RCIM Letters Vol.3 No.2 (2011年3月)

RCIM Letters-vol3-no2
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Research Report 現代の諸問題に挑む数学
- 社会が抱える諸問題に対する数学・数理モデルの応用事例の調査報告-  Web版

西浦 廉政 * 齋藤 宗孝 **
* 北海道大学 電子科学研究所 教授/北海道大学数学連携研究センター兼務教員/科学技術振興機構数学領域研究総括
** 北海道大学 創成研究機構 学術研究員

1.はじめに

人類社会が抱える諸問題の解決に、数学・数理科学はどのように貢献できるのだろうか?本稿はこの究極の問に答を出すことに寄与するため、数学・数理モデルが、世界において、諸問題に対してどのように用いられているのか、事例を収集しまとめたものである。
独立行政法人・科学技術振興機構の研究開発戦略センターがまとめた、「新興・融合分野研究検討報告書」[1] によれば、現代社会における多くの課題は、複雑な現象やシステムに由来し、既存の学術分野の範囲内では解決が困難であるという。同報告書では、複雑システムに起因する、現代社会が直面する難問として、地球環境、自然災害、疫病、エネルギー、インフラ、経済などに関連する10 項目を挙げている[1]。さらに、これら10 の難問を解決するために必要な研究領域として、「巨大データの取り扱い」「システムの複雑性克服」「地球環境と社会との関連科学」など、10 個の研究領域が示されている[1]。それぞれの研究領域は多くの既存の学問分野から成り立っているが、10 個の研究領域のうち9 個について、数理科学がそれらを形成する既存の学問分野のひとつとして言及されている[1]。また、平成21年版「科学技術白書」[2] においても、IT と並んで数学の進歩により複雑な自然現象の解明が可能となってきたことや、金融部門に数学が適用されていることが述べられ、計算科学技術や応用数学を活用していくべきであることが指摘されている。このように、数学・数理科学が様々な問題の解決に役立つのではないかという社会からの期待は小さくない。

数学は社会が抱える様々な問題と関わっている

しかしながら、社会が直面する問題に取り組む中で、数学・数理科学がどのような役割を担っていくべきなのかは、必ずしも明らかでは無いように思われる。わが国では数学と他分野との共同研究が十分に行われてこなかったという見方もある中[3]、上記の疑問に答えるための一助として、世界でどのように数学・数理モデルが社会の様々な問題に応用されているのか、情報を収集することは重要と考えられる。
本稿では前述の報告書[1] における「10 の難問」とも関連が深い感染症、エネルギー問題、環境問題、災害等といったテーマに関して、数学・数理モデルの応用事例を収集しまとめた(ただし、網羅的なものではない)。諸問題の解決に対する数学・数理科学の貢献のありかたという、最初の問に対する結論は、本稿の範囲を超えているが、この問を議論する上でどのようなポイントが重要と思われるのか、事例収集を通して浮かび上がってきたことについては、「おわりに」で触れた。

2 . 疾病と数学・数理モデル

2.1 回旋糸状虫症

回旋糸状虫症(onchocerciasis) は、ブユ(Simulium) によって媒介される回旋糸状虫(Onchocerca volvulus) を原因とする病気であり、失明や皮膚損傷を引き起こす[4]。この病気に対して、世界保健機関は“Onchocerciasis Control Programme (OCP) in West Africa” を実施した[5]。このプログラムは1974 年から2002 年まで実施され、60 万人が失明するのを防いだとされる[6]。また、同プログラムは、公衆衛生問題としての回旋糸状虫症を、西アフリカの11 の国から除去した[7]。同プログラムの戦略には、媒介動物であるブユの幼虫を駆除するための殺虫剤の空中散布、および、人体内のミクロフィラリア(成熟していない回旋糸状虫)を殺す薬であるivermectin による治療が含まれていた[4]。(ただし、ivermectin が登場するのは1987 年である[7]。)
媒介動物を駆除する取り組みが8 年間行われた時点では、有病率に十分な低下が見られず、このことが、費用が高い媒介動物コントロールの効果に対する、深刻な懸念を引き起こしていた[7]。当時は、媒介動物の駆除が疫学的にどのような効果をもたらすと期待されるのかは明確ではなかっため、OCP の評価に対して数理モデルが導入され、1986 年に論文が出版された[7, 8]。[8] の目的は、OCP の疫学的評価における適切な統計量を定めることであった。[8] では、患者に寄生した1 匹の雌の成虫によってミクロフィラリアが産出され、患者の皮膚断片を調べることでこれらのミクロフィラリアが検出される状態を、1 個の“patent infection” として扱っている。「触媒モデル」と呼ばれる微分方程式モデルによって、それぞれの人間が少なくとも1個のpatent infection を持つ確率が計算されている[8]。さらに、それぞれの人間が1 個のpatent infection を持つ確率、2 個のpatent infection を持つ確率、…を、「ポアソン過程」に基づいて計算している[8]。
数理的検討の結果、ある条件下では、媒介動物のコントロールを行っても、最初の8 年はほとんど成人における有病率が減少せず、10 年を過ぎたころから急激な有病率減少が生じることが予測された[8]。また、有病率があまり低下しないのに対し、成人における一人当たりのpatentinfection の数の平均は媒介動物のコントロール開始後、減少していくことが予測された[8]。そして、この予測されたpatent infection 数の減少と、実際の観測データ(皮膚断片中のミクロフィラリアの量)が示す傾向は非常によく似ていた[8]。論文は有病率は疫学的評価の指標としては感度が悪すぎるとし、ミクロフィラリア量に基づく別の指標のほうが感度が良いとしている[8]。また、[8] による、実際の疫学データの分析におけるモデルの応用は、寄生虫の個体数が減少しているという知見を引き出すのに役立ち、OCPにおける媒介動物コントロールの戦略に対する信頼を高めたという[7]。
次に、媒介動物のコントロールをどれだけの期間続けることが必要なのかが問題となり、OCP はそれに答えるために、“ONCHOSIM” という「ミクロシミュレーションモデル」を作成した[7]。このモデルは[9] において詳しい紹介がなされている。このモデルは2 つのサブモデルから成り立っている。ひとつは確率論的なサブモデルであり、ヒト集団を扱い、人体内の寄生虫の生活史を計算する。もうひとつは決定論的なサブモデルであり、媒介動物のダイナミクス、および媒介動物内の寄生虫の運命を計算する[9]。ONCHOSIM により、回旋糸状虫症の再発リスクを1 パーセントよりも小さくするためには、14 年間の媒介動物のコントロールが必要であることが予測された[10]。この予測に基づき、媒介動物のコントロールは当初のOCP エリアにおいては、14 年経過後に中止された[7, 11]。この予測は後に正しかったことが証明されている[7]。

