(はじめ)先生の「龍樹」は,難解だが意外におもしろい. 龍樹(ナーガールジュナ)は,大乗仏教の始祖である.彼にまつわる逸話(現代からすると荒唐無稽な話),哲学(「空」の論理),著作「中論」の翻訳が収められていて,かなり読み応えがある.仏教の哲学は,数理の哲学とはもちろん異なるものだが,読んでいると,相通じるものも感じる.

今月の座右の書: V.I. Arnold, Singularity Theory, London Math. Soc. Lecture Note Series 53, Cambridge Univ. Press (1981).
Arnold 先生の論文集である.私(石川)の愛読書の一冊である.いつ読んでも,新しい感動を味わえる. Arnold 先生が開拓した分類理論のうち(それを超えて?), たとえば,「corank 2 の有限余次元関数芽の分類リストの全体像を知る」ことは私(石川)の長年の夢である.
R. Montgomery, M. Zhitomirskii, Points and Curves in the Monster Tower, Memoirs of the Amer. Math. Soc., No. 956, Amer. Math. Soc. (2009).
P国のM先生と研究連絡するために眺めている.力作である.おもしろい.
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19 Oct. 2010

スペインのマドリッドでの研究会に参加してして,完璧に生まれ変わってきた.
もともとGusein-Zade 先生の還暦記念研究会であったが,Gusein-Zade 先生の師匠であり,最近亡くなった Arnold先生の追悼研究会も兼ねていた.改めて,Arnold先生の偉大さを「あーなるほど」と実感した.
研究で生まれ変わったのはもちろんだが,その他に,スペイン・ワインやパエリアなどを堪能して,ますます 「頭のフタ」が開いた.
ちなみに,「頭のフタ」が開いた状態とは,スペインとは関係ないが,次のようなものである:
ベルギーのルーベンにあるフォン助像1
ベルギーのルーベンにあるフォン助像2
1 Oct. 2010

バーッと言う間に,もう10月オクトバーである. 9月はチェコの後,休暇を取ったり,名古屋の学会に行ったりで,かなり生まれ変わってきた. 名古屋では研究連絡はもちろんのこと,味噌カツ,名古屋コーチンや八丁味噌ビールも堪能した.

現在は,来週からの講義準備,共著論文の執筆,レフリーレポート,来週からのスペインでの講演準備,すこし先になるが, ワルシャワでの視察・研究連絡の準備,京都と奈良での講演準備,などなど,やるべきことが山のようにあるのだが, 一方で,7 Sept. 2010 の項で書いたように,現在,「頭のフタ」が開いた状態,いわば「フィーバー状態」なので,イモズル式に新しいアイディアが次々浮かんでしまい,そうすると,本人は「のんき」でも,頭の中の「数学の女神」が「やれ!」と命じるから,まるで「数学の奴隷」のように身も心もボロボロになるぐらい,数学に打ち込んでしまっている, と言うか,たとえば,ボクシングでガード,クリンチなしで「数学の女神」にいいように打ち込まれて悶絶している, と言うと少し言い過ぎで,それほどでもないのだが,まあたとえば現実に, 通い慣れた通勤経路で信号をよく見て交通事故に合わないように意識しなければイケナイ,という感じの状況ではある. 気をつけないと...まあ, Euler先生 とか Gauss先生 とか偉い数学者は皆さん,ずっとこんな状態なんだろうな,と想像する, と書くのもおこがましいが,それはともかく,こういうことは,めったにないことなので,この状況を楽しみたい.

今,具体的にどんなことを考えているか,その成果については,また後日報告したい.

今月の座右の書:というか,今,たまたま座右にある本は,
Masahiro SHIOTA, Geometry of Subanalytic and Semialgebraic sets, Progress in Math., 150, Birkhauser (1997).
Sera BILLY, V. LAKSHMIBAI, Singular Loci of Schubert Varieties, Progress in Math., 182, Birkhauser (2000).
である.両方とも,論文書きや講演準備のために読んでいる.おもしろい.
17 Sept. 2010

10月からの講義「幾何学続論(多様体続論)」(内容は de Rham cohomology)の構想を練っている. 今のところ,次の内容を考えている:

1. Introduction
2. manifolds and differential forms
3. de Rham cohomology
4. Mayer-Vietris sequence for de Rham cohomology
5. de Rham cohomology and Cech cohomology (Weil's theory)
6. Poincare duality for de Rham cohomology
7. Currents
8. de Rham cohomology and singular cohomology (de Rham's theory)
9. de Rham cohomology and simplicial cohomology (Whitney's theory)
10. de Rham homotopy (Sullivan's theory)

どうだろう?つめこみすぎかな? 少し消化不良を起こすかもしれないけど,まあいいか.

T先生が読んでいたので,真似をして, マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』鬼澤忍訳,早川書房,を通勤中に読んでいる. ベストセラーだそうである.おもしろい.
本の内容の感想は書かないが,「リバタリアン」(libertarian, 自由主義者)という用語がたびたび出てくる. その度に,「オバタリアン」という言葉をつい連想してしまうのは,私だけだろうか?
ところで,この前,チェコのブルーノにゆかりの「メンデル」「ゲーデル」の話を書いたが,今度は「サンデル」である. 3人まとめて,「メンデル」「ゲーデル」「サンデル」である.
さらに,「サンデル」を読んで〜る,と,つい書きたくなる.まあいいか.

それから,院生のK君に教えてもらった,
R.MacPherson, Equivariant invariants and linear geometry.
Geometric combinatorics, 317--388, IAS/Park City Math. Ser., 13, Amer. Math. Soc., Providence, RI, 2007.
も眺めている.おもしろい.toric geometry と linear graph (moment graph)を結びつけている. この話を tropical geometry とつい結びつけたくなるのは,私だけだろうか?まあいいか.
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10 Sept. 2010

先日,チェコのブルーノ(Brno)のことを書いたが,ブルーノは,「不完全性定理」で有名なゲーデル(7 April 2009付けのメモ参照) が生まれたところでもあったが書き忘れていた.今日たまたま以前読んだ「心にしみる天才の逸話20」山田大隆著,ブルーバックス B1320,を眺めていたら,メンデルもゲーデルも取り上げられていることに気づいた.20分の2の割合である.
メンデルが遺伝法則の論文を発表したのは 1866年で,その当時,学界が無反応だったので,落胆して, 「いつか私の時代がきっと来る」とつぶやいていたとのこと. メンデルの業績は,「数学の生物学への応用」であり,一方で,ゲーデルの業績は「数学の限界の証明」 と捉えられるようである.
ちなみにこの本では,ブルーノはブリュン(Br¥"{u}nn)とドイツ語名で書かれている.

百田尚樹の「永遠の 0」(0 は零戦のゼロ)については,いろいろ考えさせられたが, 読んでいる途中は,昔,子供のころ,戦艦大和や零戦の絵を少年サンデーか何かの漫画で見て,カッコイイと単純に感じていたことを思い出した.それから,数年前に鹿児島に行った際,「知覧特攻平和会館」を訪れたり,また別の機会に,広島の呉市の「大和ミュージアム」(?)や江田島を訪れたことなどを思い出した.
トマス・モア「ユートピア」は,まだ第一部までしか読んでいないが,1516年に出版された本だが,(風刺として) 現代でも通用するように思える.
ちなみに,コントコンビ「ゆーとぴあ」の決めゼリフが「よろしくねっ!」である.懐かしい.
7 Sept. 2010

んばぁ〜という間に,すでにセプテンバー9月になっている.
8月はじめにブラジルから帰ってきた後,期末テストの採点や成績評価,大学院入試などあって,それから, チェコのブルーノに行ってすっかり生まれ変わって9月5日に帰ってきた.
引き続き共著論文を書いている.放置していた昔の書きかけ論文も 引っ張りだしてきた.ドラーム理論の講義準備もしている. レフリーレポートも引き続き進めている.
11月の長春の東北師範大学,吉林大学での北海道大学デーの準備,2月の札幌・福岡幾何セミナーの世話人の仕事もある.
それから, 10月のマドリッド,11月の数理研,岡シンポジウム,1月の接触幾何シンポジウムなどでの講演準備をしなければいけない.

チェコのブルーノというところに行ってきた.ブルーノは,メンデル(1822--1884)が遺伝の研究をした修道院のある街である. 研究会の前後に,修道院に併設した「メンデル博物館」を訪問した. 今では有名なメンデルの遺伝法則も,当時は全然認められなくて, 1900年になってやっと再発見されたそうである.研究は「芽の出る」までには時間がかかる,ということか.
ところで, その博物館のそばには,「StaroBrno, ブルーノの星」という地ビールの工場があった.ビール は嫌いではないので,「メンデルを愛でて,スターぶるの」と言いながら堪能した. 日本では猛暑が続いているが,ブルーノは概して涼しかった.小雨が降って風邪を引きそうなぐらい寒いときもあった. 「ブルブルブルーノ」と言ってみんなでふるえていた.

それはともかく, 出張中は,ラグランジュ・グラスマン多様体内のヌル曲面の特徴付けのなどのたくさんのアイディアが得られた. なんだか,「頭のフタ」が開いた感じである.ただいま絶好調である. 今は,異常曲線の摂動問題やトロピカル多項式写像のトポロジーなども考えている.

8月の通勤中は,百田尚樹「永遠の 0」を読んだ. ブルーノ出張には,トマス・モア「ユートピア」岩波文庫を持参した.感想は省略するけど,よろしくねっ!それから テレンス・タオ「数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方」青土社,(Terence Tao, Solving Mathematical Problems, A Personal Perspective, Oxford Univ. Press),も読み始めている.おもしろい.

今月の座右の書:
Raul Bott, Loring W. Tu, Differential Forms in Algebraic Topology, Springer-Verlag (1982).
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
9 August 2010

オッ〜という間にすでにオーガスト8月になっている.
7月は,その間,ITP報告書を書いたり,論文を書いたり,大学院の指導をしたり, 自分の研究の紹介記事を書いたりしてした. 東京に行った後,8月初めまで,ブラジルに行ってきて, 完全に生まれ変わってきた.
今月も書かなければいけないレフリーレポートが複数あるし, チェコ(ブルーノ)行きの講演準備がある.後期の講義準備もある.

後期の4年生対象の講義の「多様体続論」では,多様体上の微分形式と ドラーム・コホモロジーの紹介を行う. ドラーム自身による証明やホイットニーによる証明も紹介したいし, ドラーム・ホモトピーの話も紹介したい.

ラグランジュ・グラスマン多様体には非正定値の共形構造が入るが, それに関するヌル曲線の作るリンクの位相的分類問題を,球面組紐の トポロジーとの関連で考えている.おもしろい.

出張中は,プラトン著「ソクラテスの弁明,クリトン」久保 勉訳,岩波文庫, を持参した.帰国してから, アポロドーロス著「ギリシア神話」高津 春繁訳,岩波文庫,を読み始めている.
「ソクラテスの弁明」は30年ぶりの再読である.その中でソクラテスが主張するように,われわれは何も知らない,ということを知ること,が大切なのだろう.「ギリシア神話」は,読んでみると,いろいろな機会に知った断片的な知識がまとまるので 為になる.
「数学ガール」はまだ机の上にある.

今月の座右の書:
河野俊丈著「新版・組みひもの数理」遊星社 (新版は 2009)
旧版は読んでいたが,改めて新版を眺めている.やはり,すばらしい.
R. Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Sci.(2002)
おもしろい問題がたくさん書かれている.
さらに,
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
も,引き続き座右にある.
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2 July 2010

じゅらぁ〜いと言う間に7月ジュライである.
6月は伊勢に行って生まれ変わってきた. その他に論文を書いたり,大学院の指導(=小言を言う)をしたり,他にもいろいろあった.
ところで,現在ワールドカップサッカーが行われているが,日本代表に関して, 岡田監督の前任者のオシム前監督が比較的辛口のコメントを載せている. 曰く「小言は期待の裏返し」とのことである.関係ないけど.

今月は書かなければいけないレフリーレポートも複数あるし,ITPの報告書もあるし, 頼まれている原稿書きもあるし,7月のブラジル(サンカルロス) 行きと8月のチェコ(ブルーノ)行きの講演準備もある.引き続き充実している.

先月から読んでいた「天地明察」「サイクリック宇宙論」,それから,サン・テグジュペリ「星の王子様」新潮文庫, を読み終えた.
「天地明察」は,囲碁を家業とし,算術(和算)を趣味とし,天文(暦,占星術)で後世に残る仕事をした渋川春海(はるみ)(1639-1715)が主人公の歴史小説である.和算で有名な,関孝和や建部賢明,建部賢弘も登場する.おもしろかった.
ところで,「天地明察」を読んでいて,昔読んだ,井上ひさしの書いた小説「四千万歩の男」を思い出した.「四千万歩の男」の主人公は,本格的な日本地図を最初に作成した伊能忠敬(1745-1818)である. 春海は,40代で日本独自の「貞享暦(じょうきょうれき)」を完成し,初代「天文方」に就任した.一方,忠敬は50代で家業の商売から隠居し,その後から星学を学び始めて日本地図を作った.渋川春海と伊能忠敬のそれぞれの人生の有り様は全く異なる.でも両者の情熱には感動するし,見習いたい.それから,「暦」と「地図」が,どちらも「星」と密接にかかわるのはおもしろい.
「サイクリック宇宙論」は,要するに,現在,宇宙は膨張しているが,そのうち収縮してきて,ある程度収縮したら,また膨張して,伸びたり縮んだりを繰り返す.過去から未来にわたって,それがサイクリックに繰り返えされる,という理論である.理論の基礎は超弦理論,あるいは M理論である.関連して,太田信義「超弦理論・ブレイン・M理論」シュプリンガー・ジャパン,を電車の中で眺めている.
「星の王子様」は,昔,国語の教科書に一節が載っていたが,今回,初めて通読した.冒頭の「うわばみ」について, 新潮文庫では「ボア」という訳がついているのが不満だが,挿絵もきれいで良かった.「いちばんたいせつなことは,目に見えない」ということも共感できる.これからも「見えないものを見る力」を持ち続けていきたい.
「数学ガール」はまだ机の上にある.

