第9回数学総合若手研究集会
〜多分野間の交流による発展・発見を目指して〜

The 9th Mathematics Conference for Young Researchers

Contents

アブストラクト

梅田 耕平(Kohei UMETA) 北海道大学大学院数学専攻
タイトル: 多変数Laplace超関数について
アブストラクト: Laplace超関数は小松彦三郎氏により、無限遠方で高々指数増大する正則関数を代表とする同値類として導入され、変数係数をもつ常微分方程式及び偏微分方程式の解法に役立つことが知られている。本講演では、局所凸位相空間論を用いずコホモロジー論的な手法のみで、いくつかの指数型正則関数を係数とするコホモロジー群の消滅定理を示し、多変数Laplace超関数の層を構成できることを説明する。
木村 恵二(Keiji KIMURA) 京都大学数理解析研究所
タイトル: 両側境界面の回転を許容する回転球殻ブシネスク熱対流問題
アブストラクト: 回転球殻ブシネスク熱対流問題は,天体規模熱対流現象の最も簡単なモデルとして,半世紀以上にもわたって盛んに研究がなされてきた.これらほとんどの研究では両側境界面が同じ一定回転角速度で回転 (同期回転)していることを仮定していた.しかし実際の天体を念頭においた場合,両側球がトルクを受けて自由に回転できる方がより自然である.そこで本研究では,両側境界面の三軸回転を許容するモデルを構築し,両側境界面が同期回転する場合と比較して熱対流解の振る舞いがどのように変化するかを調べた.
水澤 篤彦(Atsuhiko MIZUSAWA) 早稲田大学大学院基幹理工学研究科
タイトル: 双曲体積と関連する空間グラフの不変量
アブストラクト: 空間グラフとは、グラフを位相空間と見なして、3次元球面へ埋め込んだものである。(向き付けられた枠付きの)3価空間グラフには、量子群Uq(sl2)の整ではない表現を通してCostantino-Murakami(CM)不変量が定義される。四面体の辺の形のグラフに対するCM不変量のある種の極限は、双曲の理想四面体や切頂四面体の体積へ収束することが示されている。今回、CM不変量の拡張として、3価以上の頂点を持つ(向き付けられた)空間グラフに対する不変量を定義した。また、この不変量の四角錐の辺の形のグラフに対する値を極限へ飛ばしていくと双曲四角錐の体積に近づく例を紹介したい。本研究は村上順氏との共同研究である。
山本 健(Ken YAMAMOTO) 中央大学理工学部
タイトル: コインの分配におけるフラクタルパターン
アブストラクト: 999円分のコインを3人で分けるという問題を考える。3人の取り分を組にしたものは3次元空間の点の座標とみなすことができる。可能な全ての分配の仕方に対応する点の集合を図示すると、フラクタル的な構造が現れる。フラクタルが現れる数理的な仕組みを明らかにし、コインの種類や分ける人数を一般化した問題も考える。
小野塚 友一(Tomokazu ONOZUKA) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: Mordell-Tornheim型2重ゼータ関数の2乗平均(立命館大学の岡本卓也氏との共同研究)
アブストラクト: リーマンゼータ関数の2乗平均については既に結果が知られている。松本耕二氏と津村博文氏はこの結果を応用しEuler-Zagier型2重ゼータ関数の2乗平均についての結果をだした。今回は更にMordell-Tornheim型2重ゼータ関数に応用して得られた結果について話す。
相原 祐太(Yuta AIHARA) 北海道大学
タイトル: Semi-Classical Asymptotics in an Abstract Bose Field Model
アブストラクト: 量子力学において、様々な量に対するh→0(hはプランク定数)の極限は古典極限と呼ばれる。一般的に、古典極限はhに関する第0次近似と見なされる。この観点からは、様々な量のhに関するより高次の漸近挙動を導き出すことに興味がある。そのような漸近挙動は半古典的漸近挙動と呼ばれる。本講演の目的は、ボソンフォック空間における摂動を持つ第2量子化作用素の熱半群のトレースに対する漸近公式を導出することである。
嶺山 良介(Ryosuke MINEYAMA) 大阪大学大学院理学研究科
タイトル: タイヒミュラー空間の双正則自己同型について
アブストラクト: Roydenの定理として知られる, タイヒミュラー空間の双正則自己同型が底曲面の向きを保つ位相同型によって特徴づけられるという事実はこれまでRoyden, Earle, Kra, Markovicらによって微視的な視点から証明されてきた.本講演ではこの定理を彼らの手法とは本質的に異なる, より大域的な方法で別証明を与える.この結果は大阪大学理学研究科 宮地秀樹氏との共同研究で得られたものである.
犬伏 正信(Masanobu INUBUSHI) 京都大学数理解析研究所
タイトル: Orbital instability of the regeneration cycle in minimal Couette turbulence
アブストラクト: 3次元非圧縮性ナビエ・ストークス方程式で記述される平行平板間の乱流(クエット乱流)をカオス力学系と考え,その軌道不安定性を調べた.クエッ ト乱流を含む多くの壁近傍の乱流では,流れの構造が生成・消滅を繰り返す現象(regeneration cycle )が観測されている.本研究では近年開発された共変リャプノフ解析をナビエ・ストークス方程式に適用し,regeneration cycleを軌道不安定性の観点から特徴付けた.
齋藤 正顕(Seiken SAITO) 工学院大学
タイトル: The product over all norms of primes on a graph
アブストラクト: 全ての自然数の(ゼータ)正規化積は, Lerch の公式として良く知られている.しかし,全ての素数の正規化積は付随するゼータ関数が虚軸を自然境界として持つために定義されない.Garcia と Marco は, 付随するゼータ関数を2変数化することで,正規化積を拡張し,超正規化積(super-regularized product)を定義し,全ての素数の超正規化積を与えた.本研究では,このグラフ版のアナロジーを扱う.有限グラフに対し,我々は全ての素サイクルのノルムの超正規化積を計算した.尚,本研究は長谷川武博氏(立命館大学)との共同研究である.