2.2 HIV

全世界のHIV (human immunodeficiency virus, ヒト免疫不全ウイルス) の感染者数は、2007 年において約3300万人と推定されている[12]。世界保健機関の研究者たちは、HIV 根絶の方策を議論するために、数学モデルを用いた検討を行っている[13]。焦点となったのは、抗レトロウイルス療法をHIV 感染拡大防止の観点から用いることである[13]。HIV を根絶するためには、人々がどれだけ頻繁にHIV テストを受けるべきなのか、および、陽性と判断された人にどれだけ早い時期から抗レトロウイルス療法を開始するべきなのか、という疑問に対して、数学モデルを用いて答えを出すことが試みられている[13]。
ひとつは確率論的なモデルであり、「HIV テストの頻度」と、「抗レトロウイルス療法開始を判断するためのCD4+ 細胞数の閾値」をパラメータとして、R0(一人の感染者が感染しうる人々の中に存在するときに、何人に感染させるのかを表す値)を計算する[13]。抗レトロウイルス療法を受けた患者は、この療法を受ける前の1 パーセントにまで感染性が低下する等の仮定がなされた[13]。このモデルが示すところによると、全ての青年と大人について、平均1 年に1回のテストを行い、HIV 陽性の結果が出た者についてはすぐに抗レトロウイルス療法を開始すれば、R0 を1 よりも小さくすることができ、いつかはHIV を根絶できるとのことである[13]。
もうひとつのモデルは決定論的なものである。このモデルでは、人々が以下の「区画」 (compartment) に分けられている。それは、感染しうる人々(susceptible class) の区画、既に感染した人々のHIV の進行段階に応じた4 つの区画、およびこれら感染した人々の4 つの区画それぞれに対応した、抗レトロウイルス療法を受けている人々の4 つの区画である[13]。これらの区画間の人々の移動速度、および死亡速度が定義されている[13]。このようなモデルを用いて、“universal voluntary HIV testing and immediate ART”という戦略、すなわち、全ての大人が平均1 年に1 度のHIV テストを受け、HIV 陽性と判断された人は直ちに抗レトロウイルス療法を開始するという戦略の有効性が解析された[13]。その結果、同戦略を用いれば、1 年当たりのHIV による死亡率を、5,000 人の青年および大人に対して1 人程度にまで減らせること等、同戦略の有効性が示されている[13]。
以上のような数学モデルによる解析を踏まえて、同論文では、抗レトロウイルス療法のHIV の予防とコントロールにおける役割を定義するために、専門家による評価および全ての利害関係者との協議が必要であると主張している[13]。この論文の出版を受けて世界保健機関は、2009 年
11 月に、広い範囲の利害関係者を招いて、「HIV 予防のための抗レトロウイルス療法」のコンセプトに関する幅広い論点について議論するための会議を行った[14]。数学モデルが実際に政策決定に寄与していることがうかがえる。

