概要

  • 力学系、エルゴード理論について、記号力学系を中心とし、エントロピー、 変分原理、力学系のゼータ関数の性質を学習する。応用として、クッキーカッ ターと呼ぶ単位区間上の力学系の不変集合のフラクタル次元の評価を与える。 時間があればカオス時系列解析の実例に触れる。
  • 不変測度をもつ力学系について不変量としてのエントロピーが果たす役割 を理解することが目標である。また、変分原理を通じて統計力学との関係を 理解し、周期点の数から定義する力学系のゼータ関数の性質を学ぶ。
  • 講義中に随時レポート問題を課す。成績はレポートで判定する。

内容(日程は変わることがある)

  1. 9/28:(休講)
  2. 10/6: 基本的な力学系、周期点、安定性
  3. 10/13: リアプノフ指数、エルゴード定理の例

    レポート問題:$a$を無理数とする。$[0,1)$上の力学系$Tx=x+a\mod 1$の軌道 $\{T^nx\}_{n=0}^\infty$は全ての$x\in [0,1)$について$[0,1)$上稠密であることを示せ。

  4. 10/20: 力学系と不変測度、エルゴード定理

    レポート問題:単位区間上の力学系$Tx=4x(1-x)$について、 $$\mu([a,b]):=\frac{1}{\pi}\int_a^b\frac{dx}{\sqrt{x(1-x)}}$$ は不変測度になることを示せ。

  5. 10/27: 不変測度とエントロピー
  6. 11/10: フルシフトと共役、不変測度
  7. 11/17: (休講)
  8. 11/24: Markovサブシフトのエントロピー, Gibbs測度(平衡測度)の存在
  9. レポート問題: SFTについて、$\#{}Fix(\Sigma_M,\sigma^n)=tr(M^n)$ を示す。また、SFTについては力学系のゼータ関数が$det(I-zM)^{-1}$と 書けることを示す。

  10. 12/1: (休講)
  11. 12/8: 変分原理、Markov測度の場合
  12. 12/15: Gibbs測度(平衡測度)の存在、変分原理、Hölder連続関数をポ テンシャル関数とする場合
  13. 12/22: (休講)
  14. 1/5: ハウスドルフ測度とハウスドルフ次元、フラクタル集合、自己相似性
  15. 1/12:(全学休講)
  16. 1/19: クッキーカッターの不変集合と次元
  17. 1/26: (休講)
  18. 2/2: (休講)

参考図書

  • 森、水谷『力学系入門』(東京図書)
  • 久保『力学系I』(岩波)
  • Falconer『フラクタル幾何学の技法』(シュプリンガー東京)