今月の座右の書:
Jean Claude Tougeron, "Ideaux de fonctions differentiable", Springer-Verlag (1972).
I.M. Gelfand, M.M. Kapranov, A.V. Zelevinsky, "Discriminants, Resultants, Multidimensional Determinants", Birkhauser (1994).
以上の2冊は,論文執筆の参考書である.さらに,
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
も,引き続き座右にある.
9 June 2010

じぅ〜んと言う間に6月ジューンである.本州ではもう梅雨の季節だ.
5月は論文を書いたり,大学院の指導をしたり,他にいろいろあって, すっかり生まれ変わっていた.
書かなければいけないレフリーレポートも複数あるし, 締め切りに近い原稿書きもあるし,他にしなければいけない仕事もいろいろあり. 7月のブラジル(サンカルロス)行きと8月のチェコ(ブルーノ)行きの準備もある. 「充実している」と考えることにしよう.

通勤中は,「1Q84」の Book3 を読んだ.1ヶ月程でゆっくり読み終えた. おもしろかった.「海辺のカフカ」もそうだが,「虚」と「実」の境界が 曖昧にゆらいで,そこに小説の可能性が見られる、という感じである.早く続きが読んでみたい.
その他に,M先生お薦めの本,冲方丁(うぶかた・とう)著「天地明察」角川書店 や,スタインハート,トゥロック著「サイクリック宇宙論」早川書房, を読み始めている.同僚のS先生お薦めの本「数学ガール」ソフトバンククリエイティブも今,机の上に置いてある.

今月の座右の書:
Shoshichi KOBAYASHI, "Transformation Groups in Differential Geometry", (Reprint of the 1972 edition), Springer-Verlag (1995).
R.W. Sharpe, "Differential Geometry", Graduate Texts in Mathematics 166, Springer (1997).
I.M. Gelfand, M.M. Kapranov, A.V. Zelevinsky, "Discriminants, Resultants, Multidimensional Determinants", Birkhauser (1994).
以上の3冊は,論文執筆の参考書である.さらに,
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
も,引き続き座右にある.
10 May 2010

めぃ〜っと言う間に5月メイである.
4月から新学期が始まり,1年生のための講義や,大学院や学部卒業セミナーを指導して 平穏で充実した生活を送りながら生まれ変わっていた. その他に,レフェリーレポートやら ITP の報告書・理由書やら,推薦書やらをたくさん書いた.論文書き,原稿書きも,なかなかはかどらないが,徐々に進めている.

数学的には,引き続き「旗多様体」上の微分式系の積分曲線の特異性について調べている.通常の「射影双対性」projective duality の変種として,微分式系を介在させて,射影された曲線の「型」や余次元公式についての様々な双対性が得られる.我ながらなかなかおもしろい発見である.

通勤中は,外山滋比古「思考の整理学」ちくま文庫や, 最近は,村上春樹「1Q84,Book 3」新潮社などを読んでいる. 「思考の整理学」は,記憶にないが,たぶん昔に(学生時代に)読んだことがあると思う.読んだこと自体はすっかり忘れているが,身に付いていて共感できることがたくさん見つかる.たとえば,アイディアの生まれる場所として「三上」つまり「馬上(ばじょう),枕上(ちんじょう),厠上(しじょう)」が紹介されているが,その通りだと思う.旅行中,寝ている間,用を足している時,良いアイディアが生まれた経験は何度もある.ただし,馬ならぬ車の運転中には数学は考えないようにしている.その他に,"TV上"(テレビジョンを見ながら,だいたい日曜夕方の「笑点」あたりで良いアイディアが出る)や "湯上"(湯上がり)というのもよくある.
「1Q84」は第3巻の発売日当日に入手した.今は真ん中あたりまで読み進んでいる.

今月の座右の書:
Maks A. AKIVIS, Vladislav V. GOLDBERG, "Conformal Differential Geometry and its Generalizations", John Wiley & Sons, Inc. (1996).
V. OVSIENKO, S. TABACHNIKOV, "Projective Differential Geometry, Old and New, Cambridge Univ. Press (2005).
E.J. WILCZYNSKI, Projective Differential Geometry of Curves and Ruled Surfaces, B.G.Teubner (1906).
Shoshichi KOBAYASHI, "Transformation Groups in Differential Geometry", (Reprint of the 1972 edition), Springer-Verlag (1995).
以上の4冊は,論文執筆の参考書である.さらに,
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
も,引き続き座右にある.
1 April 2010

ぷり〜っと言う間に4月エイプリルである.
3月は大阪と仙台とベトナムに行って,何度もすっかり生まれ変わってきた.
北大数学教室の引っ越しもおかげさまで無事完了して,新しい研究室で新学期を迎える. 部屋にあふれている過去の研究資料を整理して,ついでに頭の中も整理したい.

先日,ベトナムのハノイにあるベトナムアカデミー数学研究所での研究集会に参加してきた.勉強になった. ベトナムは17年ぶりだ.ハノイの街は,相変わらず乱雑だったが,活気とパワーを感じられた. 信号のない道にあふれるバイクと車の洪水の中を横断するのはおもしろい. ベトナムの人はだいたい穏やかで,ベトナム料理も 穏やかでおいしい.衛生状態は改善され,しかも物価もまだ安く,街も比較的安全で快適だった. 数学もいろいろ進展できた.(そのうち報告予定).

通勤中は,本田由紀「教育の職業的意義」ちくま新書 817, や,広田・川西編「こんなに役立つ数学入門」ちくま新書 653,などを読んでいた.
「教育の職業的意義」は,大学で数学を教える立場として,考えさせられる内容である. 著者によると,職業的価値の基本は「適応」と「抵抗」である.「適応」(その職業に必要な能力を身につけたり,職場で円滑に能力を発揮すること)については当然意識していたが, 「抵抗」(上司からの理不尽な要求から自分を守る能力とか,職場などの環境を自ら変えていくこと)に関して,数学の果たすことのできる役割については今まで考えたことがなかった.そういう意味で,「数学を学ぶことの職業的意義は何か」について, 学生に対して説得力のある明確な回答を用意しなければならないのだろう.難しいけれど.
「こんなに役立つ数学入門」は,高校数学を使ったいろいろな研究を紹介している. いわゆる「文系」の分野(社会学,経済学...)に分類される研究の紹介もある. 高校数学のレベルでも役に立つんだから,大学数学を活用できたら, もっと研究が進むのに,と予想するのが自然であろう. それぞれの分野で評価されるには時間がかかるかもしれないが, ともかく数学が貢献できる分野は多い. 北大の「数学連携研究センター」の目的は,そういった方向にもあるのだろう.
それはそうと, 夏目漱石の講演録に「道楽と職業」というのがある(「私の個人主義」などに収録されている).漱石によれば, 道楽は己のため,職業は人のため.他人の気に入るように働いて,その報酬で生活する.働くということは基本的に「他人本位」である. ただし,例外の職業があって,「科学者哲学者もしく芸術家」は,他人本位では成り立たない.「自己本位」でなければならない. だから「科学者哲学者などは直接世間と取引しては食っていけないからたいてい政府の保護の下に大学教授とか何とかという役になってやっと露命をつないでいる」.なるほど.
それで思い出したが,以前,数学の研究に対するほめ言葉を3つに分類したことがある. 「美しい」「おもしろい」「重要」の3つである.そこに,漱石の言う自己本位,他人本位という言葉を入れ込むと,
美しい <-- 自己本位 --> おもしろい <-- 他人本位 --> 重要
となるだろうか.
それはともかく,実際に,学生にとって数学科や数学専攻で数学を学ぶ職業的意義は何か,と問われたら,どう答えたらよいだろうか?数学を深く勉強すれば, "現代社会において環境に抵抗しながら適応し,自己本位と他人本位を調和させながら働く,という高度な術(すべ)を身につけられる",という回答では,具体性に欠けるかな? 
ところで,数学の連携研究も「道楽本位,自己本位」で貫徹できればおもしろい.

今月の座右の書:
Victor GUILLEMIN, Shlomo STERNBERG, "Geometric Asymptotic", Amer. Math. Soc.(1977).
幾何学的漸近展開の教科書である.ベトナムにも持参した.おもしろい.
V.I. Arnol'd, S.P. Novikov 編, "Dynamical Systems VII", Springer-Verlag (1994).
非ホロノーム幾何の部分(Vershik, Gershkovich の執筆部分)は,基本的文献である.おもしろい.
引き続き,
William Fulton, Intersection Theory, Springer-Verlag (1984).
が手元にある.為になる.おもしろい.
1 March 2010

まぁ〜と言う間に3月マーチである.
2月は福岡に行って明太子とモツ鍋で,すっかり生まれ変わってきた.いろいろ勉強させてもらった.
論文・原稿書きや新しい研究テーマ探しも,なかなかはかどらないが,地道に続けている.
今月後半に行くベトナム(ハノイ数学研究所)での講演準備もそろそろ始めたいと思っている.
ITP事業も数学教室の改修もおかげさまで順調である.感謝.

自分の講演や院生指導とも関連して,現在「Schubert calculus」と「Pareto optimality」を勉強中である.
「Schubert calculus」は,20年程前に,Shapiro さんや Kazaryan さんの仕事と関係して調べていたものであるが, 再び巡り会ったという感じである.「Pareto optimality」は,数理経済学に由来するテーマであるが, 今は Gromovさんや Pansu さんの仕事と関係しそうになってきたので興味を持っている.このテーマは,実は, もともと30年ほど前に,恩師 足立正久先生に suggest された研究テーマ(の1つ)でもある.縁を感じる. ともかく,serendipity(「見逃さない」「手をぬかない」ということ)が大事,というか, それしかない,という今日この頃である.

通勤中は, 三中信宏「分類思考の世界」講談社現代新書や, 勝海舟の「氷川清話」講談社文庫, ノーマン・カズンズ「笑いと治癒力」岩波現代文庫などを読んでいる.
「分類思考の世界」は,以前読みかけていたものの再開である.私(石川)は自称「分類屋」なので, 分類に関する本には基本的に興味が湧く.「氷川清話」(ひかわせいわ)は愛読書である.結局,この本は勝海舟の自慢話集であるが,彼の,何事もなるようになる,という考え方は尊敬・共感できる.「笑いと治癒力」も何回目かの再読であるが,読むと勇気が湧く本である.笑うと免疫力が高まる,といったよく知られたことの他にも良いことがたくさん書いてある. 引き続き,「楽しく笑って長生き」できるように努めていきたい.
E.T.ベル「数学をつくった人びと」(田中,銀林訳)ハヤカワ文庫 NF, も引き続き読んでいる.まだ第1巻,オイラーの章である.
他にもいくつか小説・随筆を読んだがここでは紹介しない.

今月の座右の書:
William Fulton, Intersection Theory, Springer-Verlag (1984)
愛読書である.Schubert calculus の勉強のために読み直している.
松島与三「リー環論」共立出版(昭和31年)
京大そばの吉岡書店で学生時代に購入したものだ(初版第5刷,昭和53年出版). まだ読み切れていないが,いろいろ書いてあっておもしろい.
1 February 2010

ふぇ〜と言う間に2月フェブルアリである.
1月は神戸と洞爺湖に行ってすっかり生まれ変わってきた.
その他に,線形代数の講義も多様体の講義もそろそろ終わるので,講義の締めの準備と試験問題を作っていた.論文も書き上げて投稿した.その他の原稿書きや新しい研究テーマ探しも,なかなかはかどらないが地道に続けている.
神戸(兵庫教育大神戸サテライト)の講演準備をしている過程で,「Hahn 級数」というものに出会った.これは,要するに順序集合から体への写像のことであるが, Puiseux 級数の自然な一般化であり,「無限大」「無限小」を現代的に捉える一つの方法となる.ちなみに,「付値」をもつ体を係数にもつ収束 Puiseux 級数は,「トロピカル幾何」と深く関連している.おもしろい.
洞爺湖文化センターの講演では,旗多様体上の微分式系を応用した包絡面の特異性の分類を話した.実は,この研究は,2000年のリバプール特異点研究会でポスター講演した内容なのだが,論文にするのをさぼっていた(正確には,証明を書き切るのをさぼっていた)結果だ.講演準備をする過程でようやく論文をまとめることができて投稿した,という具合である.感謝.

通勤中は,マーシャ・ガッセン「完全なる証明」青木薫訳,文芸春秋, を読んだ.ポアンカレ予想を証明したペレルマンの話である. おもしろかった.青年ペレルマンが どのような経緯で生み出されたのか,というところは非常に興味深い内容となっている. 以前読んだスピーロ「ポアンカレ予想」早川書房,には触れられていない視点である. フィールズ賞やミレニアム問題の賞金を辞退するペレルマンの生き方も含めて reasonable に見える.周囲で,その生き方が正しいとか間違っているとか言っても仕方がない. そうするしか彼にはできなかったのだろう.
たとえ話だが,無人島に一人で漂流して,もし,そこに数学の問題が書いてある紙が落ちていたら,つい,それを解きたくなるのが数学者である.誰も誉めてくれなくても解くのだ.解ければ嬉しいのだ.純粋に問題を解きたい本能があるのだと思う.その上で 誰かに伝えたくなるのも確かである.それも本能だろう.でもそこまでだ. それ以上のことは,また別問題,社会的な問題ということだろう.
E.T.ベル「数学をつくった人びと」(田中,銀林訳)ハヤカワ文庫 NF, も引き続き読んでいる.まだ第1巻,ニュートンの章である. ニュートンも,たび重なる先取権争いや論争に疲れて,錬金術や年代学研究,神学研究に走ったそうだ.なるほど.

今月の座右の書:
R.Bott, L.W.Tu, Differentiable Forms in Algebraic Topology, Springer-Verlag.
いろいろ書いてあっておもしろい.
R.Montgomery, A Tour of Subriemannian Geometries, Their Geodesics and Applications, Amer. Math. Soc..
いろいろ書いてあっておもしろい.
V.I.Arnold, Singularity Theory, Selected Papers, Cambridge Univ. Press.
アーノルドの論文集である.昔からの愛読書である.あーなるほど.
G.ポリア「いかにして問題を解くか」丸善.
本の扉には,4か条 「問題を理解すること,計画を立てること,計画を実行すること,ふり返ってみること」 が書いてある.実は,これらは数学の研究者が日々行っていることだ.それから, 問題設定,つまり問題を見つけること,も研究者の大事な仕事であるが,それは問題を解決していく過程で見つけられるというわけだ. この本の原題は How to solve it. であるが, How to solve it and find another. ということか.
高木貞治「初等整数論講義」共立出版.
愛読書「代数学講義」の姉妹編でもある.いろいろ書いてあっておもしろい. ちなみに,映画「容疑者 X の献身」で福山雅治が演じる物理学者 湯川学の研究室の机の上にもこの本があった.
4 January 2010

じゃ〜んと言う間に新年正月ジャニュアリである.
12月は,何処にも行かずに札幌で生まれ変わっていた.講義準備や 論文書きをしているうちにいつの間にか年が明けた.
元旦は例年通り北海道神宮に初詣に行ってきた.おみくじを引いたら今年は「末吉」だった. 学問の項には「早目に目標を定め全力を尽せ」とあった.はいはい.恋愛は「感情を押え慎重に」とあった.はいはい.転居は「まちて行くのが吉」,今年も年度末に数学教室の引っ越しがあるから縁起が良い. それから,「神の教」という欄に, 「無理に入れれば袋が裂ける,地位も名誉も神まかせ」と書いてあった.なるほどその通りだ. 地道にかんばります. 「...身分不相応は災の基...徳を積んで容器(いれもの)を大きくせよ」はい,がんばります.
それはともかく,毎年,仏語と中国語を勉強することを新年の目標としているが,まだ実現できていない.今年こそと思う所存である.でも,今年は寅年だから,何か新しいことにもトライしたいがー...とつい書きたくなるところだ.

