【 なんでもメモ帳1 】


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2nd Feb. 2004

もう2月だというのに,正月気分が抜け切れない. 研究も遅々(ちち)として進まない.仕方がない. 「研究のスケールが大きいので,研究の進展が遅く見えるだけだ」 と言ってごまかすしかない.

それはそうと,去年の11月に,俳諧の I 先生に教えてもらった論文
M.D. Garay, D. van Straten, On the topology of Lagrangian Milnor filbers, International Mathematics Research Notice, 35 (2003), 1933--1943.
と,それと関連して,
C. Sevenheck, D. van Straten, Deformation of singular Lagrangian subvarieties. Math. Ann. 327--1 (2003), 79--102.
を読んでいる.Lagrange variety の変形理論を展開し, Mirror symmetry などによく出てくる singular Lagrange fibration の研究に応用しているようだ. いままで,変形理論は避けてきたが,どうもそうはいかなくなる雲行きだ.

ところで,山本義隆「磁力と重力の発見」みすず書房(全3巻)という本を眺めている. この本について,「... アカデミズムの外で,このような仕事がなされたことに意義がある...」など という書評を見かけた.駿台予備校講師という著者の職業から,そういう見方をするのだろうか? しかし,考えてみると, 予備校という存在は,十分にアカデミズムの枠内にあると思う. ちなみに,同じ山本義隆氏の書いた「新・物理入門(物理IB,II)」駿台文庫,も,とてもおもしろい.
29th Jan. 2004

このところ,モンジュ・アンペール方程式の幾何学的解の bi-Legendre 射影に関する特異点を調べている.なかなかおもしろい.
12th Jan. 2004

信州での講演の OHP を作っている. なかなか正月気分が抜けない.集中できなくてこまる.
ところで,そろそろ OHP を使った講演から卒業したいところだ. 今年の目標に「Power Point を使って講演する」を追加したい.
それはそうと,数学の講演の難しいところは,「黒板を使った講演が一番よくわかる」 ということだ.といっても,もちろん,良い内容の講演に限るが.
そもそも,数学は,自分で始めから考え直さないとわかった気がしない. ということは,聴いている人に,「自分で始めから考えてみようか」 という気にさせる講演が良い講演だ,ということか.
OHP や Power Point を使った講演で,聴衆に「自分で始めから考えてみようか」 という気にさせるには,どうすればよいのだろう.
それに,そのような文明の利器を使うと,どうしても「手抜き講演」 への誘惑に負けそうになるのも問題だ.まあ,文明とは手抜きできる,ということなのかもしれないが.

ところで,最近,「漱石書簡集」(岩波文庫)を読んでいる.おもしろい.どうして,漱石には人気があり, 後世まで読み続けられてきているのかが,少しわかるような気がする.
1st Jan. 2004

北海道神宮に初詣に行ってきた.例年おみくじを引くが,今年は 「末吉」で,「旅行」の欄が「障りなし」,「縁談」の欄が「あわてるな.気長に待て」 などとあって,「学問」の欄は「危うし.全力を尽くせ」と書いてあった.
ということで,今年は(も)全力を尽すぞ.

ところで,今年の(数学以外の)抱負は,「中国語とフランス語が話せるようになること」 である.(なぜ,中国語とフランス語か,ということは説明できるが,ここでは省略する).
31st Dec. 2003

年末は, "Singular Legendre curves and Goursat systems" の論文作成に集中してしまった. 簡単そうに見えて,奥の深い Goursat world は,曲線論のもつ豊穣な構造をもち, いくら研究してもし尽くすことはできないようだ.ただし,Mormul 先生の Goursat systems の詳細な分類は,あくまで各論であり,singular Legendre curves の 分類に翻訳した場合,Legendre world の「人文科学」にたとえることができる. そこで,そのたとえに従ったとき, Legendre world に関する「社会科学」に該当するものを作ろう, ということを,曙--サップ戦を見ながら考えた.
25th Dec. 2003

最近出版された翻訳本
V.I. Arnold, Lectures on Partial Differential Equations, Universitext, Springer-Verlag, 2004,
を眺める.相変わらずアーノルド節が炸裂していて楽しい本である. F. John の偏微分方程式の教科書と比べてみるとおもしろい.

