MCAS成果概要
光重合誘起相分離による自己組織化現象のメカニズム解明に関する研究」三菱レイヨン株式会社との共同研究 (2006年9月〜2008年8月)
- 担当:西浦廉政
- 概要:
- 平行UV光照射での光重合反応により相分離構造が誘起される。
その規則化挙動の要因を動力学シミュレーションより数値解析し,キーパラメーターを抽出する。
共同研究を通じ,機能性フィルム製造技術の高度化を確立する。
原子燃料細粒化プロセスの縮約的な解析理論に関する研究」日本原子力研究所との共同研究 (2004年〜2008年)
- 担当:西浦廉政
- 概要:
- 原子燃料(二酸化ウランセラミックス)では,核分裂に伴い発生する高エネルギーの粒子を結晶構造および材料組織を保ちつつ受け止め,熱エネルギーとして取り出している。今後予想される燃料の高燃焼度化に備え,このような原子炉の照射環境下で燃料セラミックス材料が変化するプロセス,特に細粒化(リム組織すなわちカリフラワー構造の形成)のような非線形事象に対する予測技術の開発が重要である。
本研究の目的は,燃料セラミックス材料がもっている自己修復する力すなわち材料組織を本来の安定な配列に戻したり,新しい安定な形を作ったりする機能(自己組織化)の数学的な定式化(モデル)を見出すことにあり,このモデルを物理的な実験によって検証することにある。また,この現象を予測する技術の開発を目指す。本研究では,実験科学,計算科学,応用数学などを総合して研究を進める。加速器シミュレーション等によって核分裂で生じる事象を調べ,第一原理計算と分子動力学計算による準安定な複合欠陥の情報とあわせ,上記組織変化の主構造を探索する。さらに予測に用いる計算コードを開発するとともに,その予測手法を,発電所現場における新技術の導入や現場での開発研究に適用するための検討を行う。
ヤマハ発動機株式会社との共同研究 (2003年4月〜2008年3月)
- 概要:
- ヤマハ発動機株式会社と2003年4月より2008年3月までエンジンカオスの研究を行う。
ヤマハ発動機のエンジンの計測データの解析,理論化,ソフト化を行なった(担当:津田一郎,松本和宏(大学院生)。エンジンデータには力学系カオスの成分が含まれており,フィルターによるノイズ除去によりカオス成分だけを抜き出すことが出来た。これを,エンジン実機の制御に応用するために,北大理学院のインターンシップ制度を活用し,2007年1月から2007年7月までヤマハ発動機にてエンジン制御の実験を行なった。研究の成果は,Kazuhiro Matsumoto, Ichiro Tsuda and Yuki Hosoi, Controlling Engine System: A Low-Dimensional Dynamics in a Spark Ignition Engine of a Motorcycle, Z. Naturforsch. 62a (2007) pp.587-595.
に発表された。本成果により,担当者の松本は2007年12月北海道大学博士(理学)の学位を授与された。さらに,松本は2008年4月よりヤマハ発動機に就職した。
なお,自動車技術会春季大会学術講演会(2008年5月22日)にて口頭発表
東京電力株式会社との共同研究(2006年6月〜12月)
- 質問受付時期:2005年秋
- 質問内容:ある偏微分方程式の解の高速計算法
- 担当:儀我美一,北大数学COE 東京オフィス
非平衡ダイナミクスに基づく散逸構造形成制御法の確立」理化学研究所との共同研究 (2004年〜2006年)
- 担当:西浦廉政
- 概要:自己組織化原理に基づくメソスケール空間周期パターンの制御法の確立。
- 発表論文:
M. Nonomura, R. Kobayashi, Y. Nishiura and M. Shimomura: "Periodic Precipitation during Droplet Evaporation on a Substrate", J. Phys. Soc. Jpn., 72(10): 2468-2471 (2003)
H. Mahara, N. J. Suematsu, T. Yamaguchi, K. Ohgane, Y. Nishiura and M. Shimomura: "Three-variable reversible Gray-Scott model", J.Chem.Phys., 121(18): 8968-8972 (2004)
T. Nishikawa, M. Nonomura, K. Arai, J. Hayashi, T. Sawadaishi, Y. Nishiura, M. Hara, M. Shimomura, M. Nonomura, K. Arai, J. Hayashi, T. Sawadaishi, Y. Nishiura, M. Hara and M. Shimomura: "Micropatterns Based on Deformation of a Viscoelastic Honeycomb Mesh", Langmuir,, 19(15): 6193-6201 (2003)
