第157回複雑系セミナー 二次元Euler-α流れの点渦衝突と特異エンストロフィー散逸

開催日時
2012年   6月 11日 15時 00分 ~ 2012年   6月 11日 17時 00分
場所
中央キャンパス電子科学研究所5F講義室(北12条西7丁目)
講演者
坂上貴之(北大大学院理学研究院数学部門)
 
複雑系セミナーの一覧
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/tag/complex_systems_seminar

アブストラクト
三次元粘性非圧縮流体に対する一様等方乱流理論において,Kolmogorovが
仮定したことの一つに粘性係数がゼロの極限において,エネルギー散逸率が
正になるというものがある.しかし,この仮定は一見とても奇妙なものである.
というのも粘性が0の極限の流れに対応する非粘性・非圧縮流体を記述する
Euler方程式の滑らかな流れにおいては運動エネルギーが保存されるため,
エネルギー散逸率は極限においてゼロになると思われるからである.

これに対して,Onsagerは非粘性・非圧縮流の流れの滑らかさが指数1/3以下
のヘルダー連続性をもつとき,エネルギーは散逸しうるという推測を数学的
な証明なしに言明している.この推測をOnsager予想と呼ぶが,
DuchonとRobertは,Euler方程式の弱解で,そのエネルギー散逸率が超関数
の意味で非負になるようなものを散逸的弱解と定義し,この解のヘルダー
連続性が1/3より少滑らかであればエネルギー散逸率が0になることを示した.
これに加えて,ここで定義されたエネルギー散逸率が正である場合,この散逸率
を用いてKolmogorovの予想した三次モーメントに対する統計法則が(ある種の
エルゴード性の下で)超関数の意味ではあるが自然に導かれる.これらの研究から,
滑らかでないEuler方程式の弱解が何らかの意味でKolmogorovの乱流理論の
仮定を満たす流れの数学的候補と見なされているが,こうした解の存在やまた
その物理的な性質などについては明らかではない.

本研究ではこうした特異な散逸的弱解を物理的に見える形で記述し,その乱流との
関係について議論したい.三次元のオイラー方程式に関する解の存在については
未解決の難問である.そこで,問題を簡単にして二次元のオイラー方程式正則化した
Euler-α方程式を考え,その正則化方程式のラドン測度の初期値(点渦)に対する時間
大域弱解から正則化パラメータに関する極限をとって弱解を構成することを考える.その
結果点渦のサポートが三点である場合,三点渦が一点に衝突して再び離れていくような
特異解が得られることを示す.二次元の流れではエネルギーではなく渦度の二乗ノルム
であるエンストロフィーの散逸が重要であるが,ここで構成された衝突解においては点渦
衝突によってエンストロフィーが超関数の意味で散逸することも示す.

関連項目
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