第7回数学総合若手研究集会
〜多分野間の知識の交流を目指して〜

The 7th Mathematics Conference for Young Researchers

Contents

アブストラクト:プログラム

加世堂公希(Masaki KASEDOU)北海道大学大学院理学院
タイトル:特異点論と空間的部分多様体の微分幾何学
アブストラクト: 本講演では、特異点論による部分多様体の局所的な微分幾何学の研究を紹介する。前半では分かりやすい例として、3次元ユークリッド空間内の曲面のガウス曲率とガウス写像の特異点との関係に触れ、ジェネリックに現れる特異点の幾何学的な解釈を説明する。後半ではユークリッド空間から離れ、擬計量を持ったド・ジッター空間上でリーマン計量を持つ空間的部分多様体の研究を紹介する。
山本健(Ken YAMAMOTO)早稲田大学先進理工学研究科
タイトル:財布に硬貨をためない支払い方法とフラクタル状構造
アブストラクト: 財布の中に硬貨がたまってしまうのは好ましい状況でない。本講演では財布の中の硬貨をできるだけ少なく保つような支払い方法を提案する。また、この支払い方法を繰り返し行なったときに受け取るおつりの時系列がフラクタル的な構造をもつことを示す。さらに、他の離散的なフラクタルパターンとの関連についても述べる。
加藤孝盛(Takamori KATO)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:Well-posedness for the fifth order KdV equation
アブストラクト: In this talk, we establish the well-posedness for the Cauchy problem of the fifth order KdV equation with low regularity data. We cannot apply the iteration argument to this problem with data in $H^s$ for any $s \in \mathbb{R}$ because the nonlinear term has more derivatives than can be recovered by the smoothing effects. To overcome this difficulty, initial data is given in $H^s \cap \dot{H}^{a}}$. Then we can recover derivative losses to obtain the local well-posedness in critical case by the Fourier restriction norm method.
塩見大輔(Daisuke SHIOMI)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:Cyclotomic function fieldのJacobi多様体について
アブストラクト: Cyclotomic function fieldとは、Carlitz-加群の等分点を用いて定義される関数体で、古典的な円分体と多くの類似点があり、数論的にとても興味深い対象です。本講演では、cyclotomic function fieldのJacobi多様体に関して、最近得られた結果について紹介したいと思います。
佐藤寛之(Hiroyuki SATO)京都大学大学院情報学研究科
タイトル:行列多様体上の最適化アルゴリズム
アブストラクト: ユークリッド空間における最適化問題に対して様々な最適化手法が考案されているが,制約条件なしの最適化問題に対する手法は,一般には制約条件付きの最適化問題に用いることができない.ところが,ユークリッド空間における制約条件付きの最適化問題は,制約条件を満たす点全体のなす空間が性質の良い多様体である場合には,その多様体を探索領域とみなすことによって,多様体上の制約条件なしの最適化問題と見なすことができる.そこで,本講演では一般の多様体上における最急降下法やニュートン法などの最適化アルゴリズムを概説した後,特にグラスマン多様体におけるアルゴリズムと数値計算結果を紹介する.
斎藤新悟(Shingo SAITO)九州大学大学院数理学研究院
タイトル:正規コピュラの漸近的裾依存性
アブストラクト: 確率変数間の依存関係をコピュラを用いて考察する場合,確率変数の裾の依存関係はある極限値で表現される.正規コピュラは,この極限値が独立な場合と同じなので裾の依存性を表現できないとみなされることがある.しかし,応用上は極限値よりも漸近挙動の方が重要であると考えられ,正規コピュラの漸近挙動は独立な場合とは異なることが分かったので,そのことについて報告する.