2.3 結核

米国National Institutes of Health のFogarty InternationalCenter、世界保健機関、世界銀行、およびPopulationReference Bureau によって、“Disease Control Priorities Project”(Web ページ: [15])という共同事業が進められている[16]。この事業は、発展途上国における政策決定に役立てるために、疾病管理の優先度を評価し、情報源を提供する取り組みである[17]。その主要な成果物のひとつである“Disease Control Priorities in Developing Countries”第2 版(DCP2) では、結核も扱われている[16] (Chapter16, Tuberculosis. C. Dye and K. Floyd)。
[16] では、世界の地域別に、結核に対する複数の主要な介入方法のコスト効率を評価している。介入方法としては、BCG または新規のワクチンによる免疫法、潜伏期の結核の治療、結核コントロールの戦略である“DOTSstrategy” の一部としての化学療法、および、複数の薬剤に対して耐性を持つ結核の治療が検討されている[16]。コスト効率評価の基礎として、結核の疫学の特徴をとらえた、微分方程式で記述された動態モデルが用いられている[18]。このモデルを調べることにより、結核に対する介入のコスト効率を計算するための公式が作成され、それを用いた分析が行われている[16,18]。

2.4 インフルエンザ

数理モデルは、インフルエンザに対するワクチン戦略の検討に用いられている。本節では3 例を紹介する。
[19] では、最適なワクチン分配を決定することが行われている。そのために、疫学的状態(感受性である、感染性がある、等)、年齢グループ、およびワクチン投与されているか否かによって人々を分類した、微分方程式モデルが用いられている[19]。1957 年と1918 年の大流行時の死亡率のパターンの下で、5 種類の尺度(回避された総感染数、回避された総死亡数など)に対する、各年齢グループに対するワクチンの最適な分配量が、数値的な最適化ルーチンによって計算されている[19]。その結果、大流行を根絶するのに丁度十分なだけのワクチン量を分配する場合、5 歳から19 歳まで、および30 歳から39 歳までの人々に対して、ワクチン投与を行うことが最適であることが示されている[19]。
[20] は、数理モデルを用いた研究により、「適応的なワクチン戦略」を提案している。この研究でも微分方程式によって構成されたインフルエンザ感染モデルが用いられており、その中では6 つの年齢グループと9 つの疫学的状態(感受性である、ワクチンにより保護されている、症候性でコミュ
ニティにおいて感染性がある、等)が考慮されている[20]。この研究では、メキシコにおける2009 年春のH1N1 インフルエンザの大流行を連想させる(reminiscent) シナリオなど、3 つのパンデミック・シナリオがモデル化されている[20]。2 つのワクチン投与戦略が検討されている[20]。ひとつは“seasonal-like influenza vaccination strategy” であり、この戦略では季節性のワクチン投与と同様に、小さな子どもと高齢者を対象とする[20]。もうひとつは適応的な戦略であり、この戦略では、パンデミック初期における年齢別の入院率・死亡率を基礎にして、ワクチンが分配される[20]。シミュレーションにより、適応的な戦略が優れていることが示されている[20]。
[21] は、最適なワクチン戦略が、介入のタイミングに依存することを示している。[21] においても、微分方程式モデルが用いられている。モデルにおいて、人々は年齢グループに分けられ、さらにそれぞれの年齢グループの中で、インフルエンザに関連する合併症のリスクが高いグループと低いグループに分けられている[21]。さらに、複数の疫学的状態(感受性である、感染性がある、等)が考慮されている[21]。2 種類のワクチン戦略が検討されており、ひとつは合併症のリスクが高い者に対して優先的にワクチン投与するものであり、もうひとつは、感染のリスクが高い者に対して優先的にワクチン投与するものである[21]。モデルを調べることにより、ワクチン接種の時期によって、優れたワクチン戦略が入れ替わることが示されている[21]。

3.環境・エネルギーと数学・数理モデル

3.1 風力発電の活用シナリオ

2008 年において、米国は風力発電量を8,500MW 以上増加させた[22]。この年に、米国の風力発電は全体で25,369MW に達した[22]。この風力発電量は世界一であり、米国の電力需要の1.9パーセントをまかなっている[22]。2006 年にブッシュ大統領(当時)がエネルギー効率の向上やエネルギー源の多様化の必要性を強調したことを受け、米国エネルギー省は2030 年までに国内電力の20 パーセントを風力によって供給するというシナリオについて検討し、“20% Wind Energy by 2030” と題する報告書をまとめている[23]。この“20% Wind Scenario” を作成するのに用いられたのが、“Wind Deployment System (WinDS)model” である[23]。

米国エネルギー省の報告書の表紙(Source: 参考文献[23])

