川原田茜・荻原智大(2011年度博士2年・数理科学系)

2011年12月01日

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Q. 出身高校と出身大学を教えて下さい。

荻原:高校は北海道旭川北高等学校です。大学は北海道大学の数学科で、そのまま大学院の数学専攻に進学しました。今はドクターの2年です。

川原田:仙台育英学園高等学校出身です。大学は北海道大学でドクターの2年です。

Q. 大学院に進もうと思った理由は何でしょう?

荻原:1つ大きな理由としては、現在の指導教員である由利先生からの影響はありますね。学部の頃から長いこと熱意あふれる指導をしていただいてまして…。

Q. 長い事というと学部2〜3年の数学講読か何かで?

荻原:そうですね、数学購読は2年後期からずっと由利先生でした。

Q. 熱心に指導されたという訳ですね。

荻原:研究の面白さを色々伝えていただきました。それで研究という世界に興味をもって、続けてみたいと思いました。

Q. 博士課程に行くのはやっぱり節目になると思うんですけど、あまり抵抗なく?

荻原:考えた時期もありましたが、より深く研究の世界に行きたいという気持ちが強かったです。

川原田:私は学部生の時のセミナーが面白くて、そのまま進学しようと思いました。

Q. セミナーというと4年生ですか?

川原田:3年生からです。行木先生のセミナーで、その時扱っていたテーマが測度論のような基礎的なものの他、フラクタル幾何学とか、時にはグーグルのページランクの話とか、そういう普段講義で扱わないようなトピックを勉強させていただきました。数学の研究テーマは自由に選べるというか研究スタイルを自由に決めていいんだということをその時に知ったので、もうちょっと研究しようと思って進学しました。

Q. 由利先生と出会ったのはいつなんですか?学部は行木先生?

川原田:行木先生と小澤先生のセミナーに出ていて、PDEの勉強をしていました。行木先生に修士の時にもお世話になっていたんですけど、その時に平行して由利先生のセミナーにも出ていて、ドクターは由利先生の研究室に入りました。

Q. ちょっと遡るんですけど、修士の入試についての感想を教えて下さい。

荻原:試験と言っても筆記試験は無く口頭試問だけでしたので、セミナー発表の延長線上という印象でした。普段の発表よりは少し緊張したくらいだったと思います。

Q. 選抜方法に対して何か個人的なコメントはありますか?

荻原:英語力については院試の段階で問うてもいいのではないかと個人的には思っています。勉強や研究をするにあたって必要なものには違いないですし、試験として課されなかったために僕は長いこと油断していて、今回のITPではちょっと苦労しました。

川原田:あまり記憶がないんですけど、それまでセミナーでは自分の指導教員の前でしか発表したことがなかったので、試験会場に行った時に先生方がずらっと並んでおられて、プロの数学者の方がたくさんいる前で自分がしゃべるというのがすごく嬉しかったことは覚えてます。入試だけれども自分の話を聞いてもらえるというのが楽しかったです。

Q. 資格試験はどうでしたか?

荻原:僕はどちらかというとやや苦労した方ではあるんですが、いざ博士課程に来て振り返ってみると、やはりあれくらいは出来てしかるべきな難易度だったなという印象です。

Q. 特に対策みたいなものは?

荻原:先輩や同期の人の解答例をいただいて、それを参考に自分で勉強したりしました。

川原田:私はなぜ修士の入試試験で筆記がないのかなというのが疑問でした。入学してから理由がわかったんですけど。資格試験の過去問を実際やってみると、自分で解けると思ってても解答を書けないものがけっこうあって、それで苦労した部分はありました。ただ自主ゼミをやったり皆で教え合いをして何とか解いていました。なぜ入学後にあれをやるのか疑問はあるんですけど、結果的には良かった…良かったと思いたいです。

Q. 学部と大学院とで感じた違いがあったら教えてください。

荻原:目標の有無と言いますか、修士では修士論文を書くという1つ大きな目標があってそこに向かって勉強していくのに対し、学部の頃はそうではなく漠然と勉強して基礎力を貯めこむ段階であると。修士になった直後はこのことをあまり認識できないかもしれないですが、ここが大きな違いだと思います。

川原田:学部の時にはだまっていても先生方が面白い話題や話題をどんどん持ってきてくださったんですけど、修士になったら突き放された感じがして、自分で取りに行かないと勉強も研究も進まない状況がけっこうありました。ただ自由に自分の勉強するテーマを選べるので、大学院の方が楽しいと私は思ってます。

Q. 現在研究している内容を教えて下さい。まず荻原さんから。

荻原:いま扱っているのは一次元ないし低次元の写像反復の力学系です。力学系の中でよく知られているクラスの性質の1つとして双曲性と呼ばれるものがあるのですが、その双曲性がくずれた系のエルゴード性や統計的性質に興味を持っています。由利先生が間欠性と呼んでいるタイプのものなのですが、少し具体的に言いますとたとえば系の不動点があって、一次元ならその不動点の傾き、二次元以上ならヤコビ行列の固有値に絶対値1を持つようなものです。