冨澤佑季乃(Yukino TOMIZAWA)中央大学大学院理工学研究科
タイトル:Banach空間上の変分不等式問題と不動点問題の強収束定理
アブストラクト: 変分不等式は多分野における均衡問題の定式化に有用であり、非線形最適化と密接な関係を持つことで知られている。均衡問題の解を求める手法として変分不等式問題の解法が提案されているが、これに不動点問題を導入することで変分不等式の一意的な解の存在やそれを得るための反復法を示すことができる。本講演では変分不等式問題と不動点問題の共通解に対するHilbert空間での、特に非拡大写像による不動点近似を紹介し、またこれらを Banach空間へ拡張した近似法を提案する。
伊東杏希子(Akiko ITO)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:ある二次体の類数の可除性と岩澤不変量について
アブストラクト: 与えられた正の数 $n$ について、類数が $n$ で割れる二次体の無限族を具体的に構成することができる。類数が $3$ で割れる二次体の無限族をある条件下で構成することができたので、本研究集会ではその結果に関して報告させていただこうと思う。具体的には、与えられた square free な整数 $m_{1}$, $m_{2}$ について、$\mathbb{Q}(\sqrt{m_{1}D})$, $\mathbb{Q}(\sqrt{m_{2}D})$ の類数がともに $3$で割れる、$m_{1}$, $m_{2}$ と互いに素な二次体の基本判別式 $D$ が無限に存在することを示した。これは、$m_{1}=1$ の場合として、 小松亨氏の結果の拡張もしくは精密化になっている。また、類数がともに $3$ で割れない二次体の組や、与えられた正の数 $n$ で類数が割れるある虚二次体の無限族について、岩澤不変量に関する結果も報告する。
橋永貴弘(Takahiro HASHINAGA)広島大学大学院理学研究科
タイトル:リー群上の左不変solsolitonと極小部分多様体
アブストラクト: リー群上の左不変計量全体をスカラー倍を除いて等長的という同値関係で割った空間を考える.このとき各左不変計量の同値類は非コンパクト対称空間内の部分多様体と同一視できる.本講演では特に3次元単連結可解リー群上のsolsolitonと対応する部分多様体の性質について紹介する.
野田佳克(Yoshikatsu NODA)東京工業大学大学院情報理工学研究科
タイトル:半導体の量子移流拡散モデルを解析するための反復スキームについて
アブストラクト: 近年,半導体デバイスの極微細化や,マルチ・ゲートMOSFETなど新しい構造のデバイスが開発されるのに伴い,デバイスの動作特性に対する量子効果の影響が無視できなくなっている.このような極微なデバイスの解析を行うための数理モデルとして,量子移流拡散モデルが導出されている.本講演では,量子移流拡散モデルの定常解を求めるための反復スキームを二通り紹介し,計算量と計算精度について二つのスキームの優劣を示す.
増田茂(Shigeru MASUDA)首都大学東京大学院理学研究科
タイトル:The rapidly decreasing functions included in the "two-constant" of the microscopically descriptive fluid equations
アブストラクト: 所謂「2定数」理論は1805年のLaplaceの毛細管現象についての論文を嚆矢とする。この論文に対し、Gaussは「局面論」から得た理論の応用による毛細管現象の論文を発表し、Laplaceがアトラクションだけを考慮した事やその核関数と等価な関数の例等の誤謬について批判し、ガウス関数として今日重要な急減少関数を提案していた 。同時代に成立した微視的記述Navier-Stokes方程式において「2定数」理論の核となるものは急減少関数であり、1954/55年のSchwartzの超関数よりも100年以上も前に既にその原始的形態としての急減少関数が論じられていた事を紹介する。
反田美香(Mika TANDA)近畿大学大学院総合理工学研究科
タイトル:超幾何微分方程式の完全WKB解析
アブストラクト: 古典的な超幾何関数と超幾何微分方程式のWKB解の線形関係を明らかにする。超幾何関数については古くから詳しく研究がなされている。一方で、完全WKB解析では一般的な2階Fuchs型微分方程式に対してWKB解と呼ばれる形式解のボレル和を用いてモノドロミーの計算が可能である。この方法を用いて計算した超幾何微分方程式のモノドロミー行列と古典的に知られたモノドロミー行列を比較することにより上記の線形関係を考察する。
奥原沙季(Saki OKUHARA)首都大学東京大学院理工学研究科
タイトル:3次元特殊ラグランジュ錐の構成と可積分系
アブストラクト: 複素3次元ユークリッド空間内の特殊ラグランジュ錐は、リーマン面から複素2次元射影空間への調和写像、および代表的な可積分系の一つである戸田格子方程式系と密接な関わりをもつ。本講演では、その関係に着目した特殊ラグランジュ錐の構成を与えるとともに、可積分系への応用について述べる。
森岡悠(Hisashi MORIOKA)筑波大学大学院数理物質科学研究科
タイトル:離散Dirichlet-Neumann写像による電気伝導度の決定について
アブストラクト: Calderonの逆問題としてよく知られる電気伝導度を再構成する境界値逆問題について, 離散モデルとしてアナロジーを正方格子上で展開する. その1つの手段として, 離散ラプラシアンを中心に関連する数学的な道具を一貫して定義することが考えられる.本講演では, 離散アナロジーとしての問題設定及び部分的に分かったことについて紹介する. また, 離散Schrodinger作用素の境界値逆問題との関連についても述べたい.