米国National Renewable Energy Laboratory が作成したこのモデルは、電力セクターへの風力発電の進出に関する市場の面からの課題について検討するために設計されている[23]。WinDS は地理情報システム(geographic information system) と線形計画法(linear programming)を用いた、米国における電力開発のモデルであり[23, 24]、異なる発電方法を比較することによって、最もコストが低い電力システムを(技術的な面、信頼性の面、環境の面といった様々な制約条件の下で)デザインすることができる[25]。発電方法としては風力発電のみならず、石炭火力発電、原子力発電、天然ガス発電といったものが考慮されており[23]、全ての主要な発電方法がモデルに含まれているが、WinDS は主に風力発電にとって重要な市場面での課題(送電および、発電の間欠性)を取り扱うように設計されている[26]。たこのモデルは、電力セクターへの風力発電の進出に関する市場の面からの課題について検討するために設計されている[23]。WinDS は地理情報システム(geographic information system) と線形計画法(linear programming)を用いた、米国における電力開発のモデルであり[23, 24]、異なる発電方法を比較することによって、最もコストが低い電力システムを(技術的な面、信頼性の面、環境の面といった様々な制約条件の下で)デザ インすることができる[25]。発電方法としては風力発電のみならず、石炭火力発電、原子力発電、天然ガス発電といったものが考慮されており[23]、全ての主要な発電方法がモデルに含 まれているが、WinDS は主に風力発電にとって重要な市場面での課題(送電および、発電の間欠性)を取り扱うように設計されている[26]。

WinDS は風力発電やその他の発電、および送電に関するコスト等の仮定、および、2030 年までに電力の20% を風力で供給するようにならなければならないという条件の下で、“20% Wind Scenario” を生成した[23]。このシナリオによれば、風力発電の容量は全体で304.8GW にまで増え、その約18% は海上風力発電が担うことになるという[23]。米国の各州の風力発電容量がどのようになるのか、送電システムがどのように拡張されていくのか、といったことも描かれている[23]。さらにこのシナリオによれば、風力発電は2030 年までに、発電のための天然ガス消費の約50%、および、石炭消費の18% に取ってかわるという[23]。また、“20% Wind Scenario” を実行した場合、比較対照である“No New Wind Scenario”(2006 年よりも後の風力発電の成長は無いと仮定したシナリオ) と比べて、2006 年のアメリカドルに換算して430 億ドルだけ多くの費用がかかると計算されており、電力の20% を風力でまかなうことのコストは必ずしも圧倒的では無いことが示唆されたとしている[23]。このように、数理的方法は、米国の風力発電に関する政策の議論に用いられている。


米国エネルギー省の報告書より (Source: 参考文献[23])

3.2 建造物のエネルギーシミュレーション

米国エネルギー省によって、“EnergyPlus” というソフトウェアが提供されている[27]。EnergyPlus は米国エネルギー省などによって開発され、最初の版は2001 年にリリースされた[28]。EnergyPlus は建造物のエネルギーシミュレーションを行うソフトウェアであり、暖房、冷房、照明、換気などのエネルギーの流れをモデル化している[29]。ユーザによる建造物の構造の指定に基づいて、EnergyPlus は温度コントロールの設定値を維持するのに必要な暖房・冷房負荷などを計算することができる[30]。EnergyPlus はR&D Magazine より、2003 年のR&D 100 Awards を受賞していた[31]。EnergyPlus はシミュレーションのエンジンであり、入力と出力はシンプルなASCII テキストを用いる[30]。EnergyPlus の入力ファイルにおける、建物の形状の編集を簡単にするツールであ“OpenStudio” など[29,32]、様々なユーザインタフェースも提供されている[33]。
EnergyPlus の起源は、“BLAST” および“DOE-2” という2 つのコンピュータプログラムである[30]。BLAST(米国国防総省に支援されていた[34])およびDOE-2(米国エネルギー省に支援されていた[34])は、1970 年代のエネルギー危機および、米国のエネルギー使用量の大きな部分を建造物のエネルギー消費が占めているという認識を背景に、設計技術者や建築家向けの、エネルギーシミュレーションを行うためのツールとして開発された[30]。エネルギー効率改良のためにDOE-2 を用いて設計または改装された著名な建造物が[35] にリストされており、その中にはホワイトハウス、ペンタゴン等が含まれている。2003 年のニュース記事によれば、DOE-2 は1980 年以来、エネルギーコストを200 億ドル節約するのに役立ったと推定されていた[31]。BLAST およびDOE-2 の開発経験を基礎に、EnergyPlusの開発は1996 年から開始された[34]。
[35] は、エネルギー効率改良のためにEnergyPlus を用いて設計または改装された著名な建造物もリストしており、その中にはサンフランシスコ連邦政府ビル等が含まれている。サンフランシスコ連邦政府ビルの設計では、EnergyPlus は推定で20 年間で約900 万ドルのエネルギーコストの節約に貢献したとされた[36]。この建物はTIME誌により2007 年の“Best Inventions of the Year” のひとつに選ばれている[37]。

