NSC セミナー「群れ行動における時空間パターン形成と個体間相互作用に関する数値実験」

開催日時
2011年   5月 20日 15時 00分 ~ 2011年   5月 20日 16時 30分
場所
北海道大学電子科学研究所12条5F講義室(中央キャンパス総合研究2号館棟5階)
講演者
井上純一 (北海道大学 大学院情報科学研究科)
 
小動物の群れ行動はときとして, 一つの大きな生命体のようにみえることがあり, その形成原理は未知の部分も多く,非常に興味深い自然現象の一つである. この小動物からなる多体系において, 群れの非自明な時空間パターンを生む「個体間相互作用」がどのようなものであるかを調べることは, この謎を解くための有効なアプローチであるように思われる.最近, イタリアの研究グループ[1-3]は, ムクドリの実測画像データを解析し, 空間的対称性や相関関数等を調べることで, 各ムクドリは6-7近傍個体までの局所的相互作用のもとで行動しており, それが群れ行動の時空間パターンを生んでいると結論づけた.我々はこの実証実験を計算機によって確認するため, BOIDS[4]と呼ばれる群れアルゴリズムを計算機上に実装し, 各個体が視野半径内の全個体と相互作用する「メトリックモデル」と, 各個体が視野半径に依らず, 決まった近傍個体数のみと相互作用する「トポロジカルモデル」の双方に関して数値実験を行い, 後者が実証実験の結果をよりよく再現できることを明らかにした [5].具体的には, 前者では注目個体に隣接する個体群が「結晶構造(レギュラーグラフ)」をとってしまうのに対し, 後者ではこの結晶構造が消失し, ムクドリからなる, ある種の「気体」のような振る舞いを示し, より現実のムクドリの群れ行動を再現することがわかった.本セミナーでは物理学の分野で多く議論されるVicsekモデル[6]や, 最近, 工学の分野で比較的よく用いられるOlfati-Saberモデル[7]と我々の数理モデルとの関連性なども含めた, より詳細を紹介したい.

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[1] M. Ballerini et.al, PNAS vol.105, 1232 (2009)

[2] A. Cavagna et.al. PNAS vol.107, 20394 (2010)

[3] A. Cavagna et.al. Mathematical Bioscience vol.214,  32 (2008)

[4] C.W. Reynolds, Computer Graphics vol. 21, 25 (1987)

[5] M. Makiguchi and J. Inoue, Submitted to Physica A

[6] T. Vicsek et.al. PRL vol. 75, 1226 (1995)

[7] R. Olfati-Saber, IEEE Trans. Auto. Cont. vol. 51, 401 (2006)

関連項目

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