12月は通勤中に E.T.ベル「数学をつくった人びと」(田中,銀林訳)ハヤカワ文庫 NF, を読んでいた.まだ第1巻である. 年末から正月にかけてG.ポリア「いかにして問題を解くか」丸善, を読んだ.この本は,昔からずっと気になっていた本であるが,読む機会がなかった.(昭和29年発行,昭和50年第11版). 今回初めて読んでみたが非常におもしろい.共感できることがたくさん書いてある. いろいろ為になることが書いてあるが,たとえば,p.139 の「未来の数学者」の項目などは,大学院生や将来研究者をめざしている人にはぜひ読んでほしい内容である. また,この本は, 数学の問題を解決するという形式で書かれているが,より広い分野,創造性が必要とされるすべての分野に関わることだろう.こんなふうに,意識的に,「発見的問題解決法」をマニュアル化(方法化)することは 意味のある仕事になるだろう.

今月の座右の書:
河田敬義編「位相幾何学」(現代数学演習叢書2)岩波書店
学生時代からの愛読書.位相空間からホモロジー論,多様体上の微分式まで書いてある.勉強になる.演習書とは言え,非常に意欲的な企画であったと思う.
J.W.ミルナー,J.D.スタシェフ「特性類講義」佐伯,佐久間訳,シュプリンガー数学クラシックス.
勉強になる.おもしろい.
7 December 2009

でぃーっと言う間に12月ディセンバ,師走である. 11月は,広島大学での集中講義「Hilbert 第16問題とその周辺」で,いろいろお世話になった.たくさん勉強させてもらって,すっかり生まれ変わってきた. その後で大垣に行って,またまた生まれ変わった.零からの出発である.
零からの出発とは言え, 昨年から引き続き,境界付き曲面の特異点を調べているが,その分岐の話や, 3次元球面(楕円空間)や3次元双曲空間の中の「枠付き曲線」 について統一的な見方ができつつある.なかなかおもしろい. 多様体の講義録の執筆も進んでいる.トポロジーやその他の原稿,共著論文や翻訳も,ちょっとずつではあるが書き進めている.
数学教室の改修・引っ越しの仕事もおかげさまで順調である. ITPの仕事もおかげさまで順調である.いろいろあるがおかげさまで順調である. とても幸せである.

E.T.ベル「数学をつくった人びと」(田中,銀林訳)ハヤカワ文庫 NF, 柳井正「成功は一日で捨て去れ」新潮社,渋沢栄一「論語と算盤」角川文庫, などを通勤中に読んでいる. 「数学をつくった人びと」は,昔から部分的には読んでいたが,最初から通読している. かなり,偏った見方をしているが(しているから?)おもしろい.ハヤカワ文庫では,全3巻になっているが,まだ第1巻を読んでいる. 「成功は一日で捨て去れ」は,ユニクロ会長兼社長の柳井氏の経営哲学あふれる本である.この手の本を読むのも好きである.ユニクロの服も愛用している. 「即断,即決,即実行」いまだ成功したことは一回もないが,(即断と即決がどう違うかもわからないが)ぜひ見習いたい. 「論語と算盤(そろばん)」は,渋沢先生が道徳と経済活動が相反するものではないことを説いている.その通り,何事も「目先の"もうけ"より信用第一」なのである.

今月の座右の書:
V.A.Vassiliev「Applied Picard-Lefschetz Theory」Amer. Math. Soc.. 幾何と代数と解析が融合する.おもしろい.
W.P.サーストン「3次元幾何学とトポロジー」培風館. 汲めども尽きぬアイディアの泉.おもしろい.
4 November 2009

のぉーっと言う間に11月ノベンバーである. 10月は,新学期が始まって講義をして生まれ変わった.それから中旬からイギリス のダーラム大学に行って視察・講演をして,すっかり生まれ変わってきた. ダーラムはケンブリッジのようにこじんまりとした大学町であり,キャンパスが 町中に点在していて,勉強しやすそうなところである.天気も,毎日,曇りか雨で 落ち着いていてよい.ラテンの空もすばらしいが,アングロの空も味わい深い.
帰国後,科研費の書類を完成させた. 広島大学での集中講義「Hilbert 第16問題」の準備も少しずつ始めている. 論文書きや原稿書きも,なかなかはかどらないが,(マグロかイワシか何かのように 休んだら終わり,という感じで)休まず少しずつ引き続きやっている.
数学教室の改修・引っ越しの仕事もおかげさまで順調である. ITPの仕事もおかげさまで順調である.(これは先月と同じ).

ダーラムには, 三中信宏「系統樹思考の世界」講談社現代新書(1849) と,シドニーに引き続き,Joyce「Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry」Oxford Univ. Press を持参した. 「系統樹思考の世界」は,本屋で同じ著者の新刊書である 「分類思考の世界」講談社現代新書(2014) を見かけ,私は一応,自称「分類屋」なので, その本に興味を持ち,その流れで 「系統樹思考の世界」をまず読んでいる. 「系統樹」は思想的にももちろん重要だが,系統樹を決めるのに, トロピカル幾何(というか,トロピカル演算)が使われているのも興味深い. (もちろん,この本にはそんなことは書いていないが.) 関連して,今は,(「系統樹思考の世界」の中で紹介されている) ジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」という本の上巻を 通勤中に読んでいる.スペインがインカ帝国を滅ぼしたが, 逆にインカ帝国がスペインを侵略することにならなかったのはなぜか. なかなかおもしろい.

今月の座右の書:
ランダウ・リフシッツ「場の古典論」広重・恒藤訳,東京図書. 汲めども尽きぬアイディアの泉.
フリッツ-ジョン「偏微分方程式」佐々木・示野・橋本訳, シュプリンガー・フェアラーク東京.幾何的でよい.
先頭 に戻る.
7 October 2009

おおーっと言う間に10月オクトバーである. 9月は,まず東海大札幌キャンパスの フィンスラー研究会で講演して生まれ変わった.それからシドニー の第3回豪日特異点研究会で講演して, 毎日研究三昧ですっかり生まれ変わって帰ってきた. シドニーでは,研究会が終わった日曜日の朝にオペラハウスまで散歩した. 南半球だから冬なのだが,気持ちいいぐらいに暑かった. 当日はシドニーマラソンがあったが, 参加していたという高橋尚子は見られなかった. それから,明日は帰国だという日, シドニーのホテルで目が覚めると,なぜか空が褐色で薄暗かった. 「あれ,もう夕方?寝坊したか」と一瞬思ったが, 実はシドニーで70年ぶりという赤い砂嵐で空が染まっていたようだ. 札幌でも「黄砂」はときどきあるが,それよりかなり本格的であった. よい経験をした.
帰国後,多様体論の講義準備をした.多様体の講義ノートも一応完成させた. 線形代数の講義準備もした.クラス担任の仕事も完璧だ. いまはダーラム(イギリス)行きの準備をしている. それから,科研費の書類書きも始めている. 広島大学での集中講義の準備も少しずつ始めている. 論文書きや原稿書きも少しずつ引き続きやっている.
数学教室の改修・引っ越しの仕事もおかげさまで順調である. ITPの仕事もおかげさまで順調である.
ダーラムで話す内容を考えている.最近の結果だが, 空間曲線に frame を指定すると,平面の1パラメータ族ができる.それに付随する ジェネリック特異点の分類は既にできているが,frame 付きの空間曲線のジェネリック1パラメータ族に付随する特異点の分類までできた.これも話そうか.
シドニーには,「漱石日記」岩波文庫,と Joyce「Riemannian Holonomy Groups and Calibrated Geometry」Oxford Univ. Press を持参して読んでいた. 漱石のものの見方はおもしろいし共感できる.もちろん時代的な感性の違いに戸惑うことはあるけれど.Joyce の本の内容の数学についても(傾向としては守備範囲なので) 少しは貢献してみたい.また,Joyce の本の書き方もおもしろい.参考になる.
1 September 2009

ばーっと言う間に9月セプテンバーである. 8月は,arrangement の国際シンポジウムやトポロジーシンポジウムがあって生まれ変わった.その後楽しく書類書きなどをして, さらに,室蘭に行ってすっかり生まれ変わってきた.室蘭焼き鳥はうまい.カレーラーメンもよかった.残念ながら「母恋めし」(ボコイめし)とウズラの卵は食べ損なった.
それから帰ってきて,北大の数学教室の美化にも貢献した.エライ.

いま,共同研究の論文書きと,オーストラリアでの講演準備と,東海大札幌キャンパスでの Finsler 研究会での講演準備と,10月からの多様体論の講義の準備をしている.
多様体の講義では,今回は教科書を指定しないで,(originalな)講義プリントを作って配る予定である. 「ベクトル解析をよりよく理解するための多様体論」という切り口で,なるべく「あっさり」と書いている. 本当に多様体を理解するのは,多様体に関するリーマンの講演を聞いて理解できたのがガウスだけだった,という具合で とても難しいのだから,ともかく動機付けだけはしっかり書いておきたい.
それはそうと,広島大学での集中講義(ヒルベルト16問題)の準備もそろそろ始めたい.

「帰ってきた時効警察」角川文庫,と, 橋爪大三郎著「はじめての言語ゲーム」講談社現代新書を通勤中に読んでいる.
以前「時効警察」角川文庫を読んで癒された(17 Aug. 2007 参照).今回も「帰ってきた時効警察」でたいぶ癒されている. 「はじめての言語ゲーム」は天才哲学者ヴィットゲンシュタインについての本だが,あっさり書かれているのがよい. 多様体論も同じように「はじめての多様体論」という感じで書いてみたい.

いま,論文書きの参考のために,Harveyの「Spinors and Calibrations」Academic Press を眺め直している.関連して, コンウェイ--スミス共著「四元数と八元数」(山田修司訳,培風館)も眺めている.おもしろい. ついでに同じ著者のコンウェイ--ガイ共著「数の本」(根上生也訳,シュプリンガー東京)もおもしろい.
6 August 2009

がーっと言う間に8月オーガストである. 7月は,まずポーランドに行ってきてすっかり生まれ変わってきた. カジミエッシュというところで研究会があり,おもしろかったが,蚊が多くて刺されて大変だった. ちなみに蚊のことをポーランド語で「コマール」というそうなので,思わず「蚊はこま〜る」と言っていた.
その後,この週末にオープンキャンパスの公開講座で主に高校生相手に話と実演をして, またまた生まれ変わった.
新しい論文もだいたい仕上がったし,別の昔の論文の修正作業も一段落しそうである. オーストラリアでの講演と東海大での Finsler 研究会の講演準備もしたい. そういえば,多様体論の講義プリントを夏の間に作る予定だった.がんばろう.

通勤中は,最近は癒しを求めて,愛読書である北杜夫「どくとるマンボウ航海記」中公文庫,やら,夏目漱石の「漱石書簡集」三好行雄編,岩波文庫,やら,を再読している. 漱石の手紙は読んでいて味わい深い.弱音をはく弟子に対して,自分は「いやになるまで書いて死ぬつもりである」(p. 147)と書いたり,文壇に立つ心得として 「これでよいと自己で自己を極める分別ありたきものなり」「始めから偉いものを書いたつて人は相手にしない」(p.207)と書いたり. そこで一句「数学をいやになるまでやって死ぬ」.ついでにもう一句 「極めても相手にされぬし偉くもなし」.まあいいか.
村上春樹の新作「1Q84」は読み終えた. おもしろかった.さすが村上春樹だ.とはいえ, いまどきの映画によくあるように続編があるような終わり方だった.小説の世界が広がったと言えるかもしれないが,「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」の方が作品としての完成度が高いと思う.
1 July 2009

らーっと言う間にもう7月ジュライである.早いもので今年も半分終了した. 蒸し暑い.7月はもう少しさわやかなばずなのに... 「北海道には梅雨がない」と言われているが,この数年,北海道にも梅雨が確実に存在しているように思える. それはともかく, 6月は,まず信州に行ってきて生まれ変わり, それから東京の大学院説明会に行ってまた生まれ変わってきた. 書きかけの論文もちょっとずつ書けているし, 7月のポーランドでの講演2本の準備と,8月のオープンキャンパスの講演準備と,9月のオーストラリアでの講演準備をしている.ああ楽しい.

通勤中は,黒木登志夫「落下傘学長奮戦記」中公新書ラクレ,や, 「東大英単」東京大学出版会,や,岩中祥史「札幌学」新潮文庫,や, D.ルエール「数学者の頭の中」冨永訳,岩波書店,などを 乱読している.村上春樹「1Q84」も引き続き読み続けている.
「落下傘学長奮戦記」を読んで国立大学の法人化の意味が少しわかった. 「東大英単」は,読めば少しは知的な(重々しい)英語をかけるようになるかな,という感じの本である. 「札幌学」は名古屋人が書いている本だが,東北人で札幌に永年住んでいる私(石川)は,「なるほど!」 と納得している. 「数学者の頭の中」はおもしろいが,数式が多くて,数学を知っている人しか理解できないかもしれない.ちなみに,朝日新聞に載っていた書評を見ると少し誤解があるような内容だったので,やはり難解なのかもしれない.いわゆる「文系」と呼ばれている人にも,数学者の考えていること(意図や傾向)を(ごまかさずに)少しでもわかってもらえるような文章をなんとかして書いてみたいものである.「1Q84」は現在,下巻の真ん中あたりを読んでいる.
2 June 2009

じゅーっと言う間に6月ジューンである. 5月後半は,線形代数の講義や大学院セミナーの合間に 研究室の引っ越しがあった.理学部の建物の耐震改築のために来年の2月まで別の建物の一室に避難している.
書きかけの論文や本の原稿書きがたくさんたまっているが,なかなかはかどらない. Phase singularity と Web の関係について調べたいし,Non-holonomic system の End point mapping の singularity も調べたいし,Reeb graph 上の関数の分類も考えたいし,Tropical geometry の Rhonkin function についても深く知りたい.
研究テーマが山積しているが手つかずだ.
研究室のダンボールも山積しているが手つかずだ.