Q. 川原田さんの現在研究している内容を教えて下さい。

川原田:私はセルオートマトンという数理モデルを研究対象としています。そのモデルの特徴というのが、単純なルールからも複雑なダイナミクスを描くことができるという性質があって、複雑さを定式化するということを研究しています。修士論文の時にはトポロジカルエントロピーと呼ばれる尺度を使って、あるセルオートマトンの複雑性の評価をしたんですけども、いまはもっと別の尺度がないか探っている段階です。

Q. 将来の進路について教えて下さい。

荻原:研究を続けたいという意味ではできれば大学のポスト、もしくは大学の外でも研究のできる場所に就ければと思ってます。

川原田:私は研究者になりたいと思ってます。ただ自分が興味をもっているものがいわゆる数学という枠におさまっているのかどうかがよく解らないので、とりあえず数学で議論ができるような科学者になりたいと思ってます。

Q. 大学院進学を考えている人に向けてアドバイスがありましたらお願いします。

荻原:いろんな先輩方がいろんなアドバイスをされている質問だと思いますが、ITPに関連して言えば英語・語学の訓練はとにかく早い方がよいと思います。読み書きについては大学入試もありますからある程度できると思うんですけど、やはり聞いたり話したりという部分は普通に日本で暮らしているとなかなか鍛えられないと思いますし、僕はそうでした。大学院に入ると海外の研究者さんと交流する機会もあります。院生室に留学生さんも居たりしますし。英語の専門家になるわけではないので特別上手い必要はないですが、最低限のコミュニケーションが取れるレベルは早めの獲得を目指しておいて損はないです。

川原田:さっきの学部と大学院の違いでも言ったんですけど、私の認識では「学部は数学を勉強するところ」、「大学院は数学を研究するところ」だと思っているので、自分が何かもっと知りたい、もっと勉強したいと思っていることがあるのなら自由に勉強したら良いと思います。それをちゃんと受け止めてくれる先生方もおられると思うので。

Q. 博士課程に入って研究テーマはどうやって見つけましたか?例えば先生のアドバイスを受けられましたか?それとも自分で面白い事を見つけてやろうという感じでしたか?

荻原:由利先生の場合、こういうのをやりなさいと明示的に言うタイプではないのですが、先生の専門分野は先生が一番よくわかっているわけですから、その周辺からヒントを出してくださる感じですね。先生と関係なく自分のやりたい問題をやるというのも一つの道だと思いますが、指導教員に訊けることは多い方が何かとよいと思うので、そういった意味では先生に近い分野の中で自分が興味を持てるものを見つけて…という選択の仕方をしている部分はあります。

川原田:私は由利先生とは研究スタイルも研究手法も研究したい方向もだいぶ違うので、そこはもう自分でやるしかないという感じです。私は数値実験をやるので、具体的な現象やモデルに対して面白いと思う問題を考えています。

Q. ではちょっとテーマを変えて、北大の印象を教えてください。

荻原:僕はあまり他の大学のキャンパスを知ってる方じゃないので比較はできないんですけど、北大はとても広くて開放感があって、あまり実験室にこもらないタイプの数学者にはもしかしたらこういう場所が合ってるのかなと思います。ただ北海道という立地もあって冬場は雪がつもって足がのびにくいですが。全体としては良いキャンパスだと思います。

川原田:治安も悪くないと思うので、昼夜かまわず散歩に出られるというのはすごくありがたいです。

Q. 最後にITPのことについてお聞きします。今回10日間メリーランド大学へ行かれて、まず最初にざっくりとした感想はどうでしたか?

荻原:ざっくりと総括して言えば行って良かったです。僕は今まで海外に出た経験が無かったので、今回初めてパスポートを取得して行きました。未経験のことをするという事自体がとてもよい勉強になりますし、このぐらいの短期間であっても英語圏で過ごしたことによって得たものは色々あったなと思いました。それと英語を勉強しようという強いモチベーションにもなりました。

川原田:すごく陽気な人が人が多いなと思いました。数学者もものすごいパワフルな人が多くて、日本で言うところの数学者のイメージとは違うなと。同年代の大学院生とかポスドクの方ともお話したんですが、日本の大学院生より明らかに忙しそうでした。ティーチングアシスタントの仕事もぜんぜん量が違うし。なのにあんなに楽しそうにしてるっていうのが、負けてられないなと思いました。

Q. ITPはまだ1年ありますので再チャレンジというか、もっと長期もありえるし、ITPが終ったら数学科がまたアプライするかもしれないので、ぜひ次のチャンスをゲットしてください。どうもありがとうございました。

2011年(平成23年) 9月 インタビュー実施