数学連携サロン 材料強度と材料組織形成のマルチスケール数理

開催日時
2009年   05月 12日 16時 30分 ~ 2009年   05月 12日 18時 30分
場所
北大電子科学研究所会議室
講演者
毛利哲夫(北海道大学・工学研究科)
 
強靭な合金材料の開発は、大は超高層ビルディングやパイプライン、宇宙船や航空機等の先端輸送機器から、小はパソコンの筐体に至るまで、社会を支える基板材料の問題として、材料工学における喫緊の課題である。言うまでもなく合金の基本構造、即ち、結晶構造はミクロな電子の振る舞いにより決定され、マクロな実用材料の強度は弾性論を始めとする連続体力学の範疇で論じられるものである。しかし、合金の強度を決定しているのは単なる原子間の結合力ではなく、結晶に含まれる転位線といわれる欠陥の多様な挙動による。転位線は結晶の1cm3当たり全長106~1012cmも含まれるものであるが、このような転位線が互いに相互作用しながら、析出物や結晶粒界等で形成される内部組織の中を運動することによって材料の変形が生じている。従って、材料の強度を制御・設計するためには、内部組織の最適化と転位運動の制御が必須である。析出物、結晶粒界等の内部組織は、光学顕微鏡や通常の透過型電子顕微鏡で観察できるスケール領域のものであり、その形成過程においてはナノ・ミクロ領域における原子や電子の振る舞いが直接反映されるものではない。従ってシュレディンガー方程式を厳密に解くことはこの領域の現象の記述・解析には実効性を持たない。又、転位の振る舞いは決定論的なものであり、通常の熱力学・統計力学をそのまま適用することはできない。しかし一方において、転位線と内部組織の相互作用は、原子配列にまでさかのぼって結晶格子の離散性を陽に考慮せずしては本質が理解できない。つまり材料強度の問題はミクロ領域における統計力学・量子力学と、マクロ領域における連続体力学の適用領域の「狭間」にあり、有効な記述の手法が欠落しているのが現状である。我々の研究室で行っている弦モデルに基づく単一転位線の挙動の解析、拡散反応方程式に基づく転位の集団挙動の計算、規則―不規則変態に対するクラスター変分法及びフェーズフィールド法の計算などを示し、材料強度の予測に対するマルチスケール解析の重要性や問題点を指摘する。

http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/center/activities/RCIMS_seminar.html.ja

関連項目
,

研究集会・セミナー・集中講義の一覧へ