柏原崇人(Takahito KASHIWABARA)東京大学大学院数理科学研究科
タイトル:非線形境界条件を課したStokes方程式の変分不等式による定式化と数値計算
アブストラクト: 非圧縮粘性流体に対する数学解析は,そのほとんどが粘着境界条件を研究の対象としてきた.一方で,現実の複雑な現象の中には粘着境界条件が適当でないものもあり,その数理モデル化の1つとして摩擦型境界条件が挙げられる.本研究は,これらの非線形境界条件を課した (Navier-)Stokes方程式を離散化し,有限要素法を用いて解析および数値計算することを目標にしている.今回は,境界条件の非線形性が偏微分方程式の扱いにどう影響するかということ,このような非線形問題を数値計算する方法をどのように作るかということ,の2点について発表したい.
石田敦英(Atsuhide ISHIDA)神戸大学大学院理学研究科
タイトル:量子力学系の散乱理論
アブストラクト: 量子力学における散乱現象は数学的にどのように記述されるのか、という話題を2体問題について説明します。特に系が時間依存している場合について考察します。そして、ある時間変動電場が存在する下で最近改良することのできた結果について述べたいと思います。(足立教授との共同研究)
齋藤翔(Sho SAITO)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:On the geometric realization and subdivisions of dihedral sets
アブストラクト: Drinfeld は単体的集合および巡回的集合の幾何学的実現を、index category が filtering であるような余極限として表示した。これにより、幾何学的実現が有限極限を保存する、区間 [0,1] (resp. 円 S1) の向きを保つ同相写像のなす群が単体的 (resp. 巡回的) 集合の実現に作用する、といった基礎的な事実の証明が容易になる。本講演では、二面体的集合の幾何学的実現に対する同様な表示を与える。また、これらの表示を用いることによって、単体的、巡回的、および二面体的集合の細分が扱いやすくなることを紹介したい。
新國裕昭(Hiroaki NIIKUNI)東京大学大学院数理科学研究科
タイトル:3個の周期的デルタ型点相互作用に従う1次元シュレディンガー作用素について
アブストラクト: 本講演では,周期的デルタ型点相互作用に従う1次元シュレディンガー作用素のスペクトルについて考察し,そのバンド構造についての解析を行う.基本周期内に1個または2個のデルタ型点相互作用がある場合には,退化したスペクトラルギャップの存在・非存在についての先行結果がある. 本研究では基本周期内に3個のデルタ型点相互作用がある場合を考え,対応するシュレディンガー方程式に対するモノドロミー行列および回転数を用いて得られる退化したスペクトラルギャップの同定問題に対する結果について紹介する.
多羅間大輔(Daisuke TARAMA)京都大学大学院情報学研究科
タイトル:Algebraic Geometry of the Eigenvector Mapping for a Free Rigid Body
アブストラクト: 本講演では自由剛体の固有ベクトル写像の代数幾何学的側面を扱う.固有ベクトル写像は,自由剛体の力学系の積分曲線とスペクトル曲線の直積として得れるAbel曲面から複素射影平面への有理写像とみなされる.本講演の主結果として,固有ベクトル写像が力学系から定まるある6次曲線で分岐する射影平面の2重被覆として得られるKummer曲面により分解することを述べる.射影平面のCremona変換や上のKummer曲面の楕円ファイブレーションが重要な役割を果たす.
廣瀬三平(Sampei HIROSE)京都大学数理解析研究所
タイトル:Holonomic系に対する完全WKB解析
アブストラクト: 完全WKB解析とは1次元Schrödinger方程式に対し構成される形式解であるWKB解に対し, Borel総和法で解析的意味づけを与える手法であり, 解の大域的性質を調べるのに強力な方法である. この手法はさらに高階の線型常微分方程式やPainlevé方程式を含むある種の非線型常微分方程式に拡張されてきたが, その多変数化, つまりholonomic系に対してはほぼ手つかずの状態である. 本講演では完全WKB解析の基礎的な部分から始めた後に, 具体的なholonomic系に対し完全WKB解析を展開する.
楢崎政宏(Masahiro NARAZAKI)九州大学大学院数理学府
タイトル:Bergman空間の完全正規直交基底の決定とBergman核の変換公式
アブストラクト: Bergman核を表示する為には、Bergman空間の正規直交基底を具体的に記述する方法が有効な手段の1つである。 Reinhardt領域上の正規直交基底は、領域を特徴付ける関数と凸錐の性質を用いることで決定される。無限和の形でBergman核を書き表すことで、条件が付いた有界Reinhardt領域と柱状領域のBergman核の変換則(Fuが証明した等式)が、最終的には一般のReinhardt領域まで拡張可能となる。
東谷章弘(Akihiro HIGASHITANI)大阪大学大学院情報科学研究科
タイトル:Roots of Ehrhart polynomials of Gorenstein Fano polytopes
アブストラクト: 整(格子)凸多面体のEhrhart多項式とは、整凸多面体をn倍に膨らませたものの格子点の個数のことである。近年、 Ehrhart多項式の根に関する研究が盛んに行われている。その中でも特に、Gorenstein Fano (reflexive) 凸多面体の根は非常に興味深い振る舞いをみせる。本講演では、その Gorenstein Fano 凸多面体の根に関する研究について紹介する。
若杉勇太(Yuta WAKASUGI)大阪大学大学院理学研究科
タイトル:波動方程式の解のエネルギーの下からの評価について
アブストラクト: 波の伝わり方を記述する方程式として波動方程式という微分方程式があります.私はこの方程式の解のエネルギー(つまり波が持つエネルギー)について研究しています.摂動がない波動方程式ではエネルギーの総量は時間がたっても保存されるのですが,私は有界な領域で摂動を加えた方程式の解のエネルギーが,ある状況の下では時間とともに増大していくことを示し,そのような摂動の具体例を与えました.