3.3 気候変動の農業への影響

米国Washington, DC にあり、日本を含む各国政府や世界銀行から資金面での支援を受けているシンクタンク International Food Policy Research Institurte (IFPRI)は、気候変動が農業に及ぼす影響予測についてまとめた報告書を2009 年に発表した[38]。報告書は気候変動が農業と人類の福祉に悪影響をおよぼすであろうと指摘し、対策を促している[38]。
予測にあたっては複数のモデルを組み合わせて用いることが行われている。まずIntergovernmental panel on Climate Change による特定のシナリオに基づいて、2 つの異なる気候モデルを用いて2050 年の世界の気候が予測された。2 つのモデルが用いられたのは、気候変動のシミュレーションは本質的に不確実さを含んでいるからである[38]。用いられた気候モデルは米国のNational Center for Atmospheric Research (NCAR) によるものと、オーストラリアのCommonwealth Scientific and Industrial Research Organization (CSIRO) によるものであり、それぞれの予測は、「NCAR シナリオ」「CSIRO シナリオ」として扱われている[38]。どちらのシナリオも、2050 年の気温が2000 年と比較して高くなることを予測したが、NCAR シナリオの方がCSIRO シナリオよりも平均最高気温が高くなるなどの相違点があった[38]。

IFPRIの予測(参考文献[38])は、幾つものモデルを組み合わせて用いることで得られている

次に、気候変動が作物の収穫量にどのような影響をおよぼすのかが計算された[38]。この計算にあたっては、DSSAT (the decision support system for agrotechnology transfer) というモデルが用いられた[38, 39]。DSSAT はそれぞれ特定の作物について、日々の天候等のデータを入力として、植え付けから収穫までの日々の成長をシミュレーションするモデルである[38]。世界中のそれぞれの場所について、2000 年の気候および2050 年の気候シナリオを用いて、トウモロコシ、コメ、コムギ等の作物をDSSAT によりシミュレーション上で「育てる」ことが行われた[38]。シミュレーションでは雨水により育つ(rainfed) 作物と灌漑による作物は分けて扱われた[38]。また大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって植物の成長が促される効果(CO2 fertilization effects, 実際の農地における効果は不確かであるという) を考慮に入れた場合と入れない場合について計算が行われた[38]。その結果、発展途上国においては、CO2 fertilization を考慮に入れない場合は、ほとんどの作物について収穫の減少が支配的である等の結果が得られた[38]。
次に、上記のような、気候変動の農作物に対する生物学的影響の予測を元に、食糧の生産量、さらには栄養失調の子どもの数が将来どのように変化するのかを予測する作業が行われている[38]。この作業には、IMPACT(International Model for Policy Analysis of Agricultural Commodities and Trade) というモデルが用いられている[38, 40]。IFPRI によって作成されたIMPACT は、地球規模で、農業に関する需要と供給を予測することができるモデルである[38]。モデルの内部では、各国における各商品の生産量、需要、価格、世界レベルでの各商品の価格(world price) 等の計算が行われている[40]。さらに、このモデルは栄養失調の子どもの数も計算することができる[40]。解析では、上記のDSSAT による各作物の各場所での収穫量の変化予測を、IMPACT モデルにおける各国の
各商品の生産量の計算式を構成する、ある係数を変化させるのに用いている[38]。また、気候変動が、各国の各商品の収穫面積を変化させるということも、IMPACT モデル内の収穫面積の計算式内のパラメータを調節することにより表現されている[38]。さらに、気候変動が灌漑作物のため
の水の利用可能性に影響することについても、IMPACTモデルで扱われている[38]。
解析の結果、気候変動の農作物生産への悪影響は、サハラ以南のアフリカおよび南アジアで顕著であることが分かったという[38]。また、全発展途上国における5 歳未満の栄養失調の子どもの数は、2000 年には1 億4800 万人であるが、気候変動が無い場合は2050 年には1 億1300万人に減るであろうと予測している。しかし、CO2fertilization effect を考慮しない場合、2050 年の、全発展途上国における5 歳未満の栄養失調の子どもの数は、NCAR シナリオでは1 億3900 万人、CSIRO シナリオでは1 億3700 万人になると予測している(CO2 fertilization effect を考慮した場合の影響も記載されている) [38]。さらに、栄養失調の子どもの数を気候変動が無い場合の結果にまで戻すためには、2000 年のアメリカドルに換算して、NCAR シナリオでは71 億ドル、CSIRO シナリオでは73億ドルを、追加で毎年投資しなければならないとしている[38]。報告書は厳しい解析結果を踏まえ、優れた開発政策・計画を設計し実行することや、農業の生産性のための投資を増やすこと等の提言を行い、結論としている[38]。

参考文献[38]の表紙。Cover reprinted with permission.

3.4 大気汚染と温室効果ガスのコントロール

オーストリアにある国際的研究機関International Institute for Applied Systems Analysis (IIASA) [41] と、中国のEnergy Research Institute, 清華大学の研究者の協力により、中国における大気汚染と温室効果ガスのコントロールに関するレポートが作成され、公開されている[42]。このレポートでは、IIASA の“GAINS”(Greenhouse gas – Air pollution Interactions and Synergies) というモデルが用いられている[42, 43]。GAINS は、最小のコストで、大気の質および温室効果ガスの排出の目標値を達成するような、排出コントロールの戦略を見つけることができるツールである[42]。
レポートでは、GAINS を用いて排出のコントロールを汚染物質、経済部門、および地域に関して調整すれば、先進的な“end-of-pipe” における排出コントロール技術(例えば、SO2 排出を減らす排煙脱硫など)を2030 年において中国における全ての排出源に無差別に適用する場合と比較して、健康被害を同じ量だけ減少させるコストを低くできることが示されている[42]。また、レポートでは大気汚染による健康被害を2030 年において50% 減らすのにかかるコストを、“end-of-pipe” の技術だけを用いた場合と、これに加えてエネルギーシステムの構造的な変化(家庭や産業におけるエネルギー効率の向上など)をも用いた場合について、GAINS を用いて調べ、比較を行っている[42]。その結果、構造的な変化も用いた場合の方が、これを用いない場合よりも健康被害を減らすのにかかるコストが低いことが示されている[42]。また、エネルギーシステムの構造的な変化は、温室効果ガス排出の低下にもつながるとしている[42]。