ところで,「写像空間の幾何学」のノートを作るために,
J.Milnor, Morse Theory, Princeton Univ. Press, 1963.
や, 昔買ってあまり読んでいなかった
R.S. Palais, Foundations of global non-linear analysis, Benjamin, Inc., 1968.
を眺めている.こうして時を経て眺めてみると, その内容の輝きの差が歴然としている.Palais の本も,もちろん良い本であるが, 少し色褪せて見える.Milnor の本はいまなお名著と言うにふさわしい. いったい,Milnor の本とどこが違うのだろう? 扱っているテーマは,(もちろん部分的に時代遅れになっているが) それぞれに今なお興味深い.さて,どこが違うのか. たぶん,それは,Palais の本があやまった抽象化の精神に基づいて書かれてしまったからだと思う. それに比べて,Milnor の本には,具体的な数学が生き生きと描かれている. Milnor の本には,素材に対する抑制の効いた愛情,が感じられる. それが決定的な違いなのだろう.
18th Dec. 2003

J.W. ミルナー「複素超曲面の特異点」佐伯修,佐久間一浩訳,シュプリンガー数学クラシックス,を眺める.なかなかおもしろい.英語版は,何度か読んでいるが, 日本語版には,詳細な解説がついていて良い.為になる.
8th Dec. 2003

Mather III の「 tex おこし」をしている.なかなか勉強になる.

COEかるたんセミナーのテキスト:
Thomas A. Ivey, J. M. Landsberg, ``Cartan for Beginners: Differential Geometry Via Moving Frames and Exterior Differential Systems'', A.M.S. 2003.
の第4章を眺めた.(第5章を読もうと思ったが,その前に第4章を 読む必要がありそうなので).
非常に丁寧に書かれた本である. これを丁寧に読めば,職人技を身に付けることが可能かもしれない.

岩波ジュニア文庫の「大学生になるきみへ」-- 知的空間入門 --,中山 茂著 を読んでいる.その本に,「虚学」と「実学」の話が出てくる. そして,虚学には「公的虚学」と「私的虚学」がある. 数学にも虚学と実学の両面がある.そして,「公的虚学」 は「受験数学」に, 「実学」は,「役に立つ数学」に対応する.しかし,「私的虚学」つまり, 個人の知的空間を豊かにする数学もあるはずだ.
3rd Dec. 2003

数理研の研究会も盛会のうちに終了して,心機一転研究に打ち込もうという感じである.

「写像空間のトポロジーと特異点」という講義を来年する予定なので, 準備を始める予定である.内容は, $C^0$ topology, $C^\infty$ topology, Whitney topology, や写像空間やその商空間の微分構造の話をわかりやすくまとめて 話せると良いが,果たしてうまくいくか?
「COE かるたんセミナー」の勉強もしないと...
10th Nov. 2003

"Singular Legendre curves and Goursat systems" の論文原稿をまとめ始めた. これぞ「外微分式系への応用特異点論」であると自画自賛. I 先生の言うように,常微分方程式ではなく,偏微分方程式で, 同じことをしなければいけない.それには,Y 先生の higher contact structure の幾何学化に基づいてジェットバンドルをコンパクト化し,その微分式系の特異性を, 特異ルジャンドル部分多様体の分類問題に帰着させることで,実行できるだろう, ということを通勤電車の中で考えた.
うまくいくと良いが.
4th Nov. 2003

特異ラグランジュ曲線の分類と Goursat 系の分類の関係 (いわゆる,Mormul-Zhitomirskii 対応)を考察中である.

