2011年度後期
代数学特論I (代数学特論D)
水曜3限(6号館202号室)
担当:吉永正彦
シラバスには「Mnev の普遍性定理とその応用について」と書きましたが、
変更して「実代数幾何学入門」という題目で講義をします。そのうちもう少し詳しく予定を書きます。(9/1)
内容(予定)
実閉体の量化記号消去
ヒルベルトの第17問題
実代数的集合の三角形分割
Nash-Tognoli の埋め込み定理
実代数幾何における決定不可能問題
関連する話題(アルゴリズミックな側面)
第一回目の講義ではオーバービューとして全体の計画について話します。
単位の認定方法:レポート。(内容は実代数幾何に関することでしたら何でもよいです。
授業中に時々レポート問題を出しますので、それを解いたものでもかまいません。)
レポートは数学事務室へ提出してください(締め切り:2月1日(水))
カレンダー
第1回(10/5):
実代数的集合の例と実代数幾何における典型的な定理を
(証明なしで)いくつか紹介しました。(Nash-Tognoli の埋め込み定理、
Tarski の量化記号消去、ヒルベルトの第17問題)。
実代数幾何の結果というわけではないですが、モデル完備性に関連した有名な
結果として、Ax の定理も紹介しました。
第2回(10/12):
real algebraic set, semi-algebraic set, semi-algebraic map, など
基本的な言葉の定義。Semialgebraic sets が和集合、共通部分、補集合などの操作で
閉じていることを示しました。
また semialgebraic set の閉包や内点、semialgebraic map
の微分可能な点集合などが一階述語論理式で表現可能なことをいくつかの例で観察しました。
第3回(10/19):
論理式を定義し、Tarski の量化記号消去定理を定式化しました。
量化記号消去が「∃」を一つだけ含むケースに帰着されることを説明しました。
(10/26):出張のため休講
第4回(11/3):
量化記号「∃」を一つだけ含むケースの量化記号消去が「semi-algebraic set の
射影は semi-algebraic である。」という命題と同値であることを示しました。
「射影」のケースを P. Cohen のアイデアに沿って証明するために、「Effective function」
を導入しました。(Cohen の元論文は
Decision procedures for real and p‐adic fields です。)
第5回(11/9):
最初に「実数体 R の部分環 A に対して、A 上定義された semi-algebraic set の射影は再び
A 上定義された semi-algebraic set になる」という命題が、A=Z (整数環)の場合に示せば
十分であることを注意しました。あとは Cohen の方針に沿って、Effective function の性質を
いくつか証明しました。
第6回(11/16):
引き続き Effective functions の基本性質。sgn(x), effective functions の合成が再び effective、
piecewise effective function は effective、effective function f, g に対して、f=g, f
11/23:休み(勤労感謝の日)
第7回(11/30):
(一変数)方程式の解の個数や解そのものが、係数に関する effective function になることを
示し、それを使って Tarski の量化記号消去を示しました。
第8回(12/7):
Tarski の量化記号消去の応用として、semi-algabraic set の Cylindrical decomposition の
存在を証明しました。系として semi-algebraic set の連結成分は有限個で、各連結成分も
semi-algebraic であるということを示しました。
第9回(12/14):
今回は実代数幾何からは離れ、
「群の理論」の論理式、推論規則、形式的証明を述べて、完全性定理の紹介をしました。
(田中一之、鈴木登志雄著「数学のロジックと集合論」を参考にしました。)
次回からはヒルベルトの第17問題を扱う予定です。
第10回(12/21):
実閉体の量化記号消去からモデル完全性が得られることを説明。順序体、実体の基本的性質。
1/4:休講
第11回(1/11):
順序体に実閉包が存在することを証明し、
実閉体の理論のモデル完全性と組み合わせることで、ヒルベルトの第17問題の証明。
第12回(1/18):
量化記号消去を(証明なしで)使って、
標数0の代数閉体の理論の完全性が得られることを紹介し、
それを使って Ax の定理(多項式写像 F: C^n -> C^n が単射ならば全射)
を証明。
第13回(1/25):
2/1:レポート締め切り(提出先:数学事務室)
参考文献:自分で勉強したい人向けに、参考文献をいくつか挙げておきます。講義で
使うというわけではありません。
J. Bochnak, M. Coste, M. -F. Roy, Real Algebraic Geometry (Springer)
S. Basu, R. Pollck, M. -F. Roy, Algorithms in Real Algebraic Geometry (Springer),
著者のウェブページから
PDF版
がダウンロードできます。
M. Coste, An introduction to semialgebraic geometry.
PDF版