3.5 漁業と生態系に関するモデル3

漁業は、世界の多くの場所において、貧困を軽減し食糧安全保障を提供するなど、物質的な幸福に重要な役割を果たしている[44]。一方で、絶えざる乱獲によって、世界的に漁業が衰退していることが指摘されている[44]。
漁業の生態系への影響を評価することができるソフトウェアとして、“Ecopath with Ecosim (EwE)” がある[45]。EwE の開発はカナダのUniversity of British Columbia のFishery Center が中心になって行われている[46]。EwEは、“Ecopath”“ Ecosim”“ Ecospace” の3 つの部分で構成されている[46]。“Ecopath” は静的なモデルであり、生態系を構成する各グループの生産(production) とエネルギーバランスに関する2 つのマスター方程式を持つ[47]。“Ecosim” は生物資源量のダイナミクスを微分方程式で記述する動的なモデルであり、漁業および、環境に対する外乱の影響を検討することができる[48]。“Ecospace” は空間も扱うことができる動的なモジュールであり、主に、保護区域の配置・影響について検討するために設計されている[47]。
2004 年時点の論文によれば、EwE の登録ユーザーは120 カ国の2,400 人にのぼり、またEwE によって150 を超える文献が出版されている[48]。先に参照した国連環境計画の報告書では、複数のシナリオ下において、大型底生魚・大型遠海魚の生物資源量が数十年の間にどのように変化するのかが、EwE モデルを用いて予測されている[44]。

4.災害対策・インフラストラクチャーと数学・数理モデル

4.1 津波

津波は、突然の大きな海面の擾乱によって生じる海洋の波であり、通常、海洋や海岸地域における地震によって発生する[49]。23 万人以上の死者をもたらした2004 年12月26 日のスマトラにおける津波[49] を受け、米国は津波の予測および警告能力を高めようとしており、この目的のためNational Oceanic and Atmospheric Administration(NOAA) による予報システムの構築が行われている[50]。
NOAA の予報システムにおいては、“Method ofSplitting Tsunami (MOST)” というモデルが用いられている[50]。MOST モデルは地震による津波の発生、海洋上の津波の伝播、陸地への津波の到達の3 段階に対する数値シミュレーションを行うことができる[51]。このモデルを用いた、上述の2004 年のスマトラにおける津波のデータの検討も報告されている[52]。NOAA の津波予報システムは、2007 年8 月15 日のペルーにおける津波のケースを含めた、優れた実験的な予報を行っている[50]。

4.2 災害による被害の推定

米国Federal Emergency Management Agency によって、“HAZUS-MH”(Hazards U.S. Multi-Hazard) というソフトウェアが開発・提供されている[53]。HAZUS-MH は、地震・ハリケーン風および洪水による潜在的損失を解析するリスク評価手法である[54]。潜在的損失としては、物理的ダメージ、経済的損失、社会的影響が評価される[54]。
HAZUS-MH は「地震モデル」「ハリケーン風モデル」「洪水モデル」によって、被害を推測する[55]。「地震モデル」は、地震による建造物・ライフラインおよび基幹的設備の被害を推測する[56]。「ハリケーン風モデル」は住宅・商業ビルおよび産業用建物の潜在的損失を推測し、経済的損失、避難所のニーズ等も見積もる[55]。「洪水モデル」は川岸・海岸の両方の洪水に適用でき、建造物、基幹施設、輸送および公益設備(utility) のライフライン、車両、および農作物に対する潜在的被害を推測する[55]。
HAZUS-MH の応用例としては、カリフォルニア州内のある地域に関して、ある地震シナリオの病院の救急ベッドの利用可能性に及ぼす影響が推測されている[57]。また、HAZUS-MH は2008 年9 月のハリケーン“アイク”への対応のサポートに使われていた[58]。ジョージア州サバンナ市における、洪水被害緩和プランのアップグレードのための取り組みにも、HAZUS-MH が用いられていた[59]。