ところで,微分形式の tangent bundle への natural lifting は, Yano-Kobayashi lifting と呼びたいところだが, 誰が最初に考えたのだろう.
30th Oct. 2003

平面曲線の大域シンプレクティック分類のモデュライ空間に関する論文を執筆中である. 一般次元のLagarange variety の場合へ結果が自然に拡張されるのだが, それを書いていると,(遅筆な私としては)いつになったら論文が完成するか まったくおぼつかないので,まず平面曲線の場合を(涙をのんで)まとめることに決意した. その気になったのは,大垣研究会の(5 pages)アブストラクトをまとめたからだ. 外圧がないと何もできないとは,情けないが,ともかく有り難いことだ.

ところで,Landsberg たちが最近書いた「簡単なカルタン入門」の本を眺めた. おもしろそうだ.「簡単なカルタン入門セミナー」でも開催したらおもしろいのでは ないか.

昔読んだ本,森清著「仕事術」岩波新書 645 をもう一度読み返している.
「育むことが一番難しく,しかし最高の精神的報酬を得られる働きである」
は,実感と共感を感じるフレーズである.
23th Oct. 2003

G. Mikhalkin, Amoebas of algebraic varieties, arXiv:math.AG/0108225 link
を眺めた.T氏の "Tropical Geometry" に関するメールで刺激を受けたからだ. おもしろかった.

ところで, 小川洋子「博士の愛した数式」新潮社,を読んだ. 未婚の母の家政婦とその子供が,派遣先の, 事故で短時間しか記憶を保てなくなった元数学者に示す シンパシーの物語である. 数学者に対する"世間一般"の認識を知りたくて読んだ. 小説としても上質で品があっておもしろかった. もちろんフィクションであるが, 登場人物の設定は,現実の数学者の実像と極端には離れていないようにも 思う. この小説が良く売れているということは, 「純粋数学」も捨てたものではない,ということだろうか? 殺伐とした世の中には,純粋なものが求められるのだろうか?
20th Oct. 2003

偏微分方程式の解(それはルジャンドル部分多様体)の母関数の満たすべき偏微分方程式は何か, それを考えると,偏微分方程式系に対する階層づけが可能なのではないか... ということを
フリッツ・ジョン「偏微分方程式」シュプリンガー東京
を眺めながら思った.
16th Oct. 2003

科研費の書類を書いた.
ところで, e-mail 勉強会で.Motivic integration と non-holonomic geometry の勉強会を無理矢理,一緒に企画したが,最近,それらを結び付けることができそうだという実感が湧いてきた.(もちろん,もともとその予感があって始めたわけだが, それが現実になってきた).喜ばしい限りである.
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2nd Oct. 2003

一ヶ月のご無沙汰だった.その間, 特異点国際研究集会の準備,開催,てんてこ舞い,日ポ Working-days があった.数学セミナーの原稿も書いた. 11月末の数理研のプログラムもおおよそ決まった.
国際研究集会で,Janeczko さんとの共同研究プロジェクトがまた一つできた. また,Mormul さんとも何かできそうだ.M先生との共著も早く書きたい.
と言いながら,野口悠紀夫『超「文章法」』中公新書を読んでいる. なかなかためになる.とくに, なぜ引用するか,という点には説得力がある.
2nd Sept. 2003

やっと,
Infinitesimal deformations and stabilities of singular Legendre submanifolds.
を書き上げて,投稿した.さて,また新しいことを考えられる. こんなひとときも,研究生活での楽しみの一つかもしれない.

ところで,最近出版された「ロボットの脳を創る」という本を読んだ. (非ホロノーム力学といった題名で予告されていたが,題名が変更になった ようだ). なかなかおもしろいが,「非ホロノーム系」が,単に運動の制御の話しで 出てくるとしたら,あまりおもしろくない. 考えるに,人間の知能も元来,非ホロノームなのではないか? 物を考えるということには,非可積分系がかかわって当然なのでは?