船川 大樹(Daiju FUNAKAWA) 北海道大学大学院理学院
タイトル: 一般化された量子電磁力学モデルの基底状態とエネルギーギャップについて
アブストラクト: 電子と光子の相互作用モデルであるところの量子電磁気学モデル(QEDモデル)では様々な結果が出ている。例えば、最低エネルギーの状態を描く基底状態の存在性やそのモデルの持つエネルギーにはギャップがないなどである。では、このモデルを少し一般化させるとどうなるのか。本公演では一般化させたQEDモデルについてその定義と上記の問題について解説する。
大鳥羽 暢彦(Nobuhiko OTOBA) 慶應義塾大学理工学研究科
タイトル: S2上の2つのS2束に定まるRiemann計量について
アブストラクト: Riemann多様体とは3次元Euclid空間内の曲面の高次元への一般化であり, 滑らかな多様体とその上のRiemann計量の組として定義される. この講演では, 与えられた滑らかな多様体上の最も良いRiemann計量は何かという問題を, 2次元球面上の2つの2次元球面束の場合に考える. そしてその部分的な答えとして, 次を主張する: これらの多様体のファイバー束の構造を最も尊重するようなスカラー曲率一定計量は, 自明束の場合は自然な直積計量に, 非自明束の場合は講演者が構成した計量に限る. ただし, いずれの場合も自然なEhresmann接続を固定する.
清水 達郎(Tatsuro SHIMIZU) 東京大学数理科学研究科
タイトル: ホモロジー3球面の1次の有限型不変量とそのcorrespondenceに対する拡張について.
アブストラクト: G.~KuperbergとD.~ThurstonはM.~Kontsevichのアイデアを元に,ホモロジー3球面の普遍有限型不量Z^{KKT}(KKT不変量)を構成した.KKT不変量の1次部分はCasson不変量の別構成と捉えることができる.また,森山哲裕はKKT不変量の構成に触発されて,3次元多様体の6次元多様体への埋め込みに対する不変量を構成した.我々は,これらの構成の拡張を用いて,ホモロジー3球面の間correspondenceに対して不変量を定義し,その応用を述べる.我々は不変量の2通りの構成を与えるが,その1つの構成においてはframingの拡張概念が鍵となる.
坂田 実加(Mika SAKATA) 近畿大学大学院総合理工学研究科理学専攻
タイトル: 多重ベルヌーイ数の2-orderと3-orderについて
アブストラクト: ベルヌーイ数のp-orderに関する研究成果,すなわち,クラウゼン・フォンシュタウトの結果はクンマー合同式やp進L関数の理論に結びつく重要な情報であった.ベルヌーイ数の一般化として金子昌信氏によりポリログを用いて多重ベルヌーイ数が定義された.多重ベルヌーイ数は,荒川-金子のゼータ関数の負整数点での特殊値に現れ,多重ゼータ値と結びつくことなどが知られている.今回,多重ベルヌーイ数のp-orderの研究を行い,2重ベルヌーイ数の2-orderや3-orderなどについて進展を得たので報告する。
二口 伸一郎(Shinichiro FUTAKUCHI) 北海道大学大学院理学院
タイトル: 場の量子論に対する散乱理論の数学的構成について
アブストラクト: 場の量子論に対する散乱理論の厳密な構成にはある困難が伴い、量子論に対する散乱理論とは構成が異なる。本講演では、そのような散乱理論の枠組みを概説する。トイモデルでのいくつかの結果を解説し、それと比較しながら場の量子論のモデルにおける結果を紹介する。また、未解決問題についても触れる。
北澤 直樹(Naoki KITAZAWA) 東京工業大学理工学研究科数学専攻
タイトル: Morse 理論の一般形の研究と多様体の幾何学への新たな応用
アブストラクト: Morse 理論とは,多様体を特異点的に良い関数(Morse 関数)を用いて調べるというものであるが,値域を実数から一般の多様体(但し定義域より次元の高くないもの)に変えた一般形が,1950年代のThom,Whitney の研究に始まり今に至るまで盛んに研究されている. 一般形でも,特異点的に良い写像が重要で,中でも重要なのが Morse 関数の最も自然な一般化である折り目写像である.講演では折り目写像について,初歩的解説から始め,講演者の最近の研究考えている応用他紹介予定である.
松村 真義(Masayoshi MATSUMURA) 東京大学大学院数理科学研究科
タイトル: C^\ast完全群
アブストラクト: C^\ast環のテンソル積を構成する場合,代数的なそれの上に適切な位相を指定しなければならない.代数的な理論との最も重要な違いは,それは存在するが一般には一意でないことにある.あるC^\ast環Aによる極小テンソル積を取るという操作は一般には完全列を保たないが,常に保つ場合Aが完全であると言う.群環の完全性はトポロジーから数論,さらには計算機科学など広い分野との関連があることが知られてきている.今回は,それらについての基礎的な解説を行いたい.
矢城 信吾(Shingo YASHIRO) 九州大学大学院数理学府
タイトル:一般の位置にあるn+4点集合の極小自由分解に関する考察〜deg X = codim X + i (i = 1,2,3)となる射影多様体について〜
アブストラクト: 非退化射影多様体はdeg X ≧ codim X + 1という関係式が成立するが,このような射影多様体の中で,deg X = codim X + i となるものを紹介する。また,射影空間内の点集合についてもいくつかの例を挙げて解説させていいただく。 
兒玉 浩尚(Hirotaka KODAMA) 近畿大学大学院総合理工学研究科理学専攻
タイトル: A congruence property of Igusa's cuspform of weight 35
アブストラクト: 2次フルジーゲルモジュラー群に対するウエイト35のジーゲルカスプ形式に対して,ある合同性質を証明した.2次のジーゲルモジュラー形式の構造は,井草氏により明らかにされている.そのジェネレーターのうちウエイトが奇数のジェネレーターはΧ35のみである.このΧ35を,うまく正規化した整数係数カスプ形式Χ35のフーリエ係数を調べると,ある種の合同性質があることがわかった.この性質をテータ作用素と,Sturm型定理を用いて証明する.