小林幹(Miki KOBAYASHI)京都大学数理解析研究所
タイトル:カオス力学における不安定周期軌道の多様体構造と周期窓の出現
アブストラクト: カオス力学系の典型例であるローレンツ方程式において、重要な概念の一つである周期窓を不安定周期軌道の多様体構造を用いて特徴づけた結果をご報告する。具体的には不安定周期軌道の安定多様体と不安定多様体との最小角度という新しい量を用いて周期窓を特徴づける。これによって、パラメター空間においてどのような周期窓がどのような順序で出現するのかを決定することが出来る。さらに、結果の一般性な示すため偏微分カオス力学系の典型例である蔵本-シバシンスキー方程式においても同様の結果が得られる事も報告する予定である。
野瀬敏洋(Toshihiro NOSE)九州大学大学院数理学府
タイトル:振動積分の漸近挙動について
アブストラクト: 振動積分の漸近解析は、stationary phaseの原理により、その相関数の臨界点における解析に帰着される。Varchenkoは、相関数がその臨界点においてある種の非退化の条件を満たす場合について、ニュートン図形を用いて振動積分の詳しい漸近展開を求めた。本講演ではVarchenkoの結果を紹介し、その精密化について述べる。また、漸近展開の初項が決定されるための十分条件をより一般的な形で得たので、併せて紹介する。
嶺山良介(Ryosuke MINEYAMA)大阪大学大学院理学研究科
タイトル:ある群の等周スペクトルについて
アブストラクト: 群を幾何的に調べる分野を幾何学的群論といいます.さらにその幾何学的群論において,等周不等式のようなものを考えようということが今回のテーマです.これはDehn関数とよばれるもので,実際にそれを決定できる群は多くありません.そのオーダーの分布(等周スペクトル)について,特に無理数オーダーをもつ群の例を私の結果とあわせて紹介したいと思います.
池田正弘(Masahiro IKEDA)大阪大学大学院理学研究科
タイトル:Hartree-Fock方程式に対する散乱問題について(On the domain and range of the modified wave operator for the Hartree-Fock equations)
アブストラクト: 空間2次元以上において、Hartree-Fock方程式に対する修正散乱作用素の存在を示す。修正波動作用素とその逆波動作用 素の存在は2002年に和田氏によって得られている。その波動作用素の定義域と値域を改良することにより、それらが合成可能であることを明らかに する。証明のアイデアは林氏とNaumkin氏らの2006年の冪乗型シュレディンガー方程式に対する論文に従っている。具体的には、近似解の変 更とシュレディンガーの自由発展群の分解、またシュレディンガー方程式の線形部分の微分作用素と交換可能な作用素を用いた。
満倉英一(Eiichi MITSUKURA)首都大学東京大学院理工学研究科
タイトル:点分岐をもつ多項式族
アブストラクト: 1次元離散力学系における典型的分岐として,サドルノード分岐と周期倍分岐がある.これら2つの分岐以外に,点分岐と呼ばれる分岐もある.この分岐が起こるための必要条件が,2003年にM.-C. Liによって与えられた.さらにLiは,この必要条件をみたす3次多項式の1-パラメータ族の具体例も与えている.本講演では,これ以外の点分岐を起こす多項式族が存在することを示す.また,点分岐の存在とbubble発生との関連について述べる.
