【 メール・レビュー集 M-theory 編 】
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2004年7月27日,石川 剛郎による「勝手にレビュー」
M. Atiyah, J. Berndt,
Projective planes, Severi varieties and spheres.
の 4. Orbit structures と 5. An Explicit Map
を読みました.Theorem A (p.12)の証明が書いてあります.
Theorem A は,有名な結果「$\C P^2/conj$ が $S^4$ と微分同相」
の一般化ですが,本当にこれで証明になっているのか,私(石川)は
いま一つ納得できません.
(もともとの Kuiper や Massey の PL topology の結果を使った証明
は(それはそれでわかった気がしないが)
ともかく,Arnold による直接的な証明も,それで証明になっているのか
前々から疑問に思っていました.この論文の証明も,Arnold の
証明と基本的に同じ発想の証明ですが,そもそも「商空間の微分構造とは何か」
ということを十分に書ききっていないように思います.
不遜ながら,でも正直に「わかりません」と言っておきます.
それから,
J. Adams, M.F. Atiyah, K-theory and Hopf invariant, Quart. J. Math. 17 (1966), 31--38.
を眺めてみました.結局 K-theoryを使って,$n$ 次元球面
$S^n$ 上に Hopf invariant one が存在するのは,
$n = 1$ か $n = 2m$ で $2^m$ が $3^m -1$ を割り切るときだ,
だから,$n = 1, 2, 4, 8$ に限るのだ,
ということに持ち込んで示されるのだ,ということがわかりました.
(もちろん,K-theory の奥義がわかったわけではありませんが).
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2004年6月11日,石川 剛郎による「勝手にレビュー」
M. Atiyah, J. Berndt,
Projective planes, Severi varieties and spheres.
の 3. Projective plane を一読しました.ここに書いてあることがらは,
我が国では,敬愛する横田一郎先生の名著
「群と位相」「群と表現」「古典型単純リー群」「例外型単純リー群」
で十分おなじみなことだと思います.ちなみに,私(石川)は大学2年生のときに,
(現在神戸大にいる S 氏らと一緒に)
三村護先生のセミナーで「群と表現」を読みました.最後までは全然行かなかったけれども.
それはそうと,論文を読んでいたら,topological な話で,
J. Adams, M.F. Atiyah, K-theory and Hopf invariant, Quart. J. Math. 17 (1966), 31--38.
を読みたくなりました.Atiyah ももちろん偉大な数学者ですが,Adams
も決定的な結果を残した(玄人好みのする)偉大な数学者ですね.
ぜひ,暇を見つけて,Adams の論文をじっくり読んでみたいと思っています.
ところで,現在北大で,A氏主宰の「簡単かるたんセミナー」というのがあり,
そこで,
Thomas A. Ivey, J. M. Landsberg,
``Cartan for Beginners:
Differential Geometry Via Moving Frames and Exterior Differential Systems'',
A.M.S. 2003.
を読んでいるのですが,
その本の p.200 に calibrated submanifolds と関連して M-theory の名前が
出てきます.参考文献としては,
D. Cox, S. Katz, Mirror symmetry and algebraic geometry,
AMS, 1999.
が挙げられています.
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2004年5月10日,石川 剛郎による「勝手にレビュー」
ゴールデンウィーク中にようやく
M. Atiyah, J. Berndt,
Projective planes, Severi varieties and spheres.
の 1. Introduction, 2. Projective Lines, Hopf Maps and
Branching を読みました.
この論文の目標の1つは,自然な微分同相
$\C P^2/O(1) \cong S^4,
\H P^2/U(1) \cong S^7,
\O P^2/Sp(1) \cong S^{13}$
があることを示すことです.
%\C は複素数体,\H は4元数体,\O は8元数体.
それぞれの体上の射影平面の商が,(ある次元の)球面に微分同相である,
という発見についてです.
$O(1) \ZZ/2\ZZ$
%\ZZ は整数全体
は,複素射影平面 $\C P^2$ に複素共役として作用します.
「複素射影平面を複素共役で割った空間は4次元球面と微分同相」
という事実は,ヒルベルト第16問題の前半において,
実代数曲線のトポロジーを複素化を通して4次元トポロジーと
結び付けるときに鍵となる事実です.
それがきれいに一般化される,しかも M-理論などに関連して応用される(らしい)という
ことは驚きでした.
ところで,normed division algebra は $\R, \C, \H, \O$
の4つあるので,
$\tilde{\R P^2} \cong S^2$
(ただし,$\tilde{\R P^2}$ は $\R P^2$ の non-trivial double covering)
を付け加えるとよいかな,と思いました.
それはともかく,射影平面の複素化が球面の "branched fibration"
である,ということ(これも4つある)を示すのがこの論文のもう1つの目標です.
これは,$\C P^2$ への $SO(3, \C)$ 作用に関する結果の一般化であり,
これもまた興味深いものです.
ところで,私(石川)は,もともと normed division algebra の分類定理(や
Hopf invariant one 問題)が好きで,$\R, \C, \H, \O$ について
あれこれ考えているときは至福の極みです.
