理数応援ニューフロンティア・プロジェクト 数学コース

MFG テキストガイダンス

【解析04】
フーリエ解析 (中村周著), 朝倉書店
フーリエ級数は, 熱伝導方程式の解を表し, そして調べる目的で考案された一つの手法である. その連続版であるフーリエ変換とともに, その考え方や理論は大いに発展してフーリエ解析として確立した一分野をなしている. 特に, 偏微分方程式の分野においては解を構成したり, 性質を調べるために不可欠のものとなっている. 本書の前半は熱方程式や波動方程式への応用を盛り込みながらフーリエ級数論とフーリエ変換論の基本的な定理を論述している. 後半ではシュワルツ超関数論の導入とフーリエ変換との関わりを論じている. 将来, 解析学の分野に進む学生諸君に薦めたい書物である. 目次とあらすじは以下の通りである.
第1章: フーリエ級数展開
フーリエ級数の導入と実例の計算, 関数空間における基底の考え方を学ぶ
最終目標はリプシッツ連続な関数のフーリエ級数の一様収束性の証明
第2章: フーリエ級数の性質と応用
フーリエ級数の踏み込んだ性質を利用して, 熱方程式やラプラス方程式の解
差分方程式を考察する.
第3章: 1変数のフーリエ変換
フーリエ変換の基礎理論やリーマン・ルベーグの定理
無限区間の波動方程式やラプラス方程式への応用
ポアソンの和公式やサンプリング定理
第4章: 多変数のフーリエ変換
フーリエ変換の多変数への拡張, 無限区間での熱方程式など
量子力学との関連
第5章: 超関数
ディラックのδ測度から始めて超関数を初等的に導入し基本的な性質を調べる
第6章: 超関数のフーリエ変換
超関数のフーリエ変換を定義し、重要な計算例を学ぶ
応用として定数係数の偏微分作用素の基本解を構成する
例を中心に解説しているため実戦的な知識を得るのに適している. 自習するには非常に良い書物であると言える. 低学年の諸君でも 1,2章までは無理なく読めると思われる.