佐藤 孝美(Takami SATO) 北海道大学理学院数学専攻
タイトル: 反ド・ジッター空間内における空間的超曲面の縮閉超曲面について
アブストラクト: 反ド・ジッター空間は負の曲率をもち、ミンコフスキー空間やド・ジッター空間とは全く異なる因果性を持つローレンツ空間形である。そこで、今回は反ド・ジッター空間の空間的超曲面にラグランジュ・ルジャンドル特異点論を応用する事によりユークリッド空間内の超曲面のガウス写像に対応するものと、更にそれとともに考えられる縮閉超曲面の特異点の持つ幾何学的意味について得られた結果を紹介する。
鈴木 悠平(Yuhei SUZUKI) 東京大学大学院数理科学研究科
タイトル: Haagerup property について
アブストラクト: 従順性は,離散群の解析的な病的現象を排除するために考えられた性質である.従順でない離散群は,Banach-Tarskiの逆理で知られるように,直感に反したふるまいをし,解析的には非常に扱いにくい.しかし,非従順な離散群にも,重要なものが数多く含まれている.このような離散群を少しでも扱いやすくするために,従順性を弱めた性質を導入して調べることは重要である.そのような性質の定式化のひとつとして,Haagerup propertyを上げることができる.本講演では,まずは従順性,Haagerup propertyの解説を具体的な例を紹介しながら解説する.その後Haagerup propertyの作用素環論への応用を最近の私の研究を交えて紹介する.
筒石 奈央(Nao TAKESHI) 津田塾大学大学院理学研究科
タイトル: 至る所good reductionをもつ3次体上の楕円曲線について
アブストラクト: 至る所good reductionをもつ代数体上の楕円曲線とは、すべての素イデアルについて、楕円曲線を定めるある方程式の係数を素イデアルで簡約して得られる剰余体上の曲線が、再び楕円曲線になるようなもののことです。そのような楕円曲線について、例えば、有理数体上の非存在が知られています。本講演では、ある一次方程式の単数解から構成される至る所good reductionをもつ楕円曲線と、その曲線の3次定義体の無限族についてお話ししたいと思います。
穂坂 秀昭(Hideaki HOSAKA) 東京大学大学院数理科学研究科
タイトル: 量子群のcategorification
アブストラクト: 近年、(代数的) categorification という手法が話題になっている。これは一言で言うと代数を「圏に持ち上げる」という操作である。より具体的には、ある代数に対し、K群を取るとその代数になるようなうまい代数を構成することを指す。今回の講演では、量子群がKhovanov-Lauda-Rouquier代数と呼ばれる代数でcategorifyされるという事実について、大まかなストーリーを紹介したい。
内藤 貴仁(Takahito NAITO) 信州大学大学院総合工学系研究科
タイトル: 相対ループ空間におけるストリングトポロジーについて
アブストラクト: Chas-Sullivanによるストリングトポロジーの理論は様々な形で拡張されているが,Felix-ThomasによってGorenstein空間と呼ばれる位相空間においてもストリングトポロジーが展開出来る事が示されている.Gorenstein空間とは,ポアンカレ双対空間やコンパクト連結リー群の分類空間といった空間を含むクラスである.本講演では,相対ループ空間におけるストリングトポロジーを考え,それに対して得られた結果について紹介したい.
星野 歩(Ayumu HOSHINO) 香川高等専門学校
タイトル: C, D型Macdonald 多項式のtableau和表示
アブストラクト: 変形W代数は,共形場理論の分類においてZamolodchikovが導入したW代数をq,t 変形した代数です.A型変形W代数のFock表現の真空期待値からA型Macdonald多項式のtableauによるパラメトリゼーション(tableau和表示)が,構成できることを我々の先行研究で示しましたが,この講演ではC,D型変形W代数のFock表現を用いた,C,D型Macdonald多項式のtableau和表示を紹介したいと思います.なおこの研究は白石潤一氏(東大数理)との共同研究です.
高岡 邦行(Kuniyuki TAKAOKA) 早稲田大学大学院教育学研究科
タイトル: 平面閉曲線とLR語
アブストラクト: 横断的な2重点のみを持つ向き付けられた平面閉曲線を、向きに沿って辿ったときに現れる交点における交差の方向に従って、その交点に対して文字L(left)と文字R(Right)を対応させることで、交点の個数とそれぞれ等しい数のLとRからなる文字列が得られる。逆に等しい数のLとRからなる文字列が与えられたとき、その文字列を実現するような平面閉曲線は少なくとも1つ構成できるが、それ以外にどのようなものあるかについて考察する。
寺西 功哲(Noriaki TERANISHI) 北海道大学大学院理学院
タイトル: Self-adjointness of the Generalized Spin Boson Hamiltonians
アブストラクト: 非相対論的粒子と場の相互作用するモデルの一つとして一般化されたスピンボソンモデル(GSBモデル)というものがあります。作用素論的に解析するに当たり、ハミルトニアンがいつ自己共役になるかは常に気にしなければなりません。本講演では主に自己共役性に関する基礎的な解説とGSBハミルトニアンの自己共役性について講演させて戴きたいと思います。
三内 顕義(Akiyoshi SANNAI) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: Dual F-signature
アブストラクト: M. Hochster, C. HunekeらによるFrobenius 写像を用いて定義される正標数の特異点のクラス(F-regular, F-rational)は"正標数への還元"を通じることでそれぞれ双有理幾何学におけるlog terminal, rational singularityに対応することがK. Smith, 原伸生, 渡辺敬一らによって示された。log terminal singularityは定義によりminimal log discrepancyと呼ばれる不変量の正値性で特徴付けられるが、F-regular singularityの場合にもF-signatureと呼ばれるF-regular性を捕まえる不変量がある。本講演ではこの不変量を加群上の不変量に延長し、regular, F-regular, F-rational, Gorenstein特異点の数値的特徴付けを与える。
内免 大輔(Daisuke NAIMEN) 大阪市立大学大学院理学研究科
タイトル: 不定符号の係数を持つ非線形Neumann境界値問題の無限個解の存在について
アブストラクト: 我々は,不定符号の連続関数係数を持つ非線形Neumann境界値問題の無限個解の存在について考える.これまで,べき型の非線形性を持つ楕円型偏微分方程式の境界値問題の解の存在と多重性に関して,変分的手法を用いた解析が多く為されてきた.我々は,方程式,Neumann境界条件ともにべき型の非線形項を持つ問題を扱う.特に,非線形項が不定符号の連続関数係数を持つ場合の,無限個解の存在について議論をする.