それはそうと,同じシリーズの「CP非保存と時間反転」という本を 読みはじめている.26th June 2003 や 7th July 2003 のメモに あるように,不可逆現象に興味があるからだが, それとは関係しないかもしれない.
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16th August 2003

昔,高校生講座で話した,Whitney の平面曲線の定理( regular homotopic $\Leftrightarrow$ Gauss index が等しい)の折れ線 version の原稿書きをしていた.われながらなかなかおもしろい証明だ.

早く本業に戻らなければ,と思いつつ,司馬遼太郎の「空海の風景」(全二巻,中公文庫) を読む.空海が成し遂げたように,「智」と「理」の同一化は,現在において 可能だろうか?
4th August 2003

K. Saito, Primitive forms for a universal unfolding of a function with an isolated critical point, J. Fac. Sci. Univ. Tokyo, 28 (1982), 775--792.

を読みはじめている.この論文は,過去何度も読んできたが, また,新たな動機付けが見つかったので,七転八起の精神(棚上げにする,忘れる, 蒸し返す,の精神)でまた読んでいる.
というのは,最近,Janeczko さんと書いた symplectic bifurcation の論文

Ishikawa, G.(J-HOKK); Janeczko, S.(PL-WASWTM), Symplectic bifurcations of plane curves and isotropic liftings. Q. J. Math. 54 (2003), no. 1, 73--102.

で,plane curve $\R \to \R^2$ の symplectically versal unfolding なるものを調べたが, それと,plane curve $\R^2 \to \R$ の K-versal unfolding を組み合わせて考えると,別の意味で, singular Lagrangian variety が結びつく,ということを

A.N. Varchenko, A.B. Givental, Mapping of periods and intersection form, Funct. Anal. Appl., 16 (1982), 83--93.

を眺めていて気が付き,その仕組みをもっと詳しく知りたくなったからだ. 実は,A.N. Varchenko, A.B. Givental の論文も,昔読んでいるのだが, ピンとこなかった.

では,どうして,それを眺める気になったかというと, Hitchin の special Lagrangian sumbanifolds の moduli space の論文を読んでいて, (このメモ帳の 15th July 2003 の項も参照) period mapping で moduli space を記述し,Lagrangian submanifolds の moduli space はまた Lagrangian になる, などという話をしているから,K3 surface の moduli space には symplectic structure が入る,といった向井さんの理論もあるし,
「moduli space には個々の対象の魂が宿る」
といった真理があるのかもしれず,それはともかく,
「Lagrange varieties の moduli space も (何かの)Lagrange variety になるはず」
という迷信を信じて, Hitchin を眺め,それから, 昔なつかしい A.N. Varchenko, A.B. Givental の論文を偶然思い出したわけだ.

では,なぜ Hitchin の論文を読む気になったかというと,M先生が Hitchin や Joyce の 論文をよく話題にするので,それに感化されたからだ.
さて人生はおもしろい.ありがたい.ありがたい.
「特異点.離れて見れば得意点.昔の理論がよくわかる」
「モデュライ空間に構造は盛りづらい」
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28th July 2003

最近,特異点の分類問題に目覚めているわけだが, 考えてみると,そもそも,分類とは,対象としているある集合上の, ある同値関係を設定して,その集合のその同値関係に関する商集合を調べる, ただそれだけのことだが,通常は,その分類は難しいので, その同値関係よりも弱い同値関係を設定して,その弱い同値関係に関する分類をした後で, 本来の同値関係に関する分類を試みる,ということはよくあることで, そうすると,弱い同値関係に関する同値類を1つ決めて, その同値類に属するものたちを,強い同値関係で割って得られる商集合を調べる, という方法は,分類問題にとって普遍的な方法ではないか,と思えてくる今日この頃です.

