諸科学・産業技術の画期的発展を成し遂げるには、複雑な現象に潜む本質的な論理構造を見出すことが必要であり、問題を方程式のような抽象的表現に変換し、数学的に研究することが不可欠である。また数学のもつ汎用性は、諸分野間で別々に取り組まれていた問題を統一的に扱う道を拓くなど、数学は諸分野に「知の深み」や底力を与える。
欧米諸国では数学のこのような特徴が多方面で認識され、多様な現代数学の諸分野への積極的活用と、数学自体の高度化を推進している。また近年では社会や組織を効果的に運営するための数学的取り組みもますます盛んになっている。我が国でもこの認識が広まりつつあり、新たなプログラムが開始されてきてはいるが、一方で日本の数学研究環境は年々厳しくなっている。
このような状況を踏まえ、本シンポジウムでは、産官学の国内、国外の専門家が集まり、数学と諸科学・産業技術連携によるイノベーション創出および、これを支える現代数学研究の推進体制について現状を把握し、その振興のためにどのような政策・制度・組織等が必要かを検討する。
第Ⅰ部では、諸外国における数学研究拠点と数学振興策の例を参考に、我が国を含めた数学研究環境の現状について政策的にもより踏み込んだ報告を行う。第Ⅱ部では、諸科学のイノベーションの鍵となる数学の諸事例を紹介する。第Ⅲ部では、産業界からの報告をもとに、将来のイノベーション創出に向けての可能性を探っていく。第Ⅳ部では、数学研究振興に向けての我が国の数学界の様々な取り組みについて紹介していただく予定である。