【 レビュー集 Special Lagrangian 編 】
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2005年8月9日,石川 剛郎による「勝手にレビュー」
こんにちは石川剛郎です.
N. Hitchin, Lectures on Special Lagrangian Submanifolds. の
第2節 Moduli spaces of special Lagrangian submanifolds のレヴュー(というより,単なる勉強メモですが)を書きます.
2.1.
いろいろな話が絡み合うカラビ・ヤウ多様体
は,複素 $n$ 次元ケーラー多様体で,正則 $n$ 次微分形式 $\Omega$
で,いたるところ消えず,
共変微分 $\Delta\Omega = 0$ となるものが存在するもののこと.
言い換えると,ホロノミーが $SU(n)$ に入るようなリーマン多様体のこと.
ケーラー形式 $\omega$ はシンプレクティック形式.
$\Omega = \Omega_1 + i \Omega_2$ と実部と虚部に分ける.
$Z$ をカラビ・ヤウ多様体とする.
その部分多様体 $M$ が特別ラグランジュ部分多様体
とは,ラグランジュ部分多様体であって,さらに $\Omega_2 \vert_{M} = 0$
となるもの.
このとき $\Omega_1$ を $M$ に制限すれば体積要素.
2.2.
とくに $3$ 次元の場合を考える.
向きづけられた3次元閉多様体 $M$ に体積要素 $V$ が与えられているとする.
そして $M$ から 3次元カラビ・ヤウ多様体 $Z$ への $C^\infty$ 写像の全体の空間 $N = C^\infty(M, Z)$
を考える.
$f : M \to Z$ における$N = C^\infty(M, Z)$ の接空間は $f$ に沿った
ベクトル場の全体の空間と同一視できるが,$f$ に沿ったベクトル場
$X, Y : M \to TZ$ に対して,$Z$ のシンプレクティック形式 $\omega$ を使って,
$$
\varphi(X, Y) := \int_{M} \omega(X, Y) V,
$$
とおくと,
$N = C^\infty(M, Z)$ に
「シンプレクティック構造」が入る.
$G = Diff_V(M)$ を $M$ の体積 $V$ 保存微分同相写像のなす群とする.
$G$ のリー環 ${\mathcal G}$ は,$X \mapsto i(X)V$ により,
閉2形式の全体と同一視できる.したがって,${\mathcal G}$ から
ド・ラーム $H^2(M, \R)$ への全射ができる.その核を ${\mathcal G}_0$
とおく.
${\mathcal G}_0$ は,完全2形式の空間であり,
その双対は,1形式全体を閉1形式全体で割った空間である.
${\mathcal G}_0$ をリー環とする群を見つけるのに,gerbe が役に立つ.
$M$ の体積を $2\pi$ とすると,
$[V/2\pi] \in H^3(M, \Z)$ なので,曲率形式が $V$ になるような gerbe が存在する.
("degree one gerbe").
その gerbe のホロノミーがきめる写像 $G \to H^2(M \to \R/\Z)$
を $G$ の単位元の成分に制限したときの $1$ の逆像を $G_0$ とかくと,
$G_0$ はモーメント写像をもつ.
$N = C^\infty(M, Z) \to H^2(M, \R) = H^2_{DR}(M, \R)$ が,
$f \mapsto [f^*\omega]$ で定義される.
$[f^*\omega] = 0 \in H^2(M, \R)$ となる写像全体を $N_0 = C^\infty(M, Z)_0$
と書く.
各 $f \in N_0 = C^\infty(M, Z)_0$ に対して,$[f^*\omega] = 0$ なので,
$f^*\omega = d\theta$ となる $1$-form $\theta$ が closed $1$-form 分を除いて
ユニークに決まる.
したがって,$[\theta] \in {\mathcal G}_0$ が決まる.
この写像
$$
\mu : N_0 = C^\infty(M, Z)_0 \to {\mathcal G}_0, \mu(f) = [\theta],
$$
は,群 $G_0$ の $N_0 = C^\infty(M, Z)_0$ 上の作用のモーメント写像である.
このモーメント写像の零の逆像は,isotropic map 全体である:
$$
\{ f : M \to Z \mid f^*\omega = 0 \}.
$$
2.3.
次に,special Lagrangian の条件.
$I : TZ \to TZ$ を $Z$ の複素構造とする.
$X : M \to TZ$ を $f : M \to Z$ に沿ったベクトル場とする.
このとき $IX : M \to TZ$ もそう.こうして,
$C^\infty(M, Z)$ に複素構造が入る.
$$
{\mathcal S} = \{ f \in C^\infty(M, Z) \mid [f^\omega] = 0, f^*\Omega_2 = 0,
\Omega_1 = V \}
$$
とおくと,
${\mathcal S}$ は $C^\infty(M, Z)$ の複素部分多様体.
上のモーメント写像を ${\mathcal S}$ に制限したとき,零の逆像は,
(パラメトライズド)特別ラグランジュ部分多様体で,誘導される体積要素が $V$ になるものの全体である.
そして,そのシンプレクティック商として得られるケーラー多様体が得られるが,
これは
「特別ラグランジュ部分多様体とその上の degree one gerbe の組のモデュライ空間」と考えられる.
2.4.
McLean の仕事との関連を論じている.
moduli space の tangent space に対応するベクトル場 $X : M \to Z$
を $M$ に接する成分 $X_t$ と法成分 $X_n$ に分けると,その法成分に対して,
$i_{X_n}\omega$ は調和 $1$-形式となる.
最後に,real Monge-Amp\`ere 方程式
$$
\det \dfrac{\partial^2\phi}{\partial x_i\partial x_j} = const,
$$
との関係を論じている.
2005年6月16日,石川 剛郎による「勝手にレビュー」
N. Hitchin, Lectures on Special Lagrangian Submanifolds.
の第1節 Gerbes
を読みました.Gerbe が,3次のコホモロジーや余次元3の部分多様体に対する概念,
開被覆の3つの開集合の共通部分を考えるものであることがわかりました.さらに,
gerbe の trivialization, connection などが議論されています.
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