安本 真士(Masashi YASUMOTO) 神戸大学理学研究科
タイトル: Weierstrass representation for semi-discrete minimal surfaces
アブストラクト: 滑らかな(通常の)曲面に対して、極小曲面を構成するための明示公式(Weierstrassの表現公式)があることが知られている。その離散アナロジーがBobenko-Pinkallによって証明されているが、半離散的な場合に関してもWeierstrassの表現公式があることを新たに示した。今回は得られた結果と、その応用として3つのケースの比較を行いたい。なお、この講演はWayne Rossman教授との共同研究に基づきます。
岸田 直子(Naoko KISHIDA) 奈良女子大学大学院人間文化研究科物理科学専攻
タイトル: シグナル伝達に関与するたんぱく質の時系列解析
アブストラクト: たんぱく質の機能は一般的にその構造と深い関係があると言われている.しかしわれわれはたんぱく質のダイナミクスと機能の関係を記述する解析方法を見つけることを目指している.今回の発表ではシグナル伝達に関与していると考えられているPDZというたんぱく質の動きをウェーブレット変換と正準相関解析を用いて,分子内でシグナルが伝わる過程について行った解析結果を解説する.
三池 将隆(Masataka MIIKE) 九州大学大学院数理学府
タイトル: 射影空間内の非正規3次超曲面の代数的自己同型群
アブストラクト: 3次元射影空間内の3次曲面の分類や自己同型群の研究は多くの研究者によって行われ,非特異な場合と特異点を持つような場合でも正規な3次曲面の場合には,特異点の様子に応じてその自己同型群が知られている.ここではさらに特殊な3次元射影空間内の非正規な3次曲面の自己同型群について考察する.また,一般の射影空間内の錐でない非正規3次超曲面の自己同型群についても同様に議論できるので,それも合わせて紹介することにする.
高棹 圭介(Keisuke TAKASAO) 北海道大学数学専攻
タイトル: 移流項付き平均曲率流方程式の弱解の存在について
アブストラクト: 平均曲率流の解の存在については,1978年のBrakkeによる弱解(Brakkeの平均曲率流)の存在の結果が有名である.本講演では、移流項付き平均曲率流のBrakkeの意味での弱解の存在について述べる.弱解の構成は,Phase field法と呼ばれるAllen-Cahn方程式の解の特異極限を用いて曲面を近似する方法を採用する.また,解の構成に必要な幾何学的測度論と,重要な評価である単調性公式についても紹介したい.尚,本講演は北海道大学の利根川吉廣氏との共同研究に基づく.
佐藤 寛之(Hiroyuki SATO) 京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻
タイトル: 新しいリーマン多様体上の共役勾配法およびその収束性について
アブストラクト: 目的関数と呼ばれる与えられた実数値関数の最小点を求める手法を研究する最適化分野において,近年,目的関数の定義域をリーマン多様体としてアルゴリズムを開発・解析する研究が行われている.本発表では,特に共役勾配法と呼ばれる最適化手法を取り上げる.まずユークリッド空間における共役勾配法について解説し,それをリーマン多様体上に拡張すると,一般には収束性が破綻することを数値計算例とともに紹介する.その上で,改良版の共役勾配法とその収束性について議論する.
宮加谷 祥子(Shoko MIYAGATANI) 自由学園最高学部
矢野 真知子(Machiko YANO) 自由学園最高学部
タイトル: 栃木県那須地域の気象データを用いた統計モデルとデータ解析
アブストラクト: 自由学園那須農場の農場員によって57年間に亘って観測された気象データを用いて統計モデルを構築する.具体的には,牛の搾乳量と乳成分率を気象条件と牛の個体条件から説明する非線形モデルを構築し,一般に夏低冬高であると言われる関係を議論する.また,近年急速に増加した静風日に関して,ゼロ過剰モデルを用いて議論する.この研究は島津秀康(University of St Andrews)と遠藤敏喜 (自由学園)との共同研究である.
山野井 隆晃(Takaaki YAMANOI) 北海道大学大学院理学院
タイトル: 双楕円曲面と安定性条件
アブストラクト: 代数多様体上の Bridgeland 安定性条件のなす集合は、自然に複素多様体(安定性多様体)の構造を持つ。二つの代数多様体の導来圏の間に完全関手が与えられたとき、対応する安定性多様体の間に写像が誘導されることは期待できないが、特定の条件下では閉埋め込みを誘導することが知られている。この講演では、双楕円曲面の安定性多様体が、その被覆となる Abel 曲面の安定性多様体を用いて記述できるという事実を紹介する。
佐々木 多希子(Takiko SASAKI) 埼玉大学理工学研究科数理電子情報系専攻数学コース
タイトル: 2次の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式系の差分近似
アブストラクト: 2次の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式系に対する差分近似について考察する.Glassey (1992) は Zakharov 方程式系に対して,線形差分スキームを構築し,近似解の誤差評価を与えた.本講演では,単独の非線形シュレディンガー方程式に対する線形差分スキームに関する研究結果を紹介した後,Glassey のスキームを非線形シュレディンガー方程式系に応用し,近似解の誤差評価を与える.