4.3 インフラストラクチャーの相互依存性

米国国土安全保障省(Department of Homeland Security, DHS) は、国家の「重要なインフラストラクチャーおよび主要な資源」(critical infrastructure and key resources, CIKR) の保護に対して責任を持っている[60]。
DHS による2009 年の“National Infrastructure Protection Plan” によれば、洗練されたリスク評価を可能にし、インシデントに対する準備を行うための、シミュレーションの開発は、長期的にCIKR 保護を促進していくために必要であるとされている[60]。DHS 傘下の“National Infrastructure Simulation a nd Analysis Center (NISAC)” が、モデリング・シミュレーション・解析能力の主たる担い手である[60]。
NISAC の研究者たちが行っていることの一つに、インフラストラクチャーの相互依存性に関する研究がある[61]。[61] では、物理的および経済的なインフラストラクチャー全体のシステムを、モデル化し解析するための枠組みが提示されている。モデル化においては、「システムダイナミクス」の方法が用いられている[61]。システムダイナミクスは複雑なシステムを研究し管理するための方法であり、「ストック」「フロー」「フィードバック」といった中心的概念を持つ[61]。モデルを構成する変数どうしの関係は、差分方程式や微分方程式を用いて表される。例として、重要なインフラストラクチャー(電力、燃料、天然ガス、水、通信)と需要部門(住宅、商業、産業、輸送)から成るモデルが示され、電力に障害が生じた場合のシナリオが検討されている[61]。

5  .経済と数学・数理モデル

5.1 “Millennium Development Goals” のための数理モデル

2000 年9 月、国際連合加盟国は“Millennium Declaration” を全会一致で採択した[62]。貧困の根絶などをうたったこの宣言[63] を実行するためのロードマップ[64] の中で、“Millennium development goals (MDG)” が示された。その後、MDG の枠組みは改訂されている[62]。2008 年1 月に有効となった公式のMDG では、ゴールとして、貧困と飢餓の根絶、万人に対する初等教育、男女平等、子どもの死亡率を減少させること、妊婦の健康の改善、HIV などの病気と闘うこと、環境の持続可能性、開発のためのグローバルな協力の構築、といった項目が挙げられており、それぞれのゴールにはより具体的な目標が定められている[65]。2009 年の国連のレポートでは、貧困、教育、子どもの死亡数等の分野での成果が指摘されている[66]。
世界銀行では、MDG を達成するための戦略の解析を強化することを目的としたプログラムを進めている[67]。プログラムの中心となっているのは、戦略解析のためのツール“MAMS” (Maquette for MDG Simulations) の開発および応用である[67]。MAMS は経済全体のモデルであり、健康、教育、水、衛生といったサービス、MDG、経済成長、および外国からの援助の相互作用を解析することができる[68]。政府および外国からの援助の、異なる政策が、社会や経済に及ぼす影響を調べることができるように設計されている[67]。2009 年7 月のプログラムノートによれば、MAMS の応用は(進行中のものを含めて)少なくとも35カ国に対して行われている[67]。

5.2 エネルギー経済モデル

2009 年3 月、米国エネルギー省のEnergy Information Administration (EIA) は、“Annual Energy Outlook 2009” というレポートを出版した[69]。これは、EIA に対して、エネルギーの消費と供給についての傾向と予測に関するレポートを毎年準備することを求める取り決めに基づいて作成されたものであり、エネルギーの供給、需要、および価格について2030 年までの長期予測を行っている[69]。
AEO2009 における重要な論点には、世界の石油価格、温室効果ガス排出に対する懸念の高まりとそのエネルギー関連投資への影響、再生可能エネルギーの消費の増加、新規(unconventional) な天然ガスの産出の増加、車両の効率化、および最終消費用途における効率の改善が含まれてい[69]。

エネルギー需給に関する様々な予測 (Source: 参考文献[69])

AEO2009 における予測は、National Energy Modeling System (NEMS) によって生成された[70]。NEMS はコンピュータベースのエネルギー経済モデルであり、EIA によって設計・実装された(最初のバージョンは1993 年に作成され、“Annual Energy Outlook 1994” における予測を作成するのに用いられた) [70]。NEMS は石油やガスの供給、電力市場、住宅による需要、輸送による需要など、10 余りのモジュールと、それらを統合するモジュールから構成されており、米国のエネルギ市場における需要と供給の相互作用を表現するように設計されている[70]。

NEMSの構成 (Source: 参考文献[70], page 9, Figure 2)

5.3 教育が経済成長に及ぼす効果2

普遍的初等教育の実現は、“Millennium Development Goals” の“Goal 2” に定められており、2015 年までにあらゆる場所の子どもが初等教育を完了できることを目指すとしている[65]。これと関連して、オーストリアのInternational Institute for Applied Systems Analysis (IIASA) 等の研究者によって、教育と経済成長の関係の、統計的分析が行われている[71]。
普遍的初等教育は人的資本のレベルを高めることで、経済成長をもたらすと信じられているが、教育の経済成長に対するプラスの効果の経験的根拠は弱いという[71]。[71]では、各国における過去の年齢・性別ごとの教育的達成度の分布のデータを用いて、ある国の年齢および教育レベルごとの労働力から、その国のGDP の成長率を計算するモデルを推定している。さらに、推定したモデルを用いて、4つの仮想的なシナリオに対するGDP 成長率の計算を行っている[71]。その結果、普遍的初等教育に加えて、中等教育を広めれば(このシナリオでは人口の50% が中等教育を受けるとしている)、経済成長を非常に強く後押しするということが示されている[71]。