石山健一(Ken-ichi ISHIYAMA)成蹊大学法学部
タイトル:非線形モデル現象にみられる間欠性と経済予測
アブストラクト: この論文では、簡単な乗数加速度モデルを一般化した場合、主要マクロ経済変数の振る舞いに間欠性がみられるようになることを例示する。間欠現象が起こる経済メカニズムを明らかにし、景気の良い状態がどれだけ続くかに関するべき則をとらえることは、複雑な景気変動に対する予測や制御を行うために有用であると考えられる。
伊藤翼(Tsubasa ITO)北海道大学大学院理学院
タイトル:Modulus of continuity of $p$-Dirichlet solutions in a metric measure space
アブストラクト: 距離測度空間Xが2倍条件と(1,p)-Poincaré不等式を満たすと仮定し、Ωを有界正則領域とする。このとき境界関数f が連続とすると、fに対するΩ上p-Dirichlet問題の解はΩ上p-調和で、境界まで連続になることが知られている。境界関数fが良い連続性を持つとき、fに対するΩ上のp-Dirichlet問題の解も良い連続性を持つか考えていき、Ωの特徴付けを行う。
上田亮介(Ryosuke UEDA)北海道大学大学院工学研究科
タイトル:トカマクにおける電磁流体力学シミュレーションに対するCIP-MOCCT法の適用
アブストラクト: MHD平衡や安定性の解析は、核融合炉の実現のための重要な課題の1つである。MHD方程式を数値的に解く手法として、宇宙プラズマの解析に用いられているCIP-MOCCT法がある。本研究ではこのCIP-MOCCT法を用いるMHDコードを開発し、トカマクプラズマの解析を行った。Grad-Shafranov方程式を解くことにより得られる平衡状態を初期条件として与え、時間発展を計算した。圧力分布形状、及びエネルギーの変化を評価し、平衡が維持できることを確認した。
大久保岳(Gaku OKUBO)北海道大学大学院工学院
タイトル:コーシー条件面法による大型ヘリカル装置の3次元磁場分布逆解析
アブストラクト: 大型ヘリカル装置LHDのプラズマ境界形状を外部磁気センサー信号から同定する目的で,Cauchy条件面法により3次元磁場分布を逆解析するコードを開発中である.LHDの1/10回転対称性を考慮して未知数の数の低減化を図った.磁気センサー信号として磁場3成分のほか,トロイダル方向に加えてポロイダル方向に一周する磁束ループを仮定した.逆解析結果の精度については改善の余地があるが,磁場分布について36°回転対称,18°ヘリカル対称の再現が確認された.
小原まり子(Mariko OHARA)東北大学大学院理学研究科
タイトル:Rational elliptic surfaces related to Beilinson's Tate conjecture
アブストラクト: BeilinsonによりTate予想は、素体上有限生成な体上の非特異多様体の高次K群へ一般化されている。この予想はある種の楕円曲面の$K_2$の場合は局所化完全列における全射性から従うことが知られている。これを用いてある種の楕円曲面では予想が解決されている。最近、朝倉ー佐藤により、予想は成り立つがK群の境界凖同型が全射でないK3曲面の例が挙げられた。今回はそれに関して、素体上有限生成な体上においてK群の境界凖同型が全射でない有理楕円曲面の例を構成したので紹介する。
高堂渉(Wataru TAKADO)北海道大学大学院工学院
タイトル:Alfvén速度による移流へCIP法を適用した電磁流体力学方程式計算コードの開発
アブストラクト: MHD不安定性はAlfvén速度で伝播・成長するため、Alfvén速度による移流がMHD方程式系の計算において重要となる.そこで本研究では,Elsässer変数をMHD方程式系に適用することでAlfvén速度による移流を陽に表し,そこに移流方程式を高精度かつ安定に解く手法であるCIP法を適用した.講演では,開発したコードの概要と,いくつかのテスト計算の結果について報告する.
長瀬優子(Yuko NAGASE)北海道大学大学院理学研究院
タイトル:Cahn-Hilliard/Allen-Cahn方程式の解の存在について
アブストラクト: multiple microscopic mechanismの簡略化として導入されたCahn-Hilliard/Allen-Cahn方程式に関し、空間3次元までの大域解の存在について考察する。
中村守良(Moriyoshi NAKAMURA)室蘭工業大学大学院工学研究科
タイトル:巡回群の自由積における部分群の個数
アブストラクト: Gが自由群あるいは、自由因子が同じ素数位数の巡回群の自由積であるとき、有限指数nの部分群の個数g(n)について結果を得た。Gが自由群の場合には、階数が素数である場合にg(n)がその素数を法として1と合同であることを証明した。Gが3個の位数2の巡回群の自由積 である場合に、g(n)が2を法として1と合同であるこ とを証明した。また、Gが2個の位数3の巡回群の自由積である場合に、g(n)(mod3)が周期8の循環数列であることを証明した。
中本智之(Tomoyuki NAKAMOTO)広島大学大学院理学研究科
タイトル:楕円的モンテシノス絡み目の幾何
アブストラクト: 楕円的モンテシノス絡み目とは、二重分岐被覆空間が球面幾何を持つモンテシノス絡み目のことである。このような絡み目(正確には3次元球面と絡み目の対)は錘角πの球面的軌道体の構造を持つ。本発表ではこの構造を記述し、絡み目の各成分の長さ及び極大チューブ半径を求める予定である。
西山博太(Hirota NISHIYAMA)中央大学大学院理工学研究科
タイトル:Modified Zakharov-Kuznetsov方程式に対する保存型差分スキーム
アブストラクト: Modified Zakharov-Kuznetsov方程式はModified Korteweg-de Vries方程式の2次元版の一種でありプラズマ物理など様々な分野で応用されている重要な方程式である。また、非可積分系であることから理論的に解析することが難しい。そこで、保存則を満足するような保存型差分スキームを構成することである程度、数値解を安定させ 数値計算を行い解の振る舞いを考察する。
野田昌弘(Masahiro NODA)信州大学大学院工学系研究科
タイトル:局所トレース状態の端点について
アブストラクト: 量子系を2つ合わせた結合系を考える.結合系上の状態を各部分系に制限したものがトレースとなるとき,その状態を局所トレース状態という.本研究では,この局所トレース状態のなす空間の端点が必ずしも純粋状態にならないことを紹介し,また端点の最大階数について調べる.