通勤中は,ドウス昌代「イサム・ノグチ」上・下, 講談社文庫,の続きを読んでいる.関連して, バックミンスター・フラー「宇宙船地球号 操縦マニュアル」芹沢訳,ちくま学芸文庫 も読んでいる.イサム・ノグチとフラーに親交があったからだ.イサムによるフラーの(ターミネーターを思わせる)胸像は有名だ.だいぶ前に,一般的なトポロジーの講義の準備をしていて,フラーの名前にちなんで名付けられた「フラーレン」や彼の提唱する「シナジー幾何」などをちょっとだけ勉強したことがある. フラーの発想は,なかなか壮大でおもしろい.地球を一つの宇宙船と捉えている.エコ,サステナビリティーなど,やっと世界がフラーの発想にふらふらと近づいてきた感じがする.

ごく最近,村上春樹の新作「1Q84」を読み始めた.数学科出身で予備校で数学を教えながら小説を書く主人公(?)が出てくる.興味深い.
11 May 2009

よーっと言う間に4月も終わって,5月メイも,はや中旬である. 4月は,担任クラスのガイダンスをしたり, 線形代数やトポロジーの講義をしたり,大学院セミナーを始めたり, 書きかけの論文を書いたり,講究録の原稿を書いたり,本の原稿を書いたり, 新たな気持ちでいろいろやった.それから黄金週間があったので,すっかり生まれ変わった感じである. 休暇中は,あーっと言う間にアートポスターを2つ試作してみたりした. それから,特異点セミナーの講演 「Geometry of surfaces with boundaries from singularity viewpoint」 の準備をしたりしていた.この話は, 「境界付き曲面に平坦曲面を接続する」ということであるが, もともと「ツバメの尾が,なぜいわゆる swallowtail という特異点の形をしているか」ということを説明するために考えたテーマだった.それが結果的に,昔, Scherbak 女史が発見した「boundary singularities に関する双対性」と 関係することを見つけたので,ますます面白くなってきた.

最近は, アートづいているわけではないが,ドウス昌代「イサム・ノグチ」上・下, 講談社文庫,を読んでいる. まだ最初のあたりで,イサム・ノグチの父親の野口米次郎がひどい男だった, といったあたりを読んでいる. ところで,イサム・ノグチと言えば, 彼の構想のもとに造られた有名な「モエレ沼公園」が札幌にある. 公園を1つの彫刻ととらえるというコンセプトらしい. 以前,桜を見に,来日していた Goldberg 先生と一緒に車で遊びにいったことがある.
7 April 2009

んーっと言う間に4月エイプリルである. 3月は三重県の鈴鹿に行ってちょっとだけ生まれ変わり, その後,応用特異点論の研究会があり,いろいろ勉強して, それから,スペインのバレンシアに行って,またいろいろ勉強して, 完全に生まれ変わってきた.またまた零からの出発である. とはいえ,帰国後,論文のレフリーレポートを2件仕上げた. 論文書き,原稿書きもした.ああ楽しい.

3月に,おかげさまで北大数学の建物もピカピカに生まれ変わった. これから新学期である.今年度はクラス担任をするので,オリエンテーションの準備をしている.もちろん講義の準備やセミナーの準備もしている.ああ楽しい.

Richard Montgomery 「A Tour of Subriemannian Geometry, Their Geodesics and Applications」Amer. Math. Soc., 2002
の第7章で,幾何構造の同値問題に関する Cartan の方法をあらためて勉強中である. Montgomery によると,通常この方法は "Cartan's algorithm" と呼ばれているが, "Cartan's art" と呼ぶべきだそうだ.とにかく今度こそ,このアートを完全に身につけよう.

ゲーデル「不完全性定理」(林,八杉 訳・解説)の解説を読み切った後, 昔買ってなかなか読めなかった,ホフスター「ゲーデル・エッシャー・バッハ」(野崎,はやし,柳瀬訳)白揚社(765頁)を読み始めた.たぶん,また最後まで読めずに途中で挫折するような気がする.
「ゲーデル」となんとなく名前が似ているから,というわけではないが, 海外出張中には,エッカーマン著「ゲーテとの対話(上)」山下肇訳,岩波文庫, を少しだけ読んだ.(「ゲーテ形態学論集・植物篇」ちくま学芸文庫,も持参したが手つかずだった.) ドイツ文学には馴染みないのだが,たとえば,ゲーテからエッカーマンへの手紙の一節「静かに仕事を続けてください.結局そこから,世界の展望も,経験も,最も確実にまた純粋に生まれるのです」というくだりは共感できる.
この数日は,中山 茂 著「大学生になるきみへ --- 知的空間入門 ---」岩波ジュニア文庫を読み返している.記録によると,この本は 2003 年に一度読んでいるようだが,今回,新入生の皆さんに何か言うこともあるかな,と思い読んでいる.おもしろい.
3 Mar. 2009

こーっと言う間に3月マーチである. 談話会で話をしてすっかり生まれ変わった.また零からの再出発である.といいながら, 3月の応用特異点論の研究会とヴァレンシア研究会の講演のスライド作りも見通しがついたし,論文書きも原稿書きもなんとか進んでいる. レフェリーレポートもいくつか書き上げた. ITP事業も,建物改修の作業も,おかげさまで,なんとか進んでいるようだ.幸いなことである.

いま,
Paul Alexandroff, Elementary Concepts of Topology, Dover, (1961)
を眺めている.57頁の薄い本である.ドイツ語版は 1932 年の出版であり, 古いが定評のある入門書である.ヒルベルトの「直感幾何学」の続編を目指しているようだ. トポロジーの入門としては,このような本を読むのが一番良いのかもしれない. ちなみに,この本では,ホモロジー類(homology class)という用語は使われているが,ホモロジー群(homology group)という用語は(まだ?)使われずに「Betti 群」と呼ばれている. では,homology group という用語は誰が最初に考えたのだろう?

通勤時には, 藤沢晃治「「分かりやすい教え方」の技術」(講談社ブルーバックス), マックス・ウェーバー「職業としての学問」(岩波文庫) を読んだ. 「「分かりやすい教え方」の技術」は分かりやすい本であるが,頭では理解できても, なかなかカラダがついていかない内容である.そういう意味では難しい本であるとも言える. 同じ著者の「「分かりやすい表現」の技術」「「分かりやすい説明」の技術」 「分かりやすい文章」の技術」も読んだが,これらは気楽に読めた. 「職業としての学問」は,読むのは何回目かである.時代背景があり, 後半部分はいまだによくわからないが,とにかく読むと身が引き締まる本である. たとえば, 「弱さとは結局時代の宿命を正面(まとも)にみることができないこと」(p.57) とある. 「時代の宿命」を正視し,しかも時代に流されない,というのが理想なのだろう.難しいことだが.
この2,3日は,ゲーデル「不完全性定理」(林,八杉 訳・解説)を読んでいる. ゲーデルの論文ではなく,解説の部分をまず読み始めている.おもしろい. クロネッカーとカントールの数学の違い, 有限と無限の関係は「数学(論)」の本質的なテーマであろう.
2 Feb. 2009

けーっと言う間に2月フェブルアリーである. 市民講演も無事終えて,岐阜での講演も楽しくやって,あとは,北大での談話会の準備と3月の応用特異点論の研究会での講演準備と3月末のスペイン(ヴァレンシア) での講演準備をしている.
談話会では,「斜め45度に世界観を語る」という感じで,何を研究した(している)か,ということももちろんだが, 何が知りたくて研究しているのか,といった自己紹介をしようかなと思っている.
応用特異点論の研究会での講演題目は「サブリーマン最適制御問題に見られる特異性について」として,主に,最適制御問題,とくに sub-Riemann幾何について, singular geodesics と Carnot-Caratheodory 距離の特異性(small metric-ball, wavefront の特異性)に関する問題提起,こんなことが分かれば嬉しい,というような講演をする予定である.

その他にレフェリーレポートも複数こなし, もちろん論文書きや原稿書きも地道に進めている. 集合と位相の講義と多様体の講義もそろそろ終了して,テストをして採点して成績をつける時期である. 数学の建物の改修作業も ITP事業もなんとか進んでいる.幸福である.

通勤時には,S.G.クランツ「大学授業の心得」蓮井敏訳(玉川大学出版部),梅原猛「地獄の思想(中公新書 134)などを再読している.おもしろい.「大学授業の心得」は,もとの英語版がアメリカ数学会から出版されたときに買って眺めていた.非常にためになるし勇気づけられる.「勇気を持って教える勇気」が持てる感じである.
梅原先生の「地獄の思想」を読むのは, もう何回目になるか分からない.愛読書である. ところで,だいぶ前になるが,梅原先生が江別の札幌学院大で講演したときに, それを聴きに行ったことがある.丁度,梅原先生がガンの手術をした直後(直前?)だったと思う. そのときに,中国では「孔子が神様」として祀られている,という話の部分を聞いて, 「子牛が神様?」(あるいは「Cauchy が神様?」)と聴き間違えたのを思い出す.どうでもよいけど.

今日電車に乗っていたら,「線形写像と固有値」という本を熱心に読んでいる学生さんを見かけました. たぶん,どこかのクラスで教科書に指定されていて,期末テストの勉強をしているのでしょうか.ちなみに, その本は,まだ真新しいようでした...
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5 Jan. 2009

く〜っという間に,年を越して生まれ変わった.
年末には,いくつかの原稿書き(多様体論,トポロジー,数学論)をして,論文のレフリーレポートも書き, 1月の岐阜の研究会,3月のスペインでの講演準備もした.

正月には,餅を食べてモチベーションを高めて,1月の市民講演(トポロジーの考え方)の準備と2月の談話会の準備をした.講義(集合と位相,多様体論)の準備もした.3月の研究会のために,サブリーマン幾何の研究も再開した.ITP関係の英文手紙の書き方も勉強した.ああ楽しい.

それはそうと, 今年の元旦も北海道神宮に初詣に行ってきた.一年の計は元旦にあり.おみくじを引いた. 大吉だった.おみくじの「転居」の項は「よい 早くしなさい」とあった.今年も数学教室の建物の耐震改修で引っ越しがあるので縁起が良い.それから関係ないが,「恋愛」の項は「一線を超えるな」とあった.注意しよう.

今年の目標は,フランス語と中国語とスペイン語を勉強することであるが,理由は言わない.

それはともかく,今年の年末年始は時間があったので,
スタンバーグ「微分幾何学」高橋恒郎訳(吉岡書店)
を読んだ.いままでずっと気になっていたが,なぜかまだ読んでいなかった. おもしろい.第1章 代数的準備,第2章 微分可能多様体,第3章 多様体上の積分,第4章 変分法,第5章 Lie 群,第6章 Euclid 空間の微分幾何学,第7章 G 構造の幾何学,という内容である.だいたい標準的な内容だが,題材の選び方,とくに,第4章と第7章あたりは, 私(石川)の数学の好みの傾向と合っている気がする.この本にはないが,この傾向の延長上に接触幾何の話が続くはずである.このところ,私はこの傾向の上で特異点論をやっている,とも言えるような感じである.

さらに,酒井邦嘉「科学者という仕事」中公新書 を再読して気を引き締め, 水木しげる「猫楠」角川文庫 も再読して気を大きくした. 「科学者という仕事」は,科学者は皆読むべき本かもしれない.「猫楠」は, 粘菌研究で有名な南方熊楠先生について,水木しげる先生が描いたマンガである. まさにロゴスとパトスの饗宴である.
22 Dec. 2008

き〜っという間に,もう年の暮れである.京都に行ってきて生まれ変わってきた.来年もマイペースで 研究と教育とその他についてやっていきます.

通勤時には,衝動買いした,アドワード・ギボン「ローマ帝国衰亡史」中倉玄喜訳(上,下,普及版)と,江戸川乱歩「怪人二十面相」ポプラ文庫クラシックと「オバマ演説集」を読んでいる. 「ローマ帝国衰亡史」は,ちくま学芸文庫の全10巻のが良いらしいが, もともとローマ文明よりも古代ギリシャの文化を高く評価していた関係で,ローマ帝国のことは敬遠してあまり知っていないので,普及版でも十分おもしろい. 「怪人二十面相」は, なつかしい表紙に惹かれて,最近出た文庫版(復刻版)の方を読んでいる.昔よんだ本の表紙や挿絵をいまだに覚えている(見れば思い出す)というのは,要するに,子供の時の見聞がいかに印象に残るか,いかに大切か,ということを示しているのでしょう.内容も(おじさんが読んでも)わくわくしておもしろい. 「オバマ演説集」は,付録で付いている CD を聴いているだけでもおもしろい.Yes we can!

では,良いお年を!
1 Dec. 2008

か〜っという間に,もう12月,師走である.いま,一所懸命に京都での講演準備をしている.講演内容は来年1月の岐阜の研究会,3月のスペインでの講演準備も兼ねている.ついでに2月の談話会の準備もしている.そういえば,3月の応用特異点論の研究会の準備もしなければいけない.1月の市民講演「トポロジーの考え方」の準備もある.いくつかの論文を書きかけだ.その他,いろいろな原稿を頼まれているので,その原稿書きもある.推薦書もたくさん書く.締め切りが近づいているレフリーレポートも書かなければ...
もちろん,講義の準備もある.特に多様体論の講義ノートはこの機会にぜひまとめておきたい. 画期的なものにしたい.それから,建物の改修の仕事もある.ITPの仕事もある.ああ毎日が楽しい.

通勤時には, 細野真宏「細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!」(小学館)を読んでいる.なんとなく「数学的思考力」が身に付いてきた気がする.とくに「 "分かったつもり"の抜け出し方」は役に立つ. 村上春樹「遠い太鼓」も引き続き読んでいる.
4 Nov. 2008

あ〜っという間に,もう11月である.この一ヶ月,遠出はしなかったが,ときどき生まれ変わっている.
講義も演習も順調,科研費の書類も仕上がったし,改修の仕事もまあまあ進んでいるし(進みそうだし),ITP事業のヒヤリングもそつなくこなしたし...
そういえば,12月締め切りの論文レフェリー2件のレポート書きがまだ手つかずだが,まあ,なんとかなるだろう.
ところで, 講義や今後の卒業研究のテキスト選びに関連して,定評のある教科書
ニッカーソン,スペンサー,スティーンロッド 著「現代ベクトル解析」(岩波書店)
フランダース 著「微分形式の理論---およびその物理科学への応用」(岩波書店)
シンガー,ソープ 著「トポロジーと幾何学入門」(培風館)
坪井 俊 著「幾何学III 微分形式」(東京大学出版会)
を眺めている.すごくためになる.多様体の講義をどう展開していこうか楽しみである.

