植物園

2008年5月

北大の植物園はJR 札幌駅の南西にある.地下鉄では東西線の西十一丁目 駅から大通りを越えて北に少し歩いたところである.五月の週末,植物園を訪ねてみた.

前に来たときには気がつかなかったのだが,入り口に花の写真が飾ってあ る.係の人に聞いてみると温室の近くに花が多いらしい.広い植物園なので先に案内を受けておくのが良い.

温室の前に「レブンアツモリ」があった. 『地植えではなくて鉢植えで申し訳ありません.』 と係の人は言っていたが,そんなことはどうでも良い.初めてレブンアツ モリを見たのである.その花は淡いクリーム色をしていて,今にも溶け落ちそうではかなげである.

一般にランの種は極めて小さい.粉のようだ.風に飛ばされてどこへ行く やら.種には栄養がない.たまたま運良くラン菌と出会えたものだけが成 長するのである.ネジバナのように良く生えるランもあるが,大概のラン は気むずかし屋である.球根で増やすこともできるが,それには長い時間 がかかる.そのうえ遺伝的にまったく同じものしかできない.だから,新 しい品種を作ったり,生物学的多様性を保つためには種から育てる必要が あるのだ.しかし,それは大変難しい.

高校生の頃,生物園芸クラブに入っていて,エビネの種子の無菌培養を試 みたことがある.寒天に栄養分を溶かして,良く滅菌したフラスコや細 ビンに入れる.一センチメートル程の厚さに寒天が固まる.それにエビネ の種をまく.ビンの口をもう一度滅菌して脱脂綿でフタをする.だが,一 度も成功したことがない.口のあたりに寒天液がついていて,そこからカ ビが生えたり,何も起こらなかったり.

ずいぶんなご苦労があったのだろうな...

植物園は広い.まだ見るところは多い.温室の中は洋ランやサボテンの花 で一杯である.外に出て行けば,ツツジやシャクナゲの花,水辺にはクリ ンソウ.アツモリソウの地植えもあった.近くにはクマガイソウやサルメ ンエビネも.鉢植えではあるがウスユキソウ(エーデルワイス)もある. ぐるっと回るとハンカチノキやライラックの並木がある.

少し疲れたな.トイレでも行くか.何の変哲もない,普通かむしろ古典的 なトイレ.外に出てみると,看板があって重要文化財だったと知る. 博物館に入ってみると,初期の学生のとった美しいノート.こんなきれい な字で英語は書けないな.英語で講義を受け,ノートをもう一度清書して 提出したものらしい.旅行メモは英語と日本語のちゃんぽん.そこまでし なくても良いのに.

奥には真っ黒な犬のはく製があった.クンクンと甘えてくるようだ.

『この目は本物なの?』

『いいや.生きていたものは腐ってしまうからね.ガラスの目玉が入れて あるのだよ.』


表示を見ると「タロ」とある.これが南極で生き延びたタロなのか!

こんな驚きを身近に感じるのが北大植物園なのである.