石丸 謙造(Kenzo ISHIMARU) 北海道大学大学院工学院
タイトル: 非軸対称核融合プラズマの3次元磁場分布逆解析に要求される磁気センサー数の削減
アブストラクト: 3次元コーシー条件面法による非軸対称核融合プラズマの磁場分布逆解析において、440個という非現実的な磁場センサー数を仮定してきた。一方、特異値分解における特異値を大きい順に並べると丁度半分のところに特異値の段差がある。それ以下の特異値を打ち切ると、未知数の数、センサー数によらず最も高精度な結果を得た。さらに磁場分布の種々の対称性も考慮すると、55個程度の磁場センサーでも精度よく逆解析が可能となった。
今田 充洋(Mitsuhiro IMADA) 慶應義塾大学大学院理工学研究科
タイトル: 複素接触多様体とその構成法について
アブストラクト: 実奇数次元幾何の一つである接触幾何学の概念は,複素奇数次元の幾何学へ拡張することができる.接触多様体の定義を真似て,奇数次元の複素多様体と,ある(局所的な)正則1形式の組を複素接触多様体の定義とする.その真似により,接触多様体の「複素版」が具体例として挙げられるが,本講演ではその手法を採らずに複素接触多様体の具体例を構成する試みについて述べる.(講演者が、昨年度の第8回MCYRで講演した内容の続きである)
大森 興太郎(Kotaro OMORI) 自由学園最高学部
酒井 優行(Masayuki SAKAI) 自由学園最高学部
高山 大樹(Hiroki TAKAYAMA) 自由学園最高学部
高橋 礼穂(Ayaho TAKAHASHI) 自由学園最高学部
タイトル: 栃木県那須地域の気象データを用いた統計モデルとデータ解析(その2)
アブストラクト: 那須野ヶ原地域における地下水位の変動を,一般に影響があると言われる降水量,気圧,潮汐力により説明する回帰型の時系列モデルを構築し,時折氾濫する蛇尾川の出水との関係を議論する.その他,自由学園那須農場の農場員によって57年間に亘って観測された気象データの解析結果を報告する.この研究は島津秀康(University of St Andrews)と遠藤敏喜(自由学園)との共同研究である.
加世堂 公希(Masaki KASEDOU) 北海道大学理学研究院
タイトル: ローレンツ空間の微分幾何学と特異点論
アブストラクト: 本発表ではローレンツ空間内にある部分多様体の微分幾何学と,写像の特異点によって調べられる幾何学性質について議論する.ローレンツ空間は負の長さを許す擬計量が定められ,その中にある部分多様体は誘導計量の符号から空間的・時間的・光的な部分に分けられる.発表者は主にローレンツ空間内に定められるド・ジッター空間上の空間的部分多様体が持つ幾何学的性質と特異点との関係を研究しているが,本発表では時間的、光的な部分についての話題も触れるつもりである.
竹内 祐太(Yuta TAKEUCHI) 信州大学大学院
タイトル: 格子上のラプラシアンのスペクトル解析
アブストラクト: 物質中の原子を頂点, 原子間の結合を辺と考えて得られるグラフのラプラシアンのスペクトルは, 物質中の電子のエネルギーを近似的に表すと考えられる. 本講演では, グラフェンと呼ばれる物質に水素を付加して構造を変化させるとき, グラフのラプラシアンのスペクトルがどのように変化するかについて考察する.
只野 誉(Homare TADANO) 大阪大学大学院理学研究科
タイトル: Dynamical construction of numerical K\"{a}hler-Einstein metric on toric del Pezzo surfaces
アブストラクト: 本ポスター講演では、複素射影平面の3点blowing-upのK\"{a}hler-Einstein方程式の具体的な数値解を与え、それが漸化式を用いて改善できることを示す。本講演は満渕俊樹教授(大阪大学)との共同研究に基づく。
反田 美香(Mika TANDA) 近畿大学大学院総合理工学研究科理学専攻
タイトル: 超幾何微分方程式のVoros係数のBorel和
アブストラクト: 大きなパラメータを導入した超幾何微分方程式のVoros係数を各特異点で定義し具体系を求め、Voros係数のBorel和を考察する。 Voros係数とはturning pointを始点とし規格化した積分と特異点を始点とし規格化した積分の違いを表すものである。Voros係数のBorel和はStokes曲線の形状ごとに関数として異なるものが得られる。このStokes曲線の形状ごとに得られたVoros係数のBorel和をそれぞれ比較する。その結果について何例か紹介する。
塚本 靖之(Yasuyuki TSUKAMOTO) 京都大学大学院人間・環境学研究科
タイトル: 強独立な二分的部分基を持つハウスドルフ空間
アブストラクト: 位相空間のドメイン表現の特別な形である2進表現について概説し、その表現における特殊な例を紹介する。正則空間の2進表現は、対応するドメインの極限集合の極小元の集合への、埋め込みになる。これを満たさないハウスドルフ空間は簡単に構成できるが、今回は対応するドメインの極限集合が極小元を持たないハウスドルフ空間を構成する。紹介する例はprime integer topologyを弱めたものであり、証明の一部に解析的整数論の手法を用いる。
橋口 啓伍(Keigo HASHIGUCHI) 室蘭工業大学大学院数理システム工学専攻
タイトル: 2次形式に付随する指標和について
アブストラクト: 正の整数Nを法とするディリクレ指標\chiとn次半整数行列A に対し,\[\h(A,\chi )=\sum_{U \in SL_n({\bf Z}/N{\bf Z})} \chi (tr(A[U]))\]と定義する.ここでは, A[U] = { }^t UAU とする.今まではh(A,\chi )の明示公式がn=2のとき,H. Katsurada, Y. Mizuno[J.London Math. 85(2012), 455-471]によって求められている.今回はn=3で,Nが奇素数pのときh(A,\chi )の明示公式を求める.