ところで,研究とは, 「七転八起」なのか「七転八倒」なのか.
15th July 2003

今書いている論文の関係で,次の論文や本を眺めている.
N.J. Hitchin, The moduli space of special Lagrangian submanifolds, Ann. Scuola Norm. Sup. Pisa, {\bf 25} no. 3-4 (1997), 503--515 (1998).
N.J. Hitchin, The moduli space of complex Lagrangian submanifolds, Asian J. Math., {\bf 3--1} (1999), 77--91.
N.J. Hitchin, Lectures on special Lagrangian submanifolds, link
J.-L. Brylinski, Loop Spaces, Characteristic Classes, and Geometric Quantization, Progress in Math., 107 (1993).
「犬も歩けば棒に当たる」「やぶ蛇」という感じで, 最後のBrylinski の本の第3章 "Space of singular knots" のケーラー幾何には 興味がある.
ところで,今度から「gerbe」は「ジェルブ」と発音することにしよう.
10th July 2003

エリー・カルタン「外微分形式の理論 ---積分不変式---」 矢野健太郎訳,白水社,を北大数学図書室の保存庫で他の本を探しているときに見つけて眺める.
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7th July 2003

量子力学と熱力学の不可逆現象の関係について, M 先生経由で F 先生から教えてもらった
H. D. Zeh, Quantum Theory and Time Asymmetry. quant-ph/0307013 link
を眺めている.どこまでが「数理モデル」内の話で,どこまでが「観測問題」などの 「数理モデルの解釈」の話なのか,はっきりしなくて難しい.

そもそも数学(数理モデル)と"現実"(モデルの解釈の仕方)の関係は 難しくて,おもしろい問題だ. 要するに,数理モデルから整合的な翻訳ができ, "実験"の解釈とモデルからの説明に齟齬がなく, さらにモデル内の定理からの予言性があるかどうか,ということだが, 別々の数理モデル(量子力学の数学と統計力学の数学)を 統合するためには,少なくとも, 新たな翻訳(辞書)が必要になるはず.
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1st July 2003

構想5年の"大論文"
Infinitesimal deformations and stabilities of singular Legendre submanifolds. pdf; dvi
を現在がんばって仕上げている.それにしても,アイディアは簡単に出るのに, 論文を仕上げるのはどうしてこんなに時間が かかるのだろう!?

ところで,小野さんと話をしていて,almost complex geometry における transversality に興味をもつ. ということで,
Donaldson, S. K. Symplectic submanifolds and almost-complex geometry. J. Differential Geom. 44 (1996), no. 4, 666--705.
を眺める.transversality や real algebraic set が関係していておもしろい.
はたして,「概複素特異点論」は存在するか?
26th June 2003

ランダウ・リフシッツの「統計物理学」を読む.
条件付き確率に時間の概念なし. 熱力学の第2法則は,確率統計の概念を 使う際に,手順の前後と素朴に実数論を 結びつけた過程で得られる法則. 非可逆現象の由来は,確率論の非可逆性から くる.そして,統計物理における確率論の適用の 物理的正統性は,量子力学における非可換性に 求めるべきである.
22th June 2003

昔買って読んでいなかった湯川秀樹著「物理講義」 を読む.そのついでにニュートンの「プリンキピア」を眺める. 質点とは何かを考える.
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19th June 2003

Misha Zhitomirski さんの草稿 「Simple and deformation-simple singularities of plane curves」 を読んでいる.彼の deformation simple という概念は, どうも,誰も書いていないものだ.新しい概念と言ってよい.
16th June 2003

微分幾何の問題の投稿用の原稿を書いている.