「一九三四年冬---乱歩」はすぐ読み終わり,ついでに乱歩のこわ〜い小説を眺めたりしている. 「グレート・ギャツビー」は,すこしずつおもしろくなってきたような気がする.村上春樹の小説をよんでいるような錯覚も覚える.
それから,通勤時に Atiyah-Singer の「Index of elliptic operators I, II, III」も読んでいる. 学生時代にコピーして製本していたものである. Atiyah の論文は,内容はもちろん難しいが,いつも読みやすく書かれている.昔眺めて,すっかり中身を忘れた(身に付いていない)論文ではあるが,とにかく上質な論文を読むのは心地よい.
3 Oct. 2008

い〜っという間に,もう10月である.先日,東京に行ってまたまた生まれ変わってきた. そして,新学期が始まって,気分一新,より一層数学に励もうと思う今日この頃である.
ところで,年度末のスペインの研究集会の講演のためのネタを考えていたら, Legendre surfaces with boundaries の話に思い至った.境界付き曲面の微分幾何学を接触幾何を経由して展開するのである. 私が,いままで考えてきたことを集大成した話になりそうだ.これはおもしろい.
とはいえ,講義の準備をしたり,改修関係の仕事をしたり, ITP事業の変更理由書を書いたり,論文のレフリーをしたり,科研費の書類書きをしたり, COEのつきあいをしたりして,いろいろ忙しい日々である.まあいいか.

と言いながら,先日,映画「落下の王国」をシネマ・キノ(狸小路)に見に行ってきた.おもしろかった.構想にオリジナリティーがあるし,映像もきれいだし,脚本もよいし,子役もよかったし, とにかく映画に対する愛があふれていて良かった.私の好きな映画ベスト4は,(50年の人生で)いまのところ,
1.アマデウス
2.フォレスト・ガンプ---一期一会
3.タンポポ
4.XYZ マーダーズ
だが,それに匹敵する作品になるような気がする.本では,村上春樹の「遠い太鼓」の残りと,読み終えた「ノルウェーの森」との関連で 「グレート・ギャツビー」(村上春樹訳)と,それから久世光彦「一九三四年冬---乱歩」(新潮文庫) を通勤時に読んでいる.「グレート・ギャツビー」は何処がおもしろいのか,まだわからない.久世光彦と言えば,なつかしいドラマ「時間ですよ」を演出したことを思い出すが,小説もなかなかよい.新しいものを生み出す「生みの苦しみ」は,作家も数学者も同じである.
9 Sept. 2008

う〜っと言う間に9月である. ポーランド(ポズナン近くのベドレボとその後ワルシャワ)に行ってきて,生まれ変わった.Lagrange variety の研究と Legendre variety の研究に新しい境地を見いだした. 今は,科研費の書類作成とレフリーレポートと講義の準備で忙しい.

ポーランド滞在中は, 好きな数学を思う存分やり,疲れたら,村上春樹の「遠い太鼓」や「ノルウェイの森」を ビートルズを聞きながら読んで過ごした.幸福は人生の断面にあり.この旅も幸福であった.
「遠い太鼓」は旅行記(村上春樹のヨーロッパでの3年間の海外滞在記)だが, 一度旅行の際に持参して読んでみたいなと思っていた. 村上春樹はその時期に2編の長編小説「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」を書いている.その中で「ノルウェイの森」はあまり読んでいなかったので,この機会にそれも読んだ. 「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」に比べると少し深みに欠けると思うが,やはりおもしろい青春小説である.
帰国後は,文庫になった「容疑者 x の献身」を通勤時に読んでいる.数学者と物理学者が出てくる推理小説である.
14 Aug. 2008

え〜っと言う間に,8月ももう中旬である. シーザー(Julius Caesar)がアウグスツス(Augustus)に変わったわけだ.
それはともかく, ブラジルに行って,完全に生まれ変わってきた.24時間以上飛行機で揺られていると,それだけで 自然に「頭のふた」が開いて,風通しがよくなった.
月末には,ポーランドに行って,flat structure (= Frobenius structure) の勉強と共同研究をして,またまた生まれ変わって,別人になって来ようと思う.
ともかく,いまは講演準備と論文書きで忙しい.科研費の文章書きや,10月からの授業の準備で忙しい.お盆やオリンピックや高校野球どころではない...(似ていると言われている柔道の鈴木桂治も負けたし)
本もいろいろ読んでいるが,ここに書くべきことはなかった.
14 July 2008

おっ〜と言う間に,7月ももう中旬である.June が July に変った.
先月は京都に行って,(川床(かわゆか)初体験をして)生まれ変わり, さらに先週,熊本に行って,さらに生まれ変わってきた. 今月末には,ブラジルに行って,またまた生まれ変わってくる予定である. 日々好日.すべてのしがらみを捨てて,今日を生きる,という感じである.
(注:京都の貴船の川床は「かわどこ」と読み, 京都の鴨川の川床は「かわゆか」と読むと教わった. 高木レクチャーで来日した V先生たちと鴨川の川床でハモを食した.)
熊本は,T先生に集中講義に呼んでもらって,ヒルベルト16問題の講義をした. 一週間,よく勉強して,錆び付いた頭に油を注すことができた. とくに,実代数幾何のパッチワークとトロピカル幾何,アメーバ,ロンキン関数,それから(離散)ルジャンドル変換とモンジュ・アンペール測度の関係がだんだん見えてきた. とても良い気分である.
とはいえ,札幌では,また,日々の問題の解決に油を搾られることになりそうだが...

それはそうと, 熊本で,キム・ステルレルニー著「ドーキンス vs. グールド」(ちくま学芸文庫) という本を読み始めた. ドーキンスの「利己的な遺伝子」(旧訳では,「生物=生存機械論」という名前で出版されたものを持っている)とグールドの「ワンダフル・ライフ」は,私の愛読書なので, 両者ともひいきにしたいわけだが,とちらが上なんだろうか? 単純に比較するのは短絡的なのであろう.
それから,先月から,通勤時に,司馬遼太郎の「峠」(新潮文庫)を読んでいる. 幕末の英才,越後長岡藩の河井継之助(つぐのすけ)の生涯の物語である.だいぶ前に読み始めて,途中で挫折していたのだが,やっと中巻まで進んだ.
9 June 2008

とくに書くべきことはなかった,
と下に書いたが, 「数学のすすめ」(筑摩書房)という昔読んだ本を読み返した. 奥付のところに,51.5.25 と鉛筆で書き込んであり, 私が大学に入学したて(昭和51年5月25日)のときに買って読んだようだ.この本を読んだことが,私が数学をやろうと決めた大きなキッカケだったのかもしれない.
記憶があまり定かではないが, 小平邦彦先生の「数学の印象」という文章の「数覚」という言葉だけには,深く感銘を覚えたことだけは記憶していた.赤攝也,前原昭二,村田全,秋月康夫,彌永昌吉,岩村聯,久賀道郎,小平邦彦,清水達雄, 正田建次郎,末綱恕一,菅原正博,竹内順治,田村一郎,一松信,吉田洋一,といった蒼々たる執筆陣である. 今回,他の文章ももう一度読み返したが,非常によいことが書いてある. たとえば,末綱先生の「数学の基礎について」という文章に,「華厳教」のこと(「一即一切」などのこと)が出て来るが,今なら共感できる.
3 June 2008

あ〜っという間に6月である。引き続き、集中講義の準備とブラジルでの講演準備をしている。 講演準備をしていたら、 ラグランジュ曲面の特異点を摂動して得られる2重点の個数と特異点(open umbrella)の個数に関する公式を発見した。 さらに、ラグランジュ曲面の自己交点数とセグレ数が関係することを発見した。 なかなか面白い。瓢箪から駒という感じである.(詳細は後日,報告予定)

昔読んだ本を読み返しているが、とくに書くべきことはなかった。
1May 2008

ア〜ッという間に5月である.講義も始まり,日常が帰ってきた感がある. 講義の質問書の回答を書いたり, 集中講義の準備をしたり,ブラジルでの講演準備をしたり, 共著論文の仕上げをしたり,論文を読んだり,など,ぼちぼち活動を再開している. トロピカル幾何の研究も再開したいところである. いろいろ興味があり時間がないが,「コアリズム」も一度試したいと思っている今日この頃である.

「夢をかなえるゾウ」を読み始めている.この手の本は,好きでよく読む.
2 April 2008

アッという間に4月である.新入生が入ってくる時期である.そろそろリハビリを兼ねて,講義の準備を始めようかと思う.

何年も放ってある共著論文を進展させるために,カルタン接続の勉強を始めている. 小林昭七先生の本や田中昇先生の論文,竹内勝先生の論文,などを終日眺めている. 1ヶ月ぐらい集中すれば身に付くかな.

横尾忠則さんの「隠居宣言」も,題名に惹かれて読んでいる.あやかりたい.
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24 Mar. 2008

あーっという間に平成19年度も,もうすぐ終わりである. 送別会とか,イノベーションのシンポジウムとか,学振の国際交流事業(ITP)の準備とか, 奈良女子大学での M先生退官記念研究会とか,いろいろあった.原稿書きや論文修正もやった.がんばった.教室主任業務もあった.なんとか3月末まで無事乗り切れればよいが...

通勤時に,夏目漱石の「草枕」と,柘植俊一「反秀才論」(岩波学術文庫)を読んでいる. 草枕は,中学時代に初めて読んだがさっぱりわからなかった.今,読み返してみて,そりゃ,中学生にはわからないだろうな,と納得した.「智に働けば角が立つ,情に棹させば流される」まあ,中年になるとわかってくるかなあ.それから,「反秀才論」も僕の愛読書でこれで何度目かである.相撲や柔道や断食のことなど,いろいろ骨太のことが書いてあって,おもしろい.

ごくごく最近,I先生推薦の「理系のための口頭発表術」という本と, そのそばで見つけた「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」(ともに講談社ブルーバックス)も読み始めた.これらは,実用書である. 口頭発表も,英会話も,その度に,上手になりたいと痛感するが,私の性格上,しばらくするとテンションが下がってしまう.この2冊は,挫折しないですみそうなので, 役立ちそうである.
26 Feb. 2008

あーっという間に2月ももうわずかである.東京の学術振興会に行ってヒヤリングを受けてきた.8分間のプレゼンをして,8分間の質疑応答を,お偉方の前でした.イカリングは好きだけど,ヒヤリングは苦手だ.でも,まあなかなか経験できないことなので,楽しかった.その後,博多に移動して,若手研究者の話を聞いてから,イカリングならぬイカの生き造りを味わった.まあイイカ.その他に,論文のレフリーレポートを2編仕上げたり,共著論文の校正をしたり,仲裁したり,妥協したり,がんばったり,胸キュンしたり,ともかく,おもしろい日々である.でも,講演準備したり,論文を書いたり,はあまりできなかった.イカガなものか.

「イカの哲学」(中沢新一・波多野一郎著,集英社新書)を読んだ.イカした本である.それから,関係ないが,スタンダールの「赤と黒」(光文社古典新訳文庫)やドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」(同文庫)もぼちぼち読みすすめている.一度は読んでおくのがイイカなと思って.
26 Jan. 2008

あっと言う間に1月もそろそろ終わりである.教室主任の仕事もそれなりに がんばっている.とはいえ,まだまだ先が見えない.忙しくて,頭が麻痺してきたのか, 毎日数学を考えなくても平気になってきた.これはヤバイ(悪い意味で). とりあえず3月のM先生シンポジウムでの講演準備をしよう. まあ.ぼちぼちやっていきます.

通勤時に,カフカの「城」新潮文庫をよんでいる. 数週間前の朝日新聞の書評に出ていたので,読んでいるが, 何となく宮沢賢治的であり,つげ義春(ねじ式で有名な)的である感じがする. おもしろいと言えばおもしろいが,でもよくわからない小説だ.そういえば, 数年前にプラハに行ったとき,(別の)M先生とカフカの家を見に行った記憶がある.
4 Jan. 2008

あっという間に年が明けた.今年も元旦に初詣に行って,今年もおみくじを引いた. 大吉だった.でも「縁談」の項目が「自慢して嫌われる」となっていたので,自戒します. 今年の目標も「フランス語」と「中国語」をマスターすること,でも, なぜその目標を立てたかは言わない.

昨年の暮から,武富健治の「鈴木先生」双葉社(3巻まで)というマンガを読んで, それから,ジョージ・スピーロ著「ポアンカレ予想」永瀬輝男,志摩亜希監訳,早川書房を読んでいる.「鈴木先生」は年末に駅前の紀伊国屋で見つけて,ついつい3巻まで読んでしまった.共感する部分もある.「ポアンカレ予想」は,非常におもしろく,取材が周到でよいが,不正確な部分もあり,監訳が大変だったのでは,と想像される.数学者の人間的な(ゴシップ的な)情報を理解するには良く書けていると思う.
12 Dec. 2007

あっと言う間に師走だ.雪は少ないが寒い.11月から今まで,大垣に行ってきて生まれ変わり,京都に行ってきて生まれ変わり,休暇を取って雲隠れして,生まれ変わって再出発しているところだ.とはいえ,会議も多く,原稿の締切りもあり,新たに勉強したいことが山のようにあるが,なかなか手に付かない.(と言っている暇に勉強すればよいのだが,なかなかね...)まあいいか.

通勤時間で,いま,加藤文元さんの「数学する精神」中公文庫,を読んでいる. なかなか伝えづらいことを工夫して丁寧に説明する筆力があり感心する.良質な数学入門である.
8 Nov. 2007

ああっーいう間に,もう11月である.北大キャンパスの紅葉シーズンも 終わりかけている. 会議がたくさんあった.申請書書きをし, Mikhalkin さんが離日し,帯広に行き,原稿書きをした.いろいろあった.
数学の研究面では,永年やっている Lagrange variety の分類,symplectic space 内の varieties の分類と,non-linear Stokes phenomena が関係することを再認識して, あたらしい境地に踏み出そうとしている.充実した日日である. 研究時間があまりとれないのが難点だが.