鮑園園(Yuanyuan BAO)東京工業大学大学院理工学研究科
タイトル:2橋絡み目に関する H(2)-unknotting operationについて
アブストラクト: H(2)-unknotting operationはHoster, 中西, 谷山によって公式に定義された。この講演では2橋絡み目に関する H(2)-unknotting operationについて紹介する。まず,一部の2橋絡み目のH(2)-unknotting numberを計算し、また評価する。次に、二つの絡み目の連結和について、H(2)-unknotting operationに関するいくつの問題を考え、紹介する。
王艶艶(Yanyan WANG)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:Some explicit calculations on the variation of the Bergman kernel
アブストラクト: In the mathematical study of several complex variables, the Bergman kernel, named after Stefan Bergman, is a reproducing kernel for theHilbert space of all square integrable holomorphic functions on a domain D in Cn. F. Maitani and H. Yamaguchi studied the variation of Bergman metric for families of Riemann Surfaces and proved some results in the paper 'variation of Bergman Metrics on Riemann Surfaces'.I will give some specific calculations about the variation of the Bergman matrics using the Loewner chains.
西澤由輔(Yusuke NISHIZAWA)首都大学東京大学院理工学研究科
タイトル:一次元極限葉層構造をもつ3次元$C^1$微分同相写像の力学系について
アブストラクト: 本講演では,3次元多様体上の微分同相写像で,ヘテロ次元接触を含むヘテロ次元サイクルをもつものを考える。主結果は,このヘテロ次元接触に摂動を加えて接触をはずすことによって葉層を構成し,この葉層を用いることによって,新しい力学系を構成することである。本講演の前半部分では,先行研究の紹介や問題の動機付け等を述べ,後半部分では主結果の証明のアイデア等を述べる.
ギブソン アンドリュー(Andrew GIBSON)東京工業大学大学院理工学研究科
タイトル:flat virtual link の同値問題について
アブストラクト: n成分の flat virtual link とは、曲面上のn個の閉曲線をホモトピーと安定同相でわったものとして定義する。門上氏は、二つの flat virtual link が同値かどうかの判定方法を定義したが、この方法が正しいことの証明に穴が見つかった。更に、多成分に対する反例がある。この講演では、一成分の時、門上氏の判定方法が正しいことの新しい証明を説明する。時間があれば、多成分の場合に対して、門上氏の判定方法をどう直せばいいかを考える。(門上晃久氏(華東師範大学数学系)との共同研究)
大関一秀(Kazuho OZEKI)明治大学先端数理科学インスティテュート
タイトル:第1ヒルベルト係数によるイデアルの分類について
アブストラクト: 可換なネーター局所環(A, m)内に於けるm-準素イデアルの構造について,そのヒルベルト函数を用いて分類を行う。特に,第1ヒルベルト係数の挙動にはそのイデアルの情報が多く含まれていて,Northcott, Huneke,大石たちによって本格的な挙動解析が開始されている。本講演でも,第1ヒルベルト係数の挙動に注目しイデアルの分類を行っていくが,その際に,サリー加群の理論が有効であると考えられている。そこで,本講演では,サリー加群の基本性質及び, サリー加群のヒルベルト函数解析に於ける有効性を解説しながら,第1ヒルベルト係数が相対的に小さいイデアル及び,そのイデアルに随伴するBlow-up 代数の構造を決定する。
野井貴弘(Takahiro NOI)中央大学大学院理工学研究科
タイトル:変動指数Triebel-Lizorkin空間と変動指数Besov空間の双対空間
アブストラクト: 通常のTriebel-Lizorkin空間とBesov空間の準ノルムの定義における$L^p$ノルムを,変動指数 Lebesgue空間$L^{p(x)}$のノルムに置き換えて定義される変動指数Triebel-Lizorkin空間と変動指数Besov空間の双対空間について, 変動指数$p(x)$があるクラスに属するときには,それらの双対空間は古典的なTriebel-Lizorkin空間とBesov空間の双対空間の$p$を$p(x)$に換えた空間と同じであることを示す.