● ガウス写像が退化する部分多様体の構成問題

ガウス写像や 射影双対が退化する部分多様体については, 代数幾何,リーマン幾何,群の 表現論,特異点論などさまざまな側面からの研究がある. このような性質を持つ部分多様体は,特異点を持ちやすい. 実際,複素射影空間における非特異 コンパクト複素部分多様体でガウス写像が退化するものは, 射影部分空間以外には存在しない. しかし,実射影空間や球面内においてはカルタン超曲面はじめ 多くの例が発見されている.関連して次の結果が知られている: $M^m$ を $\R P^{n+1}$ の $m$ 次元閉部分多様体 でガウス写像 $\gamma : M \to {\mbox{\rm Gr}}(m+1, \R^{n+2})$ の微分写像の最大階数 $r = {\mbox{\rm rank}}(\gamma)$ が $m$ より真に小さいとする. このとき $m$ だけで決まる数 $F(m)$ があって $r < F(m)$ ならば $r = 0$ である.特に, $M^m$ が連結で射影部分空間でなければ, $F(m) \leq r$ である(フェラス不等式). ここで,$F(m)$ (フェラス数)は $m = 1, 2, \dots, $ に対し, $$ F(m) := \min\{ k \in {\mathbb N} \mid A(k) + k \geq m\}, $$ で定義される.ただし $A(k)$ は $S^{k-1}$ 上の1次独立なベクトル場の最大個数であり,代数トポロジーにおける有名な アダムスの定理により, $$ A((2b + 1)2^{c + 4d}) = 2^c + 8d - 1, (b, c, d \in {\mathbb N}\cup\{ 0\}, 0 \leq c \leq 3). $$ と計算される.

問題:フェラスの不等式は最良か?各 $(m, n), m < n$ に対し, $r = F(m)$ を満たす,閉部分多様体 $M^m \subset \R P^{n+1}$ を構成せよ.

● 射影双対が退化する部分多様体の構成問題

ここでは,部分多様体をルジャンドル部分多様体のフロントと見る, という観点から問題を提示する. incidence pairs の空間 $$ Q := \{ ([x], [y]) \in \R P^{n+1} \times \R P^{n+1*} \mid x\cdot y = 0 \}, $$ は射影幾何の基礎である.ここで,$\R P^{n+1*}$ は双対射影空間を表す.$Q$ は $2n+1$ 次元多様体であり,接触構造 $$ D := \{ dx\cdot y = 0\} = \{ x\cdot dy = 0\} \subset TQ. $$ を持つ.$Q$ 内の $D$ に関する $n$ 次元積分多様体の ことをルジャンドル部分多様体という.2つの 射影 $\pi : Q \to \R P^{n+1}, \pi^* : Q \to \R P^{n+1*}$ に関して,ルジャンドル部分多様体 $L \subset Q$ の像 $\pi(L) \subset \R P^{n+1}$ と $\pi^*(L) \subset \R P^{n+1*}$ をそれぞれ $L$ の $\pi$-フロント,$\pi^*$-フロントと呼ぶ. $\R P^{n+1}$ のすべての部分多様体 $M$ は,そのルジャンドル持ち上げ $L = \widetilde{M} := \{ ([x], [y]) $ の $\pi$-フロントである.$\widetilde{M}$ の $\pi^*$-フロントが,$M$ の射影双対である. 一般にフロントは特異点を持つ.フロントがどのような特異点を 持つかを調べるのがルジャンドル特異点論である.さて, $m := {\mbox{\rm rank}}(\pi\vert_L), m^* := {\mbox{\rm rank}}(\pi^*\vert_L)$ (微分写像の最大階数)とおく.このとき, $L \subset Q$ が閉ルジャンドル部分多様体で,射影部分空間のルジャンドル持ち上げで なければ, $$ F(m) \leq m + m^* - n, \quad F(m^*) \leq m^* + m - n. $$ (対称フェラス不等式)が成立する.

問題:対称フェラス不等式は最良か?各 $(m, m^*), F(m) = F(m^*)$ に対し, $\R P^{n+1}, n = m + m^* - F(m)$ の $m$ 次元閉部分多様体で,その射影双対が $m^*$ 次元であるものを構成せよ.

ところで,フェラス不等式は,リーマン幾何の手法で証明されている. 微分のことは微分でせよ.射影幾何の定理は射影幾何で証明したい.