と言いつつ,通勤時間などで, 「佐藤幹夫の数学」日本評論社,「Mind Hacks 」オライリー・ジャパン,「小泉八雲集」 新潮文庫,「イワン・デニーソヴィッチの一日」新潮文庫,を読んでいる. 「佐藤幹夫の数学」は,読むと数学をする気になるし,「Mind Hacks 」は脳について勉強になる.「数学教育と脳」という研究テーマに役立つ.「小泉八雲集」は,昔読んだ,山田太一の本からの流れで,「イワン・デニーソヴィッチの一日」は,僕の愛読書で,7,8回目である.
5 Oct. 2007

あっーという間に,9月が過ぎて,10月になってしまった.Mikhalkin さんが 来日して,北大で研究会をやり,東北大に行き,東大へ行き,教室主任の仕事をこなし, 投稿論文の修正をし,論文も読み,執筆し,本を読み,酒を飲み,いろいろあった.

蔵本由紀先生著「非線形科学」(集英社新書)を読んで感動した. 広い意味の自然を認識する力を感じた.勉強になった.
31 Aug. 2007

あっと言う間に,8月も終わりである. 東京に行って,大学院入試の面接を行い,札幌に戻って大学院入試の面接をしたあと, 鹿児島に行って生まれ変わってきた.

会議が多く,数学をする暇があまりないが, 最近,シンプレクティック R^4 の中の,Whitney umbrella の分類を考えていて, 少しだけ進んだ.この話は,Melrose の glancing hypersurface の話などの ように C^¥infty では normal form が決まるが,analytic には決まらないという話に なっているようで,おもしろい.

いくつか小説を読んだが,とくに書くべきものはなかった.
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17 Aug. 2007

あっと言う間に,8月もはや半ばである. オープンキャンパスとか,会議とか,いろいろあった. トロピカル研究会のプログラムも作った. 数学の研究も原稿書きも進まなかったが,Sevenheck の学位論文を読んで, さらに,Manetti さんの論文で
"extended deformation theory"
の勉強をした.これは要するに,deformation theory を differential graded Lie algebra を介して構成する話で,特異点論(Lagrange Variety の特異点論) はもちろん,Kontsevich の deformation quantization などと関連してきて, とてもおもしろそうだ.

といいながら,オープンキャンパスなどで大勢の前であいさつしたので, なぜか,何か柔らかいものを読みたくなって「時効警察」(文庫本)を読んだ. おもしろかった.それから, 「夕凪の街,桜の国」(マンガ本)も読んだ.映画も見た.泣いた.今は,以前読んだ 「ほんまにオレはアホやろか」(私(石川)の尊敬する水木しげるさんの自伝)を 読み返している.という感じで,ちょっとだけ癒されている.

また週末から,東京でお仕事があるので,生まれ変わってきたい.
2 Aug. 2007

ああっという間に,はや8月である.京都に行って来て,またまた生まれ変わった. その後,数学教室主任のいろいろな仕事をこなしながら,共著論文の修正をした.
次ぎの日曜は,オープンキャンパスで学科紹介をし, 月曜に「高校生講座」で,やはり長めの学科紹介をする.そこでしゃべる内容も準備したい. まあ,アドリブでなんとかなるかな.

依頼されている原稿に手がつかないが, そろそろ始めないと...
書きかけの共著論文も他にたくさんあった.書き出さないとすぐ忘れて, またイチから考えることになってしまうかな.まあいいか.
それから,トロピカル研究会のプログラムも作らないと.Mikhalkin との共同研究の準備もしないと...まあいいか.
といいながら,以前に,九大のN君からもらった, Sevenheck という人の学位論文(Lagrange-Singularit¥"{a}ten) をいま読んでいる.おもしろくためになる.ちなみに,Sevenheck とは 「7つの地獄」という意味である:
1.ラグランジュ特異多様体
2.変形理論
3.階数つき微分リー代数
4.亜群に値をもつファイバーカテゴリー
5.ラグランジュ・ドラーム複体
6.D-加群の特性多様体
7.アイソトロピック写像の安定性
という7つの地獄めぐりをする.
25 July 2007

あっと言う間に,7月も下旬だ.東京で説明会をして,英国(リバプール)と ポーランド(グダンスク付近のソポト)に行って生まれ変わってきた. 今日は,これから,京都に移動する.Lagrange immersions の特異点の話は, なかなかはかどらないけど,まあまあぼちぼち研究を進める感じである.

いまは,文庫で最近出ている「カラマーゾフの兄弟」の第2巻を読んでいる. なかなかおもしろくならない.第5巻まで買ってあるのに.
29 June 2007

今月は早稲田で講演してきて,レフリーレポートを書いて,来客があって, 論文ゲラ校正をした.会議にいっぱい出席した.
教室主任をやって,はや,3ヶ月経った. 1年任期のうちの4分の1がもう過ぎてしまった. とはいえ,これからいろいろありそうで楽しみである.

今日(29日)の夜から東京に移動して,30日に八重洲で大学院入試の東京説明会をする. その日の夜に札幌に帰って来て,7月1日にあわてて講演準備をして, 7月2日から英国とポーランドに行って生まれ変わってくる.

いま,村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」を読み返している.以前,買った文庫本は 何度も読んでボロボロになっているので,上巻,下巻ともに今は2代目になっている. 「羊をめぐる冒険」とともに僕の愛読書である.やっぱりおもしろい.北海道(札幌)が舞台になっているし.
それとは別に,「黒体と量子猫」(ハヤカワ文庫NF)という軽い科学エッセイを読み始めた.旅の友である.
4 June 2007

あっと言う間に6月だ.May が June に変った (cf. 村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」).

昔読んだ,ジェームス・D・ワトソン著「二重らせん」 を少し前にまた読み返した.
その後で最近,福岡伸一「生物と無生物のあいだ」講談社現代新書 1891 をおもしろく読んだ.まず,文章というか,構成が舌をまくほど巧みである.つい読みすすめてしまう感じである.また,いくつかのエピソードも折り込んであって読み易い.「二重らせん」も顔を出す.そして,研究における公正さとは何か,を考えさせられる.(cf. 酒井邦嘉「科学者という仕事」中公新書 1843).
さらに, 生物とは「動的平衡系」である,ということがこの本の結論であると思うが,そうすると, 生物は「時間」の概念を使って定義される存在なわけだ.ちなみに,「時間」はマクロな概念である.(cf. 橋元淳一郎「時間はどこで生まれるのか」集英社新書).したがって,生物はマクロな存在であるわけだ.(マグロではなくマクロ).他に,研究者の生態やアイディアもたくさん書いてあって,大変参考になる.

週末に, 北海道数学教育協議会の数学教育実践研究会で講演してきた.(たぶん反面教師として...)今週は,早稲田で講演がある.その準備をそろそろ始めないと.
大学院入試の東京説明会の企画も考えないといけないし, 7月の海外出張の講演準備と,数理研での講演準備がある.9月のトロピカル研究会 の企画はやっと動き出したが,まだまだ手をかけなければいけない. レフリーすべき論文もあった.書きかけの共著論文も5,6編あった.投稿した論文で音沙汰がないものについては問い合わさないといけない.依頼原稿も催促が来ているので,身を入れて書かないといけない...
新書をよんで,こんな「ブログ」を書いている暇はなかった.まあいいけど.
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25 May 2007

気がつけば,5月も押し詰まってきた. 教室主任になって,はや2ヶ月がなんとか過ぎた. 月日の流れが 早いような遅いような,毎日いったい何をやっているのかわからない, 変な感じの生活である.まあ,充実した生活としておこう.
もうあまり記憶がないのだが,ちょっと前に, レフリーコメントを2本を仕上げ,学振の評価書も2本書いた. Gabrielov 先生や泉先生が来て研究会を主催した. それから, 去年投稿していた論文のレフリーコメントが届いたので, 論文を修正した.
今は,ポーランドでの講演準備のために, 孤立特異点を持つ isotropic map-germs $f : C^2 ¥to C^4$ の分類と,coisotropic map-germs $f : C^3 ¥to C^4$ の分類を考えている.私(石川)の 分類手法と,いわゆる algebraic restriction の方法の 関係を解明したいが,なかなか難しい.でもおもしろい.
いくつか頼まれている講演の準備もしなければいけないし, 催促が来ているので,原稿書きも手をつけなければならない. 共著論文の途中のやつも4,5編ある.
やれやれ大変だ.tropical geometry の研究会の準備も しなければいけないが,いっこうに準備がはかどらない. 困った困った.
「脂がのったトロピカル」

私(石川)の尊敬する梅原猛先生の「法然,十五の闇」上,下,(角川文庫)を 読んでいる.
法然は十五歳のときに「引きこもり」,その後30年ぐらい引きこもったあとで,新しい仏教を作ったわけだが, 五十歳になったら引きこもって,八十歳ごろに新しい数学を作りたいと思う. 「五十の光」ということである.
19 April 2007

週末に,原稿書きをしようと思っていたら,singular Lagrange surface の分類について,新しいアイディアを思い付いて,それを考えていたら,土日がつぶれてしまった.いままで平面曲線の特異点の分類をしばらくやってきて,その自然な拡張になっていて楽しいのだが,他のやるべき(やりたい)仕事をする時間がなくて,困るといえば困る.

ところで, 教室主任の仕事も,やっていると(強がりではなく)何だか楽しくなってきた.こういった仕事に自分は案外向いているのかも,と思っている今日この頃である.
とはいえ,tropical geometry の研究会を秋にやる予定で,その organize をしなければ いけないが,主任の仕事が楽しくて,なかなか考える暇がない.tropical geometry の講義準備もあった,共著論文の原稿書きもあった.ああ.どうしよう. まあ,なんとかなるかな.
2 April 2007

あっと言う間に,もう4月だ. 3月は沼津へ行った.それから埼玉大の数学会に行って来た. トロピカル幾何学入門の講義録を仕上げた.

これから1年間,教室主任で楽しい毎日になりそうである.その毎日の楽しさで, 数学の研究を忘れないようにしよう.

いろいろな原稿を頼まれているので,それを週末の楽しみにしよう.

いま,ブルーバックスの「進化し過ぎた脳」を読み始めている. 対話式の書き方が参考になる.
5 March 2007

トロピカル特異点論は順調に生育中である. トロピカル特異点は,non-Archmedean-Log 写像の特異点と考えれば良いようだ. (あるいは,limit-Log 特異点).
1 March 2007

あっと言う間に3月になってしまった.2月もいろいろあった.
院入試があった.札幌福岡セミナーがあった. 東大に行ってきた.いろいろ勉強した. 数セミ原稿は仕上げて送った.

沼津での講演準備をこれからしなければいけない.トロピカル特異点論が存在すると信じているが,なかなか定式化できない.生みの苦しみである.でも Where there is a will, there is a way. やればできるさ.

現在「雲の発明」という本を読んでいる.その本で知ったが,デカルトは「方法序説」で, 気象学も扱っている.英語の meteorology の語源は,アリストテレスに遡るそうだ.
30 Jan. 2007

今日,シンプレクティック・モデュライ空間の微分構造に関する論文を仕上げて 投稿した.それから,数理研の講究録の原稿も送った. 修論も無事完成して,修論発表会の準備を指導しているところである. やれやれ.

とはいえ, トロピカル幾何の講義録と, Lagrange pair の論文と,3変数Monge-Ampere 方程式の解の特異性の論文と, coisotropic 特異点の論文の仕上げが途中になっているので,それを再開しないといけない.
数セミの原稿もまた引き受けてしまったし,すでに担当することになっている 大学院の講義の準備もあるし,それから,Mikhalkin さんが2ヶ月滞在することになったのも,事前に準備しなければいけないし,その共同研究のために,こちらが勉強しなければいけないことが山のようにある. 数学教室に関することも考えなければいけないし, なかなか楽しい毎日である.

トーラスの模型を紙で作った.そうすると曲面論が手に取るようにわかる.

今,齋藤孝「教育力」岩波新書,を通勤途中で読んでいる. 齋藤さんの本はおしなべて,中身がかるく(だから読み易いが) 物足りない感じがするのだが,これは良いアイディアがたくさんつまった良い本のように思える.
20 Jan. 2007

東北大でトロピカル幾何の講演をしてきて,離散凸解析が関係することを実感した. とりあえず,
室田一雄著「離散凸解析」 共立出版
を眺めている.なかなかおもしろい.

それから,トロピカル幾何と, Bruno の 「power 幾何」や,non-Archmedes 幾何,log 幾何,rigid 解析などの「数論幾何」が関係しそうだ,ということがわかった. (I先生にご教示いただいた).
数論幾何は,加藤文元さんの論説など を眺めている.むずかしいが,おもしろそうである.

とは言え,現在は,シンプレクティック・モデュライ空間の微分構造に関する論文の仕上げのかたわら,指導している修士論文の追い込みに大わらわで, なかなか他の事に手がまわらない.

と言いながらも,さらに今日,市民講演でトポロジーの講演をして, すっかり生まれ変って,すがすがしい感じだ.

ところで, 昔,岡潔先生の「春宵十話」(しゅんしょうじゅうわ)(毎日新聞社版)を神田の古本屋で買って読んで感動した.最近,光文社文庫から出たので,それも買って読み始めている. 有名なクリフォードの定理などのエピソードが楽しい.岡先生の書いていること, まず邪心を捨てて,直感を磨くのが大事,学問は何をやったかではなく,誰がやったかが問題である,などなど, 昔は反発(疑問)を感じたことも,最近は妙にしっくり納得できるようになってきた. ともかく, 数学を志すものは,一度は読むべきであろう.

それから,矢野健太郎先生著で,一松信先生解説の「角の三等分」(ちくま学芸文庫)を 見つけたので,買って眺めている.これもおもしろい.
4 Jan. 2007

新年あけましておめでとう.今年も 北海道神宮に初詣に行ってきた.おみくじを引くと, 「小吉」で,事前の準備が大事とあった. 今年は,先手必勝で頑張りたい.それから, 女難には特に気を付けよ,とあった.肝に命じたい.

今年こそ,フランス語と中国語をしたい.なぜ,フランス語と中国語か,は理由があるが,書かない.

この正月は,トロピカル幾何と統計物理を勉強した.なかなかおもしろい.
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26 Dec. 2006

現在,年の暮だが論文書きに一心不乱に邁進している. また来年も生まれ変って精進したい.

