第152回複雑系セミナー ロボット実験によるVicarious trial-and-error (VTE)の役割の解析

開催日時
2011年   4月 8日 14時 00分 ~ 2011年   4月 8日 15時 30分
場所
中央キャンパス電子科学研究所5F講義室(北12条西7丁目)
講演者
松田 英子(東京大学)
 
複雑系セミナーの一覧
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/tag/complex_systems_seminar

アブストラクト
Vicarious trial-and-error (VTE) (Muenzinger and Fletcher, 1934;
Tolman, 1939) は経路選択課題における葛藤的な行動のことである。マウスを用
いた実験から、VTEの回数は学習の初期において増加し、その後減少することが
わかってい る。VTEは行動を内省し、環境を予測する過程で引き起こされると言
われており(Ikegami, 2007)、認知において重要な役割を果たすと考えられている。
本研究では、Bovetらによって開発されたロボットのモデルに基づき(Bovet
and Pfeifer, 2005)、シミュレーション環境上にロボットを構成し、VTEとの関
係について解析した。このロボットは複数の感覚間の相関をヘビアン学習則に
よって学 習し、T字型の迷路において経路選択課題を解く。ロボットに搭載され
るニューラルネットワークには、感覚間の結合の仕方が異なる二つ のモデルを
用いた。一 つはすべての感覚が緊密に影響し合うモデル、もう一つは感覚間の
相互作用が少ないモデルである。
実験の 結果、二つのモデルには次のような違いがあることがわかった。感覚
間の相互作用が緊密なものはマウスを用いた実験と同様、VTEの回 数は学習の初
期に増加し、その後減少した。一方相互作用が少ないモデルでは、課題の成功率
は保たれるが、VTEはほとん ど見られなかった。この結果から、VTEは感覚間の
冗長な結合によって引き起こされていると考えられる。さらにこの相互作用が少
ないモデルは、緊密なモデルに比べ、初期位置や環境のサイズの変化に対して課
題の成功率が鋭敏に変化することがわかった。この結果 は、感覚間の冗長な結
合とVTEは、摂動に対する頑強性に関与していることを示唆している。
本研究 のモデルにおいて、VTEを引き起こす原因の特定、アトラクターの数や
安定性についての解析など、さらなる力学的解析が求 められる。また、ニュー
ラルネットワークにポテンシャルエネルギーを定義することにより、微分幾何学
の立場からの考察が可能であると 考えられる(Thom, 1972)

関連項目
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