問題: フェラス不等式の射影幾何的証明を与えよ.

フロントの射影部分幾何を展開したいが,フロント自体には特異点があり, フレームを構成できないが,それを支配しているルジャンドル部分多様体には フレームを構成できる.そのフレームを使って不変量を構成できないだろうか.

問題: ルジャンドル部分多様体の動標構(moving frame) の理論を構築せよ.

\begin{verbatim}
E-mail : ishikawa@math.sci.hokudai.ac.jp Web Page : http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~ishikawa
\end{verbatim}
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6th June 2003

Misha Zhitomirski さん から 44 pages の原稿 「Simple and deformation-simple singularities of plane curves」 届く.彼の書いている deformation simple という概念は,僕(石川)の理解が 正しければ,Bruce さんも既に認識しているはず.
5th June 2003

$C^1$-manifolds $N, M$ に対して, 「連続写像 $f : N \to M$ が絶対連続」ということを 定義できればスッキリする.
「A continuous map $f : N \to M$ is absolutely continuous $\Leftrightarrow$ $\forall x_0 \in N, \forall x_1, x_2, \dots, x_n$ local coordinates over $U$ around $x_0$ of $N$, $\forall y_1, y_2, \dots, y_m$ local coordinates over $V$ around $f(x_0) = y_0$ of $M$, the local representation $f : U \to V$ is absolutely continuous」
「A map $f : U \to V$ is absolutely continuous $\Leftrightarrow$ $\forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0$, intervals $\Delta_i \subset U$ with $\sum_{i=1}^\infty \vert \Delta_i \vert < \delta$ $\Rightarrow$ the sum of outer measure of images $\sum_{i=1}^\infty \vert f(\Delta_i) \vert < \varepsilon$」
3rd June 2003

久賀道郎さんの「ドクトル・クーガーの数学講座2」という本に, むかし「数学セミナー」で読んだ 「アポロニウスのいないポテンシャル」という文章を見つけて なつかしく読んでいたら,"実保型関数論"の Millson と Jaffee の 名前を見つけた. 改めて調べてみると, Jaffee はもう数学をやめたらしいが, Millson は大活躍中で,検索して思わず,つぎの論文をながめてしまった:

Hermann Flaschka, John Millson, The moduli space of weighted configurations on projective space, math.SG/0108191 link

Michael Kapovich, John J. Millson, Quantization of bending deformations of polygons in Euclidean space, hypergeometric integrals and the Gassner representation, Canad. Math. Bull. 44 (2001), no. 1, 36--60. (math.SG/0002222 link )

Kapovich, Michael; Millson, John On the moduli space of polygons in the Euclidean plane. J. Differential Geom. 42 (1995), no. 1, 133--164.

Michael Kapovich, John J. Millson, Thomas Treloar, The symplectic geometry of polygons in hyperbolic 3-space, Asian J. Math. 4 (2000), no. 1, 123--164. (math.SG/9907143 link )

Michael Kapovich, John J. Millson, Universality theorems for configuration spaces of planar linkages, Topology 41 (2002), no. 6, 1051--1107. (math.AG/9803150 Subj-class: Algebraic Geometry; Geometric Topology link )

とくに,最後の論文は,実代数幾何(Nash 多様体論),ロボティクス,特異点論, シンプレクティック幾何 が縦横に関係していて非常におもしろい.
3rd June 2003

Hermite の定理の拡張だ.

P. Pederson, M.-F. Roy, A. Szpirglas, Counting real zeros in the multivariate cases, in Computational Algebraic Geometry, Prog. Math., {\bf 109}, Boston, Birkh\"{a}user, 1993, pp. 203--224.
3rd June 2003

S.B. Giddings, S.A. Wolpert, A triangulation of moduli space from light-cone string theory, Comm. Math. Phys., {\bf 109} (1987), 177--190.
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Goo Ishikawa