吉永正彦(准教授・幾何系)

2013年05月27日

①出身高校・大学を教えてください

高校は兵庫県立宝塚北高校、大学は京都大学の理学部、
大学院は京都大学の数理解析研究所です。

②数学を選んだ理由は?

中学生の時にホーキングの「ホーキング、宇宙を語る」という本の一大ブームがありまして、また、同じ頃にNHKでアインシュタインや、宇宙の歴史に関する特集番組などが色々あって、そういうのに惹かれて最初は物理学者になりたいと思いました。
自分で色々な本を読んでいるうちに、物理学者になるためにはまず数学をある程度知っていなければならないということがわかって、それで数学の勉強を始めてみると、そっちの方がおもしろくなって、数学者になりたいと思いました。

― いつごろ数学者になることを決めたのですか?
高校生の間にはもう数学者になりたいと思っていました。

③大学生のときはどんな学生でしたか

最初からもう数学一筋と決めていたので、授業に出るというよりは自主ゼミで好きなことばかりしていた気がします。サークルに入ったりもしましたが、数学以外は何も長続きしませんでした。

④数学のどんなところが好きですか?

個人的におもしろいと感じているのは、同じ問題に対しても見方を変えると、ガラッと違うように見えて、今まで難しかったことが簡単に見えることがある点です。
素朴な例だと、定積分を求めるときに、最初はごちゃごちゃとしていた式がちょっと変数変換すると、簡単な問題になってしまったり、他には、抽象的な言い方しかできませんが、組み合わせ論の問題を、代数幾何的な定式化をすると、代数幾何の方でよく知られている簡単な事実に帰着されてしまうというようなこともあります。見方を変えると問題が変わるところが魅力だと思いますし、数学の強い点だと思います。
問題を解こうとがんばっている時というのは、どっちに行ったらいいのかも分からないジャングルの中をさまよっている感じなんですけど、あるときパッと視界が開けて地平線の彼方まで見えるような体験が時々あって、そういうところが僕はいいなと思いますし、そういう感動体験から明日からもまた頑張って数学の勉強をしようという力を得ている気がします。

⑤最初は数学者になろうとしても、本当になれるかどうか不安になることもあったと思いますが、どうでしょう?

修論を書いた後に超平面配置の研究を始めたんですが、博士課程1年の頃に小さい問題ですけど、これをやろうと自分で思いついた問題が、数ヵ月後にある人に解かれてしまったことがありました。その時は、自分が思いつく程度のことはその道のプロはすぐ思いついて解決出来るのだな、とショックを受けました。が、ここから一歩も進めなかったら一生何もできないだろう、という気分で必死になったら、運よく半年くらいで後で博士論文になる結果が得られました。博士論文の目処が立った頃になんとかやっていけるかなと思いました。でもまあ将来に対する不安に関しては、ポスドク時代の方が大きかった気もします。

⑥ご自身の研究内容について教えてください。

大きく分けて二つのことをやっていて、ひとつは超平面配置という対象を扱っています。それは簡単に言うと、平面の上に直線が何本かあったときに、いくつの部屋に分かれるか、というような問題を扱います。超平面配置と言うのはこれの高次元版です。超平面配置というもの自体は組み合わせ論的側面だけではなく、代数幾何とかトポロジーとか、色んな分野と係わっていて、私自身はは超平面配置の組み合わせ論的な問題を代数幾何的に扱うとか、トポロジカルな問題を、組み合わせ論的構造を使って扱うようなことをしています。
もうひとつは2001年頃にコンツェビッチとザギエという人達が導入した周期という概念がありまして、これはある種の実数の集合なのですが、例えば円周率πとか、log2など、整数係数の多項式を使って表される図形の面積とか体積とかを実数の中で特別なものだと位置づけて、そのようなものを周期と呼んで、研究しましょうという思想です。考え方自体は、代数幾何のモチーフ理論などでは漠然と認識されていたのでしょうけど、コンツェビッチとザギエが周期の概念を初等的な言葉で実数の集合として定式化して、それを使っていくつか予想を立てています。個人的な印象ですが、微分積分が始まって以来のここ300年くらいの実数概念が関わる数学をある意味、この周期の概念が総括してその次に進む方向を提示しているような感じがしました。数学の非常に広い範囲に影響がある問題意識だと思っています。

⑦お気に入りの定理や大事にしている公式はありますか?

僕はここ(北大数学部門)の寺尾先生のD論で示された公式を学生のころ見て感動したのですが、今でもそれが一番好きです。

⑧休日は数学以外に何をしていますか

あいてる時間は大体子供と遊んでます。あとはイタリアでポスドクをしていたことがあるのでイタリア語の勉強を時々続けています。

⑨京都から札幌に来て一年ですが札幌はどうですか

住み心地が大変良いと思います。大学も駅もなんでも徒歩圏内にあって、しかもキャンパスは自然が豊かでゆったりしているのが気に入っています。研究面でも趣味が近い人がスタッフから学生さんまでたくさんいて、一年目からとても充実していました。

⑩どんな学生さんに来て欲しいですか?

学生さんには知識としては、微分積分と線形代数を押さえた上でできれば、ガロア理論、可換環論、複素関数論、多様体論、ホモロジー、基本群などのキーワードのどれか一つでも基礎的な事柄をある程度身につけていて欲しいと思います。
でも、まあ知識はあとで必要になってからでも必死に勉強すればなんとかなるので、知識よりも、今まで数学を勉強してきた中で何か「これはおもしろい」と強く感動した体験を持っていてほしいと思います。

⑪大学1年生に向けて

基本的には数学が好きならぜひ来てください。数学には何十年勉強しても尽きることのないくらいたくさんの面白いことがあります。

2013年(平成25年) 5月インタビュー実施