学会発表:
M. Nonomura, R. Kobayashi, Y. Nishiura and M. Shimomura: "Pattern
Formatin on a Substrate during Droplet Evaporation", ICCG-13/ICVGE-11 ,
Kyoto, Japan (2001-07)
野々村 真規子,小林 亮,西浦 廉政,下村 政嗣: 「溶液蒸発過程におけるパターン形成」, 第50回高分子学会年次大会, 大阪 (2001-05)
株式会社デンソーアイティラボラトリーとの共同研究 (2004年〜2005年)
2004年:「ダイナミックに変化する情報伝達ネットワークに関する研究」
2005年:「情報伝達信頼モデルに関する研究」
- 担当:西浦廉政,大山義仁(大学院生)
- 概要:
- 北大博士後期課程院生 大山義仁氏の提案によりこの受託研究が発足し,その成果は下記に
あるこの分野での著名な国際会議IASTEDに採択された。
学会発表:
大山 義仁, 佐々木 宏, 岩崎 弘利 and 西浦 廉政: "Data-dissemination
dynamics in mobile P2P network", The Fifth IASTED International Conference
on MODELLING, SIMULATION, AND OPTIMIZATION (MSO 2005), Oranjestad, Aruba
(2005-08)(詳細は http://www.d-itlab.co.jp/ja/pressroom/)
北大理学研究科生物科学専攻 分野:「タンパク質結晶学に関する「蛋白質構造解析の自動化に向けて」の質問をうけて研究(2001年〜2004年)
- 担当:中村玄,王 盛章(大学院生)
- 概要:
- 蛋白質のX線構造解析におけるデータ解析では,蛋白質の電子密度関数のフーリエ像の絶対値が計測データとして与えられ,それからもとの電子密度関数を求める逆問題を解かなければならない。これはフーリエ像の偏角が欠落しているため,一般には計測データを与える元の電子密度関数は一意には決まらないという根本的な難しさがある。この逆問題は,位相問題と呼ばれる逆問題の典型例である。この位相問題を解くには,予めもとの電子密度関数に対する先見情報を利用する必要がある。蛋白質のX線構造解析では,他の実験データと蛋白質の結晶構造を基にして,所謂初期モデルを構築し,この初期モデルを更新しながら計測データに当てはめることにより,蛋白質の立体構造を決定している。初期モデルの更新は経験に基づく手作業で行われ,一つの蛋白質の立体構造を決定するのに,一年近くかかってしまうこともある。
ところで蛋白質の立体構造決定は,蛋白質の機能を調べる上で重要であり,わが国では蛋白3000計画として5年間に3000個の蛋白質の立体構造を決定する国家プロジェクトが組まれた。高分子科学専攻の田中勲教授は,この国家プロジェクトの北海道大学におけるリーダーとしてこのプロジェクトを推進した。
このような状況の中にあって,田中教授はX線構造解析による蛋白質の立体構造の決定が,より効率的に出来ないか,そのための数学的なアイデアはないかということを求められて,21世紀COE先端機能セミナーで提案された。
これを受けて中村 玄とその院生王 盛章君は,蛋白質の主鎖を自動的に認識させ,それを初期モデルの更新に活用することを考えた。それは主鎖の立体構造を決めることが,蛋白質の立体構造決定に不可欠だからである。そこで電子密度関数の等位面からの等距離面を次第に細くして行けば,主鎖が求まるのではないかという自然な方法(以下等距離面法と呼ぶ)発想で,中村と王は蛋白質の立体構造決定を試みた。まずチューブ状領域に対して,その中心曲線を求めることが出来ることを確認した。つぎにチューブ状領域が分岐した領域の中心曲線が,分岐する曲線として求まるかどうかを試みた。この場合は,カットローカス即ちここから最短距離にある領域境界の点が一意に決まらないような集合が現れ,等距離面法による中心曲線の分岐点の決定が難しくなる。しかし分岐点を,適当に決定可能な中心曲線部分より外挿することにより,等距離面法により分岐点を求めることが出来ることが分かった。しかしこの方法を,実際の蛋白質の電子密度関数が作る等位面に対してうまく適用することはできなかった。それは,この等位面が巨大な殻状の領域であり,必ずしもチューブ状領域とそれが分岐した領域として現せるような簡単な形状でないからである。中村は,この研究を王君の博士論文の研究テーマにとも考えていたが,さらに踏み込んで等距離曲面法が適用可能なように改良することは,蛋白質の結晶構造の深い知識を必要とする前途遼遠な研究課題であり,田中先生から強いサポートも得られなかったので,中断してしまった。