畑中 美帆(Miho HATANAKA) 大阪市立大学理学研究科
タイトル: 擬トーリック多様体の直積分解の一意性
アブストラクト: 近年、トーラス作用を持つ多様体が盛んに研究されるようになり、組合せ論やシンプレクティック幾何等との予想外の分野との関連が明らかになってきている。1970年代にトーラスの埋込み理論として研究が始まり、1991年にDavisとJanuszkiewiczにより擬トーリック多様体がトーリック多様体の類似として導入された。このポスターでは、擬トーリック多様体が実2か4次元の擬トーリック多様体に直積分解出来る時、微分同相を除いてその直積分解は一意的であることを 紹介する。
東谷 章弘(Akihiro HIGASHITANI) 大阪大学大学院情報科学研究科
タイトル: Non-normal very ample polytopes
アブストラクト: 正規(normal)や非常に豊富(very ample)という概念は、整凸多面体の組合せ論や、トーリック多様体の代数幾何、アフィン半群環の可換環論等の分野などと交叉する非常に重要なものである。本ポスターでは、これらの概念の背景を説明するとともに、非常に豊富であるが正規でないような整凸多面体の例について紹介する。
福川 由貴子(Yukiko FUKUKAWA) 大阪市立大学大学院理学研究科数物系専攻
タイトル: カタラン数の一般化
アブストラクト: カタラン数は様々な解釈が知られている数である。その解釈の一つとして、(0,0)から(n,n)へのDyck pathの個数がカタラン数C_nに等しいということが知られている。この解釈の拡張として、任意の自然数n,mに対して(0,0)から(n,m)へのDyck pathの個数はいくらかという問題が考えられる。すでにnとmが特別ないくつかの場合について、これは解かれているが一般のn,mに対しては知られていないと思われる。今回は一般のn,mに対するDyck pathの個数について紹介する。
冨士 香奈(Kana FUJI) 奈良女子大学大学院人間文化研究科複合現象科学専攻
タイトル: 生体分子の分子動力学に対する時系列解析ー生体分子の複雑な動きの変化とその意味ー
アブストラクト: 計算機能力の向上により我々は大量のデータを得られるようになったが、その膨大なデータの中からいかにして必要な情報を読み取るかは重要な課題である。本発表では分子動力学法によって得られた水中にある生体分子の複雑な振る舞いを解析する手法を紹介する。Wavelet変換による運動変化の解析と特異値分解を用いた情報の縮約を用い、機能発現に重要な役割を果たす構造と集団運動の関係を探りたい。
Mirjana Milijevic 北海道大学大学院理学院
タイトル: CR submanifolds
アブストラクト: We will give generalization of some results on real hypersurfaces to CR submanifolds of maximal CR dimension in complex space forms.
王 根明(Genming WANG) 北海道大学理学院数学専攻電子科学研究所
タイトル: Partial control of chaos and continuity of safe sets
アブストラクト: Recently, Zambrano, Sanjuan, and Yorke have studied a new problem on ''loose control'' of chaotic dynamical systems, which is called partial control of chaos [Aguirre04] [ Zambrano08]. An open dynamical system with presence of noise is controlled by a carefully chosen perturbation to trap an orbit in a finitely bounded region forever. It can be done by control signals which is smaller than the amplitude of noise. The set of partially controllable initial conditions is called safe set [Zambrano08], which can be constructed by using an algorithm [Sabuco12]. In this poster presentation, we investigate the simplest problem of the partial control, that is, safe sets of one-dimensional maps with and without escapes. We find that measure of safe set will not always grow continuously, but generally with several gaps, which we call it ''gap phenomenon''.
臼井 耕太(Kouta USUI) 北海道大学
タイトル: 格子上の場の理論における伝搬関数のスペクトル表示について
アブストラクト: 場の量子論において,紫外発散を正則化する一つの方法として時空を格子で近似する手法が用いられる.この格子正則化の方法は,素粒子間の強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)の解析などに特に有効であるが,格子上の場の理論の模型がいかなる意味で「量子論」を定義し得るのかは決して自明な問題ではない.本講演では,格子近似された場の理論から出発して量子論を構成し,伝搬関数のUmezawa-Kamefuchi-Kallen-Lehmann表示(スペクトル表示)を導出する.
隅田 大貴(Daiki SUMIDA) 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所
タイトル: Singularities of the maps associated with Milnor fibrations for mixed polynomials
アブストラクト: ミルナー束の組より、球面におけるリンクの補空間からトーラスへの可微分写像(f/|f|,g/|g|)を構成し、その特異点と折り目特異点になる為の必要十分条件を与えた(第8回若手研究集会参照)。複素多項式f,gをmixed polynomialに拡張したミルナー束の組についても、結果の鍵となった擬斉次多項式と似た振舞いをする多項式を対象に調べることで、結果をmixed polynomialの場合に一般化した。本研究集会では結果と例の紹介および、mixed polynomial特有の特異点の例を可能であれば紹介したい。
野口 和範(Kazunori NOGUCHI) 信州大学理学部
タイトル: finite categoryのオイラー標数とゼータ関数
アブストラクト: この講演ではfinite categoryのオイラー標数とゼータ関数との関連について話します。オイラー標数やゼータ関数は数多くの数学的対象について定義されますが、categoryに対しても定義されます。まず最初にcategoryのオイラー標数の定義とその性質、次にゼータ の定義とその性質について話した後、両者の関連について話す予定です。
飯田 渓太(Keita IIDA) 金沢大学大学院自然科学研究科
タイトル: Spontaneous Motion of a Deformed Camphor Disk
アブストラクト: 界面活性粒子を用いたシンプルな自発運動系について,粒子の形状と運動の関係を理論的に調べる.ここでは粒子の形を円形状,および楕円形状に固定し,空間2次元の数理モデルを用いて解構造を調べる.特に,長軸あるいは短軸方向の等速進行解の分岐問題を考えることで,楕円形状粒子の漸近的な運動方向を決定することが出来たので報告する.また,樟脳と水を用いた実験の結果も紹介し,理論予測と実験結果の比較も行なう予定である.
