MFG テキストガイダンス
【代数00】
- 初等整数論(遠山啓著), 日本評論社
- 高校から大学に入学し,数学の学習において,数学的論理の組み立て,証明の述べ方などにとまどう学生も多々見られます.これらを学ぶ上で本書は格好の教科書でしょう.題材は初等整数論で,対象は整数なので親しみ深く,進んだ数学的知識を必要としません.
章ごとの内容は以下の通りです:
- 第1章: 整数の基本性質
- 第2章: 約数と倍数
- 第3章: いろいろの関数
- 第4章: 合同式
- 第5章: 群,環,体
- 第6章: 連分数
初めの3章は高校生でも難なく読めるのではないかと思います.この3章のうちに数学的論理の組み立て,証明の述べ方などを学ぶことができます.数学科で学ぶ数学の最初の関門の一つに剰余集合があります.第4章では合同式(nで割ったあまりに関する方程式)について丁寧に書かれていて剰余集合の概念を身につけることができます.第5章では,群や体などという現代数学の一端に触れ,最後に初等整数論の一つのクライマックスとも言うべき平方剰余の相互法則(平方解が合同式において存在するかどうかに関すること)について書かれています.第6章で扱う連分数とは実数を有理数で近似する方法の一つで,近似の精度や,いつ循環するかなどが述べられてあります.第6章は第2章の次に読むこともできるでしょう.
全体を通してとても丁寧に書かれていて,大学1年の春から読む本として最適なものの一つでしょう.