理数応援ニューフロンティア・プロジェクト 数学コース

MFG テキストガイダンス

【解析06】
偏微分方程式入門(神保秀一著), 共立出版
多くの物理現象は偏微分方程式という数式を通じてモデル化される. そして方程式の解の性質や構造を探求することは, 数学的に大変興味があり, 元の現象を理解することにもつながり有意義である. 18世紀にフーリエは針金の温度分布が時間のとともに変化する様を熱方程式の解のを三角関数を用いて具体的に調べた. その時生まれた手法はフーリエ解析という大きな分野を誕生させた. このように偏微分方程式は様々な数学分野と関連し, またさらに広い自然科学や工学分野で活用されてきた. 本書において,前半では基本的な偏微分方程式の解の性質を調べ, 後半ではソボレフ空間やその応用として2階楕円型方程式の解の存在証明などを扱う. 最後にラプラス作用素の固有値の特徴付けや摂動の話題を取り上げる. 本書のおおまかな内容は以下の通りである.
第 1 章 : 偏微分方程式入門
偏微分方程式の導入, 熱方程式の導出, 波動方程式の導出重要な方程式の例
第 2 章 : 波動方程式
進行波, 解の計算(ダランベールの公式), 固有振動, 波の性質, エネルギー不等式, 有限伝播性
第 3 章 : 熱方程式
フーリエの方法, 基本解, 解の公式, 最大値原理, 特殊解
第 4 章 : ラプラス方程式とポアソン方程式
ラプラシアン, 調和関数, 基本解, 解の滑らかさ
第 5 章 : ヒルベルト空間と線形作用素
ヒルベルト空間, 弱収束, 有界作用素, リースの定理, コンパクト作用素, ヒルベルトシュミットの定理, フーリエ級数展開
第 6 章 : ソボレフ空間, 楕円型方程式
弱微分, ソボレフの関数空間, 2階楕円型方程式, 解の存在
第 7 章 : ラプラス作用素と固有値
変分法による固有値の特徴付け, 最大最小原理, 固有値の比較および摂動への応用
備考:4章までは一般の理工系 1,2年生でも読むことが可能である. 数学科で解析入門やルベーグ積分を学んだ学生は最後まで通読することが可能である.