(単純リー環の分類定理も好きだけど).
昔,Legendre 特異点論に関係して,空間曲線の tangent developable
の特異点の分類をしていたとき,
当時,北大におられたM先生に,$\R P^3$ 内の Monge-Amp\`ere
方程式 $rt - s^2 = 0$ の大域解は $\R P^2$ に限る,ということを教えてもらいました.
(tangent developable は $rt - s^2 = 0$ の解になるので関係するわけです).
そこで,その後,$\R P^4$ の類似の(つまり Gauss 写像が退化する)超曲面も
$\R P^3$ に限るだろうと単純に予想し,$\R P^3$ に限ることを
証明しようと,かなりの間もがいていて,じゃあ,projective
dual の方から攻めてみて,まず $\R P^4$ の中の,
2次の parametrization をもつような曲面の projective dual は
必ず特異点をもつ,ということだけでも証明してみようと試してみたら,
結局,特異点のない例が見つかりました.
これは,M先生との共著論文に結実しました.
その構成をみると,複素数や4元数を使っても同様に例を作れるな,
ということまではわかったのですが,
構成がきれいなので,きっと誰かがやっているだろうと
インターネットで調べて,紆余曲折の後ようやく,等径超曲面の重要な例である
Cartan 超曲面(の特別なもの)に行き着いたわけです.
結果的には,すでに知られていることを組み合わせただけ,
すでに知られていることを追認識したにすぎない,
などということかもしれませんが,
数学をするということには,多かれ少なかれ,
そういう面があるし,
誰かがすでにやっているだろう,
てなことばかり言っていたら何もできなくなるし,
無鉄砲に数学をやることは
(後の始末を自分でつけることを厭わなければ)
非常にスリリングで楽しいことであると感じました.
失礼しました.閑話休題,2節のレビューをしましょう.
$A_n$ を normed division algebra とします.
$n = 0, 1, 2, 3$ のとき,それぞれ,$A_n = \R, \C, \H, \O$
です.その上の射影直線 $A_n P^1$ を考えます.
それぞれ $1, 2, 4, 8$ 次元球面と同相です.
ところで,4元数は quaternion で良いのですが,
8元数の呼び方で,octonion, octanion, octonian という3種類があるのを
発見しました.どれが一番良い言い方なのでしょうね.
(ちなみに,octanian というのはまだ見たことがありません).
閑話休題,$A_n P^1$ は,$(A_n)^2$ の直線の全体なので,tautologial
line bundle を持ちます.その dual line bundle を $L_n$ と書きます.
さて,次の一節
The line bundle $L_n$ generates the reduced real K-theory
of sphere of dimension $2^n$, and the
octonionic line bundle $L_3$ induces a periodicity
between the reduced real K-theories of higher-dimensional spheres,
known as Bott periodicity.
を読んだとき,さすが Atiyah 先生だなと,深い感動を覚えました.
それはともかく,
$A_n P^1$ 上の sphere bundle $S(L_n)$ は球面であり,
$S(L_n) \to A_n P^1$ は Hopf bundle になります.
($n = 1$ の場合は,Clifford までさかのぼるそうです).
ところで,Clifford と言えば,岡潔さんの随筆に出てくる Clifford の定理
についての話を
M先生から教えてもらったことがあります.その影響で,
Clifford 全集全一巻を少し眺めてみました.
変なこともいろいろ書いてあって楽しめそうでした.
またまた閑話休題,
(Clifford-)Hopf fibration $S(L_1) = S^3 \to \C P^1 = S^2$ を考えましょう.
対応して,$\C^2 = \R^4$ 上の $U(1) = S^1$ 作用 $(\alpha, (z_1, z_2))
\mapsto (\alpha z_1, \alpha z_2)$
による商空間を考えます.それは $S^2$ の cone であり,$\R^3$ になります.
つまり,branched $U(1)$-fibration $\R^4 \to \R^3$
が得られますが,これが磁気モノポールを記述するので物理で重要だそうです.
電荷の量子化がこの bundle によって記述されるということが Dirac による
偉大な発見でした.
この $\R^4$ は,Dirac monopole の Kaluza-Klein model と
呼ばれています.
M-theory でも,より一般に,余次元3の分岐が現れ,
Atiyah-Witten の論文で調べられています.
ただ訳しているだけですが,ともかく,
Lie 群 $G$ の closed subgroups $K, K_1, K_2$ で $K \subset K_1 \cap K_2$
に対して,double fibration $G/K \to G/K_1, G/K \to G/K_2$
が出てくる状況(たとえば,$G = SO(3)$ の $\C P^2$
への作用の isotopy groups)を研究するという感じで,2節が終わりです.
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2004年4月17日
M 理論の "M" は何をさすか?
M 先生から教わったことによると,
M:母なる理論のMother
11次元での膜理論のMembrane
根元理論は行列模型のMatrix
究極の神秘な奇跡の理論のMisterious, Miracle
だそうです.
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