第161回複雑系セミナーHarnessされた過渡的カオスによる脳内時系列記憶の表現とその生成:reserver computingアプローチからの考察

開催日時
2014年   5月 19日 14時 00分 ~ 2014年   5月 19日 16時 00分
場所
電子科学研究所(北12西6)中央キャンパス総合研究棟2号館 5F講義室南
講演者
末谷 大道氏(鹿児島大学)
 
アブストラクト:

我々の脳の中では、音楽のメロディや運動指令など様々な種類の時系列情報が記憶されており、意図的に正確なタイミングであるいは自発的に想起される。それは、脳が単なる入出力変換装置ではなく能動的なパターン生成器であることを意味する。一方、脳の中では単一の神経細胞レベルから皮質レベルまで様々な非線形ダイナミクスが存在している。よって、どのようにして生物としての機能を果たす時系列パターンが非線形ダイナミクスとして表現されるか力学系の観点から考察し理解することはとても重要である。
中枢神経系におけるシナプス結合は通常ランダムで非対称である。一般にこのような神経系はカオス的なダイナミクスを示す[1]が、Hopfieldネットワークのような対称な結合を持つ系に比べその計算論的な意味はあまり明確ではなかった。また、再帰的な結合を持つ神経回路の教師有り学習として従来より幾つかの数理的手法が提案されているが(BPTT法やRTRL法など)、計算量の増大や局所解の存在などの収束に関する問題があった。ところが、近年、reserver computing(RC)と呼ばれるアプローチの発展によって再帰的な神経回路の学習に再び注目が集まっており[2, 3]、時系列パターンの生成におけるカオスの積極的な役割についても議論されている[4]。
そこで本講演では、RCのアプローチに基づいてカオス力学系の観点から神経回路による時系列パターンの記憶と生成に関する問題を考察する。特に、時系列パターンは入力によって軌道がアトラクタから乖離するときの過渡的なダイナミクスとして表現されるという仮説を提案し、記憶と生成に有用なダイナミクスをカオスの「柔らかさ」(軌道の多様性と入力に対する応答の順応性)として評価しその解析を行う。また、1つのネットワークに複数の時系列パターンを記憶させたときに、入力の調整によって新しい時系列パターンを生成させる問題(学習の汎化)について議論する。

参考文献
[1] H. Sompolinsky, A. Crisanti and H.J. Sommers, Phys. Rev. Lett. 61, 259 (1988).
[2] W. Maas, T. Natschlager and H. Markam, Neural Comp. 14, 2351 (2002).
[3] H. Jaeger and H. Haas, Science 304, 78 (2004).
[4] D. Sussillo and L.F. Abbott, Neuron 63, 544 (2009).

第161回複雑系セミナーポスター

関連項目
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