橋元淳一郎「時間はどこで生まれるか」集英社新書,を読んでいる. 非常にわかりやすく,おもしろい.
15 Dec. 2006

現在,トロピカルの講義ノートを作り,1月の市民講演の構想をねり, 北大数学教室について考え, そして,一気に年末の突入するところである. 量子重力にも,フロベニウスにも,the road to reality にも手が付きそうにないが, 正月には,少なくとも,Monge-Ampere と cositropic と symplectic moduli space (SaoCarlos 研究会の Proceeding 原稿と数理研講究録の原稿仕上げ) とその他の難しい構想を考えることはしたいが,どうなることやら.

「カラマーゾフの兄弟」を読んでいるが,まだ第1巻である.まだ,それほどの名作とは思えないが,段々と凄いことになっていくのだろうか?
4 Dec. 2006

あーっと言う間に,もう12月である.気が付けば札幌は銀世界である. それでも相変わらず,トロピカル幾何を猛勉強中.そこで,
トロピカル川柳:
トロピカル イチたすイチがイチになり.
継ぎはぎのパッチワークがトロピカル.
アメーバー離れて見ればトロピカル.
トロピカル折れ線だけで数え上げ.
超離散したいときにはトロピカル.
ひらめいて すっかり頭がトロピカル.

修論で,Penrose の特異性定理と,2次元正規特異点の研究を指導, それから,北大数学教室関係の仕事(下準備,構想)も猛勉強中.
数セミの原稿仕上げと1月の市民講演の準備もある.ああ楽しい.

少し前に,ジョン・D・バロー著「天空のパイ」林大訳,みすず書房,を久しぶりに読み返した.プラトンのイディアの世界は,何処にあるか.そこにあるのに,誰にも見えないのか.
それはそうと,机の上の Penrose の the road to reality も読みたいが,ボーッとする暇が無くて,なかなか読み切れない今日この頃である.通勤に持って歩くにはかさ張るし...
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8 Nov. 2006

あっと言う間に11月になってしまった.北大キャンパスの紅葉は美しい. でも最近の北海道の天気は,スコールは降るは,竜巻きは吹くわで, 熱帯的である.まさにトロピカル化だ.というわけで,引き続きトロピカル幾何の勉強をしている.それから,そろそろ 11月末の神戸と数理研での講演準備をやらなければと思っている今日この頃である.

R. Penrose, The road to reality, Vintage Books (2004)
を眺めている.まさに電話帳のように1000ページを超える分厚い本だが, 中身は薄くて読み易い.さすが Penrose 先生は独創的である. ということで,リアリティーへの道を究めなければ,と思う今日この頃である.
20 Oct. 2006

アッという間に10月も半ばになってしまった.科研費の申請書類を書き上げて,すっきりした気分で,トロピカル幾何の勉強をしている.(目がトローン頭がピカル). 論文書きはいっこうに進まないが,それはそれで仕方ない.市民講演は, また実演付きのわかりやすいものをやろうか,ポアンカレ予想の話をしようか,迷っている.

「カラマーゾフの兄弟」の新訳が文庫本で出版されたので,その第1巻を読んでいる. 昔,読もうと思って途中で挫折したが,今回はなんとかなりそうだ.ところで, カラマーゾフの兄弟で思い出したが,僕の後輩の H 君と研究会の合宿で 同室になったとき,彼が「カラマーゾフの兄弟」を読んでいたのを思い出す. その H 君が急逝したと知らされたときは驚いた.やはり,自分より年下の人間に死なれるのはつらい.(年上の人間に死なれるのもつらいが).
2 Oct. 2006

あっと言う間に10月になってしまった. 9月は中国に行って生まれ変わってきた. 長春と長沙と武漢に行ってきた.車が多くて人が多くて活気がある.

今は,10月からの講義の準備と,科研費の申請書書きと,数セミの原稿書きと,トロピカル幾何の勉強と,単著論文と共著論文の原稿書きや修正がたくさんと,レフリーしている論文読みと, 11月の数理研の講演の準備と同じく11月の神戸大での講演と1月の市民講演の準備などで,楽しい毎日である.

「ペンローズの<量子脳>理論」(竹内薫,茂木健一郎 訳・解説)ちくま学芸文庫,と「ダメ犬グー」(幻冬舎文庫)を読んだ.おもしろい.今は,同じくペンローズ先生の「心の影」を読み始めている.
29 Aug. 2006

もう8月も終わりだ.現在,9月の中国での院生用の講義準備と,論文書き (Legendre curve と coisotropic variety と Monge-Ampere と Legendre knot と developable surface と differentiable structure とその他の共同研究)や その他もろもろの仕事をしている.その間,symplectic moduli space の論文を仕上げたり,Phase singularity の論文を仕上げたり,申請書書きをしたり,高校野球を見たり,M 先生が来札したり,大変だった.トロピカル幾何の勉強をしようと思っていたが,一向に進まない.
今は,トロピカル幾何を勉強しなければと思いながら,仕事のかたわら,
V. Ovsienko, S. Tabachnikov, Projective Differential Geometry Old and New, Cambridge Univ. Press (2005)
を眺めている.おもしろい.Schwarz 微分や Sturm 理論や接触幾何(Legendre 曲線,Lagrange-Grassmann)や (無限次元 Lie)群のコホモロジーなど,いろいろ関係してくる.

ところで,ペレルマンのフィールズ賞辞退のニュースには,久々に「すがすがしさ」を感じた.

ところで, 遠藤寛子著「算法少女」ちくま学芸文庫,を読んだ.江戸時代の算法(和算,数学 好きの娘の話だ.小説としてもおもしろいし,数学に関する本としてもセンスが良い.チャングム的であり,ペレルマン的である.この中で 算法(数学)は,「じつにさわやかな学問」と言われているし,一方で, 「算法をしっかりまなぶことが,おおくの学問の基礎になる」とも言う.なるほど.
9 Aug. 2006

もう8月も3分の1が終わった.7月末に,ブラジルに行って生まれ変わってきた. 講演内容と関連する研究をしているブラジルグループがあり,競争になりそうな気配である. まあ,私(石川)の方が研究視野が大分広い(?)から no problem だが, 相手方の方法も謙虚に素早く学び取りたいと思っている今日この頃である.

tropical geometry の勉強は進んでいないが,それを使って Gromov-Witten 不変量を計算するといった話が日本でもやられ始めているのを知ったので,のんびりしているわけにもいかなくなってきた.

レフリーレポートを2本仕上げた.自分で自分を誉めてあげたい.
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12 July 2006

もう7月も半ばになった.「トロピカル幾何」の勉強を本格的に始めた. "tropicalization" (といっても地球熱帯化ではない)がどういうものか, 明確に説明できるようになりたいものである.

それはそうと,plane curve の symplectic classification を絶対化できそう(つまり,1次元の構造環に付加構造を入れたものと捉えられそう)である.また, plane curve の difeomorphism classification と対応する Legendre curve の contact classification の類似性について,一般論を展開できそうなアイディアをつかんだ. 何か新しいことが見つかる予感がする.
このように,細かいことに見えることでも,真摯に努力して究めていけば,自ずと道が開け,霧が晴れるように視界が開けてくる,ということか.

それに, ブラジル講演のための pdf file も完成間近で,フェーズ特異点の論文も完成間近で, まあ,順調な感じで良い.レフリーも今月一本仕上げた.自分で自分を誉めてあげたい.
とはいえ,事情があって,書きかけの論文(5〜6編ある) を今年度中に全部仕上げておきたい.「数学問答」の原稿書きもある.一般相対論の勉強もそれほど進んでいない.I 先生の特異点論入門も難しい.そういう意味で順調とはいえ前途多難である.

通勤途中で「数学と物理の二重らせん」を読み,家で 「オシムの言葉」「差分と超離散」の本を眺めている.おもしろい.「オシムの言葉」はサッカーの本だが,民族問題についても,コーチングについても為になる.

今月の言葉:
「文明とは手間を省くこと.文化とは手間をかけること」
「研究とは業(ごう)である」
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28 June 2006

あっと言う間に,6月も終わろうとしている.先々週は山口に行って,生まれ変ってきたが, 生まれ変ったのを実感する間もなく,なぜか「トロピカル幾何」の勉強を始めることと, ブラジルでの講演の pdf file を作ることを思い立ち,思い立ったのはよいが, 毎日の講義準備と会議と論文の手直しとセミナーとメール回答に明け暮れて,何もしないうちに,7月になりそうな気配だ.それに,フェーズ特異点の話もまとめなくてはいけなかった.これはいかん.少しあせっている.
「アイディアは無くても数学はできるが,数学者にはなれない」とか, 「あきらめないのが鑑真」(いま,札幌で唐招提寺の鑑真和上展をやっている.cf. 井上靖の小説「天平の甍」) などとつぶやきながら, がんばる今日この頃である.
1 June 2006

アッと言う間に,5月も終わり,6月になった.May が June に変った.
現在,テストの採点や講義準備の合間に,平面曲線の分類の論文の改訂版を仕上げ,投稿し,その後,フェーズ特異点の論文の完成の作業に入っている.
それから,3変数モンジュ・アンペール方程式の大域解と局所解の話を急いでまとめている.モンジュ・アンペール方程式の大域解の話としては,$S^4$ 内のガウス曲率一定曲面のトポロジーと特異点の話が良さそうだが,うまくまとめられるだろうか.

酒井 邦嘉「科学者という仕事」中公新書 1843 を読んだ.襟を正して研究に励まねば,と思わせてくれる名著である.
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9 May 2006

あっと言う間に,連休も終わり,現在,量子特異点論の勉強中. はたして「量子特異点論」なるものは存在しうるのか,が問題だ.
それはともかく,
Rovelli 「Quantum Gravity」

Schapira 「Microdifferential Systems in the Complex Domain 」
を眺めている.
それと,6月の山口での研究会と,7月のブラジルの研究会の講演準備中.
連休中に,「神様からの一言」と「マンガ ホーキング入門」を読んだ.勉強に なる.
18 Apr. 2006

4月もあっと言う間に半分過ぎた.一応,3月末から4月はじめにかけて,サーベイ論文を2つ仕上げた.
現在,量子特異点論の勉強中.
E-mail 勉強会は,企画がなかなか進まないが,まあそのうち再開したい.
28 Mar. 2006

3月もあっと言う間に過ぎた.城崎はおもしろかった.若い参加者が元気でよい. 講演もおもしろかった.生まれ変わった.

生まれ変わって帰ってきて, 数理研の講究録の原稿を仕上げて,いまは,シドニーでの研究会の予稿集の原稿を書いている.
「3変数モンジュ・アンペール方程式の幾何学的解の特異性に関する新発見」

「平面曲線の homeomorphism, diffeomorphism, symplectomorphism, contactomorphism による分類のミステリアスな関係の新発見」
が内容である.われながら予想外の結果にワクワクする. なんとか3月末の締めきりには間に合いそうだ.

E-mail 勉強会の具体的な準備はまだできていないが,今度から,2年計画で 「フロベニウス構造」「トロピカル幾何(再登場)」「量子重力」「モンジュ・アンペール方程式の弱解」の4つのテーマを並行して勉強するのが良いのでは,と考えている.

いま,司馬遼太郎の「世に棲む日日」とファラデーの「ロウソクの科学」を読んでいる. おもしろい.
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3 Mar. 2006

2月は,「城崎スクール」の(精神的)準備で明け暮れた.
徳永,島田,石川,齋藤,福井著「代数曲線と特異点」共立出版
を初心に帰って読み直し,Viro の Patchwork を,もう一度勉強して,生まれ変った: 「人生はパッチワークだ」

城崎から帰ってきたら,3月締めきりの原稿数編と,E-mail 勉強会の準備をしなければいけない.ああ楽しい.
14 Feb. 2006

あっと言う間に1月が終わり,2月も半ばになってしまった.
その間に鳴門に行って,小うず潮を見て vortex の研究をして来た.それから,北見に行って,マイナス16度を体験した.何度か生まれ変わった.

とはいえ, 論文も進んでいないし,講演準備も進んでいない.どうしよう.

と言いながら,Hawking, Ellis; The large scale strucure of space-time を読んだり,藤原正彦さんの「国家の品格」 を読んだりした.読み易くて良い. それから,小林秀雄の「モーツァルト」を読んでいる. 学生時代から,折に触れて読み返しているが, やはり小林秀雄の文章は最高だ. 「何と言う沢山な悩みが,何という単純極まる形式を発見しているか」 「天才は寧ろ(むしろ)努力を発明する」 なるほど,肝に命じたい.
5 Jan. 2006

あけましておめでとう.「明けない夜明けはない」というけれど.

年末は年賀状書きと雪かきは予定通りに運んだが,論文執筆も講演準備も あまりできなかった.まあ,骨休めをして生まれ変わって出直そう.

正月は例年のように初詣に行き,おみくじを引いたら「大吉」であった. そのおみくじによると「色を控え勉学にはげめば,思い通りの成果を得る」だそうである. この場合,「色」は「空」の対義語であり,「色 = 物」と考えられる. したがって,「物理の勉強を控え,ちゃんと数学をやれ」 という意味と受け取れる.深く肝に命じたい.

今年の目標は相変わらず「フランス語」と「中国語」である. どうして「フランス語」と「中国語」なのかには理由があるが,ここでは説明しない.
28 Dec. 2005

今年もアッという間に過ぎた.今年何があったのか,もうほとんと思い出せない. ともかく年末は,3月に予定する「ヒルベルト第16問題とその周辺」の講演準備と, 3月締めきりの論文原稿(2編)書きと,その他のしんどい仕事と, 年賀状書きと,雪かきをしながら,久々の骨休めをする予定.また生まれ変わって,来年も再登場の予定.

最近,復刊されたヒルベルト「幾何学基礎論」を眺めて,実代数幾何というものについて 想いを巡らせている.
「脳と仮想」を読み終わって,今は,昔(20数年前に)読んで置いてあった「胎児の世界」を読み返している.おもしろい. それから,「おでんくん」も見ている.うわさによると「顔グロだまごちゃん」の人気が上がってきているらしい.
では,よいお年を.
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20 Dec. 2005

「Phase singularities and topology」の研究会も無事終って, 生まれ変わった感じだ.K 先生や A 先生には,ずっとつきあって頂いた.感謝. 始めての試みで大変だったが,報われた感じだ.おもしろい話もたくさん聴けた. 大いに encourage された. 私(石川)も,若い人に説教ばかりしていないで,見習って, 偉いのに偉ぶらずに,後輩を暖かく見守れるような偉い人になれるよう頑張っていきたい,と実感した次第.