安東 雅訓(Masanori ANDO) 稚内北星学園大学
タイトル: 約数関数に関するq-方程式
アブストラクト: q-級数の式が与えられたとき, それを母関数として見ることで組合せ論的な結果が得られ,逆に組合せ論の側から証明することもできる. 例えばオイラーの5角数定理であれば, ヤコビの3重積公式に代入して証明できる一方, 組合せ論的に成分の相異なる分割の間に写像を構成して証明することもできる. 約数関数に関するある式の一般化を行い, また系としての組合せ論の結果をいくつか紹介する.
福田 尚広(Naohiro FUKUDA) 筑波大学
タイトル: ウェーブレット理論を用いた微分方程式の数値解法について
アブストラクト: 微分方程式の数値解法として有名なものに有限要素法 (finite element method, FEM) がある.本講演では,有限要素法の基底関数として有効に利用するためにスケーリング関数を修正する方法について述べる.正規直交スケーリング関数,及び双直交スケーリング関数を修正の対象とし,特に,双直交スケーリング関数を修正することで,補間スケーリング関数を用いた有限要素法解析を行う.また,高階の微分方程式に対する基底関数の構成についても考察する.
Valle Cristina 首都大学東京理工学研究科
タイトル: On the blow-analytic equivalence of tribranched plane curves
アブストラクト: Given a real plane curve with an isolated singularity at the origin, we solve the singularity by a finite sequence of blow-ups. We say that two curves are blow-analytically equivalent if there exist an analytic isomorphism between their resolutions. This definition, which is natural in the language of algebraic geometry, leads to a classification of plane curves more flexible than the analytic one. The tools used are those of graph theory, which allow a straightforward approach to the classification problem. Previous results in the unibranched and bibranched cases are due to Kobayashi and Kuo; we consider the tribranched case and present a general statement.
永幡 裕(Yutaka NAGAHATA) 北海道大学生命科学院
タイトル: index-two saddle に近傍おける相空間構造と大域的ダイナミクス:軌跡の終状態、始状態を分ける反応性境界
アブストラクト: 状態間遷移、特に分子の構造異性化反応やある惑星圏からの小惑星や人工衛星の脱出 においてハミルトン力学系におけるindex-one saddleがその可否に決定的な役割を演じている事が知られている。本講演では反応性を決めている境界とindex-two saddle (2つの双曲型自由度を持ち残りが楕円型自由度である固定点)への拡張についてモデル系での解析と具体的な系におけるポテンシャルエネルギー面のプロファイリングを元に講演する予定である。
小西 正秀(Masahide KONISHI) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: Khovanov-Lauda-Rouquier代数
アブストラクト: Khovanov-Lauda-Rouquier代数(以下KLR代数)は2008年、Khovanov-Lauda及びRouquierによって独立に定義された新しい代数である。大雑把に言えば、色付きの組み紐に黒玉を乗せた図を生成元とし、積を図の結合で与え、ある関係を与えることで得られる。本講演は、定義から始め、一例を観察することで、KLR代数について知ってもらうことを目的とする。
坂田 繁洋(Shigehiro SAKATA) 首都大学東京理工学研究科
タイトル: Poisson積分の幾何学的評価と最大点挙動
アブストラクト: 上半空間におけるLaplace方程式の境界値問題は解けることが古典的に知られている。その解はPoisson積分と呼ばれる。境界値をbody(有界な開集合の閉包)の定義関数とすると、Poisson積分はbodyを眺めたときの見晴し(立体角)に一致する。本講演では、bodyのどのような場所ほど見晴らしが良いかを幾何学的に評価する。また、その応用として、bodyと垂直な軸の方向に点を動かすときに、最も見晴らしの良い点の漸近挙動について述べる。
加藤 諒(Ryo KATO) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: 代数的K理論を用いた球面の安定ホモトピー群の幾何的応用
アブストラクト: 代数的K理論におけるtrace methodの理論において、TR群と呼ばれる重要な研究対象がある。レベル1の球面スペクトラムのTR群は球面の安定ホモトピー群と同型となることが知られている為、ここを出発点としてレベルnのTR群を計算することにより、その幾何的トポロジーへの応用が期待できる。本講演では、Hesselholtにより5次元まで決定されていた球面スペクトラムのTR群の構造に関する結果を拡張したことを報告する。
高橋 良輔(Ryosuke TAKAHASHI) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: K{\"a}hler-Ricci flow のある種の変形とその自己相似解
アブストラクト: コンパクトケーラー多様体M上のK{\"a}hler計量\omega_{g_{KE}}がKE計量であるとは,関係式{\rm Ric}(\omega_{g_{KE}}) = c \: \omega_{g_{KE}}(c=0, \pm 1)を満たすことである.c=0, -1の場合,KE計量は一意的に存在することが知られているが,c=1の場合,その存在は一般には否定的であり,二木不変量や満淵汎関数などの障害が発見されている.本講演では,Hamiltonian K{\"a}hler-Ricci solitonというKE計量を一般化した計量を定義し,それに対して二木不変量の拡張を与えることを目標とする.
辻栄 周平(Shuhei TSUJIE) 北海道大学大学院理学院
タイトル: 有限鏡映群の標準不変式系
アブストラクト: 有限鏡映群は多項式環に自然に作用し,その不変式環の生成元を基本不変式系という.標準不変式系とは,微分に関するある条件を加えた基本不変式系のことである.岩崎氏らにより,E型以外の既約有限鏡映群の標準不変式系が構成されている.本講演ではは標準不変式系の鏡映群の型によらない構成について紹介する.この研究は北大の中島規博氏との共同研究である.
