数学科では何を研究しているか - 散乱の多様性を司る不安定解

数学科の研究は、主に代数・幾何・解析・数理の4つの分野に分けることができます。
ここでは、身近な話題が対象であったり、視覚的に面白い研究を2つ紹介しましょう。

散乱の多様性を司る不安定解

散乱の多様性を司る不安定解

空間3次元での散乱課程では、トポロジーも変化し、6つの粒子解になることもある。
ここにも分水領解が隠れている。

大雪山系、三国峠あたりに降る雨は、北海道を囲む三つの海に振分けられる。物理モデルにおいても、衝突散乱過程の組織中心は峠点の特異性に集約される。微分方程式の解軌道の降る舞を雨水の行方に喩えると、分水嶺解は峠点に相当する.分水嶺での微かな位置のずれが、雨粒のその後の冒険物語を大きく描き換える。

散乱の多様性を司る不安定解

粒子解同士が出会うとき、交通整理をしているのが分水領解である。交差点での微少な揺らぎが解軌道の行方を大きく変える。
「左右から来た粒子解が瓢箪型の分水領解に近づき、場面中央で合体した粒子解がしばらくためらってから、手前のほうへ駆け出した。」

独立した2つの物事が相互作用し、なにか別の物事を生み出すプロセスをどのように理解し、予測することができるであろうか?反応拡散系というモデル方程式のクラスは、粒子解の衝突相互作用として、ひとつのヒントを与えてくれる。この問題は無限次元空間で起こるダイナミクスゆえに、コントロールする仕掛けの解明は困難であった。相互作用の微妙で多様なダイナミクスの司令塔を果たしているのは、「分水領解」(scattor)」という、極めて不安定な-微かな揺らぎが大きく結果を変えてしまう-実体である。その存在と分岐構造の果す役割が、数学とコンピュータをブレンドしたアプローチにより明らかになってきた。