2008年6月
勤務先で最近,気になることがある. トイレに行くと外で動く気配があるのだ. なんか変だなと感じていたのだが, あるときその正体に気がついた.
トイレの窓の外はちょっとした森になっている. その中の一本の木の丁度トイレの高さに数センチの丸い穴がある. その穴の中で動いているものがあるのだ. さらにしばらく眺めていると, 親鳥と思われる鳥がやってくる. どうやらヒナを育てているようだ. 時間をおいて何度もやってくる. きっとヒナにやる餌を持ってくるのだろう. 何度も見ているうちに鳥の頭が赤いことに気がついた. 調べてみると「アカゲラ」のようだ.
春の野山に入ると「トントントン」あるいは「タタタタター」と いう音を聞くことがある. あれはキツツキの音だよ, と仲間に知ったかぶりをよく言ったものだ. でも本物を見るのは今回が初めて.
六月のある週末,たまたまデジカメを持ってきた. キツツキの事はすっかり忘れていたのだが, ふっと思い出した. 一つ写真でも撮ってみるか.
良いアングルを探すと, 階段の窓からキツツキの穴が良く見えることが 分かった. 木の葉や木の枝に邪魔されることもない, ほんの十メートル程の距離である. よし,ここで撮ろう. 腰を据えて待つ. ヒナは時々頭を出す. しかし,親鳥はなかなか来ない.
そのうちに現れたのは大きなカラス. 穴の直ぐ横の枝にとまって,しきりに中をうかがう. カラスも子供の餌を得ようと必死なのであろう. ヒナは穴の奥深く潜って出てこない. 穴は大きくてカラスのクチバシも簡単に入りそうだ. どうなることだろうか?
カラスは穴の周りをあっちこっちと飛ぶ. 穴の左や右,上や下の枝にとまる. そのうちに分かった. カラスは横に出た枝にはとまれるが, 縦の幹にはとまれないのだ. キツツキは幹にとまれる. 実に微妙な位置に穴が開けられている. そのうち,カラスはあきらめて飛んで行ってしまった.
それからしばらくして, ようやく親鳥がやってくる. こちらはデジカメを最大望遠にしてシャッターを押す. レリーズラグがあるのがもどかしい. 何枚も撮る. 親鳥はまた行ってしまった.
アカゲラの給餌
この機会にアングルを変えてみよう. 階段の窓は穴の正面で良いのだけれど 一つ問題がある. はめ殺しの二重窓で外が汚れているのだ. なんだかスリガラスを通したようだ. やはり最初に気がついたトイレが良い. 角度は少し斜めになるが窓はきれいだ. じっと待つ. 親鳥がまたやってくる. バシバシ,シャッターを押す. 良い写真は撮れただろうか?
そして,ふっと気がつく. ここは男子トイレである. 隣は女子トイレ. 最近の世相である. 写真を撮ることはやめた.
月曜日. また,穴をのぞいてみる. 何も動かない. しばらく待っていると, 小さな鳥が二羽続けて飛び出してくる. 最初のは頭が白かったけれど, 後のは赤い頭のように見えた.
その後も何度か穴を観察する. 頭の白い鳥が穴に出たり入ったり, 付近を飛び回ったりする. カラスも時々やってくる. だが赤い頭を見かけることはない. キツツキは無事巣立ったのだろうか?
こんな自然を身近に感じるのが北大キャンパスなのである.