MFG テキストガイダンス
【数理06】
- 微分方程式 上下 (M. ブラウン著), シュプリンガー
- 本書は非常にユニークな微分方程式の入門書である. 多くの具体的な現象に直結した方程式を多く提示しながら微分方程式の基礎理論の解説を行っている. 1階方程式では, 絵画の真贋判定問題, 人口増加モデル, 放射性元素の崩壊モデル, 腫瘍の成長などに現れる方程式への応用を意識して進む. 2階方程式ではバネの振動や減衰振動や糖尿病の診断の問題が合わせて考察される, 実際データを用いて元の実の問題に適用しての考察も行う. これによって微分方程式の役立つ様と威力をリアルに味わうことが出来る. その意味では非常にじっくり意味を味わいながら学んでいく進行する数学書であると言える. よって数学的知識だけを学びたい人にはじれったいかもしれない. しかし, 数学理論で, その発展が現実の現象から促されてきたものも多いいことを考えると, この様な解説書は実は大事なのかもしれない. 応用数学を将来専攻する学生には非常に役立つ教科書と言って良いと思われる. 本書では理論のみならず数値解析の例も与えられる (ルンゲクッタ法, オイラー法). 下巻の最後では力学系入門に相当する(4章)と偏微分方程式入門に相当する(5章)の章もあり盛りだくさんである. 4章においても, 力学系を戦争における戦闘モデルにおいて展開し日本とアメリカの硫黄島の戦いを詳細な実際データを用いて論じている. 集団生物学や疫学的問題を扱っていて数学書とは思えない詳細な分析を与えている. 応用指向の数学科 2,3年生が3,4名でゼミをするには最適の書であると言えると思う.
上巻
- 第1章:
- 1階微分方程式 (変数分離形方程式, 解の存在と一意性, 数値解法, 等)
- 第2章:
- 2階線形微分方程式 (代数的構造, 特性方程式, 級数解法, ラプラス変換,等)
下巻
- 第3章:
- 連立微分方程式 (ベクトル空間と固有値問題と応用,等)
- 第4章:
- 微分方程式の定性理論 (力学系, 相平面解析, ポアンカレ-ベンディクソンの定理,等 )
- 第5章:
- 変数分離法とフーリエ級数 (熱方程式, 波動方程式, ラプラス方程式,
フーリエの方法,等)
- 第6章:
- ステュルム・リウヴル境界値問題