6.おわりに

本稿では、数学・数理科学が、社会が直面する様々な問題の解決にどのように貢献できるのかという問を背景に、世界における様々な取り組み事例に関する情報を収集した。
これらの事例を概観するに、社会が直面している多くの重大な問題について、数理的方法を用いた取り組みが行われていることが分かる。多くの人々の人命や、経済的な意味での巨額な得失がかかっている重大な問題は、それに対して優れた対応ができた場合とそうで無い場合との間で、結果の「好ましさ」の差が非常に大きい。そのような問題に対しては、優れた対応ができる可能性を高めるために、直観や自然言語による思考だけに頼るのでは無く、コストをかけてでも数理的な分析を行うべきなのは当然のことかもしれない。
このように社会の様々な問題を解決する上での、数学・数理科学の重要性を再認識することができたが、一方で、数学・数理科学の諸問題の解決に対する貢献のありかたについては、以下に述べるような疑問点も浮かび上がってくる。今回収集した事例には、多くの要素が関係するという意味で大規模な問題を扱っているものが多い。そのことを反映して、一部の事例においては、数理モデルも非常に大規模なものとなっている。例えば、風力発電の活用シナリオ作成に用いられたWinDS model(第3.1 節)は、多くの制約条件や多くの地域を考慮した結果、“tens of thousands of equations” から構成されていた[72]。また、インフラストラクチャーの相互依存性を扱ったモデル([61], 第4.3 節)は、5,000 以上の変数およびパラメータを考慮していた。モデルを実用的なものにするためには、大規模で詳細なモデルを作成することは必要なことであろう。
一方、我が国のアカデミアにおける、数学・数理科学の研究者の多くは、大規模で詳細なモデルは扱っていないと考えられる。アカデミアにおける数学・数理科学研究は、概ね、実用性を直接的に強く追求するというよりは、抽象化された研究対象に対する、純粋な興味・好奇心によって駆動されている側面が強いだろう。諸問題の解決のために、多くの場合に非常に大規模な数理モデル・計算機モデルを作成することが有効であるとすれば、そのような方向を必ずしも指向していないアカデミアにおける数学・数理科学が、どのような形で諸問題の解決に貢献できるのだろうか?
上記の疑問点を考察するにあたり、指摘できることは、大規模で詳細なモデルだけではなく、シンプルで定性的なモデルも有用である可能性があるということである。モデルが大規模なものになればなるほど、その全体像を統一的に理解することは困難になっていくだろう。一方で、シンプルなモデルは定量的な予測には向かないかもしれないが、問題の全体像を統一的に見る枠組み、本質を見抜く力を提供してくれる可能性がある。例えば、本稿で取り上げた回旋糸状虫症の事例(第2.1 節)は、ミクロシミュレーションモデル“ONCHOSIM” [9] と、その前に行われた数理モデルの取り組み[8] を紹介した。ONCHOSIM はかなり複雑なモデルであり、定量的な戦略立案に役立っていた。一方で、[8] はシンプルな数理モデルを扱っているが、その貢献は問題に対する定性的な「見方」を提供したことにあると考えられる。数理モデルによってもたらされた「見方」によって、一見うまくいっていないのではないかと思われていたOCP の取り組みが、実は成功しつつあるということが示されたことは重要である。
以上のように考えると、大規模で詳細なモデルと、シンプルで定性的なモデルは両方がそれぞれの有益性を持ち、従って可能であれば両方とも進めるべきではないだろうか、という仮説に達する。シンプルで定性的なモデルの取り組みは、主にアカデミアにおいて担うことができるだろう。一方、大規模・詳細なモデルや、それを実装したソフトウェアの開発は、場合によっては国が主導し、産業界とも協力して進めていく必要があると思われる。大規模で詳細なモデルの取り組みと、シンプルで定性的なモデルの取り組みの間で、知見が交換されることを促進することも重要と考えられる。
本稿では、様々な諸問題の解決に、数学・数理科学がどのように貢献できるのかを探るためのひとつの試みとして、世界における取り組み事例を収集した。その結果、様々な問題に対する数理的分析の重要性を再確認できた。その一方で、一部のモデルは非常に大規模で詳細なものであったことから、必ずしもそのような方向性と一致しないように思われるアカデミアにおける数学・数理科学研究が、どのように諸問題の解決に貢献できるのかという疑問が生じた。我々は、大規模で詳細なモデルと、シンプルで定性的なモデルは両方が重要であり、特にアカデミアにおける数学・数理科学研究は問題の本質を見る「見方」を提供することによって問題解決に貢献できるのではないかと考えている。数学・数理科学の諸問題の解決への貢献のありかたを検討するにあたっては、上述の疑問点は議論のポイントのひとつになると思われる。

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