高木聡(Satoshi TAKAGI)京都大学大学院理学研究科
タイトル:Extensions of the category of schemes
アブストラクト: Deninger program に端を発するF_1上の概型や、tropical多様体など、可換環以外の代数系に幾何学的対象を対応させる試みが近年盛んになってきている。そこで改めて従来のspectrum函手のメカニズムを分析した上で、一般代数系上のspectrum函手および拡張型schemeを格子理論の手法を用いて定義し、Zariski-Riemann空間などへの応用を述べる。
八木潤(Jun YAGI)高知大学大学院総合人間自然科学研究科
タイトル:The primeness of almost alternating link diagrams
アブストラクト: 結び目理論の基本問題の一つとして、絡み目の分離性、素性をその絡み目図式から判定する問題がある。交代絡み目に関しては、 1984年にW. Menascoによって解決されている。1992年、C. Adamsらによって概交代の概念が導入された。そのとき、C. Adamsによって概交代絡み目の分離性、素性を判定せよという問題が提起された。概交代図式を持つ絡み目の分離性については、M. HirasawaとT. Tsukamotoによって解決されている。私達は、W. MenascoとT. Tsukamotoの手法を用いることで、概交代図式を持つ絡み目の素性についての解決を与えることができた。本講演では、主にその方法について述べる予定である。
鹿野豊(Yutaka SHIKANO)東京工業大学大学院理工学研究科
タイトル:ボルンの統計公式の再考
アブストラクト: 量子力学を使って記述される自然現象は、確率事象として捉えられている。だがしかし、何の確率なのか?という問いに対していまだかつて答えられた人はいない。ここでは、有限次元ヒルベルト空間上で定義された量子力学において、確率をどのように捉えるべきか?ということに対して、情報理論的なアプローチを紹介する。情報理論(特にベイズ理論)の観点から最小限操作で量子状態(ヒルベルト空間上に定義された特殊な線形作用素の集合の元)の構成(SymmetricInformation Complete Positive Operator-Valued Measurement)からボルンの統計公式を再解釈するという試みである。これが、確率論の意味論およびクリフォード群の構造と深く関連しているということを本講演では紹介する。
水谷治哉(Haruya MIZUTANI)東京大学大学院数理科学研究科
タイトル:Strichartz estimates for Schrödinger equations on a class of non-compact manifolds
アブストラクト: 漸近的に平坦、より一般には錐型に近づくリーマン計量をもつ非コンパクト多様体上の線形シュレーディンガー方程式に対する初期値問題、特にストリッカーツ評価と呼ばれるある種の平滑化効果について論ずる。本講演では、先行研究よりも一般的な条件のもとでストリッカーツ評価を証明する。また、ストリッカーツ評価と解の超局所的な性質との関係性についても考察したい。
杉山倫(Rin SUGIYAMA)名古屋大学大学院多元数理科学研究科
タイトル:Tate-Beilinson conjecture for products of plane curves over finite fields
アブストラクト: Tate- Beilinson予想はサイクル写像というChow群からエタールコホモロジー群への写像が全単射であることを主張するもので、ゼータ関数の極の位数とも関わる予想です。今回は、ある平面曲線の積に対してTate-Beilinson予想が成り立つことを紹介します。
隅田大貴(Daiki SUMIDA)九州大学大学院数理学府
タイトル:Brieskorn結び目のトポロジー
アブストラクト: 原点を孤立特異点に持つ複素超曲面と、十分小さい球面の交わりである結び目Kのホモロジーについて多くの結果が知られている。しかしごく一部の結び目についてしかホモロジーは計算されていない。そこで基本的なBrieskorn結び目のホモロジーを考察し、ホモロジーと対応する対象の研究と、可能であればその擬斉次多項式への拡張について話したい。
宮路智行(Tomoyuki MIYAJI)京都大学数理解析研究所
タイトル:On pulsative solution of the Lugiato-Lefever equation
アブストラクト: 非線形光共振器におけるパターン形成を記述するモデルとして導出された方程式である、ある種の散逸項と入力場を伴う三次の非線形 Schrödinger方程式の定常解を考える。空間一様な定常解の分岐解析を行い、空間局在的定常解の分枝の芽であると考えられる解が分岐しうることを示す。また、加法的なホワイトノイズを含む問題を定式化し、LLEの安定定常解のノイズに対する安定性について数値計算及び厳密な数学解析の結果を紹介する。
三好寿幸(Toshiyuki MIYOSHI)龍谷大学大学院理工学研究科
タイトル:平面弾性閉曲線における曲率の爆発現象
アブストラクト: 変分問題「閉曲線の長さと囲まれる面積を与え,弾性エネルギーが最小となる曲線を決定せよ.」を考える.Euler方程式の解に対応する曲線は面積を特定の値に近づけると小さな輪が生じ,それが潰れていく現象がおこる.本講演ではこの現象に対する数学的証明を与える.証明のポイントは,松本-村井-四ツ谷によって示されたJacobiの楕円関数と完全楕円積分を用いたEuler方程式のすべての解の表示式と,若狭-四ツ谷によって示された第3種完全楕円積分の極限での挙動に関する補題の応用と精密化の組み合わせである.