冨澤 佑季乃(Yukino TOMIZAWA) 中央大学大学院
タイトル: 非自励微分方程式とLipschitz発展作用素
アブストラクト: 実Banach空間における非自励微分方程式とその発展作用素の研究成果を紹介する。ある条件を満たす汎関数を導入して、その汎関数による消散条件を与える。これにより非自励微分方程式の初期値問題に対して局所解と大域解の一意的存在を示せた。この結果は準線形波動方程式に応用できる。また、非自励系微分方程式の初期値問題にその汎関数を用いるとき、微分方程式に関するLipschitz発展作用素と無限小生成作用素は自然に存在すると分かった。
十鳥 健太(Kenta TOTTORI) 東北大学大学院理学研究科数学専攻
タイトル: ケーラー計量の空間の測地線に対応する Homogeneous Complex Monge-Amp\`{e}re方程式の解について
アブストラクト: 満渕氏によってコンパクト複素多様体の、ケーラー計量の空間上の測地線が定義されているが、与えられた2点を結ぶ測地線は多様体とシリンダーの直積空間上のHomogeneous Complex Monge-Amp\`{e}re方程式に対応している。また、Donaldson氏はディスクとの直積空間の場合の議論をしている。この講演では、そのDonaldson氏の結果と比較しながら測地線に対応した方程式について説明する。
小林 雅人(Masato KOBAYASHI) 埼玉大学
タイトル: バイグラスマニアン置換の数え上げ公式
アブストラクト: バイグラスマニアン置換は、対称群のコクセター系の文脈で重要な役割を果たす。本稿では、Lascoux-Schutzenberger, Readingの単調三角形によるその特徴づけを例示したあと、著者の発見した数え上げ公式[Kobayashi, Order, 2011]の解説を行う。この公式は、線形代数の知識だけで計算できるきわめて単純なものであることを強調したい。最後に、今後の研究課題も紹介する。
下村 健吾(Kengo SHIMOMURA) 大阪大学大学院情報科学研究科情報基礎数学専攻
タイトル: overlapする反復関数系の極限集合の次元
アブストラクト: 反復関数系は距離空間上のコンパクト集合上で定義される縮小変換族で定義される.反復関数系で前方不変性が成り立つ集合を極限集合といい,この集合はフラクタルとなる場合が多い.極限集合のHausdorff次元は開集合条件を仮定した場合は求められていて,縮小変換が全て相似変換のときは相似次元と一致する事が知られている.この開集合条件を仮定しないときのHausdorff次元へのアプローチと相似次元との関係性について述べる.
足立 真訓(Masanori ADACHI) 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル: レビ平坦3次元多様体の射影埋め込み問題
アブストラクト: リーマン面による葉層構造を持つコンパクト3次元多様体(レビ平坦面)上の函数論を研究する。葉方向に正則な函数(CR函数)を考察の対象にするが、その存在の程度は、葉層構造の複雑さと、函数の横断方向のなめらかさに敏感に依存し得る。我々は、Ohsawa--Sibony の先行研究を踏まえ、小平の埋込定理のアナローグを考察することで、この種の現象を観察した。主結果は、横断方向に無限階可微分という条件下でアナローグが成立しなくなる具体例の構成である。
加瀬 遼一(Ryoichi KASE) 大阪大学情報科学研究科
タイトル: ある道代数における傾箙のpost-projective部分について
アブストラクト: 傾箙とは傾加群を頂点とする箙であり、Happel-Ungerの論文によってそれが基本的傾加群上に定義されるある半順序に関するHasse-図となることが知られている。今回はある道代数上の傾箙に関して、そのpost-projectiveな部分、つまりpost-projectiveな傾加群が定める部分箙の組み合わせ論的な特徴付けを与え、その構造を考察する。
森田 健(Takeshi MORITA) 大阪大学大学院情報科学研究科
タイトル: Connection problems on higher order linear q-difference equations
アブストラクト: Heine によって導入されたq-超幾何函数は、Gaussの超幾何函数と同様の退化図式を持つものの、その退化の仕方は異なりやや複雑な様相を示す。微分方程式の場合と同様に(原点近傍の局所解と無限遠点近傍の局所解の間の)接続問題を扱う。Heineの函数に関しては接続公式が見つかっていたものの、退化した場合に関しては例が見つかっていなかった。近年、C.~Zhangらによるいくつかの変換がこれらの問題に対して有効であることが分かってきた。講演では、最近得られた結果(接続公式の具体例)を挙げて紹介する。
上山 健太(Kenta UEYAMA) 静岡大学・創造科学技術大学院
タイトル: 非可換次数付きGorenstein孤立特異点について
アブストラクト: 1990年代にM. Artinらによって非可換代数幾何学と呼ばれる研究分野が創設された.大雑把に言うと,非可換代数幾何学とは非可換代数を代数幾何学の手法を用いて研究しようとする分野である.この講演では,非可換代数幾何学において重要な研究対象である非可換な次数付きGorenstein環を紹介しながら,非可換次数付きGorenstein孤立特異点に関する結果を述べたい.
若杉 勇太(Yuta WAKASUGI) 大阪大学・理学研究科
タイトル: 消散型波動方程式の解の拡散現象
アブストラクト: 波動方程式とは,音波や電磁波などの波の伝播を記述する偏微分方程式である.消散型波動方程式とは,物理的には摩擦の効果を考慮した波動方程式であり,ケーブル中を伝わる電磁波の減衰の様子を記述するのに用いられる.また多孔媒質中の圧縮性流体の方程式とも密接な関係があり,応用上の観点からも重要な方程式である.消散型波動方程式に対しては,拡散現象とよばれる現象が知られている.ここで拡散現象とは,消散型波動方程式の解が,時間無限大において対応する熱方程式の解に漸近することをいう. この拡散現象については,古くから非常に多くの研究があるが,特に近年,エネルギー法の改良や,フーリエ変換を利用する方法などにより,研究が大きく進展している.本講演では,偏微分方程式論に関する初歩的なことから始めて,消散型波動方程式の拡散現象について,最近の研究の動向を紹介したい.