MFG テキストガイダンス
【代数04】
- 線形代数と群の表現 I (平井武著), 朝倉書店
- 本書は群論の独習書として秀逸です.
数学では「いろいろな場面で現れる共通する性質を抽象的に定義し,それを研究することによりその共通性質の本質を理解し,抽象的に導出される性質を個々の場合に適用する」ということを行います.共通性質を対称性(=変換で移りあう性質)とすると,それを抽象化したものが群です.群が現実世界に現れるとき,それは群の作用(=表現)として現れます.
本書では,群の作用が中心に書かれていて,群を初めて学ぶ者にとって非常に分かりやすいと思います.有限群では置換群,特に多面体群が詳しく書かれていて,無限群ではユークリッド空間の運動群が詳しく書かれています.
本書は高校数学だけを予備知識にして書かれているので,1年生の春から読めるようになっています.線形代数も必要なときにそのつど解説するという姿勢で書かれています.既に知識として持っている箇所は軽く復習する程度で済ますなど,読み方を工夫して下さい.冒頭に「独習書として秀逸」と書きましたが,もちろん,セミナーのテキストとしても良書と思います.但し,セミナーの発表に適するように内容をまとめたりする力量が必要と思いますが,それも良い発表の練習になると思います.また,所々に配された「閑話休題(但し,本来の意味とは逆です)」を読むと勉強するのがますます楽しくなります.
本書には第2巻「線形代数と群の表現 II」があり,物理との関わりが特に良く書かれています.
章ごとの内容は以下の通りです:
- 第1部: 入門:群とその表現,および線形代数
第1章:群とは何か?第2章:二面体群,多面体群,第3章:置換群,および群の置換表現,第4章:多面体群の置換表現と行列表現,第5章:線形代数入門
- 第2部: 具体的な群,および群の作用と線形表現
第6章: 置換群 A_4, S_4, A_5 と多面体群の構造,第7章:ユークリッド空間の運動群,第8章:群の関数への作用,群の線形表現,第9章:表現論入門
- 第3部: 多面体群と置換群の表現,および表現論基礎
第10章: 二面体群 D_n の表現論,第11章:多面体群の表現と置換群の表現(1),第12章:多面体群の表現と置換群の表現(2),第13章:表現論基礎