J.-L. Brylinski, Loop spaces, characterisitc classes and geometric quantization, Progress in Math. 107, Birh¥"auser,
と自分も書いた
徳永,島田,石川,齋藤,福井著「代数曲線と特異点」共立出版
を最近眺めている.なかなかおもしろい.
9 Dec. 2005

12月もアッという間に過ぎようとしている. 来週は「Phase singularities and topology」の研究会がある. その講演準備は,まあ何とか間に合いそうな感じだ.(あとは J.A. 頼み). 論文もあわてて書いた.
いま読んでいる本は,茂木健一郎著「脳と仮想」(ノート貸そう) である.おもしろい."数学のクオリア" の研究もおもしろそうだ.
25. Nov. 2005

11月もアッという間に過ぎようとしている. 先週も今週も関係する研究会が北大であり,また,12月の研究会の 準備で追われて,気が付いたら,もう少しで師走ではないか!
ともかく研究上の刺激がたくさんあって,おもしろいが, さすがの私(石川)もくたびれ気味の感じがする.
ここで歳(とし)の話を持ち出したくないので, 単に,私(石川)の「懐の浅さ」を反省するにとどめよう.

ところで, 「Phase singularities and topology」 に関係する論文を書いているが,段々おもしろくなってきた. キーワードは Helmholtz singularity というところか.

あまり本を読む時間も無かったが,正岡子規の「墨汁一滴」を眺めている. 彼のものの見方の柔軟さには,常に学ぶべきものがある.
2. Nov. 2005

10月はアッという間に過ぎた.Zhitomirskii さんや Paunescu さんが北大を訪れ, 研究会「Singularities of Differential Systems」を開催し,その合間に, 科研費の書類を3種類書き, 市民講演を行い,大学院向けのトポロジーの講義をし,数学会北海道支部会の評議員の仕事もやっつけて, 引き続き,Zhitomirskii さんご夫妻を引き連れて,奈良,京都,奈良と移動し,大仏を見,鞍馬の火祭りで興奮し,金閣寺と竜安寺と三十三間堂で観光の定番を押さえ,生まれ変わって,帰ってきた.

12月に,研究会「Phase singularities and topology」をまたまた開催するので,その準備に追われている.
まとめるべき論文も数多い.その他の原稿書きもある.レフリーレポートも書かなくてはいけない. なぜか裁判所の研修で講演することになっているので,その準備もある. かかわっているトポロジー COEの宣伝用の絵本も描きたい. 数学科の教務委員長の仕事もたくさんある.ああ楽しい.
E-mail 勉強会と COE 超カルタンセミナーには手がまわらない.まあ,ぼちぼちやりましょう.

いま,リリ・フランキーの「東京タワー」を読んでいる.おもしろい.ただし, 各章のはじめにある感傷的な文章は無くてもよいような気がする. それから,映画で見た「チャーリーとチョコレート工場」の原作を英語で読んでいる. 画面の印象があるので,英語力が無くても読み易くて良い.
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21. Sept. 2005

ニューカレドニアのヌーメアとオーストラリアのシドニーから帰ってきて,はや, 1週間以上経つ.赤道を超えて生まれ変わってきた.
ヌーメアでは,向こうは冬で寒かったが,一応「泳いだ,潜った,踊った」という感じだ. number one という地元のビールが良かった. シドニーもこれは(=コアラ)よく考える(=カンガルー),という感じで,カスケード・プレミアム(タスマニアン・デビル柄)などを飲んだ.
要するに, 「人生,いたるところにブルーマウンテンあり」ということだ.(ブルーマウンテン = 青山,は シドニー郊外の有名な観光スポット).

3変数のモンジュ・アンペール方程式の幾何学的解には,通常の generic なルジャンドル特異点ではない特異点が generic に現れる,ということを見つけたが,なかなかうまくまとまらない.
15 Aug. 2005

Zariski の講義録
「Le probl¥`eme des modules pour les branches planes」
を読みふけっている.おもしろい.ところで, この Zariski の講義録は,Zariski の「equisingularity」に関する一連の仕事の1つと 考えられるので,ついでに,Zariski 全集の第4巻「Equisingularity on Algebraic Varieties」も眺めている.(実際,講義録で引用しているいくつかの論文が全集に載っている).
ところで,以前読んだ
C. パリク著「数学者ザリスキーの生涯」正木玲子・矢野環訳,広中平祐監訳, シュプリンガー・フェアラーク東京 ; ISBN: 4431707085 ; (1996/12)
も眺めている.equisingularity の話は Zariski 先生生涯最後の大仕事であったようだ.

「ドラゴン桜」を9巻まで読んだ.「メモリーツリー」など,研究上・教育上 参考になるアイディアが得られる.
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9 Aug. 2005

ぽーっとしている間に8月になってしまった.
ブコビナタトラザンスカに行ってきた.3回山に登った.ポーランドとスロバキアの国境のタトラ山脈だ.タトラ山脈でたたらを踏んだ.(注:たたらを踏む=勢い余っておっとっと).生まれ変った. 研究会では,Krasinski さんに, Zariski の平面曲線のモジュライ問題の講義録を教えてもらった. Zariski の講義録を読んでみると,おもしろい. Zariski は,symplectic equivalence は意識していないが, ところどころ最近私(石川)と Janceczko さんで共同研究している symplectic normal form が書いてあったりする.偶然とは思えない.絶対何かあるはずだ. また,その付録の Tessier のアプローチは,symplectic moduli space の一般論に 使えそうだ.
それはそうと,夜は,ポーランド・ビール三昧だ(銘柄:OCOCIM(オコチム), TYSKIE( ティスキー); ZYWIEC(ズビエッチ), EB(エーベー), WARKA(ヴァルッカ)...).ブルガリア・ワイン三昧だ.
酔っぱらって屋根からオコチム,ティスキーて〜
帰国して,毎日毎日会議で楽しい日々を送り, 次ぎの週は,M先生が来札して,やはり,夜に「小樽地ビールをあびーる程飲むかい」 を決行した.結構うまかった. それに,新しい概念(コンコン構造= convex cone structure = contact connection structure)を発見したことは収穫であった.
「こんこんと湧き出て尽きぬアイディアの泉」

しかし,それにしても忙しい.論文のレフリーもしなければいけないし,推薦状も書かなくちゃいけないし,いろいろな申請書も書かなくちゃいけないし,そういえば,そろそろ 科研費の申請書類の内容も考えなければいけない.8月後半から9月前半に行くニューカレドニアの研究会でしゃべるプレゼン用の PDF ファイルをこれから勉強して作らなければいけないし,続いてあるオーストラリアのシドニーの講演準備もしんどい.それに,10月から行う予定の,トポロジーについて市民講演をする準備と,北大大学院共通科目でトポロジーの講義をする準備と,学部1年生にトポロジーの講義をする準備をしなくてはいけない. 北大で行う「Singularities of differential systems」と「Phase singularities and topology」 という2つの研究会の構想を練らなけらばならない, のに,まだ何も考えていない.ああ,忙しい忙しい.

忙しい忙しいと言いながら, いま,「ドラゴン桜」を読んでいる(第4巻に突入).だいたい当たり前のことが書いてあるし,絵もあまり宜しくないが,まあおもしろい.
7 July 2005

ボーっとしている間に7月になってしまった.
7月10日からポーランドとチェコの国境近くのザコパネのそばの ブコビナタトルザンスカに行く.生まれ変わって帰って来る予定.
帰ってきたら, 「Singularities of differential systems」と「Phase singularities and topology」 という2つの研究会の構想を練らなけらばならない.
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24 May 2005

相変わらず,平面曲線の特異点の分類と,波のフェーズ特異点の分類と, 3次元 M&A (Monge-Ampere) 方程式の解の特異点の分類と, ルジャンドル曲線の特異点の分類(と,その Engel 対応)を考え, それから,e-mail 勉強会で,「stack」 と 「gerbe」 の勉強をしている. まさに「頭を polish」 状態である.

ところで,積読(つんどく)していた本
J. L. Brylinski, Loop spaces, characteristic classes and geometric quantization. Progress in Mathematics, 107. Birkh¥"auser ,1993. ISBN: 0-8176-3644-7
を眺めていたら,stack も gerbe も両方とも顔をだしているのに気が付いた.何かが繋がり始めているのだろう.
5 May 2005

黄金週間に, 平面曲線の特異点で遊んでいるうち,だんだん,特異点のそれぞれの個性が見えてきたような気がする.いま調べている uni-modular な平面曲線 $f : C ¥to C^2$ ぐらい複雑になると,Arnold 先生でも名前をつけていなくて,「我が輩は猫である」の「猫」のようなもので,何だか可愛くて,いとおしくなってくる.妄想かもしれないが...「そんな特別な特異点を調べて何になるんだ」という意見は置いておいて, 名もない可憐な特異点を愛でる幸せを噛みしめている今日この頃である.

ところで,プロジェクト「Phase singularities and topology」のために,泥縄で, ファインマンの「QED 」と,物理の教科書の「量子光学」を勉強中である. とくに,Feynman の英語の講義録は,論文英語には軽すぎるが,英語で講演するときの参考になる.
21 April 2005

e-mail 勉強会の準備がはかどらない.まあぼちぼちやる.
COE Cartan seminar も始まるし,「Phase singularities and topology」のプロジェクトの 「Proposal of project」も書きたいが,なかなか手につかない.

通勤電車の中で,マーク・ブキャナン「複雑な法則,単純な法則」草思社をよんでいる. 内容は,以前読んだ,バラバシの本とかなりだぶっている.要するに,ネートワークの研究がいろいろな分野で大切で,いかにおもしろいか,ということが書いてある. 僕(石川)も,そのうち,sub-Riemannian network theory というのを作ろうと思っているが,まだ時期尚早であろう.
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20 April 2005

いろいろあってこのメモも書き込めない日が続いて目も当てられない状況だ. とは言え,日曜大工ならぬ「日曜数学」で,なんとか 懸案の uni-modal 平面曲線の分類をした.それから, Phase singularities and topology の研究もなんとかメドがついてきた.
忙しいと言いながら,竹内淳著「高校数学でわかるシュレディンガー方程式」「高校数学でわかるマクスウェル方程式」,それから竹内繁樹さんの書いた「量子コンピュータ」も 読んだ.読み易く書かれていて良い.よく準備されていて良心的である. 詳しい感想は後日.
12 March 2005

「トポロジー理工学」の研究集会に出かけてきた. 内容もさることながら,ほぼすべての講演者が Power Point を使っている ことに刺激を受けた. まあ2,3の功なり遂げた老先生は OHP で講演していたが, 他は皆 Power Point の講演だった.(かの Berry 先生も Power Point の講演をされた. 使っているパソコンが Mac の Powerbook G4 で私(石川)が使っているのと同じだった. 講演のレベルは違うけどね). もちろん,その研究会が,物理の物性の実験系の 分野だったからだと思う.スライドを使う伝統があるし,実験結果のグラフや,実験装置の写真や,シミュレーションや共同研究者(多い)の顔写真を載せるのには不可欠だからだろう. 数学の分野にもよるが,われわれ特異点の分野でも,グラフィックスは重要なので, どんどん使っていくべきなのだろう.
ということで,現在,Power Point を勉強中である.アニメーション機能を昨日はじめて覚えた.私(石川)の講演は今年から Power Point になる...
28 February 2005

早いもので,2月もおしまいである.科研費の報告書も書いて, 1年で一番時間がとれる時期になった.

そこで,「トポロジー理工学」関係の勉強と,4月からの「立体幾何」のセミナーで 使いたい資料と,やはり4月からの「応用特異点論」の講義の準備と, 「e-mail 勉強会」の準備をしている.
「立体幾何」のセミナーでは,「数学の型」を身に付けてもらえるように, 何枚かの演習プリント(書かれた命題から仮定と結論を読み取る作業とか, A ならば B ということを証明するにはどうすればよいか,とか, 背理法とか数学的帰納法とか,とにかく,決まりきった数学の「型」を身に付けてもらう ためのプリント)を作成中である.
また,「応用特異点論」では,鷹揚に多様体論やトポロジーの話から始めて, Malgrange-Mather の準備定理の証明までを話したいが, とにかく,なるべく内容をコンパクトにまとめて,「1回の講義に対して A4 版横のプリント1枚」 という感じで資料を作ろうと思っている.

それはそうと,
C.E. Guti¥'errez, The Monge-Amp¥`ere Equation, Progress in Nonlinear Differential Equations and Their Applications, 44, Birkh¥"auser, 2001.
を眺めている.現在,Monge-Ampere 系(M&A 系)の幾何学的な研究,特異点論的な研究をしているが,やはり,Caffarelli 理論などの解析的な話も身に付けておけば, 何に注目すべきか,がわかりやすくなるのではないかな,という動機からである.
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15 February 2005

最近,3次元の放物型アフィン球面の特異点として, 通常の $A_2, A_3, D_4$ 特異点以外の特異点もジェネリックに 現れることを発見した.分類はまだだが,なかなかおもしろくなりそうだ.

4月からの「e-mail 勉強会」の資料を勉強中である.テーマは 「スタック」と「特別ラグランジュ多様体」あたりを考えている. 広中平祐先生いわく「十年続けよ」ということで,またことしも 企画しようと思っている.(ただし,十年続けよ,というのは Polish-Japanese working days という研究会についてだが).
3 February 2005

3月に札幌に来る M. Berry の最近の論文を読んでいる.
良い機会だから,"Topology of phase singularities" といった論文でも 書こうかなあと,そのネタを集めている.
ところで Berry 先生,インタビューに答えて, 「私は物理の数学の物理を研究している」と言っている. そうすると,「数学の物理の数学」を研究しても良いし, 「物理の数学の数学」を研究しても良いし,「数学の数学の数学」を研究しても良いと いうことか.Berry の言っている物理の数学は,具体的に「カタストロフ理論」 や「カオス理論」なので,そのための数学の研究が 「物理の数学の数学」の研究である.

簡単かるたんセミナー奮闘記その13.
Thomas A. Ivey, J. M. Landsberg, ``Cartan for Beginners: Differential Geometry Via Moving Frames and Exterior Differential Systems'', A.M.S. 2003.
第5章を読み終えた.
28 January 2005

ところで,今年初詣でに行っておみくじを引いたら 中吉で,学問が「自分の甘えを断ち,目標を立てよ」ということなので, 甘いものを控えてダイエットして,ますますスマートをめざす,という目標を立てたが, すっかり忘れていた.

現在論文修正で集中中.
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Goo Ishikawa