数論幾何学セミナー:加藤予想とその数論的および幾何学的な応用(1)

開催日時
2012年   7月 23日 10時 00分 ~ 2012年   7月 23日 12時 00分
場所
北海道大学理学部4号館501
講演者
斎藤秀司(東京工業大学理学系流動機構)
 
アブストラクト

加藤予想とは,加藤和也氏により1986年に提出された予想である.Xを有限体あるいは整数環上有限型なスキームとすると,加藤ホモロジーと呼ばれる数論幾何学的な不変量KHq(X,Z/nZ)(qは自然数) が定義される.加藤予想はXが正則かつ固有的な場合に,加藤ホモロジーがq=0 以外では消滅することを主張する.dim(X)=1 の場合,言い換えるとXが有限体上の曲線あるいは有限次代数体の整数環のスペクトラムの場合の加藤予想は,有限体上の一変数関数体Kあるいは有限次代数体K のブラウアー群に関する古典的基本定理「K 上の中心的単純環にたいするHasse原理」に同値である.さらにK=Qでn=2の場合の加藤予想は,Q係数の2次形式に対するハッセ原理(Hasse-Minkowskiの定理)に同値で,このことから加藤予想はコホモロジー的ハッセ原理とも呼ばれる.

講義の第一の目標は加藤予想の証明(nがXの標数と互いに素な場合)の解説である.さらに加藤予想の数論的および幾何学的な応用について解説する.数論的スキームのモチフィックコホモロジーへの応用,ゼータ関数の特殊値への応用,

高次元類体論への応用など,数論的な応用の他に特異点理論への幾何学的な応用についても解説する.

特異点理論において,与えられた孤立特異点に(X,x)にたいし その特異点解消の例外因子の形状を何らかの方法で記述することが問題となる.たとえば(X,x)が複素数体上のアフィン空間の商特異点の場合には,これは最近盛んに研究されている.マッカイ対応の理論が扱う問題である.講義では,(X,x)が一般的な商特異点の場合に,特異点解消の例外因子の形状を組み合わせ論的に記述する単体複体(dual complex)が可縮であることを加藤予想の応用として証明する.加藤予想という数論的な問題がこのような幾何学的な問題に応用できるのは意外である.

講義の予備知識としてスキーム論の基礎を仮定する.さらにエタールコホモロジー理論についての%基本事項を予習しておくことを勧める.

関連項目

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