藤田真依(Mai FUJITA)大阪大学大学院理学研究科
タイトル:Weighted norm inequalities for multilinear Fourier multipliers
アブストラクト: 今回の講演は,冨田直人氏(大阪大学)との共同研究に基づくものです.多重線形フーリエマルチプライヤー作用素に対する重み付きノルム不等式を考えます.ここで重みとは,Muckenhouptにより考案された$A_p$重みを考えます.Kurtz&Wheeden('79)により,(単)線形フーリエマルチプライヤー作用素に対する重み付きノルム不等式が示されました.これは,(単)線形のヘルマンダー型マルチプライヤー定理に重みを付け加えたもの,と言えます.2009年,冨田氏により,(単)線形のヘルマンダー型マルチプライヤー定理は多重線形のそれへと拡張されました.これに重みを付け加える事によって,今回の講演では,Kurtz&Wheedenの結果の多重線形版を考えます.
北澤直樹(Naoki KITAZAWA)東京工業大学大学院理工学研究科
タイトル:可微分写像の特異点と多様体の大域的不変量の関係
アブストラクト: モース理論とは,特異点が良い性質をもった関数を用いて多様体を調べる手法である。これは,多様体に上手く高さを定めて多様体を捉えようというもので,この手法は微分位相幾何学において重要だが,より考えを一般化して値域を一般のユークリッド空間や多様体(但し定義域より次元は高くないとする)にし,関数の代わりに写像をとるということが考えられる。これは,多様体というオブジェクトを上手く射影しその影(像)とくに輪郭(特異値)をもとにもとの多様体を調べるものと考えられる。実際このような研究は近年活発に行われている。
本講演ではこのモース理論そして一般型モース理論に関係するトピックとして,「オイラー数のような多様体の重要な大域的不変量を局所的な特異点の情報から取り出す。」ということについて説明する。
中野直人(Naoto NAKANO)北海道大学大学院理学研究院
タイトル:密度勾配依存応力モデルにおける単純剪断流の定常解の存在と一意性について
アブストラクト: 密度勾配に依存する応力テンソルを持つ連続体モデルについて考察する.この応力は,構成物の不均一さが運動に影響を及ぼすことを表現する為に用いられてきた.ここでは応力の密度勾配依存性からくる特徴を詳しく見るため,単純剪断流に限定する.単純剪断流とはいえど,主要項の非線形性により,データによっては定常解が存在しなかったり,存在しても一意性が示せなかったりし,密度一様な流れとは大きく異なる.他の特徴的な性質も含め,密度勾配依存性が引き起こす従来の流体モデルでは説明できない流れの性質について数学的に考察する.
縫田光司(Koji NUIDA)産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター
タイトル:量子力学の物理原理的特徴付けと凸集合の幾何学
アブストラクト: フォン・ノイマンにより導入された量子力学の公理において、「何故」ヒルベルト空間上のオペレータによって量子状態が記述されるのかが不明であったため、量子力学の公理系を特徴付ける物理学的な基本原理を見出す研究が行われてきた。本発表ではそれらの研究と凸集合の幾何学との関わりについて述べるとともに、2準位量子系の標準的表現である3次元球を特徴付ける物理原理に関する話者らの最近の研究を紹介する。
黒田紘敏(Hirotoshi KURODA)東北大学大学院理学研究科
タイトル:グラフに退化する領域上での放物型方程式の解の特異極限について
アブストラクト: これまでナノチューブや電子回路などの微細な厚みのネットワークについては、それらを頂点と辺からなるグラフとみなしてモデル化し、グラフ上でのハミルトニアンの問題として研究が行われてきた。そこで、グラフによるモデル化と実際の構造物との関係性をみるために、グラフを膨らませてチューブ状の領域を構成しその領域上にハミルトニアンを与え、領域がグラフに収縮していくときの特異極限について考察する。本講演では特にポテンシャル項のないラプラシアンの場合を扱う。